短編小説(3庫目)
「ああ……疲れたな」
俺はとぼとぼと帰路につく。
今日もうるさい幼馴染が纏わりついて、せっかく転校生が来たっていうのに挨拶の一つもできなかった。
幼馴染の追跡から逃れるため、裏門から帰り道へ。
いつも足元を見て歩いているから、空は見えない。
平凡な人間だ。
この、アスファルトのように──
「〇〇くん!」
「ん……?」
そこにいたのは、険しい顔をした転校生。ポニーテールが似合っている。
「ちょっと右にずれていただけるかしら」
「右……?」
「早く!」
「うおっ」
強風で俺は吹き飛ばされ、ごろごろと転がる。何だ、こんなの日常にないが。
「危ないところだったわ」
転校生は竹刀を構える。
「転身」
ふわり、と先ほどとは違う雰囲気の風が転校生を取り巻いて、一瞬で彼女は何かひらひらの衣装になっていた。
「これ」
風が頬を撫でる。と、彼女の正面に何かいることに気付いた。
「Grrrr....」
「貴方に少しだけ力、分けてあげる。危なくないよう避けて帰って」
それは大きな。黒い狼のような影だった。
「〇〇くん、ほら、走るのよ」
「お、おお……」
面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。
俺は言われた通り、走って帰ろうとして。
「きゃああ!」
「……!」
幼馴染が襲われているところに行きつく。
「〇〇! 何が起きてるの、突然何かに吹き飛ばされて……!」
「下がってろ」
恰好をつけてみたはいいものの、視えるだけで戦えるわけでもない俺は。
「こっちだ」
とりあえず挑発し、走って幼馴染のバカから狼を引き離すことにした。
「馬鹿犬。追いつけるものなら追いついてみろ」
「Grr」
全力で走る。
あいつが危ない目に遭わないように。
「………!」
だが。
「Grrrr.....」
「行き止まりか……」
工事中の穴が空いた道。通学路ではないので把握していなかった。
「Grrr」
「でもまあ、あいつを守って死ねるなら本望か」
俺が目を閉じた、そのとき。
「〇〇くん!」
とす、と音がして、ひらひらの転校生が落ちてきた。
「逃げなさいと言ったはず、え……どうしてもう一匹いるの……!」
ごう、と風を切って、大狼がもう一匹落ちてきた。
Grrの二重奏だ。そんなふざけたことを考える。
「俺も一緒に……」
「戦えるわけないでしょ、選ばれてもいないのに!」
「囮ぐらいにはなれる……!」
「一般人を戦いに巻き込むわけには、……あら?」
転校生の持っていた鎌がぱあ、と強く輝く。
大狼が吠え、身構える。
「あいつら、これを恐れてる……?」
「いけそうじゃないか?」
「……はあッ!」
転校生が鎌を振り、下ろす。
ひときわ強い風が吹き、大狼たちは、
「ギャイン!」
風とともに暖かい光がさし、まとめてかき消える。
「え……」
転校生が呆然と鎌を見る。
「こんなこと、初めて……」
「なんだかわからんが助かった」
「……」
「帰っていいか?」
「……ら」
「ん?」
「貴方がいたから、できたのかも」
「……どういうことだ」
「貴方はこの鎌の触媒になってるのかもしれない」
「なんで俺が?」
「……わからないけど、貴方に力を与えたことが不思議に作用しているのかも」
「帰っていいか?」
「送るわよ」
「結構だ」
「また襲われたら誰が戦うの?」
「俺がその『触媒』ってやつなら、俺も不思議な力でなんとかなったりしないか?」
「ならないわ。これは選ばれた人しかなれなくて」
「俺も選ばれてるとか」
「それはないわね。修業が必要だもの」
「またこういうことが起こったりするのか?」
「……」
沈黙が答えだった。
「それなら、俺に修業をつけてくれ」
「……はあ。断れないみたいね」
「それじゃああたしにも!」
横から声が入る。
「お、お前いつから」
「触媒とか何とか言ってたところからだよ。〇〇くんが修業するなら、あたしも修業する。それで〇〇を守れるなら」
「はあ……しょうがないわね」
転校生はポニーテールをさらりと手ではらう。
「二人とも、明日の放課後私の家に来なさい」
そこで修業をするから。
転校生はそう言って去っていった。
授業はちゃんと受けるんだな。というのが俺の感想。
そこから俺は自分の名前に禁呪がかけられていたことがわかったり、幼馴染が選ばれたり、俺が覚醒して世界の外を統べし魔王になったり、転校生と幼馴染が世界の外に出て俺を倒し世界と世界の外を救ったり、そのままの年齢で生まれ変わった俺をめぐって幼馴染と転校生のヒロインレースが勃発したりするのだが、それはまた別の話。
俺はとぼとぼと帰路につく。
