ほろ苦い口づけ
「毎年ながらすげぇよな…」
昼間は年中暑いはずの砂漠なのに、フィガロ城のこの部屋だけはとても涼しい。
その理由は──
「わざわざこんな日にきたのかセッツァー。まぁいい。折角だから君も食べろ」
エドガーの私室を埋め尽くす程のチョコの山だった。
「毎年思うけどお前一人じゃ食えないような量になるまで貰うなよ…少しは断ったらどうだ?」
セッツァーは足元に転がるチョコレートの箱を踏まないように気を付けながら、エドガーの元へと近寄る。
「だってせっかく皆が私を慕って渡してくれているというのに悪いじゃないか。レディを泣かせるような真似、私はやりたくないからな」
「だからってなぁ…食べ切るまでずっと溶けないようクーラーつけとく気かよ?」
「ああ」
「……バカだろお前」
「馬鹿で結構。それが私の生き方というものさ」
「へっ、そうかよ」
「そういえば君はチョコ貰ってないのか?」
「全部断った。ここにくれば嫌って程食えるの分かってたし。それに…」
「それに?」
「俺は本命の相手のがいいんでな」
「っ!?」
次の行動が読めたのかエドガーは思いっきりのけ反った。
掴み掛かろうとしたセッツァーの腕は空振りする。
「チッ…避けんなよ。最近こっちに寄ってなくてずいぶんご無沙汰なんだからたまには良いだろうがよ」
「駄目だ。明日はサウスフィガロまで行く予定があるんだ。君の相手などしてはいられない」
「大丈夫だって、酷くしねぇからよ」
「前にもそう言って立てなくなるくらいずっと続けて執務に支障をきたさせたのはどこのどいつだ!?」
「そんなに怒るなって…だったらキスだけ、な?」
「…まぁ、それくらいなら……」
「良いんだな?」
「あ、いや…やっぱりちょっと待っ…」
「待たねえよ」
「むぐっ!?」
これ以上ごねさせてたまるものかと言わんばかりにセッツァーはエドガーの顎をぐいと掴んで引き寄せ、噛み付くようなキスをした。
「ん…ぐぅっ!く…っ」
セッツァーは空いていたもう片方の手をエドガーのうなじへと回し、離れられぬようにすると、舌を強引にねじ込んで絡ませる。
「ふっ…うう…は、ふ…」
何分そうしていたか。
口内を散々好き勝手蹂躙され続け、酸欠で頭が回らなくなりだした頃、ようやくエドガーは解放された。
足元がおぼつかなくなったエドガーをセッツァーはそのまま近くのソファーに引き倒し、そのままその上に覆い被さる。
「ごちそうさん。旨かったぜ。チョコレート」
「っ…卑怯だ……」
「人聞きの悪い事言うなよ。キスまでならいいっていったのはそっちだろ?」
「だからってここまでする奴があるか!!」
「ここにいるけど?」
「堂々と言うな!」
「あ~…やっぱり無理だ」
「はぁっ!?」
「いや、俺の息子が元気になっちまってな」
「はあぁぁぁっ!!?」
「という訳で」
「え!?いや待っ…おい待て馬鹿っ…止めろおいっ!セッツァー!!おい!待てと言っているだろうがセッツァーーー!!!!」
次の日、腰痛で起き上がれないため用事をマッシュに託したエドガーの姿があったという。
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