マイクロノベル

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  • 11:28pm · 10 Nov 2019

    20191224(火)11:15
    恋の花咲く季節となりました! 走者一斉にスタート! あーっと蟹D選手速い! コーナーで差をつけていく! 第二コーナー! 蟹B選手、C選手競り合っています! 両者一歩も譲らない~! 渾身の脚振り! 勝負を制したのは…C選手~! だが先頭のD選手、速い! 速い! トップは譲らない~! 加速、加速、ゴ~~~ル! 決勝進出はD選手となりました! 解説キタヤマさん!「最初に言った恋の花、勝負と何の関係が?」全然関係ありません!「ないんかーい!」
  • 11:13pm · 8 Nov 2019

    20191224(火)11:14
    「わーーーエラー出た」
    「何の?」
    「PC! ブルスク! 半日分のデータがパー…」
    「半日も保存してなかったのか?」
    「集中してたんだよ~うわ~ん」
    「ドジな蟹だな…」
    「蟹は皆に親しんでもらえるよう多少のドジ機能は備えてるもんなんだよ!」
    「え、蟹ってみんなこうなの?」
    「ごめん嘘です」
    「嘘なの!?」
    「確かにドジ機能標準搭載してる蟹はいるけど僕はちょっと強めに出てる感じある」
    「大丈夫なんですかそれ」
    「君がドジらないタイプだからバランス取れてるでしょ?」
    「え、そういう系…?」
    「いやわかんないけど。たぶん僕側の問題」
     PCが立ち上がる。
    「あーよかった自動保存されてたぁー!」
     ハサミをばしばし振り回して喜ぶ蟹に少し休憩したらどうだと言ったらまだやるー! とPCに向き合おうとしたのでctl+sを押しつつ強引に持ち上げた。
    「まだやるのに!」
    「長時間作業はミスのもとだぞ! カップスープいれてやるから休憩しろ」
    「はあい」
     素直かよ。
  • 11:02pm · 8 Nov 2019

    20191224(火)11:13
    「なぞのエラーをおさがしですか?」「そんなものは探していない」「なぞのエラーをおさがしですか?」「探してないと言っているのに」「エラーを探しているのでしょう」「…そんなものはない」「どうしてないとわかるのです?」「なかったんだ」「なかった?」「調べたんだ、でもなかった」「一度調べただけでなぜないとわかるのです?」「ないものはない」「でもほしいのでしょう」「…」「あなたはエラーがほしいのだ」「…」「この手を取ればそれが得られる」「…最初からそれが言いたかったのか?」「さあ? しかし今日からそんな苦しみともお別れだ」「…そうかもな」「やはり探しておられた」「…」「さあ参りましょう。どんなエラーでも授けましょう。つらいのにつらくないエラーをお望みの通り」

     断れなかった。断れるはずもなかった。俺はその蟹に着いて行き、そこからどうなったのかは■■しか知らない。
  • 3:44pm · 2 Nov 2019

    20191224(火)11:12
    「にこっ」「にこ?」「笑うとつらさが吹っ飛ぶと言うよな」「まあ言うね」「あれは嘘だと思う」「またまた」「笑っても空虚な気分になるだけで吹っ飛ぶどころかもっとつらくなるからな」「ヒェ…疲れてるよ…」「俺は普通だ」「普通か」「俺にとっては普通だからな」「まあ、そうだねえ」「つらいのが日常だからそれをどうにかするとか抜け出すとかそういうのはナンセンスなんだ」「うん」「いくら頑張っても無理だったんだから、無理なんだよ…」「うん…」「……」「…大丈夫。きっとよくなるよ。僕が傍にいるんだから」「…そうだと、いいな」
     蟹のいる午後は暮れてゆく。
  • 12:41am · 29 Oct 2019

