マイクロノベル
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12:05am · 29 Oct 2019
20191224(火)11:08「神をも選ぶ、蟹をよろしく」「よろしくって…選ぶのはお前じゃないだろ」「この蟹もどの蟹も同じようなものだよ。蟹クラウドでデータ共有できるし」「なにその群一個体みたいな設定」「便利じゃないか」「お前もやってるのか…?」「いや? 僕は好きなデータしか共有しないし」「不良?」「どの蟹もだいたいそんなもんだよ。人間と違って物事をあんま気にしないからね」「ルーズ…?」「おおらかと言いたまえ。だからこそ…フフ」「フフ?」「なんでもありませーん」「気になるじゃん言えよぉ」「言わな~い」「ぶーぶー」「言わな~い」11:48pm · 25 Oct 2019
20191224(火)11:07「お誕生日が終わりゆく」
「どしたのセンチ」
「そういう気分になるときもある」
「あー、あるねー」
「わかってくれるかカーニィ」
「もちろん」
「お誕生日が終わっても日常は続くし明日も普通に来るし」
「うん」
「そういうこと考えるとちょっとだけしんみりする」
「……」
「……話したらなんかすっきりした。さて、明日も頑張るか」
「そうだね」
わかるなんて言ったけどでもごめん、本当はわからないんだ。蟹に人間の気持ちはわからない。それでも、
「明日もいい日になるといいね」
寄り添うことはできる。そう信じていたいから。
「おやすみ」
明日も君の隣にいる。11:28pm · 24 Oct 2019
20191224(火)11:06「音ズレの訪れ」「急に背後から声かけるのやめろ」「プフフ」「びっくりするから! 俺びっくりやさんなの!」「そんでこの音ズレはどうするんですか旦那」「直す!」「あなたの睡眠を守る蟹」「ウッ身体が! 横暴!」「ファイルは保存しておいた。君はおふろに入りたまえ」「有無を言わせぬ圧力! っていうか身体が勝手に!」「ハハハ。自動でお風呂に入るように蟹念導力を設定しておいた」「いや自分で入るし」「あ、そう」「入ってくるなよ」「ハハハ!」「めっちゃ入ってきそうー!」「おまかせあれー!」「何を!?」「ハハハ」「ねぇ何を!?」「ハハハ!」8:55pm · 15 Oct 2019
20191015(火)20:58「おきゃくさ~ん今回の蟹はどうです?」「おいしい!」「たべないでくださーい!」「えっなんで…」2019年10月14日 20:57
20191014(月)21:04「食べられないっ…そんな…お前たちを…」「仲間やろ? ここはサクッといってまえよ」「そうそう! サクッと!」「油ないけどね」「火もない」「え、生?」「生だ」「危なくない?」「お腹壊して死ぬのウケる~」「笑えねえよ!」2019年10月14日 20:25
20191014(月)21:03「蟹……」「たべないでくださーい!」「鍋……」「正気に戻って!」「だし…蟹…牡蠣…」「牡蠣食べたいなら海行こか? たぶんこの世界にも牡蠣あるで」「マ?」「あ、戻った」「漁、拙者のハサミさばきを見せるとき」「牡蠣取るのにハサミさばきっているのか?」「む」「言葉詰まってるのウケる~」「ほら行くよ海!」「わーい!」9:47pm · 8 Oct 2019
20191009(水)22:54「む、蟹」「どこ?」「あそこ、塀の上」「ほんとだな」「何してるんだろうね」「そりゃ人間探してんだろ」「やっぱり?」「辻蟹ってやつよ」「手当たり次第に選ぶっていう?」「よくわからんがな」「蟹ハンター呼んだ方がいい?」「バカ、そんな怪しげな組織に頼るなよ」「冗談冗談」
僕たちは少し不安になりながら蟹の前を通りすぎたが「選ばれた」気配はない。
「いつまでいるんだろうねあの蟹…」「さあな、人が見つかるまでじゃない?」「頑張れ的な?」「まあそう」「一人なんだね…」「一匹な」「うん…」
僕は蟹をちらりと振り返る。蟹がこちらを見ることはなかった。11:27pm · 7 Oct 2019
20191009(水)22:53「む、蟹!」「先輩何言ってんすか蟹なんていませんよ」「あれ?」「いません」「あれ…?」「疲れてるんすか? 今日は早く寝た方がいいですよ」「おかしいな…確かにいたんだけど…」「街中に蟹が歩いてると思いますか?」「うーん…うん…それは」「そうでしょ」「そうかも…」「だからいないんですよ、蟹なんて」「そうかな…」「そうです」そう思っていてくれ。「ほら帰りましょう」いなくならないでくれ。「マック寄りたい」「いいですよ」「今日は月見にしよ」「いいですね」ずっとこのまま。「楽しみだなあ」「そうですね」俺の。「先輩」「何?」「呼んだだけっす」先輩。1:55am · 7 Oct 2019
20191009(水)22:53空虚。と言葉にするのは簡単だがそれだけではどんな感覚かわからない。しかし、
空虚は空虚。それ以外の何物でもない。ただ空虚、ただただ空虚、「生きてる?」
「……」
「その顔は調子崩してる顔だね……」
「……」
「大丈夫、僕がいるよ、大丈夫」
そう言われても空虚は空虚。しかし、
このまま無言を続けたら蟹が悲しい気持ちになってしまうかもと思って、その気持ちで頭がそわそわし出して、
「おかえり」
とだけ言った。
「君……」
と蟹は言ったが、ハサミを一振り、箱を取り出した。
「ほら、おみやげ。カニカニ水飴だよ」
「!」
俺は水飴が好きだ。
「スプーンついてるやつ買ったんだよね」
「!!」
てきぱきと準備をして水飴をすくって渡してくる蟹にありがとうと言い、口に入れる。
甘い。
とろける。
「ふふ」
「?」
「なんでもない」
「…そうか」
そうして蟹と俺は水飴を食べた。12:35am · 5 Oct 2019
20191009(水)22:51「蟹、どこにいる? 蟹、どこに…」
探し続ける男。おかしいな、あの人は選ばれていなかったはずなんだけど。
「どこに行ってしまったんだ、蟹…」
選ばれていなかった。
「蟹、」
おかしい。
「成功しましたね」
「ああ、蟹に干渉し、その繋がりを断ち切る……繰り返していけば、根絶も夢ではない」
「我々の理想がついに叶うのですね」
「そうだ、蟹のいない世界……」
「蟹…どこに行ったんだ……」
思い出せない。何も――。