このまま溶けてしまえばいい
「ギュスターヴ…これは一体何事だ?」
ケルヴィンは半ば呆れ顔でソファーでくつろぐギュスターヴに聞いた。
「何って…チョコに決まってんだろ?」
何を当たり前の事聞いているのかとでも言いたげな表情を浮かべ、ギュスターヴはケルヴィンを見る。
しかしケルヴィンの質問もこの状況からしてみれば当たり前なのだ。何せギュスターヴの部屋に出来たチョコの山はあまりにも量が多く、一体幾つあるのかすら分からないのだから。
「お前一体何人から貰ったんだ…」
「ん~多分80人以上は貰ったかな?」
「………ちゃんとお礼返せるのかそれ」
「レスリーとマリーにはクッキーでも返すさ」
「他は?」
「え?別にいいだろ」
「よくあるか!人の誠意を無駄にするなこの阿呆!!」
ケルヴィンはギュスターヴの襟元を掴むと豪快に揺さ振った。
「うぐっ…ちょっ、ケルヴィン…苦し……」
「はっ!す、すまん…私とした事が…」
ケルヴィンは申し訳なさそうに手を離す。
「けほっ……誠意ねぇ……そんな意図でくれた奴なんて多分ほとんどいないぞ」
「は?」
「差別されてた時の癖っつーのかな…目見たら何となく分かんだよ。腹に何か一物ある奴ってのは」
「あ…」
ケルヴィンは何か言いかけて、そのまま黙ってしまった。
(ああ、そうだ…こいつは人一倍、周囲の人間性を見るんだった…)
「大体が俺の側室とか…そんな感じの地位が欲しいってだけの奴等だろ…全く、あんな嘘だらけの愛の言葉囁かれたって嬉しくないのにな」
「…………」
「あ、お前がそんな悩む必要ないんだからな?」
「そうは言っても…」
「それよりせっかくこんなにチョコがあるんだしさ、お前も食えよ」
ギュスターヴは大量のチョコレートの包みをを引っ掻き回すと、一つの箱をケルヴィンに向かって差し出した。
「いや…私はいい」
「はっはぁ~ん…さてはお前ほとんど貰えなかったんだろ?」
「う…五月蝿いな!そんな事どうだっていいだろ!!」
ケルヴィンは顔を真っ赤にして怒鳴り散らし、そっぽを向く。
(図星かよ。単純っつーかやっぱ分かりやすいなコイツ)
「本当にいらないのか?」
「いらない」
「へぇ…残念だな。マリーから貰ったやつ少し分けてやろうと思ってたのに」
「なっ…!?」
ケルヴィンはがばりとギュスターヴの方を向く。
「そっかぁ~。いらないんならいいよな~」
ギュスターヴは包みを開き、綺麗な正方形に固められた小さなチョコレートを一つ口に放り込む。
「あっ!」
「欲しいのか?」
「うぐっ…」
「欲しいなら早く言わなきゃ無くなっちまうぞ~?」
「うぐぐぐ…」
マリーからのチョコレートは確かに欲しい、しかしこのままではギュスターヴの思うつぼである。
「しっかしマジで旨いなこのチョコ…」
(………仕方ない…ここは恥をしのんで…)
ケルヴィンはギュスターヴに頭を下げる。
「ギュスターヴ…すまんがそのチョコレート少し分けてくれ」
「あっ、悪い。もう全部食っちまった」
「なっ!?」
顔を上げればギュスターヴの片方の頬が膨らんでいた。恐らくそれが最後の一個であったのだろう。
「予想以上に旨くてさ…まぁ他のチョコやるから……」
「………う、うううう…」
ケルヴィンはあまりのショックに涙がどっと溢れ出た。
「っておい!?何も泣かなくたって…」
「悪かったな!」
「…あーもう、欲しいなら早く言えっつーの…全く」
ギュスターヴは面倒臭そうに頭を掻くと、ケルヴィンに近寄り、顎を掴んで口付ける。
「っ…!?」
そのキスは、とても甘い甘い味がした。
一体どの位の時間が過ぎたのか
もしかしたらとても短かったのかもしれないし、とても長かったのかもしれない。
「…っふぅ……」
ようやくギュスターヴは唇を離す。
「口に入れてたし元々柔らかいやつだったからかなり溶けたけど…多分味には問題ないと思うぞ」
「おっ…前な…!?だからって口移しで…っ」
「何だよ?お前が泣くからわざわざ食べさせてやったんだろうが」
ギュスターヴはぷいっと拗ねたように顔を背けた。
(ん…?)
