イミフマンズ
無人の演説
2024/05/27 18:45マイクロ霞
夜。
緑髪の男が大げさな身振り手振りで演説をしている。
「……なのでぇ皆さん、悪を崇めましょう! 崇めるって何かわかります? お金ですよ。おかね。で、僕は悪! つまり皆さんは僕にお金を貢ぐことで悪を崇めていることになるんです!」
「お前はどうして誰もいない教会で演説をしているんだ」
低温の声がかかる。
緑髪の男は明桃色の瞳を向けた。
「ああ。あなたでしたか」
そこにいたのは茶色の長髪の男。
「………」
無言を返す長髪の男に対して、緑髪の男は面白くなさそうに片眉を上げて肩をすくめ、がらりと口調を変えてみせせる。
「客がいるなら俺の講演は講演にならねェよ」
「なぜだ」
「これは世界に聴かせてるんだ。お前がいたら効果が低減しちまう。未覚醒だが魔王ときた。つまんねェよ、なあ?」
「私がつまらないと」
「お前がつまんないんじゃない、お前がいるのがつまんないんだよ」
「同じだろうが」
「違うんだなァこれが! 魔王様、その選ばれし頭脳で考えてみたらいかがですゥ?」
「未覚醒だ。それと、ヒトがいるかもしれないところでその名を出すな」
「ハイハイすいませ~んと。エセ救世主、今日は引退しまァす」
「自分でエセを付けるのも憎らしいな」
「これでほんとの救世主サマからお咎めくらってもエセなんで~って言えるだろ。それにエセって響き可愛いだろ?」
「いや……可愛くはない」
「はァ。ノってこないとかやっぱりつまんない奴」
「つまらなくて結構。……私は帰る」
「俺も帰る~」
「ついてくるな」
「帰る方向が一緒なんだよ。ケチケチしないで、なァ?」
未覚醒魔王が大きなため息を吐いて、その日は終了。
緑髪の男が大げさな身振り手振りで演説をしている。
「……なのでぇ皆さん、悪を崇めましょう! 崇めるって何かわかります? お金ですよ。おかね。で、僕は悪! つまり皆さんは僕にお金を貢ぐことで悪を崇めていることになるんです!」
「お前はどうして誰もいない教会で演説をしているんだ」
低温の声がかかる。
緑髪の男は明桃色の瞳を向けた。
「ああ。あなたでしたか」
そこにいたのは茶色の長髪の男。
「………」
無言を返す長髪の男に対して、緑髪の男は面白くなさそうに片眉を上げて肩をすくめ、がらりと口調を変えてみせせる。
「客がいるなら俺の講演は講演にならねェよ」
「なぜだ」
「これは世界に聴かせてるんだ。お前がいたら効果が低減しちまう。未覚醒だが魔王ときた。つまんねェよ、なあ?」
「私がつまらないと」
「お前がつまんないんじゃない、お前がいるのがつまんないんだよ」
「同じだろうが」
「違うんだなァこれが! 魔王様、その選ばれし頭脳で考えてみたらいかがですゥ?」
「未覚醒だ。それと、ヒトがいるかもしれないところでその名を出すな」
「ハイハイすいませ~んと。エセ救世主、今日は引退しまァす」
「自分でエセを付けるのも憎らしいな」
「これでほんとの救世主サマからお咎めくらってもエセなんで~って言えるだろ。それにエセって響き可愛いだろ?」
「いや……可愛くはない」
「はァ。ノってこないとかやっぱりつまんない奴」
「つまらなくて結構。……私は帰る」
「俺も帰る~」
「ついてくるな」
「帰る方向が一緒なんだよ。ケチケチしないで、なァ?」
未覚醒魔王が大きなため息を吐いて、その日は終了。