短編小説

 バレンタインだからって遅くまでチョコを作ってたなんて言わない。
「お前チョコ何個もらった?」
「お前はどうなんだよ」
「母さんからもらった!」
「へえへえよかったですね」
 よかったですねじゃね~~~~そこでスッと渡すんだよ俺!
「なあなあ、お前はもらったのかよ」
 なんでそういう流れになるんだ空気読んでくれ幼馴染~~~
「俺の数なんてどうでもいいだろ」
「え~もしかして誰からももらってない?」
「は?」
 もらってませんが。
「もらったの?」
「もらってないよ!!!!!!!」
「じゃあどうぞ!」
 え?
「作った!」
「え?」
「頑張ったから味わって食えよ! じゃ!」
「待った!」
「えー俺帰るのにぃ」
 うつむき加減の幼馴染はどことなくいつもと違う、緊張しているようなそんな様子で。
「いつも一緒に帰ってるだろ! ……じゃなくて、これ」
「え?」
「チョコだよ!!!!!!」
「え!」
「昨日作ったの!!!!!!」
「え~嬉しい、え~~~嬉しい」
 こいつ語彙力なくしてないか? 語彙力ないのはいつもだけど、
「ありがとう!」
「えっ何その何」
 何か抱きつかれているような気がするんですがそれは。
「えーとこれこの」
「大好き!」
 畜生俺も好きだよ何で全部先に言うんだこいつ、
「そいつはよかった」
 そいつはよかったじゃね~俺~~~そこは俺も好きとか言うとこだよ俺~~~~
「これからも一緒にいてね!」
「わかった……?」
 何もかも向こうから言われてる気がするんだが流れ的にこれはオーケーなのかどうなんだ? よくわからない、よくわからないが過ぎる、
「じゃあ帰ろうぜ!」
「一緒に?」
「当たり前だろ!」
 それで俺たちは一緒に帰った。


(おわり)
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