救出編
夢主名変更
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頂上に着くとやはりこちらも先程と同じく十分な警備でそれなりに時間は掛かったものの、彼等を退く事が出来、私達は魔導器の所へ移動した
「・・・どうだ、リタ」
「案の定、こっちにも術式暗号が掛かってるわ」
「解けそうか?」
「死ぬ気でやるって言ったでしょ。こうなったらミョルゾ行く為の条件とかもう関係ないわ。騎士団の奴等の手にこの子そのまま残すなんて絶対出来ないんだから」
そう言うとリタはプログラムを開き、暗号解読を始めた
その目には炎 が灯っていた
「じゃ、そっちは任せたよ!」
「あら、何処行くの? カロル」
「さっきみたいにまた親衛隊が来るといけないから、下で見張ってる!」
「じゃあ、私もお手伝いさせてもらうわ」
「うちも行く」
「じゃ、俺も行くかな」
「ボクも行くよ」
カロルの言葉にジュディス、パティ、兄さん、アスラと続いて行く
「パティ、元気取り戻したみたいですね」
「うん。安心した」
「にしても・・・何か、みんな妙にやる気でコワイわ」
「・・・リアとユーリの影響ですよ」
「え? 私達?」
「とりあえずオレ達はこっちで待機だな」
「・・・当の本人達はいたってクールなんだが」
「「?」」
「・・・ですね」
ユーリと顔見合わせ疑問符を出していると、エステルとレイヴンもリタの方に来て解除の様子を見守っていた
時間が経つに連れて皆、場所を変えたり見張りをしたりしていたがエステルだけはずっとリタの隣にいた
「そう簡単には解けませんってか・・・?」
「親衛隊つったか? 結局、連中、この魔導器で何をするつもり・・・」
途端、下からガシャガシャと鎧の音が沢山聞こえだした
「えいっ・・・」「ぐわぁあっ・・・」
「騎士団戻って来た・・・!」
カロルが走って来て戻って来てその後にジュディスと兄さんも戻って来た
「此処は死守するぞ」
ユーリの言葉にリタ以外は全員、武器を構えて騎士団に向かって行った
「やぁっ!!」
「ほいなっと!」
「・・・休ませてくれないみたいね」
「う、うん・・・こっちがバテるのを待ってるんだ・・・」
次から次へとやって来る親衛隊
下にはジュディス、兄さん、アスラがいてその少し上にカロルとレイヴン、そして頂上に近い所には私とユーリとエステルがいた
「はあぁっ!」
「エステル、リタの様子は!」
「リタ! 何を!」
私はエステルにリタの様子を頼むと急にそう声が聞こえ上を見るとリタは詠唱を唱え始めていた
「もうこいつ壊して・・・! そいつ等ぶっ倒す!」
「リタ・・・そんな、どうして!?」
「もう時間掛けていられないでしょ! だってこのままじゃあんた等が・・・」
「リタ・・・」
「私達が倒される、そう言いたいの? 貴女は私を、私達を信用出来ないの? 死ぬ気でやるんでしょ?」
「生憎とこいつ等に倒される程俺等はヤワじゃねえよ」
「わたし達、負けませんから。リタ、その魔導器を助けてあげて下さい」
「ああ、頑張るのじゃ! 此処はうちらで絶対守る! だから! 頑張れ!!」
「リタ、こっちは私達に任せて」
「あんた達・・・」
そう言うとリタは詠唱と構えをやめて、エステルの方に向き合って叫んだ
「・・・解ったわよ! 死ぬ気でやるってやるわよ。その代わり、あんた等も死ぬ気でやんなさいよ!」
「了解」
「はあ・・・やれやれ、んじゃま・・・死ぬ気でやりますか」
「輝いてる若人の仲間入りか?」
「みたいね。とはいえ、こいつは・・・なかなかしんどいね」
「軽口叩けるうちはまだ大丈夫だろ」
「いきなり前言撤回したくなってきた~」
「ちょっと遊んでないで、戦って!!」
「「了解」」
次々に向かって来る騎士団を頂上に上がらせまいと、私達は守備を固めて戦い続けた
「あともう少し・・・」
「・・・止まったわっ!」
騎士団の数もだいぶ減り残っている人数を数えていると、頂上からリタの嬉しそうな声が聞こえた
