短編小説

『世間では秋がまだ続いており……』
「じゃあどこなら秋が続いてないって言うんだ……」
 テレビにツッコんでも仕方がないと思いながらもツッコんでしまうのは悲しきどこぞの地方の人間の性である。
 本当か?
 知らん。たぶん別の地方の人間でもテレビにはツッコむと思うしどうでもいい。
 それはともかく俺の部屋のテレビはたまにおかしなことを言う。羊毛にご注意ください、とか、蝶に気を付けてください、とか。
 家族が引っ越すときにいらなくなったからってもらったテレビで型は古い、がさすがにブラウン管とかではない。
 いわくつきとかでもないので俺にはこのテレビが妙なことを言う理由がわからない。わかったところでどうするわけでもないが。
 今日は「世間では秋が続いてる」、じゃあ内内では夏だったり冬だったりするのかって話だよ。この時期に夏ってことはないと思うから冬なんだろうけど。いや南半球は夏だけど。
 そんなことはいいんだ。
 でもまあ俺の中ではまあまあ秋が続いている感はある。
 冬服も出してないし。
 出していないのは引きこもっているから出す必要がないというのが大きい。
 今の時代なんでも通販で届くし極論金さえあれば外に出る必要なんてないのだ。
 金、ないけどな。
 いいんだいいんだ、どうでもいいんだ。どうして俺はこう何度もどうでもいいことを考えてしまうのだろう。
 いいんだ。
 とにかく俺の部屋では秋が続いていて、このテレビが言っているのもそういうことなんだろうな。
 だらだらとニュースはまだ続いている。
 早く終わらないかな。ニュースなんか見ても暗くなるだけだし。
『……以上です。明日から12月、ぐっと冷え込みますのでテレビの前のあなたも冬服を出すことですね』
「……え」
『そう、そこのあなたです』
「俺?」
『ではまた明日、ニュース■■でした』
 ブツン。
 テレビが勝手に消える。
「はー……」
 喋ったな、このテレビ。
 いや毎日喋ってはいるけどここまで明確に俺に向かって言葉をかけてくるとは、って俺に向かって言葉をかけたつもりはないのかもしれないけど偶然にしてはコミュニケーションが成立しすぎてたような気がするけど、
「明日からどう接するつもりなんだろこいつ」

 だがその「明日」になっても特にテレビの方は変わらずで、妙なニュースの合間に俺に声をかけてくるだけ。日常は当面続きそうだった。
 まあそう簡単に崩れてもらっても困るし。
 ポテトチップスを食べながらそう思う。
『脂分の取りすぎには気をつけましょう』
「わかってるって」
 そこで野菜ジュースのCMを流すテレビ。チャンネル民法じゃなかったと思うけど。
 これ本当に日常なのか?
 ……まあいい。
 別にそれが続いたって俺は困らないし。
 でも。
 なんとなく立って、物入れを開ける。
「冬服出そ……」
 そうして俺は衣替えをした。
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