『青服の日常』より

 清々しい朝。カーテンを開け、窓の外を眺める。快晴。真っ青な空。
「今日も素晴らしい世界におはよう、ハローワールド」
 俺はゆっくり伸びをしてベッドから下り、朝の体操を始める。いちに、いちに。
 運動は身体にいい。昔から身体を動かすのが好きで、朝の体操もその一環。やるとやらないでは大違い、仕事に向けて調子を整えるのに最適だ。仕事には万全の状態で臨みたいし。
「いい朝だなあ」
 体操しながら、笑み。俺が今も生きていることに感謝の気持ちが湧いてくる。朝からこんなに良い気分になれるなんて、やはり世界は素晴らしい。
 いちに、いちに。
 体操を終え、冷蔵庫からパンを取ってトースターに入れる。コーヒーメーカーのスイッチも入れる。
 いい一日はいい食事から。朝食をしっかり取ることがよりよいパフォーマンスへの道だ。朝食を取らなければ人間はしっかり動けない。当然である。
 鼻歌を歌いながらバターを出す。ジャムは身体に悪いのでつけない。そもそも買っていない。糖分の取りすぎは生活習慣病のもとである。
 コーヒーのいい匂いがしてくる。パンの焼けた音。
 俺はトースターからパンを取り出し皿に入れ、テーブルの上に置いた。マグカップを用意する。
 バターを一欠け。それ以上は載せない。塩分の取りすぎも生活習慣病のもとである。
 バターが溶ける間にコーヒーが入った。マグカップに注いでテーブルに置く。
「……」
 しっかりと食前の祈りをし、
「いただきます」
 なんておいしいパンなのだろう。話題の店で並んで買った甲斐があった。美味しいもの食べられるならいくら並ぶのも苦ではない。今度青服のみんなにも買って行ってやろう。
 コーヒーを飲む。香り高い。毎朝きちんとコーヒーメーカーで淹れるというのがポイントである。インスタントで済ます人間の気が知れない。あんなのは邪道だ。
 しっかりと味わいながら、朝食を終わらせる。
 まだまだ出るまでには時間がある。早起きは三文の徳。
 ポストを覗くと朝刊が来ていた。この時間を利用して俺はいつもニュースチェックをしている。新聞は一社だけではなく、数社取るのがこつである。一社だけでは偏った物の見方しかできないからな。勿論、そのうち一つは経済新聞である。
 ざっと紙面に目を通す。見出しだけでだいたいの内容が頭に入るから、紙の新聞は良い。
 今日も世界は平和である。一つ二つ事件はあるが、まあ大したことではない。企業は動いているし、経済も回っている。それさえしっかりしていれば、そうそう困らない。いいことじゃないか。
 さっさと新聞を読んでしまって、ニュースサイトをチェックする。さっき新聞で気になった見出しを詳しく調べた。
 それでだいたいの出来事は把握できる。システマティック。素晴らしい。
 新聞を片付け、スマホをしまい、ゆったりと出掛ける支度をする。
「行ってきます」
 戸締りよし。外に出るとますます青空が綺麗で、今日がいい日になるという確信が強まった。
 時間通りに来た電車に乗り、読書。社会人は月に10冊本を読むといい。大学で学長に言われてからずっと守っていることだ。どんな本でもいい、できれば自分の専門分野と関連しない本がいい。未知の分野について知り、応用できるよう知識をつけることがイノベーションを生むこつである。
 そうこうしているうちに駅に着いた。
 朝はいつも駅の大通りにあるカフェに寄る。そこで今日の仕事の前準備をして、会社に着いたらいつでも仕事を始められるようにしている。ちゃんとしたビジネスマンならこれくらいできなきゃな。
「よし、完璧」
 抜けはない。まあ、抜けがあったとしても後からカバーすればいい。そのために仲間がいるんだしな。努力は裏切らない。努力すればした分だけ自分に返ってくる。素晴らしいことだ。世の中はうまくできている。
 さわやかに出勤。他の皆もぽつぽつと出勤してきている。
 青服の皆、大切な同僚であるが同時に友人でもある。仕事終わりに飲みにいくのはもちろん、休日はフットサルやバドミントンも楽しんでいる。俺が主将をしているフットサル同好会は青服内でも人気があって、毎月入部希望者がいるほどだ。
「おはよう、バイヤー。いい朝だな」
 バイヤーも大切な仕事仲間であり、仲良しの友人の一人だ。後輩であるバイヤーは俺のことをとても慕っており、俺はそんなバイヤーの面倒をいつも見てやっている。
「ドクターもおはようございます。またそんなにクマを作って、きちんと寝ないと健康に悪いですよ」
 ドクターは睡眠をきちんととらないところがあるが彼も青服皆の健康を守る大事なドクターであり、友人である。アフター5に今後のキャリアプランとそれに必要なメンタルコントロールの方法について語り合うこともしばしば。
「ナイト、おはよう。見たか今日の青空、桜に映えて美しい」
 仕事仲間の一人、ナイトも大事な友人だ。たまに家にお呼ばれし、高級紅茶で一杯二杯やることも珍しくない。風景の美しさや空模様などについて語れる貴重な相手である。
「見たか、今日もいい一日になる。ほんと、神には感謝だよ」
 いい友人、いい同僚、いい人々に囲まれて、俺は本当に幸せだ。神が造りたもうたこの世界は完璧で美しく、素晴らしい。こんな世界に生まれられたことを俺は常に感謝しており、それを皆にも伝える義務があるし、祈りも常に欠かせない。
 祈り。友人たちを誘って、日曜は教会に行く。友人は大事だ。多ければ多いほどいい、その分■■■蛻ゥ逕ィ縺ァ縺阪※驛ス蜷医′縺�>縲ょ暑莠コ縺ッ螟ァ蛻�↑驕灘�縺�縲ゆソコ繧堤屁繧顔ォ九※繧狗カコ鮗励↑闃ア縲�





「あー、さすがに検閲入ったッスね……」
「こわい……」
「アンノウンさんおかえりなさーい」
「逆、きらい」
「(笑)」
「でも最近の俺結構逆モード入ってるんじゃないかとか思ったりもする」
「そんなことないッスよ」
「そうだろうか」
「そうッスよ、だってそれは■■■■」



「……! ……夢か……」
 目覚める。カーテンの隙間から光が差し込んでいる。
「あー……」
 あまりよく覚えていないが、なんだか微妙な夢を見ていた気がする。
 二度寝したくなるのを我慢し、俺はベッドから下りた。
「今日もがんばろ……」

 そんな嘘の夢。
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