マイクロノベル

記事一覧

  • 1:30am · 25 May 2020

    20200525(月)22:03
    「なあ実際蟹って何なんだ?」「それを蟹である君が言いますか」「だって気になるだろ、蟹」「蟹学校で習わなかったの?」「なんか曖昧に濁して教えてくれなかったんだよな。概念ーとか言って」「じゃあ君が調べたら?」「その発想はなかった、ちょっと行ってくる」「どこに?」「蟹神社!」
     出掛けて行こうとする蟹を俺は必死で止めた。一匹で行かせるとなんだか二度と帰らないような気がして。
     次の休み、一人と一匹で蟹神社に行く。パートナーと一緒なら「隠される」ことはたぶんない……たぶん。
     わからないけれど。
  • 1:25am · 25 May 2020

    20200525(月)22:02
     神を選ぶ大蟹が長く寝ており神を選ばぬことを気にした蟹教団は騎士団を組織し大蟹を起こす旅に送り出す。出掛けた騎士団員は蟹に選ばれ、帰らぬ人となったという――後の「蟹騎士団」の誕生である。
  • 1:21am · 25 May 2020

    20200525(月)22:02
    「錬成できると思っていた時期が私にもありました」「あーあの漫画ね」「そこで取り出したのがこのブラックボックス」「?」「なんでも取り出せる、制御はできない」「謎アイテム取り出すのやめろよ」「実はこれのせいで世界は一度」「滅んでるのか?」「生まれたんです」「ああそういう…」
  • 1:18am · 25 May 2020

    20200525(月)22:02
    「目が冴え冴え」「そういえばお前の友達の冴木くんは」「その話しないでって言ったのに」「あ、ごめん」「冴木くんは遠くに行っちゃったでしょ!」「えっ」「北国に!」「あっそういう」「なんで僕を見捨てて行くかなあ! 謎も全然解いてないのに! 突撃しちゃおかな!」「やめろ馬鹿」
  • 1:10am · 25 May 2020

    20200525(月)22:01
    「ブラックボックスタイム!」「また博士の悪い癖が始まった」「悪い癖とはなんだ、テレビの前の良い子たちに私の発明品を紹介する良い機会じゃないか」「テレビなんかありませんし子供たちもいませんよ。皆いなくなってしまったんですから」「ブラックボックスタイム!」「聞いちゃいない」
  • 1:06am · 25 May 2020

    20200525(月)22:01
     蟹を見すぎてしまうのも考えものだ。
     物心ついたときから蟹ばかり見えていて、選ばれたくないと思っているにも関わらず視線だけは合う。そのせいで生きにくくなって選ばれたらどうしてくれるんだ?
    「あ、君。見えてるね?」
    「むう……」
     選ばれる、蟹の方は案外それを狙っているのかも。
    「いつでもどうぞ」
     ため息。
  • 1:03am · 25 May 2020

    20200525(月)22:01
     蟹がどこにいるのかわからない。俺の蟹は擬態がうまい。いつも擬態をしていて、俺が見つけるとすぐ次の擬態に移ってしまう。今日もほら、PC機器に擬態しているが指摘するとまた隠れてしまうのでコミュニケーションができない。パートナーともあろう蟹がそんな蟹でいいのか? どこから聞こえてくるかわからないような「おかえり」にそっぽを向いたままただいまと返した。
  • 6:03pm · 21 May 2020

    20200525(月)22:00
     何でも先延ばしにしてしまう。会話も約束も仕事も勉強も、食事も睡眠も入浴も。数年前に起こってしかるべき出来事も先延ばしにし続けてずるずると今日まで、明日まで。明日こそ明日こそと思っているのだが、できない。そんなわけで、命を失ったはずの部屋で今日も生活し続けているのだ。
  • 10:21pm · 20 May 2020

    20200520(水)22:29
     欠片、が空から降ってくる。「これは何の欠片ですか」これは正気。「僕は狂気が欲しかった」そう言ってあなたは落胆した。知っている。あなたのその■■の内容を私は知っている。けれど「そう」すると私まで「知られて」しまうから。善良な通行人の顔をして、そうですか、とだけ答えた。
  • 10:09pm · 20 May 2020

    20200520(水)22:29
     何もかも捨て去って僕と逃げてくれたらよかった、でも生憎そういうわけにもいかないことを知っている。君が大事にするそれをしがらみと呼んでしまう僕の方が間違っている。わかっている、わかっているのに、その横顔を照らす初夏の日差しを憎く思ってしまうほど僕は君を■■■いるんだ。