救出編
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「エステルーーー!!」
「リアーーー!!」
「おっさーーん、何処なのじゃーーー!」
必死に叫ぶリタ、カロル、パティの声が聞こえる
「どうじゃった?」
「こっちには見当たりませんでした」
「そう・・・」
「・・・・」
長老の所にやって来たクリティア族の女性は頬に手を当てて答えるとジュディスがありがとうと返事を返した
事が起きたのは数分前の事だった
ユーリ達は長老の隣の家で休ませてもらう事になった
リア達はリア達で話があるから、後で合流すると言って分かれ、残りのメンバーは長老の隣の家で話を纏めていた
その途中でレイヴンは話しについていけないと言って外に行き、少しだけ話をしていると急に大きな揺れがした
急いでその揺れの場所を調べに行くと、入り口にあった魔導器が動いていた
此処に来た時は動いてなかったのに・・・
先にこの場に来ていたセイとアスラによれば誰かが魔刻を持って来て、転送魔導器を動かしたらしい
だが、此処でふとこの場にいない人物に気が付いた
「セイ、リアはどうしたんだ?」
「エステル・・・エステルは何処?」
「レイヴンもいないよ」
ユーリ、リタ、アスラがそれぞれいない人物の名前を出す
「え? まさか・・・リア達が?」
「どういう事じゃ?」
「とにかく探すぞ」
「ええ。長老様、私達の仲間が街にいないか、みんなで探してもらえないかしら?」
「ふむ、良いじゃろ」
この場にいないリア、エステル、レイヴンを探す為にみんなそれぞれ思い当たる場所を探し始め、長老もミョルゾの街の人達も探しだし、セイはフキにも要請を頼んで一緒に探しだした
「どうしよう、ユーリ。リアもエステルもレイヴンも何処にもいないよ」
暫く探したが、リア達の姿は何処にもなかった
リアはアスラと連絡が取れるから直ぐに見つかるだろうと思ってた
けど、何故か繋がらなかった
リアと連絡が取れないと言う事はリアの身に何か遭った時か、何かに妨害されている時だけだと言う
エステルとレイヴンの気配も追ってもらったが二人の気配もなし
これは確実に何か遭ったとしか考えられない
「エステル、何処行っちゃったの・・・」
「これだけ探しても、アスラやフキが気配を追っても見つからないなんて・・・」
「確実に何か遭ったとしか考えられないな・・・」
「とにかく降りて探さなきゃ」
「降りてと言っても、世界は広いのじゃ。闇雲に探すのは無謀なのじゃ」
「こんな事ならリアに着いておけば良かった・・・」
「・・・・・」
ふと、ユーリは何かを思い出し眉を寄せた
(テムザ山でおっさんが言った事・・・。それに城の牢屋でおっさんと会った時・・・
あん時、おっさんはアレクセイに連れて行かれた・・・)
その途端、何か嫌な予感がした
(・・・っ! 何で今になって思い出す・・・)
「何か嫌な予感がしやがる」
「ああ・・・」
ユーリの言葉にセイもアスラもフキも何か嫌な予感を感たようだった
「早く追っ駆けよう!」
「気持ちは解るけれど、とにかく落ち着いて」
「あんた心配じゃないの?!」
「心配よ。だからこそ落ち着いて考えなきゃ、ね?」
「そ、そうね・・・。うん。解った・・・ごめん」
「何か良い方法はないか・・・」
「だったらミョルゾの主に聞いてみたら?」
「ミョルゾの主に?」
「ああ。始祖の隷長だったらエアルの乱れを探れるだろ」
「そう言う事か、ジュディス」
「ええ」
ジュディスは返事を返すと、ミョルゾの主にその場所を聞いた
ミョルゾの主である始祖の隷長にエアルの流れを追ってもらい、急いでヨームゲンに向かった
78.wirepuller and distinction
「これは・・・」
街に入ったユーリ達は目を疑った
「どうなってんの? 完全に廃墟だよ・・・?」
そこにあったのは、廃墟だった
「昨日今日ってものじゃないわ・・・もう何百年も経ってる傷み方よ」
「大火事があって灰になった・・・って訳でもなさそうじゃな」