「流石リタ!」
「あらら・・・やったじゃない」
「・・・騎士団、引き上げて行くみたいね」
私は下にいる騎士団の様子を見てそう告げるとユーリ達もその様子を見た
「魔導器が止まったから? 何だったのかしら、彼等の目的は」
「まあ良いさ、とにかくこれでトートとの約束は果たした。ジュディ、頼む」
「ええ」
私達は武器を収めてそのまま頂上へ移動した
そして全員揃ったのを確認するとジュディスは私達の前に出て、鐘を鳴らし始める
辺りには鐘の音が鳴り響き、私達はその様子を暫く見ていた
すると突然、何か不思議な力を感じ私達は空を見るとそこに不思議なモノが現れた
「あ、あ、あ・・・」
「なんだ、ありゃ・・・!!」
これにはこの場にいた全員が驚いた
「扉が開いた・・・あれがミョルゾ。クリティア族の故郷よ」
「・・・あれが・・・」
「こりゃあ・・・えらいもんだ」
「海底に咲くタンポポよりも・・・予想外、なのじゃ・・・」
空に現れたモノ、それは大きなクラゲみたいなモノだった
そしてその中に古代の建物っぽい物が見えた
長時間扉を開けておいてはもらえないらしく、私達は直ぐにフィエルティア号に乗り、バウルでミョルゾを目指した
76.クリティア族の街 ミョルゾ
「まさか飛んでる街とはねぇ」
フィエルティア号に乗り込み、バウルで空を飛んだ私達は目の前の巨大なモノに目を向ける
「それ以前に、あのばかでかいの何!? 生物みたいだけど・・・」
「ふわふわクラゲさんじゃ・・・」
「あれも始祖の隷長だそうよ。話をした事はないけど」
「始祖の隷長!? それがなんで街を丸ごと飲み込んでんだ?」
「さあ、そこまでは知らないわ」
「こんな街があるなんて、まったく知りませんでした」
「気が遠くなる程長い間、外界との接触を断ってきた街だからね、ミョルゾは」
「私達と一緒、ね」
ジュディスの言葉に肩に乗っているアスラと隣にいる兄さんだけに聞こえる声で言うと小さく頷いた
言霊使いの故郷でクリティア族も言霊使いと同じように何処かに隠れ住んでいると言うのは聞いていた
言霊使いもクリティア族と同じように古い一族であり、隠さなくてはならない事も多いから同じような環境である私達はともかく、他のみんなは受け入れてもらえるのだろうか?
(ジュディスとバウルがいるから心配はないと思うけど・・・)
そう思っているとバウルがミョルゾの中へと入った
ミョルゾに到着した私達は辺りを見渡した
長い道の向こうに大きな扉が見え、その向こうには入って来る時にも見えた街が見えた
「何か、不思議な景色だよね」
「ちょっと、あれ・・・!」
リタが言う方を見ると長い道からクリティア族が私達の方へと歩いて来ていた
クリティア族の人達はぞろぞろと私達の方に来ると近くにいたリタとカロルとパティの周りを囲むようにして止まった
「か、歓迎されてない?」
「こりゃ驚いた。本当に外から人がやって来たぞ!」
「あら、まあまあ、ミョルゾを呼んだのは貴方達?」
「おやおや? これはまた妙な感じだ。変わった飾りを着けてるね」
「ちょっとあんた等、いい加減にしなさいよ」
次々にやって来ては自分達を見て口々に言うクリティア族の人達にリタは少し戸惑いながら言うが、クリティア族の人達は気にした様子なく言葉を続ける
「貴女みたいな小さな子がどうやって此処に来たの?」
「あんた、言われてるわよ」
「あぅ・・・?」
「リタっちもでしょ」
すかさずツッコむレイヴンだったがそれはバウルを見ていたクリティア族の男性の言葉にかき消される
「この魔物ってひょっとして始祖の隷長かい?」
「バウルよ。忘れてしまったの?」
「あら、貴女、何年か前に地上に降りた・・・」
「・・・確か、名前は、ジュディス、そうジュディスよ。何かする事があったのよね、それで・・・」
「もう良いかしら? 長老様に会いたいのだけれど」
「そりゃ勿論、好きにすると良い」
