長編『亀のゾンビサバイバルログ』(全26話番外編3話、完結済)
南下を始めてから三つめの街に来た。
「神父、僕思ったんですけど」
「何かね?」
「封鎖の情報を探すには人を探す必要があるわけで、人を探すにはダメ元でも人が集まってそうなところを探すのがいいんじゃないかと思うんです」
「ほう」
「僕はこれまで、街で集団生活してた人はみんな暴徒化したんじゃないか、とか亀に情報は教えてくれないんじゃないか、とか思ってたんですけど、実際探してみないことには始まりませんからね」
「その通りだ」
「ではこれを使って」
僕は甲羅から地図を引っ張り出して、広げた。
「この街の詳細なページは……ここですね」
三つめの街は工場の街と比べるとやや小さめのようだ。
「学校とか市民会館を当たっていくのがいいですかね……街中にあるやつなら人も集まってそうですし、この辺りから」
街の中心付近にちょうど学校があった。僕たちはそこを目指すことにした。
「この道に入ると近道できそうですね」
「見通しのよい大通りから行く方がよいのではないか?」
「そうですかね……でもここ建物と建物の間で敵が前後どちらかからしか来ないから対処しやすそうでいいなあと思って」
「そうかね?」
「ええ」
「君はこの道が通りたいと?」
「通りたいです」
「……では、従おう」
その選択は結果的に間違っていた。
道を少し進んだところで、両脇にある建物の扉からゾンビたちがわらわら出てきたのだ。
引き返そうと後ろを向くと、後ろにもゾンビがあふれていた。
路地裏は狭い。甲羅回転で蹴散らすことはできない。
「逃げるぞ、亀。道を開くのだ」
僕は前に向き直ると、ゾンビの少ない正面に向かって甲羅アタックをかけた。
「ゴアー」
ゾンビたちが消滅する。とりあえず、前への道は開けた。
「走れ!」
僕たちは走り出した。
狭い路地裏を右へ左へ曲がり、やつらを撒こうとひたすら走る。
角を曲がるたび、後ろから追って来ていたゾンビたちの足音が少しずつ遠ざかっていった。
何回角を曲がったかわからなくなってから、やっと僕は立ち止まった。
表通りが見えている。
胸に手を当て、息を整える。
「近道するより安全な道を探した方がよかったです……すみません、神父……神父?」
返事がない。
僕は振り返る。
一緒に走っていたはずの神父が、いなかった。
途中ではぐれてしまったのだろうか。
ゾンビにやられてなければいいが、と考えて、ぶんぶんと首を振る。だってあの神父だぞ。やられることなどあるはずがない。それに、今神父がいなくなったら僕は……
ゾンビだらけの路地裏に戻るのは危険だ。それ以前に、どこをどう曲がってここまで来たのか覚えていないので無理である。
不安。甲羅はちゃんと背中にあるのに、僕は今とても不安だった。
どうすればいいのかわからない。神父は今どこにいる? どこに行けば合流できる?
ここで待っていればそのうち来てくれるだろうか。
「でもまずはともかく食べないと死ぬからな……」
『食べないと死ぬ』というのは神父が僕によく言っている言葉だ。
甲羅から携帯食糧を取り出し、パッケージを開封する。
不安と焦りを押し込めようと、携帯食糧に歯を立てた。
「神父、僕思ったんですけど」
「何かね?」
「封鎖の情報を探すには人を探す必要があるわけで、人を探すにはダメ元でも人が集まってそうなところを探すのがいいんじゃないかと思うんです」
「ほう」
「僕はこれまで、街で集団生活してた人はみんな暴徒化したんじゃないか、とか亀に情報は教えてくれないんじゃないか、とか思ってたんですけど、実際探してみないことには始まりませんからね」
「その通りだ」
「ではこれを使って」
僕は甲羅から地図を引っ張り出して、広げた。
「この街の詳細なページは……ここですね」
三つめの街は工場の街と比べるとやや小さめのようだ。
「学校とか市民会館を当たっていくのがいいですかね……街中にあるやつなら人も集まってそうですし、この辺りから」
街の中心付近にちょうど学校があった。僕たちはそこを目指すことにした。
「この道に入ると近道できそうですね」
「見通しのよい大通りから行く方がよいのではないか?」
「そうですかね……でもここ建物と建物の間で敵が前後どちらかからしか来ないから対処しやすそうでいいなあと思って」
「そうかね?」
「ええ」
「君はこの道が通りたいと?」
「通りたいです」
「……では、従おう」
その選択は結果的に間違っていた。
道を少し進んだところで、両脇にある建物の扉からゾンビたちがわらわら出てきたのだ。
引き返そうと後ろを向くと、後ろにもゾンビがあふれていた。
路地裏は狭い。甲羅回転で蹴散らすことはできない。
「逃げるぞ、亀。道を開くのだ」
僕は前に向き直ると、ゾンビの少ない正面に向かって甲羅アタックをかけた。
「ゴアー」
ゾンビたちが消滅する。とりあえず、前への道は開けた。
「走れ!」
僕たちは走り出した。
狭い路地裏を右へ左へ曲がり、やつらを撒こうとひたすら走る。
角を曲がるたび、後ろから追って来ていたゾンビたちの足音が少しずつ遠ざかっていった。
何回角を曲がったかわからなくなってから、やっと僕は立ち止まった。
表通りが見えている。
胸に手を当て、息を整える。
「近道するより安全な道を探した方がよかったです……すみません、神父……神父?」
返事がない。
僕は振り返る。
一緒に走っていたはずの神父が、いなかった。
途中ではぐれてしまったのだろうか。
ゾンビにやられてなければいいが、と考えて、ぶんぶんと首を振る。だってあの神父だぞ。やられることなどあるはずがない。それに、今神父がいなくなったら僕は……
ゾンビだらけの路地裏に戻るのは危険だ。それ以前に、どこをどう曲がってここまで来たのか覚えていないので無理である。
不安。甲羅はちゃんと背中にあるのに、僕は今とても不安だった。
どうすればいいのかわからない。神父は今どこにいる? どこに行けば合流できる?
ここで待っていればそのうち来てくれるだろうか。
「でもまずはともかく食べないと死ぬからな……」
『食べないと死ぬ』というのは神父が僕によく言っている言葉だ。
甲羅から携帯食糧を取り出し、パッケージを開封する。
不安と焦りを押し込めようと、携帯食糧に歯を立てた。