一応そういう事で

「おいエドガー。俺今日誕生日だからなんか寄越せ」

宿屋にて、セッツァーはエドガーの部屋にずかずか入り込むなりそう言った。

「…それ言う為にわざわざ部屋まで来たのか」

「ああ、そうだが?」

「馬鹿なのか?」

エドガーは呆れたような眼差しでセッツァーを見る。

「つべこべ言わずにさっさと寄越せよ」

「追い剥ぎじゃないんだから物騒なセリフを吐くな。第一、当日になってからそんな事言われても都合良く用意してる訳が無いだろう」

「何だ?フィガロの国王陛下は仲間の誕生日も覚えて無かったのかよ?」

「失敬な。レディ達の誕生日なら記憶しているぞ?ただ男の生まれた日になんか興味ないから覚えて無いだけだ」

「相変わらずだなお前は…あーあ、期待してたんだけどな」

さもつまらなそうに、セッツァーは呟いた。

「お前の事だから俺の誕生日くらい覚えてくれてるもんだと思ったんだがな」

「……」

「ま、別にいいけどよ。邪魔したな」

セッツァーは踵を返し、ドアノブに手を掛ける。

「…ああもう。冗談だよ。忘れてたと言ったらどう反応するか試しただけだ。そんなあっさり引き下がるとは…ちゃんと用意しているさ。ほら」

そう言ってエドガーはセッツァーに向かって包みを投げた。

「やっぱりな。ブラフ張って正解だったぜ」

セッツァーは投げられたそれをキャッチし、にやりと意地の悪い笑みを浮かべた。

「…試したつもりが試されてたか。全く敵わないな」

「この手の事でギャンブラーに勝てるわけねぇだろ。それに信じてたしな。お前はこういうのを気にする性分だって」

「当たり前だろ。一応…そういう関係なんだから…」

エドガーは頬を紅潮させながら、恥ずかしげに呟く。

「顔真っ赤だぜ?フィガロ国王陛下」

「うるさいな。いいから開けてみろ」

「へいへいっと」

セッツァーが包みを開けてみれば、中にはシガレットケースと、そして目の部分がアメジストで出来た小さな鳥の飾りのあしらわれたピアスが入っていた。

「このシガレットケース、俺が欲しかったやつじゃねえか。どうして分かったんだ?」

「こないだの買い出しで君が興味深そうに見ていたからな。それとそのピアスは私が城の職人に頼んで作って貰った」

「へぇ…サンキューな。エドガー」

「どういたしまして。改めて誕生日おめでとう。セッツァー」

嬉しそうに笑うセッツァーに、エドガーもまた微笑んでみせる。

「ああ、そういえばセッツァー」

「ん?」

「アメジストって酒の酔い止め効果があるって言われてるらしいぞ」

「…!」

セッツァーの肩がびくりと揺れる。

「お前…まさかさっき態度がつっけんどん気味だったのってもしや…」

「ああそうだよ。君がこないだ泥酔して部屋にマッシュがいるのにも関わらず私の服を脱がせにかかったから腹いせにやったんだ」

「…ちゃんと次の日謝っただろ」

「謝っただけで済む問題だと思っているのか!?私がごまかすのにどれだけ苦労したと思ってるんだ!!?あれから二、三日マッシュとの関係がギクシャクして大変だったんだぞ!!」

エドガーは一気にまくし立てる。

「あー悪かったって…酒の馬鹿飲みはもうしねぇよ。約束する」

「本当だな?」

「ああ」

「次同じ事やったら飛空艇勝手に改造してやるからな」

「…肝に命じとく」

(俺のブラックジャックをこいつの城みたく変形可能とかにされちゃたまったもんじゃねぇからな……)

そんな訳で、セッツァーは暫くの間なるべく飲酒を控えるようになったという。
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