たぬきかきつねのロンサムサバイブ

 世界が切り替わる。
 おしまいは海辺。
 二人、座って海を見ている。
 そうか――
「やっぱりお前、俺が好きだったんだな」
「はぁー?」
「いや世界が認めちゃったんだからバレバレだぞ」
「いやでも恋とか愛とかではないですよ、たぶん」
「たぶん?」
「近いです離れてください」
「顔赤いぞ」
「馬鹿! ひどい!」
「何がひどいんだ」
「隠してたのに!」
「参考までにどういうとこが好きなのか訊いてもいいか?」
「なんで急にぐいぐい来るんですか、キャラ崩壊ですよ!」
「いやキャラ崩壊はしてない、好かれてるのはわかってるけどなんで俺なんかを好きになるのか趣味悪いなって思ってるし」
「そういうとこですよ!」
「……む」
「自信がなくて馬鹿なとことか」
「disってる?」
「素直なとことか」
「む」
「目が悪いとことか」
「む、」
「あと馬鹿なとこ、すぐ騙されるしどこまでも馬鹿」
「いや失礼だな!?」
「それは君もでしょぉ」
「……ふ」
「笑わないでくださいよぉ」
「すまん、でも、違いないと思ってな、ふふ……」
「はー、ほんと馬鹿ですね……君も、僕も……馬鹿。でも……」
 一拍置いて、
「悪かぁないですね」
 そうしてきつねはふにゃりと笑う。
 夕陽が海を照らしている。
 陽が動き出したのだ。
 肩に軽い重量がかかる。
 きつねの髪をすい、とすくい、放す。
 そうして夜が明け、朝が始まる。


『たぬきかきつねのロンサムサバイブ』

     ~おわり~

51/51ページ
スキ