「また散歩してるかもしれないけどね」
そう言うとクリティア族の人達は戻って行った
「何か、おかしな連中だな」
「ああ言うのを失礼って言うのよ」
「リタが言うんだ」
リタはそのままカロルの頭を叩き、ジュディスは少し呆れたような口調で言う
「基本的にクリティア族ってああいう人達なの」
「ああいう、人」
「明るくて物怖じしない。楽天的で楽観的。良くも悪くも、ね」
「マイペースでのんびり屋でもあるよね」
「そうとも言うわね」
「・・・地上に住んでるクリティアもあんな感じじゃ」
「人間と一緒に住んでる分、地上のクリティア族の方が少しすれてるって感じかね」
「で、長老ってのもそんな感じなのか?」
「なんて言うか・・・まさにおかしな人の長老って感じかしら?」
「何か凄い人っぽいね・・・色んな意味で・・・」
「会ってみてのお楽しみだな」
「うん。じゃあ行ってみようか」
そう言って私達はこの長い坂を登り出した
「それにしても本当に幻想的で綺麗な所ね」
「リアは気に入ったみたいね」
「他の所とは雰囲気が違うからかな。ジュディスは此処で育ったんでしょ」
「ええ。子供の頃はね」
「でも前に話してくれた時は少しつまらかなったって言ってなかった?」
「そうね。ああ言った人達ばかりだから、かしらね。良く変わった子、って言われていたし」
「学者肌が多いからジュディスみたいに訓練してる奴がいなかったから、だろ」
「そうとも言うわね」
兄さんの言葉にジュディスは小さく笑って答えた
確かにクリティア族で戦っている人はジュディスしか見た事ないし、色んな意味で他の人から見れば珍しかったかもしれない
皆それぞれ話をしているうちに坂を上り、目の前には大きな扉とその近くに今は使われていない魔導器が何台かあった
それを横目に見ているとジュディスが扉を開け、中に入り私達もその後に続いた
扉を開き進んで行くと段々と街が見えてきた
「やっと街に着いたね」
「こんな所に街があるなんて驚きなのじゃ」
辺りを見ているとリタは近くにあった魔導器に目が止まりじっとそれを見つめた
「あたしの知らない魔導器が沢山ある・・・」
「魔導器を作った民・・・どうやら本当って事か」
「・・・そうね、こんな魔導器を見せられればその話も信じられるわ」
「お嬢ちゃんの力を何とかする方法、此処で案外さらっと見つかったりして」
「そう・・・だったら、良いんですが・・・」
「・・・動いてないね」
「魔刻がない。筐体 だけだわ」
「この街は魔導器を捨てたの。此処にあるのはみんな大昔のガラクタよ」
「どういう事?」
「それがワシ等の選んだ生き方だからじゃよ」
魔導器をじっと見ていると老人の声が耳に入り、振り向くと声の主と思われる老人が私達の所にやって来た
「お久しぶりね。長老様」
「外が騒がしいと思えば、おぬしだったのか。戻ったんじゃの」
「この子達は私と一緒に旅をしている人達」
「ふむ。・・・そちらは言霊使いと式神か?」
「ええ」
長老は私と兄さんとアスラを見るとそう言い、私と兄さんは頷いた
「まだ生存しておったのじゃな」
「ちゃんとした使いはリアとセイぐらいだろうけどね」
「リア達・・・いえ、言霊使いの事ご存じなんです?」
「言霊使いもワシ等と一緒で古い一族じゃからな・・・おや?」
長老はふとユーリの腕にある武醒魔導器に目が止まった
「これは・・・魔導器ですな。もしや使ってなさる?」
「ああ、武醒魔導器を使ってる」
「ふーむ。ワシ等と同様、地上の者ももう魔導器を使うのをやめたのかと思うていたが・・・」
「此処の魔導器も特別な術式だから使ってないんです?」
「魔導器に特別も何もないじゃろ。そもそも魔導器とは聖核を砕きその欠片に術式を施して魔刻とし、エアルを取り込む事により・・・」
「ちょっ! 魔刻が聖核を砕いたものって?!」
「左様、そう言われておる。聖核の力はそのままでは強すぎたそうな。それでなくてもいかなる宝石よりも貴重な石じゃ。だから砕き術式を刻む事で力を抑え、同時に数を増やしたんじゃな。魔刻とはそうして作られたものと伝えられておる」