前に着た時は緑豊かでのんびりとした街だったのが、今では緑もなく砂漠の中にある廃墟だった
「・・・あるべき姿に戻ったか」
「え?」
「静かに、誰かいるわ」
セイがぼそりと呟き、その意味をカロルが聞こうとしているとジュディスが誰かがいる事に気が付き、その方向を見る
「デューク・・・!」
そしてデュークの傍らにいたのはカドスの喉笛で見たあの魔物だったが、直ぐに何処かへ行ってしまった
「逃がしたか・・・」
途端、後ろから声が聞こえ振り返るとそこにはアレクセイと護衛の親衛隊の男が一人いた
「・・・!」
「時間が無い。残念だが、こうなればもはや止むを得んな」
「アレクセイ、何でこんなとこに・・・?」
「ほう、姫を追って来たか。良く此処が分かったな」
「エステルが何処にいるか知ってるの?!」
リタがアレクセイに近付いた途端、隣にいた騎士が槍を構えてリタを止めた
「な、何するんだよ!」
それを見てリタは後ずさり、カロルはその態度に声を上げるとアレクセイは鼻で笑ってユーリ達を見た
「何の冗談だ? 騎士団長さんよ」
「君達には感謝の言葉もない。君達のくだらない正義感のお陰で私は静かに事を運べた。古くは海賊アイフリード、そして今またバルボス、ラゴウ。皆それなに役に立ったが、諸君はそれを上回る素晴らしい働きだった。まったく見事な道化振りだったよ」
「・・・え? え?」
カロルは一人だけ状況が掴めていない様子でユーリとセイを見てまたアレクセイを見て、ユーリとセイは少し目を細めてアレクセイを見る
「だがもう道化の出番は終わりだ。そろそろ舞台から降りてもらいたい」
「そう言う事かよ・・・」
「何もかもてめぇが黒幕・・・? 笑えねぇぜ! アレクセイ!!」
ユーリはそのまま剣を抜き構えるとセイも剣を抜こうとしていた
「騎士団長!」
途端、アレクセイの後ろから聞き覚えのある声が聞こえた
「ふん。もう一人の道化も来たか・・・」
「フレン・・・」
「騎士団長! 何故です! 帝国騎士団の誇りと言われた貴方が、何故謀反など・・・」
「謀反ではない。真の支配者たるものの歩むべき覇道だ」
「ヨーデル様の信頼を裏切るのですか!」
必死に訴えるフレンに対しアレクセイは嘲笑うようにフレンを見る
「ヨーデル殿下・・・ああ、殿下にもご退場願わないとな」
「馬鹿な・・・」
「マイロード、準備が整ったようでーす」
フレンが悔しそうに顔を歪めていると少し高くなっている砂山の所にイエガーがいた
「ご苦労。では私は予定通りバクティオンへ行く。此処はお前に任せる・・・ヨーデルの始末もな」
「イエス、マイロード」
イエガーの返事を聞くとアレクセイはそのまま踵を返して歩いて行った
「待て! アレクセイ!」
「逃がすかよ!」
フレンは急いでアレクセイの後を追おうとし、ユーリも急いで出口に向かっているとイエガーが連れているあの双子がユーリ達の前に出て来た
「通さない」
「邪魔するのなら・・・」
「どきなさいよっ!」
後ろからジュディスとリタの怒鳴る声が聞こえる
それに応えるようにラピードとセイもユーリの後ろに来て構えた
「ユー達のプリンセスもバクティオン神殿でーす」
「なんだと!?」
「早く行かないと手遅れちゃうわよん」
イエガーとドロワットの言葉に反応していると、またいつものように煙玉を投げてユーリ達の前からいなくなった
「アレクセイとイエガーを追え!」
「はい!」
フレンの言葉を聞きウィチルはそのまま走り出したがソディアが来ない事に疑問を持って足を止めた
「アレクセイ・・・許せん、許せんのじゃ!」
「ユーリ、ボク等も! ・・・ユーリ・・・?」
ユーリはそのままじっとフレンを見ているとユーリの視線に気付いたのかフレンもカロル達もユーリを見る
「ユーリ・ローウェル、大人しく・・・」
ソディアはそこで言葉を切った
フレンが止めたのもあったが、何よりユーリの後ろにいたセイとアスラから威圧的なものを感じたからだろう
それはユーリとフレン、勿論カロル達にも伝わっていて、誰一人言葉を発さなかった
