救出編
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例の赤い花が咲く岸辺でミョルゾへと続く道を開く為の鐘を手に入れた私達はフィエルティア号に戻り、バウルにエゴソーの森まで向かってもらっていた
「うちは・・・この辺りでみんなとバイバイしたいのじゃ。そろそろ、ユーリ達と別れる潮時なのじゃ」
ずっと黙ったままだったパティがユーリに話があると言って切り出した言葉に私達は少しだけ驚いてしまった
アイフリードの事を気にして、これ以上私達に迷惑を掛けたくないし、みんなが気にしなくてもパティがイヤだからだと言った
けど、リタの不器用だけど心配している言葉、私達の言葉を聞いてもう暫く一緒に行く、と言う事で落ち着き、ピピオニア大陸の西の方にあるエゴソーの森へと向かった
75.仲間
「此処がエゴソーの森、クリティア族の聖地よ」
「へえ、思ってたより長閑で気持ちの良いとこじゃない」
「わ、意外。暗くてじめじめした研究室が好きなんだとばっかり・・・」
カロルの言葉にリタはカロルを睨むと反射的にカロルは頭を抑えていた
「何だか故郷に似てる・・・」
リタの言う通り、此処は緑豊かでとてものどかな所だった
故郷も此処と似たように緑豊かで思わずそう呟いていた
「・・・何もない時に来てみたかったです」
「・・・あれだな、謎の集団が持ち込んだ魔導器ってのは」
ユーリと兄さんは山の頂上にある魔導器を見て言うと、そこにあった物は兵装魔導器だった
「兵装魔導器じゃない・・・」
「厄介なもん運んだもんだな」
「その、謎の集団って何なんです?」
「それは詳しく聞けなかったけど・・・とにかく、ミョルゾへの行き方教える代わりにそいつ等何とかしろって」
「何とかするってのはあれぶっ壊しゃ良いって事?」
「どうなのかしら。それで良いならそうするけど」
「あんたが壊す必要ないよう、あたしがちゃんと処理するわよ」
「そう? 期待してるわ」
「とりあえず、まずはあそこに行ってみようよ」
「だな」
話も纏まりみんな歩き出すがパティが歩く気配がなくユーリと私は振り返る
「船で休んでるか?」
「・・・行く、のじゃ・・・」
「・・・・」
パティはそのまま歩き出す
けどまだあの場所での事やアイフリードの事を気にしているのか、元気がなかった
あの年であんな現実を叩き付けられたのだから無理もないのだけど・・・
「・・・ユーリ、」
「ん?」
「・・・パティの事なんだけど、」
「止まれ!」
「「!」」
ユーリと一緒にパティの後ろ姿を見ていた私だったけど、ある事を思いユーリに話し掛けようとしていると先に歩いて行った兄さんやエステル達がいる方からそう声が聞こえ私とユーリは急いで向かうと、二人の騎士が兄さん達の前にいた
「此処は現在、帝国騎士団が作戦行動中である」
「親衛隊・・・ありゃ騎士団長直属のエリート部隊だよ」
ぼそりとレイヴンがユーリに伝える
「その騎士団長様の部隊がこんな森に兵装魔導器持ち込んで、一体何しようってんだ?」
「答える必要はない。それに法令により民間人の行動は制限されている」
「ふーん。で、なんでその刃が俺達に向いてるんだ?」
兄さんの言う通り、彼等は私達の前に着た時からずっとこちらに刃を向けていた
「かかれ!」
途端、前方の騎士二人とその後ろからまた二人、私達に斬り掛かって来た
「っと。いきなり襲い掛かって来るとは親衛隊ってのは短気なもんだな」
「せえい!!」
「問答無用ってか?」
「なら、こっちも容赦しなくて良いんじゃないかしら?」
「だな。親衛隊ってだけあって他の奴等より張り合いありそうだしな」
「でも時間ないし、早めに叩いた方が良いと思うな」
「おっさんもリアちゃんの意見に賛成~!」
「じゃあさっさと片付けるわよ!!」
「「ぐわぁっ!!」」
リタとエステルの魔術が発動し、騎士達に当り、直ぐに前衛の私達が攻撃を放った
「ぐおっ!!」
最後の一人が倒れるとユーリはふうと息を吐いた
「やれやれ、ついに騎士団とまともにやり合っちまった。腹括ったそばから幸先いいこった」
「謎の集団って騎士団の事だったんですね・・・」
「でも、何でボク達を襲って来たのかな?」
「知られたら困るような事を此処でやっているからでしょ」