ギュスターヴの頬が心無しか頬が紅潮している事に、ケルヴィンは気付く。
「もしかして、照れてるのか?」
「五月蝿い」
(……自分からしてきたくせに…全く、こいつは何をやっているんだか)
苦笑しつつも、ケルヴィンはそんなギュスターヴが何だか愛しくてたまらなくなった。
「ギュスターヴ」
「何だよ?何か文句が……っ!?」
今度はケルヴィンがギュスターヴに軽くキスをする。
「ありがとうな」
「…そう思うならもっとしろよ」
「はいはい、分かった分かった」
ケルヴィンはもう一度、今度はもっと深く口付けた。
(……あー)
このままあのチョコレートみたく溶けてしまえたならどんなにいいかと、熱に浮かされながらギュスターヴ考えた。
(本当はさっきのチョコは侍女から貰ったやつだなんて口が裂けても言えねぇな……)
ギュスターヴは心の中で呟く。
(ちょっとからかってやるだけのつもりだったのに、お前はいつだって俺の言葉を真っ直ぐに受け止めようとするから、フォローするのが大変だ)
それでも、そんな戯れ事に付き合うのが楽しくてしょうがない自分がいる事に、ギュスターヴは自嘲する。
(本当に馬鹿だよなぁ…こいつも俺も)
ケルヴィンは半ば呆れ顔でソファーでくつろぐギュスターヴに聞いた。
「何って…チョコに決まってんだろ?」
何を当たり前の事聞いているのかとでも言いたげな表情を浮かべ、ギュスターヴはケルヴィンを見る。
しかしケルヴィンの質問もこの状況からしてみれば当たり前なのだ。何せギュスターヴの部屋に出来たチョコの山はあまりにも量が多く、一体幾つあるのかすら分からないのだから。
「お前一体何人から貰ったんだ…」
「ん~多分80人以上は貰ったかな?」
「………ちゃんとお礼返せるのかそれ」
「レスリーとマリーにはクッキーでも返すさ」
「他は?」
「え?別にいいだろ」
「よくあるか!人の誠意を無駄にするなこの阿呆!!」
ケルヴィンはギュスターヴの襟元を掴むと豪快に揺さ振った。
「うぐっ…ちょっ、ケルヴィン…苦し……」
「はっ!す、すまん…私とした事が…」
ケルヴィンは申し訳なさそうに手を離す。
「けほっ……誠意ねぇ……そんな意図でくれた奴なんて多分ほとんどいないぞ」
「は?」
「差別されてた時の癖っつーのかな…目見たら何となく分かんだよ。腹に何か一物ある奴ってのは」
「あ…」
ケルヴィンは何か言いかけて、そのまま黙ってしまった。
(ああ、そうだ…こいつは人一倍、周囲の人間性を見るんだった…)
「大体が俺の側室とか…そんな感じの地位が欲しいってだけの奴等だろ…全く、あんな嘘だらけの愛の言葉囁かれたって嬉しくないのにな」
「…………」
「あ、お前がそんな悩む必要ないんだからな?」
「そうは言っても…」
「それよりせっかくこんなにチョコがあるんだしさ、お前も食えよ」
ギュスターヴは大量のチョコレートの包みをを引っ掻き回すと、一つの箱をケルヴィンに向かって差し出した。
「いや…私はいい」
「はっはぁ~ん…さてはお前ほとんど貰えなかったんだろ?」
「う…五月蝿いな!そんな事どうだっていいだろ!!」
ケルヴィンは顔を真っ赤にして怒鳴り散らし、そっぽを向く。
(図星かよ。単純っつーかやっぱ分かりやすいなコイツ)