否、発せなかったと言う方が正しいだろう
今のセイとアスラは完全に怒りを露わにしている
それも今まで以上に威圧感を出していたからだった
「バクティオン神殿・・・ヒピオニア大陸、だね」
「ああ。確かエゴソーの森の近くにあったはずだ」
「そう・・なの?」
まだ威圧感を感じるのかアスラとセイの言葉に少しだけどもりがちになりながらカロルが聞くとセイとアスラは頷いた
「アレクセイが向かったってんならきっとエステルもリアいるわ!」
「情報が少ないし、行ってみるしかないわね」
「ああ」「うん」
頷いたセイとアスラだったがどことなく重たい面持ちだった
「なのじゃ! あの男、このままほっとく訳にはいかんのじゃ!」
セイ達の元にやって来たパティはいつも以上に強い口調で言う
「どうしたの、パティ・・・?」
「そう言えばあんた、アイフリードがどうとか言ってたけど・・・」
「あの男がすべての元凶なのじゃ。あいつを倒せば、リアもエステルも戻って来るのじゃ」
「でも、レイヴンは?」
「エステルとリアを渡してどっかに逃げちゃったんでしょ!」
「そんな・・・レイヴンがそんな事するはずがない・・・!」
「現にエステルとリアは攫われちゃってあのおっさんはいない! そう考えるのが・・・論理的でしょ!」
「彼も捕まったのかもしれないけどね」
「・・・とりあえず落ち着け」
「ちょっ、な・・・」
セイは軽く息を吐きリタを止めるとリタは喰って掛かろうとしたが、セイとアスラの視線の先を見て言葉を詰まらせ、カロル達もその先を追う
「・・・ユーリ」
フレンは目の前で自分を睨み付けているユーリに声を掛けるとフレンの前に行った
「・・・フレン、ちょっと顔貸せ」
「分かった、向こうで聞こう」
フレンの返事を聞くとユーリとフレンは踵を返して歩き出した
「・・・悪いけど、みんなはちょっとだけ離れててね」
「どういう事ですか?」
「・・・威圧感に潰されたくなかったら間を開けとけ、って事だ」
静かに言い放つアスラとセイだったが、また彼等から異常な威圧感を感じ、カロル達は少しだけ身を竦ませた
セイはアスラを連れたままユーリとフレンの側まで歩いて行き二人の顔が見える所で止まった
「「「「・・・・・」」」」
そして、四人の間に張り詰めた空気が流れ出す
カロル達はセイとアスラの忠告通り、少し離れた所で止まっていた
セイは軽く息を吐くとユーリとフレンに合図を送った
セイがこういう風にするのは昔から、側で見てるからお前等だけで話せ、という事だった
それを理解するとユーリは少し間を置いた後、静かに口を開いた
「お前、何してやがった? 騎士団で上に行って国を正すんじゃなかったのか! アレクセイにまんまと利用されやがって。ドンもベリウスもあの野郎の為に死んだってのか! 傍に居てまったく気付かなかったのかよ!?」
「すまない・・・」
「何故だ。ヨーデルがアレクセイを信用してたからか?」
「殿下は悪くない。全てアレクセイを信じた僕の責任だ」
「ノードポリカで聖核を欲しがったのもアレクセイの命令だからだろ」
「ああ・・・」
「話せよ、何が遭った。もう元騎士団長殿に気を遣う意味ねぇだろ」
フレンは一息吐き話し出した
「ヘリオードの軍事拠点化に、マンタイクでの住民迫害、キュモールの行動、更に帝国で禁止されている魔導器の新開発・・・全て騎士団長・・・いや、アレクセイの命令だった」
「立派な騎士様になったもんだな。国への忠節、たいしたモンだ」
「騎士団長は・・・アレクセイは昔はああじゃなかった! 君だって知ってるはずだ。正しい者が正しく生きて行ける。それがアレクセイの理想だった。だからこそ僕は・・・」
「それで自分のやるべき事を見失うようじゃ世話無いぜ」
「・・・・」
ユーリのその言葉にフレンは悔しそうに顔を歪め、ユーリは小さく息を吐いた
「リアもエステルも攫われちまったオレも偉そうな事言えた義理じゃねぇけどな」
「そこに関しては俺もアスラも、だけどな」
「・・・・」