「・・・・・」
長老の話しを聞いて私達は少しだけ黙ってしまった
「・・・皮肉な話だな」
「うん・・・魔導器を嫌う始祖の隷長の生み出す聖核が、魔導器を作り出すのに必要だなんて・・・」
「フェローが聖核の話をしなかったのは触れたくなかったから・・・かもねぇ」
この事は故郷に戻った時に兄さんとアスラとフキから聞かされた事だった
だから以前、アーセルム号で橙明の核晶の事を聞かれた時にアスラは言葉を濁したのだった
「長老様。もっと色々聞かせてもらいたいの」
「オレ達は魔導器が大昔にどんな役割を演じたか調べているんだ。もしそれが災いを呼んだのなら、どうやってそれを収めたのかも。ミョルゾには伝承が残ってるんだろ? それを教えてくれないか」
「ふむ。いいじゃろ。此処よりワシの家にうってつけのものがある。勝手に入って待ってなされ」
長老はそう告げるとそのまま何処かへと歩いて行き出した
「おいおい、何処行くのよ」
「日課の散歩の途中なのでな。もう少ししたら戻るわい」
そして長老はそのまま街の方へと歩いて行った
「・・・・」
「ホントにマイペースだな」
「うん・・・」
「聖核、魔導器、エアルの乱れ、始祖の隷長・・・色々繋がって来やがった」
「伝承ってのを聞いたらもっと色々繋がってくるかも」
「長老様の家は屋根の色が違うあの大きな建物よ。パティ、行くわよ」
「おう。行くのじゃ」
そう言うとジュディスを先頭に私達は長老の家を目指し歩き出した
トクン・・・
「・・・?」
「・・リア、どうかした?」
「ううん、なんでも」
一瞬だけど、何故か心臓が妙に脈打った感じがしたけどその後は何もなかったからそのままみんなの後を追った
続く
あとがき
ミョルゾ到着~
次回はいよいよ満月の子の謎が解るかな?
次書きたいので今回は後書き短く!!ww
2010.09.05
「・・・どうだ、リタ」
「案の定、こっちにも術式暗号が掛かってるわ」
「解けそうか?」
「死ぬ気でやるって言ったでしょ。こうなったらミョルゾ行く為の条件とかもう関係ないわ。騎士団の奴等の手にこの子そのまま残すなんて絶対出来ないんだから」
そう言うとリタはプログラムを開き、暗号解読を始めた
その目には
「じゃ、そっちは任せたよ!」
「あら、何処行くの? カロル」
「さっきみたいにまた親衛隊が来るといけないから、下で見張ってる!」
「じゃあ、私もお手伝いさせてもらうわ」
「うちも行く」
「じゃ、俺も行くかな」
「ボクも行くよ」
カロルの言葉にジュディス、パティ、兄さん、アスラと続いて行く
「パティ、元気取り戻したみたいですね」
「うん。安心した」
「にしても・・・何か、みんな妙にやる気でコワイわ」
「・・・リアとユーリの影響ですよ」
「え? 私達?」
「とりあえずオレ達はこっちで待機だな」
「・・・当の本人達はいたってクールなんだが」
「「?」」
「・・・ですね」
ユーリと顔見合わせ疑問符を出していると、エステルとレイヴンもリタの方に来て解除の様子を見守っていた
時間が経つに連れて皆、場所を変えたり見張りをしたりしていたがエステルだけはずっとリタの隣にいた
「そう簡単には解けませんってか・・・?」
「親衛隊つったか? 結局、連中、この魔導器で何をするつもり・・・」
途端、下からガシャガシャと鎧の音が沢山聞こえだした
「えいっ・・・」「ぐわぁあっ・・・」
「騎士団戻って来た・・・!」
カロルが走って来て戻って来てその後にジュディスと兄さんも戻って来た
「此処は死守するぞ」
ユーリの言葉にリタ以外は全員、武器を構えて騎士団に向かって行った
「やぁっ!!」
「ほいなっと!」
「・・・休ませてくれないみたいね」
「う、うん・・・こっちがバテるのを待ってるんだ・・・」
次から次へとやって来る親衛隊