「それがあの魔導器って事?」
「だろうな」
「・・・・」
「あんた自分で着いてくるって言ったんだから、しゃんとしなさ「危ない・・・!!」
「っ!?」
リタがパティに声を掛けていると、頂上にある魔導器が急に向きを変え、私達の方を向いた途端、兵装魔導器から攻撃が放たれた
急いで壁を作ろうとしていると、先にエステルが私達の前に駆け出し、祈るように目を閉じて手を握っていると、攻撃が何かに当たって反射し消え、エステルはそのまま座り込んでしまった
「エステル・・・!」
私達は急いでエステルに駆け寄った
「・・・今の・・・」
「ああ・・・」
瞬時に今の状況を理解したのは私と兄さんとアスラとリタだけだった
「・・・今、何、したの?」
「ヘリオードでやったのと同じ・・・! エステルの力が、エアルを制御して分解したのよ! あんたまたそんな無理して・・・」
「無茶しないの! それ位なら私が・・・」
心配そうな顔をして言う私とリタにエステルは申し訳なさそうな顔をして謝る
「ご、ごめんなさい。みんなが危ないと思ったら、力が勝手に・・・!」
「力が無意識に感情と反応するようになり始めてるんだわ・・・」
「さっきの攻撃、あれの仕業よね。あたし達を狙い撃ちしてきた」
「と言う事は撃たれる度にエステルが力を使ってしまうって事ね」
「俺等が壁作るよりエステルの力が先に反応しちまうな」
「・・・そんな・・・わたし、どうしたら・・・」
「おいおい、お前はオレ達を助けてくれたんだぜ?」
「そうだよ、まともに食らったらイチコロ間違いなかったもん。悪いのは撃って来た奴等だよ」
「エステルの事も、世界のヤバさもオレ達でケジメ付けるって決めただろ。今やってる事は全部、その為だ。細かい事は気にすんな」
「でも、こんなの何度もやってたらフェロー怒るんじゃないの? 魔導器だろうとフェローだろうと丸焼きにされんのは勘弁よ」
「なに、簡単な話だろ。要するにあの魔導器を何とかすりゃ良いってこった」
「そう言う事ね」
「あの魔導器使ってる奴等、ボコってやる」
「よし行こう。なるべく目立たないようにな」
エステルが立ち上がれるようになり、それを確認するとユーリはそう言って先頭を兄さんとラピードと一緒に歩き出し、その後ろにエステル、リタ、カロルと続き、ジュディス、レイヴンが後ろに並び、頂上を目指して歩き出した
「・・・・」
「ぐずぐずしてると置いてくぞ」
「パティ、行こう?」
「・・・・」
私はパティに優しく微笑み声を掛けるとパティは無言のまま歩き出した
「・・・パティ」
「・・・相当ショック受けてるね。無理もないけど」
「うん・・・」
さっきの親衛隊との戦いではそんなに人数がいなかったから身を守る程度で済んだけど、今のパティの状態が続けばまだ頂上やその付近にいる親衛隊と戦いになった時、守りきれるかも危うい所だ
「なるべく戦わせないようにしたいけど」
「いつも以上に気を配ってなきゃいけないだろうね」
「うん・・・」
ユーリとパティの後を追いながら私とアスラはそう話して頂上を目指した
*
あれから目立たずに頂上に向かった私達だったが、やはりと言うべきか、兵装魔導器がある頂上には先程よりも多くの親衛隊がいた
こっちにも同じ指示があるのか問答無用で私達に襲い掛かって来た
時間は掛かったにせよ、何とか親衛隊を倒し、私達は頂上に足を踏み入れた
「さてと、これで撃たれる心配はなくなったな」
「まだよ。騎士団だけじゃなく、この子も止めないと意味ないでしょ」
リタはそう言って魔導器の側に行き、プログラムを開いた
「この子・・・ヘルメス式じゃないけど術式が暗号化されてる・・・」
「どーいう事よ?」
「早い話、暗号鍵がないと動力落とす事も出来ないのよ」
「その暗号とやらを解くのは・・・」
「・・・そう簡単じゃないわ。解くとしても時間が必要ね。他の方法は・・・」
「それほど、時間賭ける必要はなさそうよ」
「ちょっと・・・何で・・・!?」
ジュディスは槍を構え、そしてそのまま木の上へと投げた
途端、人の気配を感じ私は木の側から数歩離れると
「ひぃっ・・・!!」
と、悲鳴を上げて一人の魔導師が落ちて来た
「ビンゴ」
「あんた・・・!?」
「この魔導器の技師じゃないかしらね」