言霊使いの故郷から戻って来てからと言うもの、リアの側には必ずセイとアスラがいた
理由はまだユーリ達も解ってはいないが、危険な目に遭わせない為だと言う事だけは感じ取れていた
「いや、それも元はといえば僕がアレクセイの本性を見抜けなかった所為だ。疑問を感じながらも騎士として命令を遂行する事に固執してしまった。僕の思慮の浅さが今回の事態を招いたんだ・・・!」
「フレン、リアはアレクセイに捕まったって事で良いの?」
「・・・ああ。実際に見た訳じゃないが、もう一人の姫を捕らえた。と話していたのを聞いた」
「「!」」
その言葉を聞いた途端、セイとアスラの表情が変わった
もう一人の姫、その言葉に皆疑問を持ったがフレンは目を閉じて決意を固めて答える
「僕は責任を取らないといけない。リアとエステリーゼ様は必ず救い出す」
「あん!?」
その言葉にユーリもソディアも驚いて声を上げる
「隊長! それじゃあヨーデル様はどうするんですか! 今、殿下の身に何か遭ったら、帝国は・・・」
「その通りだ。だからこそ我が隊の総力を上げてヨーデル様をお守りするんだ」
「ですが隊長は・・・!」
「頼む」
「・・・・」
「ったく・・・オレはお前にそういうけじめを付けさせたくて怒鳴ったワケじゃないっての。それにエステルを助けるのもリアを探し出して助けるのもオレ達凛々の明星だ」
「・・・なら、僕も入れてくれ。凛々の明星に」
「隊長!?」
「騎士がギルドにって、お前、冗談きついぜ」
「親衛隊がエステリーゼ様を連れ去るのを僕は阻止出来なかった。僕には彼女を助け出す義務がある」
「やめとけって。お前にギルドは合わねえよ。けど、一緒に来たいってんなら、好きにすりゃいい」
「ユーリ・・・!」
「けど、分かってんだろうな。お前の本当にすべき事」
「ああ。エステリーゼ様を助け次第、ヨーデル殿下の護衛に戻る。帝国を混乱に陥らせるような事にはさせない。すまない、ソディア、ウィチル。・・・ヨーデル様を頼む」
「・・・出来るだけ早くお戻り下さい。殿下にもそうお伝えします」
「解った」
「・・・・・」
ソディアはユーリを軽く睨んで踵を返してウィチルと共に走って行った
「ありがとう。ユーリ」
「お互いな。ちっと安心したぜ。久々にらしい所見れて、な」
その言葉を聞くとフレンもセイもアスラも薄く笑って、今度はセイがユーリとフレンを見た
「お前の話からすると、リアは別の所にいる感じだな」
「ああ。リアは他の場所にどうと言う話しをしているのを聞いたから、間違いないだろう」
「そうか・・・」
「セイ?」
言うとセイは踵を返した
「俺はこのままリアの行方を追う」
「え? でも」
「心配すんな。俺が抜けても今は心強い奴がいるだろ」
言ってセイはユーリとユーリの隣にいるフレンを見る
「こいつ等がいれば安心だ」
「「セイ・・・」」
ユーリとフレンは少しだけ安心したような嬉しそうな顔をした
セイはそれを見るとアスラへと視線を移す
「連絡取れるようにアスラは残してく」
「了解。こっちも解ったら連絡するよ」
「ああ」
「セイ、」
「・・・頼んだぜ」「・・・頼んだ」
ユーリとフレンはお互いに同じ事を言う
が、その言葉には強い思いが込められていた
「そっちこそ」
セイはそれを聞くとフキを呼び歩いて行った
「アレクセイ・・・彼が・・・ヘルメス式の技術を持ち出していたのね」
「ああ、良くも悪くも一つに繋がったって訳だ。良し! バクティオン神殿に行くぞ。エステルとレイヴンを助けてアレクセイのヤツをぶっ飛ばす!」
「ええ!」「うん!」「「了解」」「うむ」「ワン!」
(・・・リア、無事でいろよ・・・!)
(・・・リア、無事でいてくれ・・・!)
ユーリとフレンはリアの無事を祈り、握り拳を作りバクティオン神殿へと向かい出した
続く
あとがき
此処は・・・まああんま変わらずになるのは仕方ないですよねぇ~ι
まあともあれ、フレンがまたパーティに入ってくれた!
此処は箱版だと回復がカロル先生しかいかなったからフレンが居てくれてホント良かったよ!!