今日もうるさい幼馴染が纏わりついて、せっかく転校生が来たっていうのに挨拶の一つもできなかった。
幼馴染の追跡から逃れるため、裏門から帰り道へ。
いつも足元を見て歩いているから、空は見えない。
平凡な人間だ。
この、アスファルトのように──
「〇〇くん!」
「ん……?」
そこにいたのは、険しい顔をした転校生。ポニーテールが似合っている。
「ちょっと右にずれていただけるかしら」
「右……?」
「早く!」
「うおっ」
強風で俺は吹き飛ばされ、ごろごろと転がる。何だ、こんなの日常にないが。
「危ないところだったわ」
転校生は竹刀を構える。
「転身」
ふわり、と先ほどとは違う雰囲気の風が転校生を取り巻いて、一瞬で彼女は何かひらひらの衣装になっていた。
「これ」
風が頬を撫でる。と、彼女の正面に何かいることに気付いた。
「Grrrr....」
「貴方に少しだけ力、分けてあげる。危なくないよう避けて帰って」
それは大きな。黒い狼のような影だった。
「〇〇くん、ほら、走るのよ」
「お、おお……」
面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。
俺は言われた通り、走って帰ろうとして。
「きゃああ!」
「……!」
幼馴染が襲われているところに行きつく。
「〇〇! 何が起きてるの、突然何かに吹き飛ばされて……!」
「下がってろ」
恰好をつけてみたはいいものの、視えるだけで戦えるわけでもない俺は。
「こっちだ」
とりあえず挑発し、走って幼馴染のバカから狼を引き離すことにした。
「馬鹿犬。追いつけるものなら追いついてみろ」
「Grr」
全力で走る。
あいつが危ない目に遭わないように。
「………!」
だが。
「Grrrr.....」
「行き止まりか……」
工事中の穴が空いた道。通学路ではないので把握していなかった。
「Grrr」
「でもまあ、あいつを守って死ねるなら本望か」
俺が目を閉じた、そのとき。
「〇〇くん!」
とす、と音がして、ひらひらの転校生が落ちてきた。
「逃げなさいと言ったはず、え……どうしてもう一匹いるの……!」
ごう、と風を切って、大狼がもう一匹落ちてきた。
Grrの二重奏だ。そんなふざけたことを考える。
「俺も一緒に……」
「戦えるわけないでしょ、選ばれてもいないのに!」
「囮ぐらいにはなれる……!」
「一般人を戦いに巻き込むわけには、……あら?」
転校生の持っていた鎌がぱあ、と強く輝く。
大狼が吠え、身構える。
「あいつら、これを恐れてる……?」
「いけそうじゃないか?」
「……はあッ!」
転校生が鎌を振り、下ろす。
ひときわ強い風が吹き、大狼たちは、
「ギャイン!」
風とともに暖かい光がさし、まとめてかき消える。
「え……」
転校生が呆然と鎌を見る。
「こんなこと、初めて……」
「なんだかわからんが助かった」
「……」
「帰っていいか?」
「……ら」
「ん?」
「貴方がいたから、できたのかも」
「……どういうことだ」
「貴方はこの鎌の触媒になってるのかもしれない」
「なんで俺が?」
「……わからないけど、貴方に力を与えたことが不思議に作用しているのかも」
「帰っていいか?」
「送るわよ」
「結構だ」
「また襲われたら誰が戦うの?」
「俺がその『触媒』ってやつなら、俺も不思議な力でなんとかなったりしないか?」
「ならないわ。これは選ばれた人しかなれなくて」
「俺も選ばれてるとか」
「それはないわね。修業が必要だもの」
「またこういうことが起こったりするのか?」
「……」
沈黙が答えだった。
「それなら、俺に修業をつけてくれ」
「……はあ。断れないみたいね」
「それじゃああたしにも!」
横から声が入る。
「お、お前いつから」
「触媒とか何とか言ってたところからだよ。〇〇くんが修業するなら、あたしも修業する。それで〇〇を守れるなら」
「はあ……しょうがないわね」
転校生はポニーテールをさらりと手ではらう。
「二人とも、明日の放課後私の家に来なさい」
そこで修業をするから。
転校生はそう言って去っていった。
授業はちゃんと受けるんだな。というのが俺の感想。
そこから俺は自分の名前に禁呪がかけられていたことがわかったり、幼馴染が選ばれたり、俺が覚醒して世界の外を統べし魔王になったり、転校生と幼馴染が世界の外に出て俺を倒し世界と世界の外を救ったり、そのままの年齢で生まれ変わった俺をめぐって幼馴染と転校生のヒロインレースが勃発したりするのだが、それはまた別の話。
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