憧れ焦がれは移り変わりて
信じる事のはじまり
ストレイボウはおれの自慢の友達だ。賢くて、魔法が使えて、いつだって俺に新しい世界を見せてくれる。
おれは、そんなストレイボウの隣にいつだって堂々と立っていられるような、立派な人間になりたかった。
「覚えた魔法もいつの間にか沢山になったね」
「今のところ、ほとんどがちょっと便利程度の魔法ばかりだけどな」
おれが褒めるとストレイボウはいつも困ったような顔して、そうやって自分が全然すごくないやつだって言い訳するような返事をする。
ストレイボウはいつだって、自分がすごいやつだって中々認めようとしないんだ。
「おれにとってはどれもすごい事だよ。おれにはこんな事、出来やしないから……」
「お前だってもっとでかくなったら出来るかもしれないだろ」
「出来ないよ。おれには。おれはストレイボウみたく頭が良くないもん」
おれには魔法は使えない。ストレイボウが読むような本はおれには難しくて、読んでるうちに頭がくらくらして眠くなっちゃうし、ストレイボウがおれのために本に書いてある事を説明してくれても、何言ってるのか全然分からない。
おれは、ストレイボウみたいにはなれなくて、だからいつかそのせいでストレイボウに離れられるんじゃないかって、いつだって怖くてたまらなかった。
「はぁ……あのな、オルステッド。よく聞けよ」
ストレイボウはため息を吐くと、おれに人差し指を向けて睨み付けてきた。
「な、何?」
「お前は俺より年下なんだぞ」
「う、うん……?」
「俺の方が長く生きてるんだから、俺に出来てもお前にはまだ出来ない事だって沢山ある」
「うん……」
「けどな。お前が今の俺と同じくらいになったら、その頃には今の俺と同じくらい色んな事が理解出来るようになる可能性だってあるだろ?」
「そ、れは……でも……」
やっぱり自信が無いよ。と、口に出しそうになったおれの手を握りしめて、ストレイボウはおれを見る。
お日様が昇る前の朝早くの空みたいな色をした目でじっと見つめられて、おれは何だかどきどきして、ちょっとだけ目を反らしたくなったけど、それはストレイボウに悪いと思って頑張って耐えた。
「自信持てよ。お前ならいつか出来る」
「うーん……出来る、かな?」
「ああ。俺が保証してやる。もしもお前が自分の可能性を信じられないのなら、俺が代わりにお前を信じてやる」
ふ、と、優しい笑顔になったストレイボウが眩しくて、おれは何だか胸の奥がきゅうっとする。
「……なら、信じるよ。ストレイボウがそう言ってくれるなら。おれもおれを信じる」
ストレイボウがおれを信じてくれるなら、おれは何でも出来る。そんな気がした。
(いつか、おれも魔法が使えるようになったら、そしたら一番最初に覚えるのは明るい光で周りを照らす魔法にしたいな。そうしたら日が暮れてもストレイボウが本を読めるし、日が落ちても二人でずっと遊んでいられるから)
ずっとずっと、いつだって側にいられる。そんな魔法が使えるようになりたいと思いながら、おれはストレイボウの手をぎゅっと握り返した。
ストレイボウはおれの自慢の友達だ。賢くて、魔法が使えて、いつだって俺に新しい世界を見せてくれる。
おれは、そんなストレイボウの隣にいつだって堂々と立っていられるような、立派な人間になりたかった。
「覚えた魔法もいつの間にか沢山になったね」
「今のところ、ほとんどがちょっと便利程度の魔法ばかりだけどな」
おれが褒めるとストレイボウはいつも困ったような顔して、そうやって自分が全然すごくないやつだって言い訳するような返事をする。
ストレイボウはいつだって、自分がすごいやつだって中々認めようとしないんだ。
「おれにとってはどれもすごい事だよ。おれにはこんな事、出来やしないから……」
「お前だってもっとでかくなったら出来るかもしれないだろ」
「出来ないよ。おれには。おれはストレイボウみたく頭が良くないもん」
おれには魔法は使えない。ストレイボウが読むような本はおれには難しくて、読んでるうちに頭がくらくらして眠くなっちゃうし、ストレイボウがおれのために本に書いてある事を説明してくれても、何言ってるのか全然分からない。
おれは、ストレイボウみたいにはなれなくて、だからいつかそのせいでストレイボウに離れられるんじゃないかって、いつだって怖くてたまらなかった。
「はぁ……あのな、オルステッド。よく聞けよ」
ストレイボウはため息を吐くと、おれに人差し指を向けて睨み付けてきた。
「な、何?」
「お前は俺より年下なんだぞ」
「う、うん……?」
「俺の方が長く生きてるんだから、俺に出来てもお前にはまだ出来ない事だって沢山ある」
「うん……」
「けどな。お前が今の俺と同じくらいになったら、その頃には今の俺と同じくらい色んな事が理解出来るようになる可能性だってあるだろ?」
「そ、れは……でも……」
やっぱり自信が無いよ。と、口に出しそうになったおれの手を握りしめて、ストレイボウはおれを見る。
お日様が昇る前の朝早くの空みたいな色をした目でじっと見つめられて、おれは何だかどきどきして、ちょっとだけ目を反らしたくなったけど、それはストレイボウに悪いと思って頑張って耐えた。
「自信持てよ。お前ならいつか出来る」
「うーん……出来る、かな?」
「ああ。俺が保証してやる。もしもお前が自分の可能性を信じられないのなら、俺が代わりにお前を信じてやる」
ふ、と、優しい笑顔になったストレイボウが眩しくて、おれは何だか胸の奥がきゅうっとする。
「……なら、信じるよ。ストレイボウがそう言ってくれるなら。おれもおれを信じる」
ストレイボウがおれを信じてくれるなら、おれは何でも出来る。そんな気がした。
(いつか、おれも魔法が使えるようになったら、そしたら一番最初に覚えるのは明るい光で周りを照らす魔法にしたいな。そうしたら日が暮れてもストレイボウが本を読めるし、日が落ちても二人でずっと遊んでいられるから)
ずっとずっと、いつだって側にいられる。そんな魔法が使えるようになりたいと思いながら、おれはストレイボウの手をぎゅっと握り返した。