次は・・・バクティオン神殿か・・・
でもその前に・・・あっちも書かないとなぁ・・・
何処まで繋げられるか解りませんが、が、頑張りますよ!!
wirepuller and distinction:黒幕とケジメ
2010.09.05
「リアーーー!!」
「おっさーーん、何処なのじゃーーー!」
必死に叫ぶリタ、カロル、パティの声が聞こえる
「どうじゃった?」
「こっちには見当たりませんでした」
「そう・・・」
「・・・・」
長老の所にやって来たクリティア族の女性は頬に手を当てて答えるとジュディスがありがとうと返事を返した
事が起きたのは数分前の事だった
ユーリ達は長老の隣の家で休ませてもらう事になった
リア達はリア達で話があるから、後で合流すると言って分かれ、残りのメンバーは長老の隣の家で話を纏めていた
その途中でレイヴンは話しについていけないと言って外に行き、少しだけ話をしていると急に大きな揺れがした
急いでその揺れの場所を調べに行くと、入り口にあった魔導器が動いていた
此処に来た時は動いてなかったのに・・・
先にこの場に来ていたセイとアスラによれば誰かが魔刻を持って来て、転送魔導器を動かしたらしい
だが、此処でふとこの場にいない人物に気が付いた
「セイ、リアはどうしたんだ?」
「エステル・・・エステルは何処?」
「レイヴンもいないよ」
ユーリ、リタ、アスラがそれぞれいない人物の名前を出す
「え? まさか・・・リア達が?」
「どういう事じゃ?」
「とにかく探すぞ」
「ええ。長老様、私達の仲間が街にいないか、みんなで探してもらえないかしら?」
「ふむ、良いじゃろ」
この場にいないリア、エステル、レイヴンを探す為にみんなそれぞれ思い当たる場所を探し始め、長老もミョルゾの街の人達も探しだし、セイはフキにも要請を頼んで一緒に探しだした
「どうしよう、ユーリ。リアもエステルもレイヴンも何処にもいないよ」
暫く探したが、リア達の姿は何処にもなかった
リアはアスラと連絡が取れるから直ぐに見つかるだろうと思ってた
けど、何故か繋がらなかった
リアと連絡が取れないと言う事はリアの身に何か遭った時か、何かに妨害されている時だけだと言う
エステルとレイヴンの気配も追ってもらったが二人の気配もなし
これは確実に何か遭ったとしか考えられない
「エステル、何処行っちゃったの・・・」
「これだけ探しても、アスラやフキが気配を追っても見つからないなんて・・・」
「確実に何か遭ったとしか考えられないな・・・」
「とにかく降りて探さなきゃ」
「降りてと言っても、世界は広いのじゃ。闇雲に探すのは無謀なのじゃ」
「こんな事ならリアに着いておけば良かった・・・」
「・・・・・」
ふと、ユーリは何かを思い出し眉を寄せた
(テムザ山でおっさんが言った事・・・。それに城の牢屋でおっさんと会った時・・・
あん時、おっさんはアレクセイに連れて行かれた・・・)
その途端、何か嫌な予感がした
(・・・っ! 何で今になって思い出す・・・)
「何か嫌な予感がしやがる」
「ああ・・・」
ユーリの言葉にセイもアスラもフキも何か嫌な予感を感たようだった
「早く追っ駆けよう!」
「気持ちは解るけれど、とにかく落ち着いて」
「あんた心配じゃないの?!」
「心配よ。だからこそ落ち着いて考えなきゃ、ね?」
「そ、そうね・・・。うん。解った・・・ごめん」
「何か良い方法はないか・・・」
「だったらミョルゾの主に聞いてみたら?」
「ミョルゾの主に?」
「ああ。始祖の隷長だったらエアルの乱れを探れるだろ」
「そう言う事か、ジュディス」
「ええ」
ジュディスは返事を返すと、ミョルゾの主にその場所を聞いた
ミョルゾの主である始祖の隷長にエアルの流れを追ってもらい、急いでヨームゲンに向かった
78.wirepuller and distinction
「これは・・・」
街に入ったユーリ達は目を疑った
「どうなってんの? 完全に廃墟だよ・・・?」
そこにあったのは、廃墟だった
「昨日今日ってものじゃないわ・・・もう何百年も経ってる傷み方よ」
「大火事があって灰になった・・・って訳でもなさそうじゃな」
