短編小説(3庫目)

「元気にやってるみたいで、よかったよ」
 古い友人からそう言われたので、僕はかなしい気持ちになっていました。
 それは、僕が全く元気になんてやっていなかったから。
 毎日毎日勇者にこき使われて(フラグを折られて)、しおしおになっていたのです。
 そんなとき、蟹がやってきました。
「僕が勇者を倒してあげる」
 そう言った蟹は光を発して、勇者は膝をつき、うわーまいったーと言いました。
 こうして勇者から救われた僕は、古い友人にもう一度連絡しました。
「本当に元気にやっているから、心配しないで」
 そうして連絡を絶ったので、彼らは心配しているかもしれません。
 だって、蟹の世界はヒトには見えないから。
 僕も蟹も見えない場所に行ってしまったのです。
 蟹とヒトが共に暮らす、1レイヤー上の理想郷へ。

 元気にやっているから、よかったよ。
 僕は呟きます。
「いいと思うんだ。何がなくとも生きているんだから」
 押しつけがましい蟹と一緒に、僕は生きてゆくんだから。
 たとえそれが間違っていたとしてもね。
 ……おわり。
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