夏だ! Wkumoみんみん祭・会場

「はあ……副会長尊い」
「そこは会長だろ!?」
「副会長だよ」
「会長だって」
「まあまあ争いはよくない、副会長のように平和を愛する穏やかな男になろうじゃないか僕たちも」
「なんだと!? 言論による闘争をこそ愛する! それは社会をよりよくするために……」
「会長はそんなんじゃないから」
「貴様……言動まで副会長に寄せてッ……!?」
「そんなおこがましいことはしないよ、副会長ファンたるもの会長のこともよく知っておかなければと思っているだけさ」
「同志か? であれば……」
「君は同担拒否?」
「いや……会長の良さは広く知られるべきだと思っている」
「ははは。いいねそれは。僕も副会長の良さは広く知られるべきだと思っているよ」
「会長派と副会長派の対立があった時代もあったな……まあ俺は会長こそが一番崇高かつ美しいと思っているが」
「君はすーぐ争いに持ち込もうとするんだから。平和だよ平和、平和が一番。副会長の美は世界を救う」
「お? やるか?」
「やりません~落ち着いてください~」
「しかし俺たちもこう、推しができて変わったと思うよ」
「まあ、それはあるかもね」
「推しがいない生活はまるで灰色の砂漠……ただ俯いて教室の隅で時が過ぎるのを待つだけの生活……」
「そんな生活とはおさらばしただろう? 僕という友人もできた」
「しょっちゅう喧嘩してるけどな」
「それは君がつっかかってくるからだろー。僕は平和を愛してるんだよ、副会長のように」
「だが副会長も必要とあらば闘争をするだろう?」
「むっ」
「む?」
「でも、なるべくそういう道は回避するように動いてくれると僕は信じているんだ!」
「副会長は会長と組んでこの学園をよりよくしてくれる。俺にとって副会長派はライバルではあるが、会長と副会長の素晴らしいコンビネーションがなければ今の日常はないのではないか、ゆえに会長が必要とするときは副会長であろうとも闘争をするのだと俺は……」
「そう! コンビネーションなんだよ! わかってくれるかい!」
「いや会話の趣旨を読んでくれ、あと会長一人でも生徒会は運営できる。できるったらできる」
「コンビネーションって言ったと思ったらできるったらできるとか言ったりして、君はツンデレなの?」
「ツンデレって死語じゃないか?」
「死語なの!?」
「そもそもそんな古い言葉なんでお前知ってるの?」
「暇な時間に昔の掲示板のログを漁ったりしてるからかな……」
「出た、謎の趣味」
「謎じゃないよぉ……」
「お前も副会長のように着実な努力をしたらどうなんだ」
「努力?」
「勉強だよ」
「君こそ勉強してるのかい」
「俺たちには無敵の『勉強会』がある」
「いつもの勉強会ね。なんかほとんど会長と副会長の話しかしてない勉強会」
「勉強はちゃんとしてるだろ! 不動院派たるもの赤点などという不名誉に落ちるわけにはいかないからな!」
「君、変なとこ真面目っていうか……」
「隠里派はどうなんだ」
「いやだからそもそも会長:不動院派と副会長:隠里派の対立っていうのはもう、ないじゃん? あっても形骸化してるっていうかさ……無意味な争いはやめないか、君」
「無意味なんかじゃない! 闘争をこそ愛する!」
「会長はそんなんじゃないから」

「あの二人、まーたやってるよ……」
「会長と副会長が就任してからずっとこうだよね……」
「でもなんだかんだ楽しそうだよね」
「それはうん、わかる。会長や副会長について語るのは楽しいからね」
「この前の学校新聞も会長ネタだったもんね」
「やっぱ人気っていうか、注目度高いよね」
「要チェックっていうかね。しっかし教室の隅っこでこの世の終わりみたいな顔して異世界転生系ラノベ読んでた――くんと陽キャ軍団の隅っこでつまんなさそうな顔してた――くんが意気投合するなんて予想もつかなかったなぁ」
「まあいっつも喧嘩してるんだけど、その喧嘩もごっこ遊びだよねあれは」
「なんだかんだで教室の雰囲気が和んだというか……クソみたいな先生の当たりが弱くなったりセクハラ教師がクビになったりしてるし確実に良くはなってるんだよね、ありがたいことです」
「うんうん、ありがたい」

「なにをーやるか!?」
「まあまあ落ち着いて落ち着いて、ミロ飲む?」
「水筒にミロ入れてきてる高校生とか見たことないぞ!」
「おいしいよ」
「むぐ……」
「ね?」
「うまい!」

 私立某高校2-○組は今日も平和である。
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