どうぞ甘いひとときを

「マッシュ。これやるよ」

そう言ってエドガーがマッシュに手渡したのは、綺麗にラッピングされた包みだった。
香ってくる匂いからそれがチョコレートであろう事はマッシュにも容易に想像出来た。

「兄貴…こういうのは女の子にやるべきじゃ…」

マッシュは困惑したような表情を浮かべる。

「いらないのか?」
「…いや、 いるけどさ。甘いの好きだし」
「良かった。受け取って貰えなかったらどうしようかと思ったよ」

マッシュがチョコを受け取るとエドガーは幸せそうに微笑む。

「でもさ兄貴…バレンタインのプレゼントって好きな人にあげる物だろ?毎年俺にまでくれる必要はないよ」
「おや?この世で一番大切な弟にあげちゃいけないなんて決まりもないだろう?」
「え…?ええと、それは、まあ……」

頬を赤らめるマッシュの姿が可笑しくて、エドガーは思わずくすくすと笑う。

「お…おい、笑わないでくれよ兄貴!」
「ああゴメン…それより食べてみてくれないか?」
「あ、うん…」

包みを開くと少し形の崩れた丸いチョコレートが入っていた。

(チョコ溶けちまったのかな?まぁここ砂漠だし仕方ないか)

一つ口に放り込むと、途端にふわりとほろ苦い風味が広がる

「……?」

暫くすると、甘酸っぱさが口内を満たした。

「中に入ってるのって…」
「ああ、ジャムだよ。外はほろ苦く中は甘くって感じでな」
「へ~…美味しいよコレ」
「喜んでくれて嬉しいよ。実はティナに作り方教えて貰ったんだ」
「え!?これって兄貴の手作りなのか?」
「どんなブランド品もその人の思いの詰まった手作りには叶わないってティナが言うからな」

エドガーは気恥ずかしそうに頬を掻く。

「まぁ…失敗して型崩れしてしまったが…」
「兄貴!!」
「うわっ!?」

マッシュは喜びを体で表わすかのようにエドガーに思い切り抱き付いた。

「ちょっとマッシュ…苦しい…」
「ありがとう兄貴…俺すっごく嬉しい」
「……良かった」

ふふ、と。二人して照れたように笑う。

「大好きだよ。レネー。愛してる」
「俺だってロニの事大好きだよ」






「……アレはどうするべきですかね」
「私に聞かないで頂戴」

たまたま通り掛かった大臣と神官長はその一部始終を眺め、ため息を吐いた。

「陛下とマッシュ様がこんなではフィガロの未来が少し不安だ…」
「仲睦まじいのは良い事ですが、流石にここまでとなると……一体どこで教育間違えてしまったのかしら…」

大臣と神官長の深いため息にも気付かず、エドガーとマッシュはいつまでも見つめあっていたという。
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