短編小説(3庫目)

 小さい頃は終焉がここまで早くやってくるなんて思っていなかった。
 台風が来てもそれはかわいいもので、警報が出て学校から帰る途中、長靴で水たまりをぴちゃぴちゃして遊んだりして。
 そうだ。
 熱的死ではなく、熱による死。
 この星はそうなってしまうらしい。
 気温が上がるといろんなことが起こる。
 作物が枯れたり、水不足になったり、はたまた台風が大きくなったり、留まったり、長雨が降ったり、魚が死んだり、ああもう食べ物だってろくに無いし、もし外で缶を見つけてもそれは熱くて持ち帰るのにも難儀する。
 焼ける。じりじりと。
 歩けはしない。
 未来なんて思い描くこともできなくなってしまった。最も、僕のような年寄りにはもともと思い描く未来なんてありはしないのだけれど。
 普通の仕事もなくなって、皆、無理に仕事をしている。
 人手不足も深刻だ。
 限られた食料を分け合うなら人は少ない方がいい。
 そんな最低な考えだって終末のこの世界では正当化されてしまう。
 偉いヒトたちが戦争を引き起こしたのが断末魔のようになって、気温はどれだけ上昇したのだろう。
 何かのせいにしたくもなる。何せ子供時代、この星は普通だったのだから。
 安心して暮らせる生活を体験してしまうとずっとそれに焦がれてしまう。 
 あのころはよかったなあ、というのはそういうことだ。
 歳を取ってからわかる。
 わかった。
 きっと安心して暮らせる生活をしていたころの僕らが昔はよかったなあと言っていたのは、健康で若かった、周囲の環境に適応できていたあのころはよかったなあ、という意味で、あのころは星の環境が駄目になっていなくてよかったなあとかいうぎりぎりの意味では決してなかったと思う。
 そうだ。
 昔話だよ。これは。
 じりじりと、熱波は僕たちを圧迫していった。
 住む場所を追い、食料難、戦争、また戦争。ずっとずっと加速して、夏と冬しかなくなった。
 どうだろう。
 それでも戦うかね?
 そうか。
 残念だ。
 僕はどうやらここまでらしい。
 隣のグループの若者との小競り合いで僕は命を落とす。
 そう決まっていたんだろう。なんて思わないと僕の人生寂しいじゃないか。
 最後ぐらい何か意味を持っていないと、僕の生涯寂しいじゃないか。
 決められた、そう決められた。運命は決められた。
 星によって。
 神によって。
 ありがとう。
 そして、さようなら。
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