「ち、違う、違うんだ。いや技師なのはそうなんだけど、ぼ、僕は命令されただけで、だ、だからこんな事に協力するのはイヤだったんだ・・・」
「早く暗号といてこの子を止めなさい!」
「は、はひ、ただいま・・・!」
リタの威圧に圧倒されてなのか、それともただ怯えているのか、技師はピンと背筋を伸ばして返事を返し急いで魔導器の所に行き、暗号を解き始めた
「ごめんなさい、吃驚させて」
「ふ、ふんだ・・・どうせ、吃驚させるだけだなんて、解ってたわよ」
「そう・・・?」
「でも、これで一件落着。晴れてミョルゾに行けるんだね」
すると何処からか妙な音が聞こえだし、私は気になって後ろを見てみると反対側の丘の上にも兵装魔導器があるのが見えた途端、兵装魔導器はこちらに向きを変えていた
「!」
「ちいっ!!」
それにユーリとラピードも気付き、ユーリは走り出した
「ユーリ!!」
ユーリが走り出したと当時に光が放たれ、急いでユーリの後を追って、直ぐに壁を作った
「はあぁっ!!」
私の作った結界に攻撃は当たり、みんな無事だったが、
「ユーリ!!」
風力に飛ばされユーリが崖から落ちそうになっているのが見えた
「っ!!」
が、いち早く兄さんが気付きユーリの手を掴んだ
「引き上げるぞ、アスラ」
「了解」
アスラの力で崩れそうになっていた足場を固めそのままユーリを引き上げ、私達はほっと安堵の息を吐いた
カロルとエステルは心配そうな顔をしてユーリと兄さんの所へ走って行き、話しをしながらこちらへ戻って来た
「油断したぜ。もう一台あったとはな」
「ユーリとリアのお陰だよ」
「まさか・・・わたしに力を使わせない為に・・・!?」
「言ったでしょ。エステルが力を使わないようにするって」
「でも・・・」
「どうしてそう無茶するかね・・・」
「本当・・・リアはともかく、貴方死ぬ気?」
「これくらいの傷、日常茶飯事だっての」
「ごめんなさい・・・わたしの所為で・・・」
「お互い庇い合ったんだ、お相子だろ?」
「でもっ!」
「エステル、此処は素直に礼言っとくべきだぜ」
兄さんの言葉にエステルは一瞬戸惑うが直ぐに頭を深く下げた
「・・・そうですね。有り難う御座います、ユーリ、リア」
「どう致しまして。それより・・・」
「ああ、あっちの魔導器もなんとかしねえとな」
「あんた、向こうの・・・って・・・!?」
「ふきゃん!」
「パティ!」
先程の技師に視線を向けようとしているとパティの悲鳴が聞こえ振り返ると、パティが尻餅を付いていた
「逃げた!」
「逃げ足のはええ・・・早く捕まえましょ」
「待って、パティが・・・」
「リタ姐・・・すまないのじゃ・・・逃がしてしまったのじゃ・・・」
「・・・良いわ、此処はあたしがなんとかするから」
「え・・・でも、簡単じゃないって・・・」
「騎士団さえいなくなりゃ、そんなに慌てる必要もないでしょ。それに、あたしを誰だと思ってんの? 天才魔導士リタ・モルディオ様よ? 魔導器相手なら死ぬ気でやるわよ」
そう言ってリタは魔導器に向かっていき、後ろでカロルが何か呟いているのが聞こえたが、はっきりとは聞こえなかった
「何してるんです?」
「このままじゃまた使えちゃうから、ちょっと細工を、ね。・・・ごめんね」
「命を賭けるものがある若人は輝いてるわね~」
リタの様子を見ていると、ユーリの後ろにいたレイヴンがそう言い、私とユーリはレイヴンに向き合い、ユーリは言葉を続けた
「一度死にかけた身としては、死ぬ気でってのはシャレにならねぇか」
「ん? 死にかけたって?」
「人魔戦争の時、死にかけたって言ってたろ?」
「ああ、その話したっけか・・・まあ・・・死ぬ気で頑張るのは、生きてる奴の特権だわな。死人にゃ信念も覚悟も・・・」
「「おっさん?」」「レイヴン?」「・・?」
「あーいやいや、おっさん、ちょっと昔を思い出しておセンチになっちゃった。ささ、いこいこ」
ユーリ、兄さん、アスラの言葉にレイヴンはいつもの口調で答えると先に歩いて行きだし、その後ろをラピードとカロルが続いた
「・・・レイヴン、どうしたんだろう?」
「さあな」
「パティ、行けそうか?」
兄さんの言葉にパティは立ち上がって頷いてエステルとリタと一緒に降りて来た
「・・・・」
けど、私はじっとユーリを見ていた
「ん? どうした?」
それに気付いたのかユーリは私の方へと視線を向ける
