マイクロノベル
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1:10am · 25 May 2020
20200525(月)22:01「ブラックボックスタイム!」「また博士の悪い癖が始まった」「悪い癖とはなんだ、テレビの前の良い子たちに私の発明品を紹介する良い機会じゃないか」「テレビなんかありませんし子供たちもいませんよ。皆いなくなってしまったんですから」「ブラックボックスタイム!」「聞いちゃいない」1:06am · 25 May 2020
20200525(月)22:01蟹を見すぎてしまうのも考えものだ。
物心ついたときから蟹ばかり見えていて、選ばれたくないと思っているにも関わらず視線だけは合う。そのせいで生きにくくなって選ばれたらどうしてくれるんだ?
「あ、君。見えてるね?」
「むう……」
選ばれる、蟹の方は案外それを狙っているのかも。
「いつでもどうぞ」
ため息。1:03am · 25 May 2020
20200525(月)22:01蟹がどこにいるのかわからない。俺の蟹は擬態がうまい。いつも擬態をしていて、俺が見つけるとすぐ次の擬態に移ってしまう。今日もほら、PC機器に擬態しているが指摘するとまた隠れてしまうのでコミュニケーションができない。パートナーともあろう蟹がそんな蟹でいいのか? どこから聞こえてくるかわからないような「おかえり」にそっぽを向いたままただいまと返した。6:03pm · 21 May 2020
20200525(月)22:00何でも先延ばしにしてしまう。会話も約束も仕事も勉強も、食事も睡眠も入浴も。数年前に起こってしかるべき出来事も先延ばしにし続けてずるずると今日まで、明日まで。明日こそ明日こそと思っているのだが、できない。そんなわけで、命を失ったはずの部屋で今日も生活し続けているのだ。10:21pm · 20 May 2020
20200520(水)22:29欠片、が空から降ってくる。「これは何の欠片ですか」これは正気。「僕は狂気が欲しかった」そう言ってあなたは落胆した。知っている。あなたのその■■の内容を私は知っている。けれど「そう」すると私まで「知られて」しまうから。善良な通行人の顔をして、そうですか、とだけ答えた。10:09pm · 20 May 2020
20200520(水)22:29何もかも捨て去って僕と逃げてくれたらよかった、でも生憎そういうわけにもいかないことを知っている。君が大事にするそれをしがらみと呼んでしまう僕の方が間違っている。わかっている、わかっているのに、その横顔を照らす初夏の日差しを憎く思ってしまうほど僕は君を■■■いるんだ。2020/05/20 22:06
20200520(水)22:06流れて来る葉を拾い上げようとして成功したことはなかった。今日もまた見送っている。足袋に水がしみて足がぐちゃぐちゃなことから気を逸らすかのように崖の断面を見る。規則的な縞。表面を削り、出てきたさらに細かな縞、それしか見えなくなる。そういう風にして、初夏の一日は過ぎる。5:41pm · 20 May 2020
20200520(水)19:12紅茶にメイプルシロップを入れるといいと教えてくれたのは君だった。たぶん、君のはず。遠く、もう霞んでしまったあの日の夏。風鈴の下で笑い合った僕と君はもう戻らなくて、それなのに、紅茶を飲む度思い出してしまうのだ。5:35pm · 20 May 2020
20200520(水)19:11これは紅茶だろうか。いや、紅茶、紅茶のはずだ。近くにありすぎて、飲みすぎて、わからなくなってしまったのかも。そんなこと今まで気にしてもいなかったのに君が言うから、言うから、俺は。6:01pm · 20 May 2020
20200520(水)19:11本当のこととはなんだろう。俺は本当のことがわからなくなってしまった。そもそも目にうつるこの世の全ては捏造なのだ。キィキィと鳴く声。ああ今日も大虫が来ている。窓を開けて餌をやった。俺の正気のかけら。