前に着た時は緑豊かでのんびりとした街だったのが、今では緑もなく砂漠の中にある廃墟だった
「・・・あるべき姿に戻ったか」
「え?」
「静かに、誰かいるわ」
セイがぼそりと呟き、その意味をカロルが聞こうとしているとジュディスが誰かがいる事に気が付き、その方向を見る
「デューク・・・!」
そしてデュークの傍らにいたのはカドスの喉笛で見たあの魔物だったが、直ぐに何処かへ行ってしまった
「逃がしたか・・・」
途端、後ろから声が聞こえ振り返るとそこにはアレクセイと護衛の親衛隊の男が一人いた
「・・・!」
「時間が無い。残念だが、こうなればもはや止むを得んな」
「アレクセイ、何でこんなとこに・・・?」
「ほう、姫を追って来たか。良く此処が分かったな」
「エステルが何処にいるか知ってるの?!」
リタがアレクセイに近付いた途端、隣にいた騎士が槍を構えてリタを止めた
「な、何するんだよ!」
それを見てリタは後ずさり、カロルはその態度に声を上げるとアレクセイは鼻で笑ってユーリ達を見た
「何の冗談だ? 騎士団長さんよ」
「君達には感謝の言葉もない。君達のくだらない正義感のお陰で私は静かに事を運べた。古くは海賊アイフリード、そして今またバルボス、ラゴウ。皆それなに役に立ったが、諸君はそれを上回る素晴らしい働きだった。まったく見事な道化振りだったよ」
「・・・え? え?」
カロルは一人だけ状況が掴めていない様子でユーリとセイを見てまたアレクセイを見て、ユーリとセイは少し目を細めてアレクセイを見る
「だがもう道化の出番は終わりだ。そろそろ舞台から降りてもらいたい」
「そう言う事かよ・・・」
「何もかもてめぇが黒幕・・・? 笑えねぇぜ! アレクセイ!!」
ユーリはそのまま剣を抜き構えるとセイも剣を抜こうとしていた
「騎士団長!」
途端、アレクセイの後ろから聞き覚えのある声が聞こえた
「ふん。もう一人の道化も来たか・・・」
「フレン・・・」
「騎士団長! 何故です! 帝国騎士団の誇りと言われた貴方が、何故謀反など・・・」
「謀反ではない。真の支配者たるものの歩むべき覇道だ」
「ヨーデル様の信頼を裏切るのですか!」
必死に訴えるフレンに対しアレクセイは嘲笑うようにフレンを見る
「ヨーデル殿下・・・ああ、殿下にもご退場願わないとな」
「馬鹿な・・・」
「マイロード、準備が整ったようでーす」
フレンが悔しそうに顔を歪めていると少し高くなっている砂山の所にイエガーがいた
「ご苦労。では私は予定通りバクティオンへ行く。此処はお前に任せる・・・ヨーデルの始末もな」
「イエス、マイロード」
イエガーの返事を聞くとアレクセイはそのまま踵を返して歩いて行った
「待て! アレクセイ!」
「逃がすかよ!」
フレンは急いでアレクセイの後を追おうとし、ユーリも急いで出口に向かっているとイエガーが連れているあの双子がユーリ達の前に出て来た
「通さない」
「邪魔するのなら・・・」
「どきなさいよっ!」
後ろからジュディスとリタの怒鳴る声が聞こえる
それに応えるようにラピードとセイもユーリの後ろに来て構えた
「ユー達のプリンセスもバクティオン神殿でーす」
「なんだと!?」
「早く行かないと手遅れちゃうわよん」
イエガーとドロワットの言葉に反応していると、またいつものように煙玉を投げてユーリ達の前からいなくなった
「アレクセイとイエガーを追え!」
「はい!」
フレンの言葉を聞きウィチルはそのまま走り出したがソディアが来ない事に疑問を持って足を止めた
「アレクセイ・・・許せん、許せんのじゃ!」
「ユーリ、ボク等も! ・・・ユーリ・・・?」
ユーリはそのままじっとフレンを見ているとユーリの視線に気付いたのかフレンもカロル達もユーリを見る
「ユーリ・ローウェル、大人しく・・・」
ソディアはそこで言葉を切った
フレンが止めたのもあったが、何よりユーリの後ろにいたセイとアスラから威圧的なものを感じたからだろう
それはユーリとフレン、勿論カロル達にも伝わっていて、誰一人言葉を発さなかった
否、発せなかったと言う方が正しいだろう