「・・・バカ」
「・・・さっきの事か」
「いくら何でも無茶しすぎ・・・。ホントに、焦ったんだから・・・」
「・・・悪かったって」
少しだけ顔を俯け胸の前でギュッと手を握って言う私にユーリは申し訳ない顔をして私を安心させるように頭を撫でた
「じゃ、ボク達もそろそろ行こうか」
「ああ」「うん」
私達の空気が少しだけ緩んだのを見てアスラはそう声を掛け、先に歩いていた兄さん達の後を追った
*
あれから移動して吊り橋を渡り、岩のトンネルを抜けると充填された兵装魔導器から放たれた光が私達目掛けて来ていて、急いで岩に背を預けて隠れた
全員無事だったものの今度はレイヴンが辛そうだったけど、本人が大丈夫と言ったのでそのまま進む事にした
「あの魔導器、なんか変な音してるよ」
「エアルを充填してんのよ。後もう少しは大丈夫。撃ってこられないわ」
「さっさと足下に潜り込めば、敵さんも手の出しようはないみたいね」
「そうも言ってられないんじゃなくて?」
ジュディスの言う通り、上から甲冑の音が聞こえ親衛隊が降りて来ていた
「親衛隊だ!」
そして今私達が来た道の方からも甲冑の音が聞こえ振り返ると騎士団の増援が来ていた
「向こうからも・・・」
「見事に挟み撃ちされたね」
「呑気な事言ってる場合じゃないでしょ!」
「こりゃ、踏ん張っていかねぇとな!」
言うと私達は武器を構え各々親衛隊へと向かって行く
(なるべくパティを戦わせないようにしないと)
さっきも言ってたけど、今の状態のパティを戦わせるのは無理が掛かる
平常を保っていても技には動揺が出てしまうものだから
「パティ、エステルとリタを守るようにして」
「解ったのじゃ」
なるべく前衛に出させないように気を配りパティにそう声を掛けるとレイヴンも私の考えが解ったのかパティの近くで戦っていてた
「全員片付けたか?」
「ええ・・・「「!」」
数分して辺りは静かになりユーリは辺りを見渡して武器を納めようとしていると私とユーはあるものが目に入りユーリは即座にパティの方へ蒼波刃を放つ
「あ・・・!」
「ぼうっとしてんなよ」
「パティ、大丈夫!」
そして親衛隊が倒れ、ユーリは一息吐きパティにそう言い、私はパティに駆け寄った
「ユーリ、すまないのじゃ・・・」
「怪我はないみたいだね」
アスラとパティが怪我をしてない事を確認するとエステルもほっと安堵の息を吐いた
「やっぱパティちゃん、船で休んでた方が良かったんじゃない?」
「・・・じゃの。これしきの戦いでこんな風に足引っ張るくらいならやっぱり・・・」
「此処まで来て、ぐじぐじ悩んでんじゃないわよ」
パティが言い募っていると少しだけ苛立ったリタの声が聞こえ皆一斉にリタを見る
「もうとっくに仲間なんだから、気にすんなって言ったでしょ」
「仲間って・・・」
「珍しい事を言うわね、リタが・・・」
「う、五月蠅い! ほら、早く兵装魔導器、止めに行くわよ」
「はいはい。そう言う事らしいわよ?」
リタは恥ずかしくなったのか誤魔化すように先に歩き出し、ジュディスはにこりと笑い私達もその後を歩き出す
「仲間・・・」
「パティ何やってんの! 置いてっても良いの!?」
パティはぽつりと呟いているとカロルがパティに声を掛け、私達は歩みを止めてパティを見る
パティは少しだけ何か考えた後、
「うんにゃ・・・行く。一緒に行くのじゃ!」
ニッコリと笑って元気よく答えて私達の所へ駆けて来た
「・・・仲間、だからの」
「? パティ、何か言った?」
「なんでもないのじゃ!」
言うとパティはそのままユーリとリタとジュディスの所へ向かった
「パティ、元気出たみたいね」
「ああ。リタの言葉が効いたんだろうな」
「じゃ、後もう一仕事頑張ろうか」
「うん」「ああ」
アスラの言葉に私と兄さんは微笑んで頷いて、みんなの後を追った
続く
あとがき
やっとエゴソーの森書けた・・・
何故か毎回此処は悩む・・・ι
特に今回はパティがかなりネガティブモードに入っちゃってるから重くなっちゃう所が多くなっちゃいますよね・・・
まあ、仕方ないんですけどね・・・
・・・リアちゃんホント焦ったでしょうね、だから心配してあーゆー感じになったけど・・・
重たい感じは此処までにして・・・、
とりあえずパティも元気になった事だしホント良かった!!