「本当にいらないのか?」
「いらない」
「へぇ…残念だな。マリーから貰ったやつ少し分けてやろうと思ってたのに」
「なっ…!?」
ケルヴィンはがばりとギュスターヴの方を向く。
「そっかぁ~。いらないんならいいよな~」
ギュスターヴは包みを開き、綺麗な正方形に固められた小さなチョコレートを一つ口に放り込む。
「あっ!」
「欲しいのか?」
「うぐっ…」
「欲しいなら早く言わなきゃ無くなっちまうぞ~?」
「うぐぐぐ…」
マリーからのチョコレートは確かに欲しい、しかしこのままではギュスターヴの思うつぼである。
「しっかしマジで旨いなこのチョコ…」
(………仕方ない…ここは恥をしのんで…)
ケルヴィンはギュスターヴに頭を下げる。
「ギュスターヴ…すまんがそのチョコレート少し分けてくれ」
「あっ、悪い。もう全部食っちまった」
「なっ!?」
顔を上げればギュスターヴの片方の頬が膨らんでいた。恐らくそれが最後の一個であったのだろう。
「予想以上に旨くてさ…まぁ他のチョコやるから……」
「………う、うううう…」
ケルヴィンはあまりのショックに涙がどっと溢れ出た。
「っておい!?何も泣かなくたって…」
「悪かったな!」
「…あーもう、欲しいなら早く言えっつーの…全く」
ギュスターヴは面倒臭そうに頭を掻くと、ケルヴィンに近寄り、顎を掴んで口付ける。
「っ…!?」
そのキスは、とても甘い甘い味がした。
一体どの位の時間が過ぎたのか
もしかしたらとても短かったのかもしれないし、とても長かったのかもしれない。
「…っふぅ……」
ようやくギュスターヴは唇を離す。
「口に入れてたし元々柔らかいやつだったからかなり溶けたけど…多分味には問題ないと思うぞ」
「おっ…前な…!?だからって口移しで…っ」
「何だよ?お前が泣くからわざわざ食べさせてやったんだろうが」
ギュスターヴはぷいっと拗ねたように顔を背けた。
(ん…?)
ギュスターヴの頬が心無しか頬が紅潮している事に、ケルヴィンは気付く。
「もしかして、照れてるのか?」
「五月蝿い」
(……自分からしてきたくせに…全く、こいつは何をやっているんだか)
苦笑しつつも、ケルヴィンはそんなギュスターヴが何だか愛しくてたまらなくなった。
「ギュスターヴ」
「何だよ?何か文句が……っ!?」
今度はケルヴィンがギュスターヴに軽くキスをする。
「ありがとうな」
「…そう思うならもっとしろよ」
「はいはい、分かった分かった」
ケルヴィンはもう一度、今度はもっと深く口付けた。
(……あー)
このままあのチョコレートみたく溶けてしまえたならどんなにいいかと、熱に浮かされながらギュスターヴ考えた。
(本当はさっきのチョコは侍女から貰ったやつだなんて口が裂けても言えねぇな……)
ギュスターヴは心の中で呟く。
(ちょっとからかってやるだけのつもりだったのに、お前はいつだって俺の言葉を真っ直ぐに受け止めようとするから、フォローするのが大変だ)
それでも、そんな戯れ事に付き合うのが楽しくてしょうがない自分がいる事に、ギュスターヴは自嘲する。
(本当に馬鹿だよなぁ…こいつも俺も)
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