今のセイとアスラは完全に怒りを露わにしている
それも今まで以上に威圧感を出していたからだった
「バクティオン神殿・・・ヒピオニア大陸、だね」
「ああ。確かエゴソーの森の近くにあったはずだ」
「そう・・なの?」
まだ威圧感を感じるのかアスラとセイの言葉に少しだけどもりがちになりながらカロルが聞くとセイとアスラは頷いた
「アレクセイが向かったってんならきっとエステルもリアいるわ!」
「情報が少ないし、行ってみるしかないわね」
「ああ」「うん」
頷いたセイとアスラだったがどことなく重たい面持ちだった
「なのじゃ! あの男、このままほっとく訳にはいかんのじゃ!」
セイ達の元にやって来たパティはいつも以上に強い口調で言う
「どうしたの、パティ・・・?」
「そう言えばあんた、アイフリードがどうとか言ってたけど・・・」
「あの男がすべての元凶なのじゃ。あいつを倒せば、リアもエステルも戻って来るのじゃ」
「でも、レイヴンは?」
「エステルとリアを渡してどっかに逃げちゃったんでしょ!」
「そんな・・・レイヴンがそんな事するはずがない・・・!」
「現にエステルとリアは攫われちゃってあのおっさんはいない! そう考えるのが・・・論理的でしょ!」
「彼も捕まったのかもしれないけどね」
「・・・とりあえず落ち着け」
「ちょっ、な・・・」
セイは軽く息を吐きリタを止めるとリタは喰って掛かろうとしたが、セイとアスラの視線の先を見て言葉を詰まらせ、カロル達もその先を追う
「・・・ユーリ」
フレンは目の前で自分を睨み付けているユーリに声を掛けるとフレンの前に行った
「・・・フレン、ちょっと顔貸せ」
「分かった、向こうで聞こう」
フレンの返事を聞くとユーリとフレンは踵を返して歩き出した
「・・・悪いけど、みんなはちょっとだけ離れててね」
「どういう事ですか?」
「・・・威圧感に潰されたくなかったら間を開けとけ、って事だ」
静かに言い放つアスラとセイだったが、また彼等から異常な威圧感を感じ、カロル達は少しだけ身を竦ませた
セイはアスラを連れたままユーリとフレンの側まで歩いて行き二人の顔が見える所で止まった
「「「「・・・・・」」」」
そして、四人の間に張り詰めた空気が流れ出す
カロル達はセイとアスラの忠告通り、少し離れた所で止まっていた
セイは軽く息を吐くとユーリとフレンに合図を送った
セイがこういう風にするのは昔から、側で見てるからお前等だけで話せ、という事だった
それを理解するとユーリは少し間を置いた後、静かに口を開いた
「お前、何してやがった? 騎士団で上に行って国を正すんじゃなかったのか! アレクセイにまんまと利用されやがって。ドンもベリウスもあの野郎の為に死んだってのか! 傍に居てまったく気付かなかったのかよ!?」
「すまない・・・」
「何故だ。ヨーデルがアレクセイを信用してたからか?」
「殿下は悪くない。全てアレクセイを信じた僕の責任だ」
「ノードポリカで聖核を欲しがったのもアレクセイの命令だからだろ」
「ああ・・・」
「話せよ、何が遭った。もう元騎士団長殿に気を遣う意味ねぇだろ」
フレンは一息吐き話し出した
「ヘリオードの軍事拠点化に、マンタイクでの住民迫害、キュモールの行動、更に帝国で禁止されている魔導器の新開発・・・全て騎士団長・・・いや、アレクセイの命令だった」
「立派な騎士様になったもんだな。国への忠節、たいしたモンだ」
「騎士団長は・・・アレクセイは昔はああじゃなかった! 君だって知ってるはずだ。正しい者が正しく生きて行ける。それがアレクセイの理想だった。だからこそ僕は・・・」
「それで自分のやるべき事を見失うようじゃ世話無いぜ」
「・・・・」
ユーリのその言葉にフレンは悔しそうに顔を歪め、ユーリは小さく息を吐いた
「リアもエステルも攫われちまったオレも偉そうな事言えた義理じゃねぇけどな」
「そこに関しては俺もアスラも、だけどな」
「・・・・」
言霊使いの故郷から戻って来てからと言うもの、リアの側には必ずセイとアスラがいた
理由はまだユーリ達も解ってはいないが、危険な目に遭わせない為だと言う事だけは感じ取れていた