ゲームやった人なら解ると思うけど、パティを待ってる時のみんなのカット(カメラアングル)が凄い好きww
次回でエゴソーの森は終わるかな?
2010.09.05
「うちは・・・この辺りでみんなとバイバイしたいのじゃ。そろそろ、ユーリ達と別れる潮時なのじゃ」
ずっと黙ったままだったパティがユーリに話があると言って切り出した言葉に私達は少しだけ驚いてしまった
アイフリードの事を気にして、これ以上私達に迷惑を掛けたくないし、みんなが気にしなくてもパティがイヤだからだと言った
けど、リタの不器用だけど心配している言葉、私達の言葉を聞いてもう暫く一緒に行く、と言う事で落ち着き、ピピオニア大陸の西の方にあるエゴソーの森へと向かった
75.仲間
「此処がエゴソーの森、クリティア族の聖地よ」
「へえ、思ってたより長閑で気持ちの良いとこじゃない」
「わ、意外。暗くてじめじめした研究室が好きなんだとばっかり・・・」
カロルの言葉にリタはカロルを睨むと反射的にカロルは頭を抑えていた
「何だか故郷に似てる・・・」
リタの言う通り、此処は緑豊かでとてものどかな所だった
故郷も此処と似たように緑豊かで思わずそう呟いていた
「・・・何もない時に来てみたかったです」
「・・・あれだな、謎の集団が持ち込んだ魔導器ってのは」
ユーリと兄さんは山の頂上にある魔導器を見て言うと、そこにあった物は兵装魔導器だった
「兵装魔導器じゃない・・・」
「厄介なもん運んだもんだな」
「その、謎の集団って何なんです?」
「それは詳しく聞けなかったけど・・・とにかく、ミョルゾへの行き方教える代わりにそいつ等何とかしろって」
「何とかするってのはあれぶっ壊しゃ良いって事?」
「どうなのかしら。それで良いならそうするけど」
「あんたが壊す必要ないよう、あたしがちゃんと処理するわよ」
「そう? 期待してるわ」
「とりあえず、まずはあそこに行ってみようよ」
「だな」
話も纏まりみんな歩き出すがパティが歩く気配がなくユーリと私は振り返る
「船で休んでるか?」
「・・・行く、のじゃ・・・」
「・・・・」
パティはそのまま歩き出す
けどまだあの場所での事やアイフリードの事を気にしているのか、元気がなかった
あの年であんな現実を叩き付けられたのだから無理もないのだけど・・・
「・・・ユーリ、」
「ん?」
「・・・パティの事なんだけど、」
「止まれ!」
「「!」」
ユーリと一緒にパティの後ろ姿を見ていた私だったけど、ある事を思いユーリに話し掛けようとしていると先に歩いて行った兄さんやエステル達がいる方からそう声が聞こえ私とユーリは急いで向かうと、二人の騎士が兄さん達の前にいた
「此処は現在、帝国騎士団が作戦行動中である」
「親衛隊・・・ありゃ騎士団長直属のエリート部隊だよ」
ぼそりとレイヴンがユーリに伝える
「その騎士団長様の部隊がこんな森に兵装魔導器持ち込んで、一体何しようってんだ?」
「答える必要はない。それに法令により民間人の行動は制限されている」
「ふーん。で、なんでその刃が俺達に向いてるんだ?」
兄さんの言う通り、彼等は私達の前に着た時からずっとこちらに刃を向けていた
「かかれ!」
途端、前方の騎士二人とその後ろからまた二人、私達に斬り掛かって来た
「っと。いきなり襲い掛かって来るとは親衛隊ってのは短気なもんだな」
「せえい!!」
「問答無用ってか?」
「なら、こっちも容赦しなくて良いんじゃないかしら?」
「だな。親衛隊ってだけあって他の奴等より張り合いありそうだしな」
「でも時間ないし、早めに叩いた方が良いと思うな」
「おっさんもリアちゃんの意見に賛成~!」
「じゃあさっさと片付けるわよ!!」
「「ぐわぁっ!!」」
リタとエステルの魔術が発動し、騎士達に当り、直ぐに前衛の私達が攻撃を放った
「ぐおっ!!」
最後の一人が倒れるとユーリはふうと息を吐いた
「やれやれ、ついに騎士団とまともにやり合っちまった。腹括ったそばから幸先いいこった」
「謎の集団って騎士団の事だったんですね・・・」
「でも、何でボク達を襲って来たのかな?」
「知られたら困るような事を此処でやっているからでしょ」
「それがあの魔導器って事?」
「だろうな」
「・・・・」
「あんた自分で着いてくるって言ったんだから、しゃんとしなさ「危ない・・・!!」
