いいツーツーの日

 ツー、ツー、ツー、ツー。
 鳴っている。切れた電話の向こう側でのっぺりとした電子音が鳴っている。
 切れたならこっちも切ればいいのになんとなくそのまま耳に当てて音を聞いているのは私が何だからなのか?
 何でもない。別に何でも。
 何も思っていないならそんなことはしないと言うのは理由が欲しいからなのか?
 それなら言おう。
 私は友達が怖い。

 友達。それはこちらをジャッジする者。
 私の行動、私の言葉、挨拶、振る舞い、一挙一頭足全てを監視し「評価」を下し、裁定の結果「優しさ」をくれる。その関係性の根拠を「友情」と呼び、関係性の名を「友達」と呼ぶ。
 私は友達が怖い。
 しかし同時に好きでもある。
 好きだから切れない。関係性も、通話も。切ったら終わりだと思っている。何も残らないと思っている。
 だからこんな風に、切れた電話を耳に当ててそのまま音を聞いている。
 そう答えたら満足するか?

 君のことなんて私にわかるはずもない。だって君は友達じゃない。いや、友達のことでさえ私にはわかるはずがなかった。裁定者は対象に己を知られてはならない。
 関係性は一方的だ。友達は私を知り、私は友達を知らない。非対称なかたち。
 不均衡? わかっている。そう責めないでくれ。しかしそもそも君に何かを言う資格などあるのか?
 ……すまない。物を言う資格などというものを思考の俎上に載せた私の方が馬鹿だった。
 これが友達相手なら忘れてくれたらありがたいと言うところであるが、生憎君は友達じゃない。忘れなくても構わないし、恨んでくれても構わない。どうでもいいんだ、何もかも。家に帰ると何もかもがどうでもよくなる……友達のこと以外は。
 だからこんな風に切れた電話を放置したりなんかしているわけだし。人の目を気にするんならそんな行動するはずないからね。
 ああ、ああ、放っておいてくれ。気にさせないでくれ。君は君だ、何度も言うが友達じゃない。そんな君に気を遣う道理はないだろう?
 そんな目で見ないでくれ。それとも「友達」になりたいと?
 ……悪かった。電話は切るから怒らないでくれ、いや、怒ってくれても構わない。
 君は友達じゃないのだから。
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