下にはジュディス、兄さん、アスラがいてその少し上にカロルとレイヴン、そして頂上に近い所には私とユーリとエステルがいた
「はあぁっ!」
「エステル、リタの様子は!」
「リタ! 何を!」
私はエステルにリタの様子を頼むと急にそう声が聞こえ上を見るとリタは詠唱を唱え始めていた
「もうこいつ壊して・・・! そいつ等ぶっ倒す!」
「リタ・・・そんな、どうして!?」
「もう時間掛けていられないでしょ! だってこのままじゃあんた等が・・・」
「リタ・・・」
「私達が倒される、そう言いたいの? 貴女は私を、私達を信用出来ないの? 死ぬ気でやるんでしょ?」
「生憎とこいつ等に倒される程俺等はヤワじゃねえよ」
「わたし達、負けませんから。リタ、その魔導器を助けてあげて下さい」
「ああ、頑張るのじゃ! 此処はうちらで絶対守る! だから! 頑張れ!!」
「リタ、こっちは私達に任せて」
「あんた達・・・」
そう言うとリタは詠唱と構えをやめて、エステルの方に向き合って叫んだ
「・・・解ったわよ! 死ぬ気でやるってやるわよ。その代わり、あんた等も死ぬ気でやんなさいよ!」
「了解」
「はあ・・・やれやれ、んじゃま・・・死ぬ気でやりますか」
「輝いてる若人の仲間入りか?」
「みたいね。とはいえ、こいつは・・・なかなかしんどいね」
「軽口叩けるうちはまだ大丈夫だろ」
「いきなり前言撤回したくなってきた~」
「ちょっと遊んでないで、戦って!!」
「「了解」」
次々に向かって来る騎士団を頂上に上がらせまいと、私達は守備を固めて戦い続けた
「あともう少し・・・」
「・・・止まったわっ!」
騎士団の数もだいぶ減り残っている人数を数えていると、頂上からリタの嬉しそうな声が聞こえた
「流石リタ!」
「あらら・・・やったじゃない」
「・・・騎士団、引き上げて行くみたいね」
私は下にいる騎士団の様子を見てそう告げるとユーリ達もその様子を見た
「魔導器が止まったから? 何だったのかしら、彼等の目的は」
「まあ良いさ、とにかくこれでトートとの約束は果たした。ジュディ、頼む」
「ええ」
私達は武器を収めてそのまま頂上へ移動した
そして全員揃ったのを確認するとジュディスは私達の前に出て、鐘を鳴らし始める
辺りには鐘の音が鳴り響き、私達はその様子を暫く見ていた
すると突然、何か不思議な力を感じ私達は空を見るとそこに不思議なモノが現れた
「あ、あ、あ・・・」
「なんだ、ありゃ・・・!!」
これにはこの場にいた全員が驚いた
「扉が開いた・・・あれがミョルゾ。クリティア族の故郷よ」
「・・・あれが・・・」
「こりゃあ・・・えらいもんだ」
「海底に咲くタンポポよりも・・・予想外、なのじゃ・・・」
空に現れたモノ、それは大きなクラゲみたいなモノだった
そしてその中に古代の建物っぽい物が見えた
長時間扉を開けておいてはもらえないらしく、私達は直ぐにフィエルティア号に乗り、バウルでミョルゾを目指した
76.クリティア族の街 ミョルゾ
「まさか飛んでる街とはねぇ」
フィエルティア号に乗り込み、バウルで空を飛んだ私達は目の前の巨大なモノに目を向ける
「それ以前に、あのばかでかいの何!? 生物みたいだけど・・・」
「ふわふわクラゲさんじゃ・・・」
「あれも始祖の隷長だそうよ。話をした事はないけど」
「始祖の隷長!? それがなんで街を丸ごと飲み込んでんだ?」
「さあ、そこまでは知らないわ」
「こんな街があるなんて、まったく知りませんでした」
「気が遠くなる程長い間、外界との接触を断ってきた街だからね、ミョルゾは」
「私達と一緒、ね」
ジュディスの言葉に肩に乗っているアスラと隣にいる兄さんだけに聞こえる声で言うと小さく頷いた
言霊使いの故郷でクリティア族も言霊使いと同じように何処かに隠れ住んでいると言うのは聞いていた
言霊使いもクリティア族と同じように古い一族であり、隠さなくてはならない事も多いから同じような環境である私達はともかく、他のみんなは受け入れてもらえるのだろうか?