「っ!?」
リタがパティに声を掛けていると、頂上にある魔導器が急に向きを変え、私達の方を向いた途端、兵装魔導器から攻撃が放たれた
急いで壁を作ろうとしていると、先にエステルが私達の前に駆け出し、祈るように目を閉じて手を握っていると、攻撃が何かに当たって反射し消え、エステルはそのまま座り込んでしまった
「エステル・・・!」
私達は急いでエステルに駆け寄った
「・・・今の・・・」
「ああ・・・」
瞬時に今の状況を理解したのは私と兄さんとアスラとリタだけだった
「・・・今、何、したの?」
「ヘリオードでやったのと同じ・・・! エステルの力が、エアルを制御して分解したのよ! あんたまたそんな無理して・・・」
「無茶しないの! それ位なら私が・・・」
心配そうな顔をして言う私とリタにエステルは申し訳なさそうな顔をして謝る
「ご、ごめんなさい。みんなが危ないと思ったら、力が勝手に・・・!」
「力が無意識に感情と反応するようになり始めてるんだわ・・・」
「さっきの攻撃、あれの仕業よね。あたし達を狙い撃ちしてきた」
「と言う事は撃たれる度にエステルが力を使ってしまうって事ね」
「俺等が壁作るよりエステルの力が先に反応しちまうな」
「・・・そんな・・・わたし、どうしたら・・・」
「おいおい、お前はオレ達を助けてくれたんだぜ?」
「そうだよ、まともに食らったらイチコロ間違いなかったもん。悪いのは撃って来た奴等だよ」
「エステルの事も、世界のヤバさもオレ達でケジメ付けるって決めただろ。今やってる事は全部、その為だ。細かい事は気にすんな」
「でも、こんなの何度もやってたらフェロー怒るんじゃないの? 魔導器だろうとフェローだろうと丸焼きにされんのは勘弁よ」
「なに、簡単な話だろ。要するにあの魔導器を何とかすりゃ良いってこった」
「そう言う事ね」
「あの魔導器使ってる奴等、ボコってやる」
「よし行こう。なるべく目立たないようにな」
エステルが立ち上がれるようになり、それを確認するとユーリはそう言って先頭を兄さんとラピードと一緒に歩き出し、その後ろにエステル、リタ、カロルと続き、ジュディス、レイヴンが後ろに並び、頂上を目指して歩き出した
「・・・・」
「ぐずぐずしてると置いてくぞ」
「パティ、行こう?」
「・・・・」
私はパティに優しく微笑み声を掛けるとパティは無言のまま歩き出した
「・・・パティ」
「・・・相当ショック受けてるね。無理もないけど」
「うん・・・」
さっきの親衛隊との戦いではそんなに人数がいなかったから身を守る程度で済んだけど、今のパティの状態が続けばまだ頂上やその付近にいる親衛隊と戦いになった時、守りきれるかも危うい所だ
「なるべく戦わせないようにしたいけど」
「いつも以上に気を配ってなきゃいけないだろうね」
「うん・・・」
ユーリとパティの後を追いながら私とアスラはそう話して頂上を目指した
*
あれから目立たずに頂上に向かった私達だったが、やはりと言うべきか、兵装魔導器がある頂上には先程よりも多くの親衛隊がいた
こっちにも同じ指示があるのか問答無用で私達に襲い掛かって来た
時間は掛かったにせよ、何とか親衛隊を倒し、私達は頂上に足を踏み入れた
「さてと、これで撃たれる心配はなくなったな」
「まだよ。騎士団だけじゃなく、この子も止めないと意味ないでしょ」
リタはそう言って魔導器の側に行き、プログラムを開いた
「この子・・・ヘルメス式じゃないけど術式が暗号化されてる・・・」
「どーいう事よ?」
「早い話、暗号鍵がないと動力落とす事も出来ないのよ」
「その暗号とやらを解くのは・・・」
「・・・そう簡単じゃないわ。解くとしても時間が必要ね。他の方法は・・・」
「それほど、時間賭ける必要はなさそうよ」
「ちょっと・・・何で・・・!?」
ジュディスは槍を構え、そしてそのまま木の上へと投げた
途端、人の気配を感じ私は木の側から数歩離れると
「ひぃっ・・・!!」
と、悲鳴を上げて一人の魔導師が落ちて来た
「ビンゴ」
「あんた・・・!?」
「この魔導器の技師じゃないかしらね」
「ち、違う、違うんだ。いや技師なのはそうなんだけど、ぼ、僕は命令されただけで、だ、だからこんな事に協力するのはイヤだったんだ・・・」
「早く暗号といてこの子を止めなさい!」
