短編小説

「記憶喪失がよみがえる」
「記憶喪失がよみがえるって何なのよ、イミフじゃん」
「言葉通りの意味だ、よみがえるんだ。ほら今も忘れつつある」
「自分の状態をリアルタイムで認識できるのすごない?」
「そういう風にできてるからな」
「人間なのに?」
「ずっと黙ってたけど俺実はサイボーグなんだ」
「マ?」
「マもマよ。研究者だった父に改造されたんだ」
「ええ……」
「迫り来る悪の脅威と戦えとな」
「悪の脅威?」
「何とかハンター、などという未知の組織が目覚めつつあると」
「何とかハンター?」
「奴らは今の世界の安定を脅かす……」
「君、キャラ変わってない?」
「記憶喪失がよみがえり、日常を忘れ使命を思い出しているからな」
「待って待って忘れないで日常」
「蟹、お前のことも忘れつつある。今まで世話になったな」
「ちょっと……」
「使命に関係のないものは忘れ去られる運命」
「関係あるよ! 僕は蟹だよ? 君がサイボーグだろうが日常を忘れようが使命を思い出そうが僕は君についていく、そういう風にできている! 何とかハンターに対抗するのが君の使命なら僕はそれに協力するに決まってるじゃないか!」
「……」
「君?」
『設定完了』
「まさかもう忘れて……」
『現地協力者1、蟹を認識した。これからよろしく頼む』
「ああなんか複雑な気分だよ……協力者っていうか相棒レベルの認識で頼みたいんですけど。君の敵は僕の敵だよ」
『了解した。相棒1、蟹』
「相棒が二人も三人もできるみたいなナンバリングやめてくれませんかねえ?」
『異議は認めん』
「頭が固い!」
『サイボーグだからな』
「はあ」
『では出動』
「早い~情報集めてからにしよ~っていうかその組織って何なわけ?」
『……ハンター』
「え?」
『蟹ハンター』
「蟹、ハンター……?」

 サイボーグCR&相棒1蟹、二人の世界を股にかけた長い長い戦いはここから始まったのである――


(つづかない)
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