(ジュディスとバウルがいるから心配はないと思うけど・・・)
そう思っているとバウルがミョルゾの中へと入った
ミョルゾに到着した私達は辺りを見渡した
長い道の向こうに大きな扉が見え、その向こうには入って来る時にも見えた街が見えた
「何か、不思議な景色だよね」
「ちょっと、あれ・・・!」
リタが言う方を見ると長い道からクリティア族が私達の方へと歩いて来ていた
クリティア族の人達はぞろぞろと私達の方に来ると近くにいたリタとカロルとパティの周りを囲むようにして止まった
「か、歓迎されてない?」
「こりゃ驚いた。本当に外から人がやって来たぞ!」
「あら、まあまあ、ミョルゾを呼んだのは貴方達?」
「おやおや? これはまた妙な感じだ。変わった飾りを着けてるね」
「ちょっとあんた等、いい加減にしなさいよ」
次々にやって来ては自分達を見て口々に言うクリティア族の人達にリタは少し戸惑いながら言うが、クリティア族の人達は気にした様子なく言葉を続ける
「貴女みたいな小さな子がどうやって此処に来たの?」
「あんた、言われてるわよ」
「あぅ・・・?」
「リタっちもでしょ」
すかさずツッコむレイヴンだったがそれはバウルを見ていたクリティア族の男性の言葉にかき消される
「この魔物ってひょっとして始祖の隷長かい?」
「バウルよ。忘れてしまったの?」
「あら、貴女、何年か前に地上に降りた・・・」
「・・・確か、名前は、ジュディス、そうジュディスよ。何かする事があったのよね、それで・・・」
「もう良いかしら? 長老様に会いたいのだけれど」
「そりゃ勿論、好きにすると良い」
「また散歩してるかもしれないけどね」
そう言うとクリティア族の人達は戻って行った
「何か、おかしな連中だな」
「ああ言うのを失礼って言うのよ」
「リタが言うんだ」
リタはそのままカロルの頭を叩き、ジュディスは少し呆れたような口調で言う
「基本的にクリティア族ってああいう人達なの」
「ああいう、人」
「明るくて物怖じしない。楽天的で楽観的。良くも悪くも、ね」
「マイペースでのんびり屋でもあるよね」
「そうとも言うわね」
「・・・地上に住んでるクリティアもあんな感じじゃ」
「人間と一緒に住んでる分、地上のクリティア族の方が少しすれてるって感じかね」
「で、長老ってのもそんな感じなのか?」
「なんて言うか・・・まさにおかしな人の長老って感じかしら?」
「何か凄い人っぽいね・・・色んな意味で・・・」
「会ってみてのお楽しみだな」
「うん。じゃあ行ってみようか」
そう言って私達はこの長い坂を登り出した
「それにしても本当に幻想的で綺麗な所ね」
「リアは気に入ったみたいね」
「他の所とは雰囲気が違うからかな。ジュディスは此処で育ったんでしょ」
「ええ。子供の頃はね」
「でも前に話してくれた時は少しつまらかなったって言ってなかった?」
「そうね。ああ言った人達ばかりだから、かしらね。良く変わった子、って言われていたし」
「学者肌が多いからジュディスみたいに訓練してる奴がいなかったから、だろ」
「そうとも言うわね」
兄さんの言葉にジュディスは小さく笑って答えた
確かにクリティア族で戦っている人はジュディスしか見た事ないし、色んな意味で他の人から見れば珍しかったかもしれない
皆それぞれ話をしているうちに坂を上り、目の前には大きな扉とその近くに今は使われていない魔導器が何台かあった
それを横目に見ているとジュディスが扉を開け、中に入り私達もその後に続いた
扉を開き進んで行くと段々と街が見えてきた
「やっと街に着いたね」
「こんな所に街があるなんて驚きなのじゃ」
辺りを見ているとリタは近くにあった魔導器に目が止まりじっとそれを見つめた
「あたしの知らない魔導器が沢山ある・・・」