「は、はひ、ただいま・・・!」
リタの威圧に圧倒されてなのか、それともただ怯えているのか、技師はピンと背筋を伸ばして返事を返し急いで魔導器の所に行き、暗号を解き始めた
「ごめんなさい、吃驚させて」
「ふ、ふんだ・・・どうせ、吃驚させるだけだなんて、解ってたわよ」
「そう・・・?」
「でも、これで一件落着。晴れてミョルゾに行けるんだね」
すると何処からか妙な音が聞こえだし、私は気になって後ろを見てみると反対側の丘の上にも兵装魔導器があるのが見えた途端、兵装魔導器はこちらに向きを変えていた
「!」
「ちいっ!!」
それにユーリとラピードも気付き、ユーリは走り出した
「ユーリ!!」
ユーリが走り出したと当時に光が放たれ、急いでユーリの後を追って、直ぐに壁を作った
「はあぁっ!!」
私の作った結界に攻撃は当たり、みんな無事だったが、
「ユーリ!!」
風力に飛ばされユーリが崖から落ちそうになっているのが見えた
「っ!!」
が、いち早く兄さんが気付きユーリの手を掴んだ
「引き上げるぞ、アスラ」
「了解」
アスラの力で崩れそうになっていた足場を固めそのままユーリを引き上げ、私達はほっと安堵の息を吐いた
カロルとエステルは心配そうな顔をしてユーリと兄さんの所へ走って行き、話しをしながらこちらへ戻って来た
「油断したぜ。もう一台あったとはな」
「ユーリとリアのお陰だよ」
「まさか・・・わたしに力を使わせない為に・・・!?」
「言ったでしょ。エステルが力を使わないようにするって」
「でも・・・」
「どうしてそう無茶するかね・・・」
「本当・・・リアはともかく、貴方死ぬ気?」
「これくらいの傷、日常茶飯事だっての」
「ごめんなさい・・・わたしの所為で・・・」
「お互い庇い合ったんだ、お相子だろ?」
「でもっ!」
「エステル、此処は素直に礼言っとくべきだぜ」
兄さんの言葉にエステルは一瞬戸惑うが直ぐに頭を深く下げた
「・・・そうですね。有り難う御座います、ユーリ、リア」
「どう致しまして。それより・・・」
「ああ、あっちの魔導器もなんとかしねえとな」
「あんた、向こうの・・・って・・・!?」
「ふきゃん!」
「パティ!」
先程の技師に視線を向けようとしているとパティの悲鳴が聞こえ振り返ると、パティが尻餅を付いていた
「逃げた!」
「逃げ足のはええ・・・早く捕まえましょ」
「待って、パティが・・・」
「リタ姐・・・すまないのじゃ・・・逃がしてしまったのじゃ・・・」
「・・・良いわ、此処はあたしがなんとかするから」
「え・・・でも、簡単じゃないって・・・」
「騎士団さえいなくなりゃ、そんなに慌てる必要もないでしょ。それに、あたしを誰だと思ってんの? 天才魔導士リタ・モルディオ様よ? 魔導器相手なら死ぬ気でやるわよ」
そう言ってリタは魔導器に向かっていき、後ろでカロルが何か呟いているのが聞こえたが、はっきりとは聞こえなかった
「何してるんです?」
「このままじゃまた使えちゃうから、ちょっと細工を、ね。・・・ごめんね」
「命を賭けるものがある若人は輝いてるわね~」
リタの様子を見ていると、ユーリの後ろにいたレイヴンがそう言い、私とユーリはレイヴンに向き合い、ユーリは言葉を続けた
「一度死にかけた身としては、死ぬ気でってのはシャレにならねぇか」
「ん? 死にかけたって?」
「人魔戦争の時、死にかけたって言ってたろ?」
「ああ、その話したっけか・・・まあ・・・死ぬ気で頑張るのは、生きてる奴の特権だわな。死人にゃ信念も覚悟も・・・」
「「おっさん?」」「レイヴン?」「・・?」
「あーいやいや、おっさん、ちょっと昔を思い出しておセンチになっちゃった。ささ、いこいこ」
ユーリ、兄さん、アスラの言葉にレイヴンはいつもの口調で答えると先に歩いて行きだし、その後ろをラピードとカロルが続いた
「・・・レイヴン、どうしたんだろう?」
「さあな」
「パティ、行けそうか?」
兄さんの言葉にパティは立ち上がって頷いてエステルとリタと一緒に降りて来た
「・・・・」
けど、私はじっとユーリを見ていた
「ん? どうした?」
それに気付いたのかユーリは私の方へと視線を向ける
「・・・バカ」
「・・・さっきの事か」
「いくら何でも無茶しすぎ・・・。ホントに、焦ったんだから・・・」
「・・・悪かったって」
