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夢②【新しい世界へ】


※ゾルディック一族の長女設定。

名前変換はありません。

内容はのほほんな居残り夢小説です。
お相手はミルキ、カルト、イルミです。

※全員を一つにまとめて書いてます。

宜しけばお読みください。



















【新しい世界へ】


暗い地下牢を抜けて、長い階段を登った。


ゴトーがくれた幸運をもたらすというコイン。

私はそれに穴を開けてお気に入りのネックレスチェーンに通した。



この家を出ても、ゴトーがずっと傍にいるようで、心強いよ。







「行くのかよ」






背後から声が聞こえた。


振り返るとミルキ兄さんがこちらを睨んでいた。


なんだかいつもより顔が怖い。





「うん。行くよ」

「本当にゾルディック家を抜けるのか?」

「うん。もうこの家の考えにはついていけない」




もう殺しはやめた。

弟のキルアのように私も外の世界に飛び出すの。



私はさらに階段を登った。





「…嫌いじゃなかったよ」

「え?」

「お前と喧嘩してる時間。お前が拗ねてる顔見るの、嫌いじゃなかった」

「……ふふっ」





ミルキ兄さんとは顔を合わすたび言い合い
ばかりだったけどなんだか憎めなくて。


気付いてたんだよ。

誰よりも私を気にかけてくれてたこと。





「今度会う時は痩せててよね、兄さん」

「うるさい」




振り返らず私は重い扉を開けた。








廊下の空気は湿っていて、外は雨だと教えてくれた。




長い直線通路を歩いていると、部屋から
ひょっこり顔を出す麗しい我が弟の姿が見えた。





「カルト。おいで」




声に反応して、カルトはすぐ様私の胸に飛び込んできた。


そして顔をうずめ、力いっぱい抱き着いてくる。





「姉様…行かないで」

「そうはいかないの。お父様も言ってたでしょ。
ゾルディック家の教えを破るものはここに置けないって」

「分かってる…。でも…ボク寂しいよ…。
姉様とこれからもいっぱいお話したい」

「ごめんね。カルト。その願いはきいてやれない。
でもね。きっといつか、どこかで会えるから。

その時は沢山カルトのお話聞かせてくれる?」




首を持ち上げてこちらを見つめながらカルトは小さく頷いた。


「お行き」と背中を押すと「さよなら」と掠れた声で奥の部屋に消えていった。














傘なんて持ったことがない。


だって殺しには邪魔になるじゃない。




お父様もお爺様も、
傘のさし方より、靴紐の結び方より、

真っ先に人の殺し方を私に教えた。




この家が私の世界の全てだったから、なんにも疑わなかったけど、
外の世界を目の当たりにしてからはこの家の空気は重くて、窮屈なものだと知った。







屋敷の外は雨で地面がぬかるんでいた。


服が水分を含んで少し気持ち悪い。





「お前もまだまだだ」





またしても背後から気配を感じて、
腕を引かれたと気付いた時には
既にイルミ兄さんが私の傍らに立っていた。






「気配にも気付かないんだね」

「兄さんの絶が完璧過ぎるのよ。
敵いませんよ、あなたには」




私は振りほどこうと腕を振るけど、びくともしない。

逆に力が強くなる。





「本当は行かせたくない」





そう言ってまた力が強まる。


兄さん、駄目だよ。




決意が鈍るから。


どうか、このまま行かせてほしい。





「イルミ兄さん。私感謝してるの。
お父様やお母様は私に殺しのテクニックしか教えてくれなかった。

けど兄さんは違う。外の世界を見せてくれた。
私に色んな光を見せてくれたの。

それまで殺し以外であんなに胸が踊ったことはなかったわ」




思わず口が緩む。

そして思い出していた。



兄さんにせがんでせがんで、見習い修行だと言って
いろんな国へ連れていってもらったこと。

危険だということもと分かっていたけどちっとも怖くなかった。



イルミ兄さんが必ず守ってくれたから。





「今じゃお前を外に連れ出したこと、後悔してる」

「え?」

「ずっと鳥籠に入れておけば良かった」





そう言って私の頭に手を置いた。




「俺がいなくて平気?」

「平気よ」




兄さんの手の上に私の手を添えた。





「後悔しても遅いわ。もう知っちゃったんだから」

「お前の頭の硬さは兄妹一だから。諦めてるよ。

あともし外でキルに会ったら言っといて。
『抜け駆け禁止』だって」

「…?分かった。伝えておく」







小さく「いってらっしゃい」と聞こえた気がした。

けどあのイルミ兄さんがそんな柄にもない言葉を言うはずがない。




振り返らず私は走るね。



またね!ククルーマウンテン!!



fin...