「魔導器を作った民・・・どうやら本当って事か」
「・・・そうね、こんな魔導器を見せられればその話も信じられるわ」
「お嬢ちゃんの力を何とかする方法、此処で案外さらっと見つかったりして」
「そう・・・だったら、良いんですが・・・」
「・・・動いてないね」
「魔刻がない。
「この街は魔導器を捨てたの。此処にあるのはみんな大昔のガラクタよ」
「どういう事?」
「それがワシ等の選んだ生き方だからじゃよ」
魔導器をじっと見ていると老人の声が耳に入り、振り向くと声の主と思われる老人が私達の所にやって来た
「お久しぶりね。長老様」
「外が騒がしいと思えば、おぬしだったのか。戻ったんじゃの」
「この子達は私と一緒に旅をしている人達」
「ふむ。・・・そちらは言霊使いと式神か?」
「ええ」
長老は私と兄さんとアスラを見るとそう言い、私と兄さんは頷いた
「まだ生存しておったのじゃな」
「ちゃんとした使いはリアとセイぐらいだろうけどね」
「リア達・・・いえ、言霊使いの事ご存じなんです?」
「言霊使いもワシ等と一緒で古い一族じゃからな・・・おや?」
長老はふとユーリの腕にある武醒魔導器に目が止まった
「これは・・・魔導器ですな。もしや使ってなさる?」
「ああ、武醒魔導器を使ってる」
「ふーむ。ワシ等と同様、地上の者ももう魔導器を使うのをやめたのかと思うていたが・・・」
「此処の魔導器も特別な術式だから使ってないんです?」
「魔導器に特別も何もないじゃろ。そもそも魔導器とは聖核を砕きその欠片に術式を施して魔刻とし、エアルを取り込む事により・・・」
「ちょっ! 魔刻が聖核を砕いたものって?!」
「左様、そう言われておる。聖核の力はそのままでは強すぎたそうな。それでなくてもいかなる宝石よりも貴重な石じゃ。だから砕き術式を刻む事で力を抑え、同時に数を増やしたんじゃな。魔刻とはそうして作られたものと伝えられておる」
「・・・・・」
長老の話しを聞いて私達は少しだけ黙ってしまった
「・・・皮肉な話だな」
「うん・・・魔導器を嫌う始祖の隷長の生み出す聖核が、魔導器を作り出すのに必要だなんて・・・」
「フェローが聖核の話をしなかったのは触れたくなかったから・・・かもねぇ」
この事は故郷に戻った時に兄さんとアスラとフキから聞かされた事だった
だから以前、アーセルム号で橙明の核晶の事を聞かれた時にアスラは言葉を濁したのだった
「長老様。もっと色々聞かせてもらいたいの」
「オレ達は魔導器が大昔にどんな役割を演じたか調べているんだ。もしそれが災いを呼んだのなら、どうやってそれを収めたのかも。ミョルゾには伝承が残ってるんだろ? それを教えてくれないか」
「ふむ。いいじゃろ。此処よりワシの家にうってつけのものがある。勝手に入って待ってなされ」
長老はそう告げるとそのまま何処かへと歩いて行き出した
「おいおい、何処行くのよ」
「日課の散歩の途中なのでな。もう少ししたら戻るわい」
そして長老はそのまま街の方へと歩いて行った
「・・・・」
「ホントにマイペースだな」
「うん・・・」
「聖核、魔導器、エアルの乱れ、始祖の隷長・・・色々繋がって来やがった」
「伝承ってのを聞いたらもっと色々繋がってくるかも」
「長老様の家は屋根の色が違うあの大きな建物よ。パティ、行くわよ」
「おう。行くのじゃ」
そう言うとジュディスを先頭に私達は長老の家を目指し歩き出した
トクン・・・
「・・・?」
「・・リア、どうかした?」
「ううん、なんでも」
一瞬だけど、何故か心臓が妙に脈打った感じがしたけどその後は何もなかったからそのままみんなの後を追った
続く
あとがき
ミョルゾ到着~
次回はいよいよ満月の子の謎が解るかな?
次書きたいので今回は後書き短く!!ww
2010.09.05