「いや、それも元はといえば僕がアレクセイの本性を見抜けなかった所為だ。疑問を感じながらも騎士として命令を遂行する事に固執してしまった。僕の思慮の浅さが今回の事態を招いたんだ・・・!」
「フレン、リアはアレクセイに捕まったって事で良いの?」
「・・・ああ。実際に見た訳じゃないが、もう一人の姫を捕らえた。と話していたのを聞いた」
「「!」」
その言葉を聞いた途端、セイとアスラの表情が変わった
もう一人の姫、その言葉に皆疑問を持ったがフレンは目を閉じて決意を固めて答える
「僕は責任を取らないといけない。リアとエステリーゼ様は必ず救い出す」
「あん!?」
その言葉にユーリもソディアも驚いて声を上げる
「隊長! それじゃあヨーデル様はどうするんですか! 今、殿下の身に何か遭ったら、帝国は・・・」
「その通りだ。だからこそ我が隊の総力を上げてヨーデル様をお守りするんだ」
「ですが隊長は・・・!」
「頼む」
「・・・・」
「ったく・・・オレはお前にそういうけじめを付けさせたくて怒鳴ったワケじゃないっての。それにエステルを助けるのもリアを探し出して助けるのもオレ達凛々の明星だ」
「・・・なら、僕も入れてくれ。凛々の明星に」
「隊長!?」
「騎士がギルドにって、お前、冗談きついぜ」
「親衛隊がエステリーゼ様を連れ去るのを僕は阻止出来なかった。僕には彼女を助け出す義務がある」
「やめとけって。お前にギルドは合わねえよ。けど、一緒に来たいってんなら、好きにすりゃいい」
「ユーリ・・・!」
「けど、分かってんだろうな。お前の本当にすべき事」
「ああ。エステリーゼ様を助け次第、ヨーデル殿下の護衛に戻る。帝国を混乱に陥らせるような事にはさせない。すまない、ソディア、ウィチル。・・・ヨーデル様を頼む」
「・・・出来るだけ早くお戻り下さい。殿下にもそうお伝えします」
「解った」
「・・・・・」
ソディアはユーリを軽く睨んで踵を返してウィチルと共に走って行った
「ありがとう。ユーリ」
「お互いな。ちっと安心したぜ。久々にらしい所見れて、な」
その言葉を聞くとフレンもセイもアスラも薄く笑って、今度はセイがユーリとフレンを見た
「お前の話からすると、リアは別の所にいる感じだな」
「ああ。リアは他の場所にどうと言う話しをしているのを聞いたから、間違いないだろう」
「そうか・・・」
「セイ?」
言うとセイは踵を返した
「俺はこのままリアの行方を追う」
「え? でも」
「心配すんな。俺が抜けても今は心強い奴がいるだろ」
言ってセイはユーリとユーリの隣にいるフレンを見る
「こいつ等がいれば安心だ」
「「セイ・・・」」
ユーリとフレンは少しだけ安心したような嬉しそうな顔をした
セイはそれを見るとアスラへと視線を移す
「連絡取れるようにアスラは残してく」
「了解。こっちも解ったら連絡するよ」
「ああ」
「セイ、」
「・・・頼んだぜ」「・・・頼んだ」
ユーリとフレンはお互いに同じ事を言う
が、その言葉には強い思いが込められていた
「そっちこそ」
セイはそれを聞くとフキを呼び歩いて行った
「アレクセイ・・・彼が・・・ヘルメス式の技術を持ち出していたのね」
「ああ、良くも悪くも一つに繋がったって訳だ。良し! バクティオン神殿に行くぞ。エステルとレイヴンを助けてアレクセイのヤツをぶっ飛ばす!」
「ええ!」「うん!」「「了解」」「うむ」「ワン!」
(・・・リア、無事でいろよ・・・!)
(・・・リア、無事でいてくれ・・・!)
ユーリとフレンはリアの無事を祈り、握り拳を作りバクティオン神殿へと向かい出した
続く
あとがき
此処は・・・まああんま変わらずになるのは仕方ないですよねぇ~ι
まあともあれ、フレンがまたパーティに入ってくれた!
此処は箱版だと回復がカロル先生しかいかなったからフレンが居てくれてホント良かったよ!!
次は・・・バクティオン神殿か・・・
でもその前に・・・あっちも書かないとなぁ・・・
何処まで繋げられるか解りませんが、が、頑張りますよ!!
wirepuller and distinction:黒幕とケジメ
2010.09.05