少しだけ顔を俯け胸の前でギュッと手を握って言う私にユーリは申し訳ない顔をして私を安心させるように頭を撫でた
「じゃ、ボク達もそろそろ行こうか」
「ああ」「うん」
私達の空気が少しだけ緩んだのを見てアスラはそう声を掛け、先に歩いていた兄さん達の後を追った
*
あれから移動して吊り橋を渡り、岩のトンネルを抜けると充填された兵装魔導器から放たれた光が私達目掛けて来ていて、急いで岩に背を預けて隠れた
全員無事だったものの今度はレイヴンが辛そうだったけど、本人が大丈夫と言ったのでそのまま進む事にした
「あの魔導器、なんか変な音してるよ」
「エアルを充填してんのよ。後もう少しは大丈夫。撃ってこられないわ」
「さっさと足下に潜り込めば、敵さんも手の出しようはないみたいね」
「そうも言ってられないんじゃなくて?」
ジュディスの言う通り、上から甲冑の音が聞こえ親衛隊が降りて来ていた
「親衛隊だ!」
そして今私達が来た道の方からも甲冑の音が聞こえ振り返ると騎士団の増援が来ていた
「向こうからも・・・」
「見事に挟み撃ちされたね」
「呑気な事言ってる場合じゃないでしょ!」
「こりゃ、踏ん張っていかねぇとな!」
言うと私達は武器を構え各々親衛隊へと向かって行く
(なるべくパティを戦わせないようにしないと)
さっきも言ってたけど、今の状態のパティを戦わせるのは無理が掛かる
平常を保っていても技には動揺が出てしまうものだから
「パティ、エステルとリタを守るようにして」
「解ったのじゃ」
なるべく前衛に出させないように気を配りパティにそう声を掛けるとレイヴンも私の考えが解ったのかパティの近くで戦っていてた
「全員片付けたか?」
「ええ・・・「「!」」
数分して辺りは静かになりユーリは辺りを見渡して武器を納めようとしていると私とユーはあるものが目に入りユーリは即座にパティの方へ蒼波刃を放つ
「あ・・・!」
「ぼうっとしてんなよ」
「パティ、大丈夫!」
そして親衛隊が倒れ、ユーリは一息吐きパティにそう言い、私はパティに駆け寄った
「ユーリ、すまないのじゃ・・・」
「怪我はないみたいだね」
アスラとパティが怪我をしてない事を確認するとエステルもほっと安堵の息を吐いた
「やっぱパティちゃん、船で休んでた方が良かったんじゃない?」
「・・・じゃの。これしきの戦いでこんな風に足引っ張るくらいならやっぱり・・・」
「此処まで来て、ぐじぐじ悩んでんじゃないわよ」
パティが言い募っていると少しだけ苛立ったリタの声が聞こえ皆一斉にリタを見る
「もうとっくに仲間なんだから、気にすんなって言ったでしょ」
「仲間って・・・」
「珍しい事を言うわね、リタが・・・」
「う、五月蠅い! ほら、早く兵装魔導器、止めに行くわよ」
「はいはい。そう言う事らしいわよ?」
リタは恥ずかしくなったのか誤魔化すように先に歩き出し、ジュディスはにこりと笑い私達もその後を歩き出す
「仲間・・・」
「パティ何やってんの! 置いてっても良いの!?」
パティはぽつりと呟いているとカロルがパティに声を掛け、私達は歩みを止めてパティを見る
パティは少しだけ何か考えた後、
「うんにゃ・・・行く。一緒に行くのじゃ!」
ニッコリと笑って元気よく答えて私達の所へ駆けて来た
「・・・仲間、だからの」
「? パティ、何か言った?」
「なんでもないのじゃ!」
言うとパティはそのままユーリとリタとジュディスの所へ向かった
「パティ、元気出たみたいね」
「ああ。リタの言葉が効いたんだろうな」
「じゃ、後もう一仕事頑張ろうか」
「うん」「ああ」
アスラの言葉に私と兄さんは微笑んで頷いて、みんなの後を追った
続く
あとがき
やっとエゴソーの森書けた・・・
何故か毎回此処は悩む・・・ι
特に今回はパティがかなりネガティブモードに入っちゃってるから重くなっちゃう所が多くなっちゃいますよね・・・
まあ、仕方ないんですけどね・・・
・・・リアちゃんホント焦ったでしょうね、だから心配してあーゆー感じになったけど・・・
重たい感じは此処までにして・・・、
とりあえずパティも元気になった事だしホント良かった!!
ゲームやった人なら解ると思うけど、パティを待ってる時のみんなのカット(カメラアングル)が凄い好きww
次回でエゴソーの森は終わるかな?
2010.09.05