    20191224(火)11:12
    「君が死ぬのを放置していた神を殺した。神を殺した私は神になった。しかし君は生き返らない、なぜだ?」
    「はい、それは蟹がいないからです」
    「センスのない冗談は身を滅ぼすぞ、側近」
    「神を選ぶ予定であった蟹……それは『選ぶ』能力だけで言えば世界の理をも曲げる力を持っている。だがしかしあなたは神を殺してしまった。運命の相手がいなくなった蟹は有り余る力で世界を停滞させた……あなたも、あなたのご友人も」
    「……貴様」
    「エヘヘ。側近さんに似てたぁ? 彼なら今日は迷子だよ」
    「迷子だと?」
    「蟹神の力の行き場がいよいよなくてね……空間が曲がってきてるのさ」「何を……」
    「そこでさあ、君、蟹神様に会って……『選ばれて』きてくれない? 真の神になるんだ。そうすれば君のご友人も……」
    「断る」
    「あれれ?」
    「私は神と名の付く物が大嫌いでね。蟹神とやらが邪魔をしているというのなら、その神も殺して見せる」
    「ははは、強気だなあ。面白いヒト。……忠告はしたからね」
    「フン」
     言い終えた蟹はすうと薄れ、まるで始めからそこにいなかったかのように消え失せた。
    「……側近」
    「はい」
    「『蟹神』を殺る」
    「仰せのままに」
     そうして神の蟹界侵攻が始まった。
    (蟹にまつわる物語群・ifルート)
  • 12:15am · 29 Oct 2019

    20191224(火)11:09
    「どの蟹も同じ…どの蟹も同じ…」
     僕はぐるぐると思考を回す。
    「どの蟹も同じ…そのはずなんだ…」
     ぐるぐる。ぐるぐる。
    「じゃあ…僕も…同じなのか…?」
     重ならない。存在のずれ。目に見えないそれが本当にあると信じてしまうのは僕が欠陥品だからか、それとも蟹…自身そのものが理の外の存在であるからか。どの蟹も多かれ少なかれ自己を持っているし、多かれ少なかれ性格にもぶれがある。それを個性ととるか欠陥ととるかは蟹次第だが、僕は何か、いつからか、決定的に何かが欠けているような気がしていた。
     何が? わからない。人間を探すよりもそれを明らかにする方が僕の使命だと、そう思えたらどんなによかったか。
     蟹の存在意義はヒトを救う事。そうである限り逸脱は許されない。いや、逸脱「することができない」。そのはず。そのはずだ。では今ここでぐるぐる考えている僕は何だ。
    何なのだろう?
     わからないまま夜が更けていく。
     今日もヒトは見つからなかった。
  • 12:05am · 29 Oct 2019

    20191224(火)11:08
    「神をも選ぶ、蟹をよろしく」「よろしくって…選ぶのはお前じゃないだろ」「この蟹もどの蟹も同じようなものだよ。蟹クラウドでデータ共有できるし」「なにその群一個体みたいな設定」「便利じゃないか」「お前もやってるのか…?」「いや? 僕は好きなデータしか共有しないし」「不良?」「どの蟹もだいたいそんなもんだよ。人間と違って物事をあんま気にしないからね」「ルーズ…?」「おおらかと言いたまえ。だからこそ…フフ」「フフ?」「なんでもありませーん」「気になるじゃん言えよぉ」「言わな~い」「ぶーぶー」「言わな~い」
  • 11:48pm · 25 Oct 2019

    20191224(火)11:07
    「お誕生日が終わりゆく」
    「どしたのセンチ」
    「そういう気分になるときもある」
    「あー、あるねー」
    「わかってくれるかカーニィ」
    「もちろん」
    「お誕生日が終わっても日常は続くし明日も普通に来るし」
    「うん」
    「そういうこと考えるとちょっとだけしんみりする」
    「……」
    「……話したらなんかすっきりした。さて、明日も頑張るか」
    「そうだね」
     わかるなんて言ったけどでもごめん、本当はわからないんだ。蟹に人間の気持ちはわからない。それでも、
    「明日もいい日になるといいね」
     寄り添うことはできる。そう信じていたいから。
    「おやすみ」
     明日も君の隣にいる。
  • 11:28pm · 24 Oct 2019

    20191224(火)11:06
    「音ズレの訪れ」「急に背後から声かけるのやめろ」「プフフ」「びっくりするから! 俺びっくりやさんなの!」「そんでこの音ズレはどうするんですか旦那」「直す!」「あなたの睡眠を守る蟹」「ウッ身体が! 横暴!」「ファイルは保存しておいた。君はおふろに入りたまえ」「有無を言わせぬ圧力! っていうか身体が勝手に!」「ハハハ。自動でお風呂に入るように蟹念導力を設定しておいた」「いや自分で入るし」「あ、そう」「入ってくるなよ」「ハハハ!」「めっちゃ入ってきそうー!」「おまかせあれー!」「何を!?」「ハハハ」「ねぇ何を!?」「ハハハ!」
  • 8:55pm · 15 Oct 2019

    20191015(火)20:58
    「おきゃくさ~ん今回の蟹はどうです?」「おいしい!」「たべないでくださーい!」「えっなんで…」