救出編
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あれから私達はアスピオへと戻って来た
なんだか前にアスピオに来たのが凄く懐かしく感じるな
そう思い小さく笑っていると先頭を歩いていたリタが立ち止まって少しだけ疲れた顔をして私達を見た
「流石に疲れたわね。とりあえず、人捜しは明日にしましょ」
「賛成~、久しぶりにまともなベッドで寝られるわ~」
「じゃあ、あたしの家に・・・」
「待って。先に話しておきたい事があるんだ」
リタが入り口に向かって歩き出そうとしていると今までずっと黙っていたカロルがそう言い、みんなの顔が見える所まで移動する
「・・・私の事ね」
「カロル・・・」
「ギルドの話し合いよ。横やりは無しにしようや」
心配そうなエステルの声が聞こえレイヴンが言うとエステルは黙ってカロルへと視線を向ける
「ボク、ずっと考えてた。ギルドとしてどうすべきなんだろうって。で、思ったんだ。やっぱりギルドとしてやっていく為にも決めなきゃいけないって」
それはギルドとしての掟の事だろう
「どうするか決めたんだな?」
ユーリの言葉にカロルは首を縦に振った
「言ったよね。ギルドは掟を守る事が一番大事、掟を破ると厳しい処罰を受ける。例えそれが友達でも、兄弟でも。それがギルドの誇りなんだって」
「ええ」
「だから・・・」
カロルはそこで少し間を置いて静かにこう告げた
「みんなで罰を受けよう」
「え?」
カロルの言葉にユーリやジュディスだけじゃなく、この場にいた私達も驚いた
「ボク、ジュディスが一人で世界の為に頑張ってるの知らなかった。知らなかったからって仲間を手伝ってあげなかったのは事実でしょ。だから、ボクも罰を受けなきゃ。ユーリ」
「オレ?」
「ユーリも自分の道だからって秘密にしてる事があった。それって仲間の為にならないでしょ」
「ま、まぁな・・・」
その言葉を聞き私はちらりとユーリを見るとユーリも私の方をちらりと見て、お互いにみんなに気付かれないように直ぐに視線を戻した
「だから、罰受けないとね」
「ものすごいこじつけ」
「・・・掟は大事だよ。でも正しい事をしてるのに掟に反してるからって罰を与えるべきなのか・・・ホント言うとまだ分かんない・・・。なら、みんなで罰を受けて全部やり直そうって思ったんだ。これじゃ、ダメ?」
「オレ、また秘密で何かするかもしれないぜ?」
「信頼してもらえなくてそうなっちゃうんならしょうがないよ。それはボクが悪いんだ」
「またギルドの必要としてる魔導器を破壊するかもしれないわよ? ギルドの為に、という掟に反するわ」
「でもそれは世界の為だもん。それに掟を守る為にギルドがあるワケじゃないもん。許容範囲じゃないかな」
「それって掟の意味あるの?」
「はっはっは。そんなギルド聞いた事ないわ、面白いじゃないの」
「うむ、型にとらわれる事はないのじゃ。自由が良いのじゃ」
「「ふふふ」」
カロルやレイヴン、パティの言葉に私もエステルも笑ってしまい、兄さんもユーリと一緒に小さく笑っていた
「カロル、お前凄いな。オレは自分がどするかってのは考えてたが、仲間としてどうしていくかって考えられてなかったかもしれない。オレには思いもつかないけじめの付け方だ」
「ボ、ボクはただみんなと旅を続けたいだけなんだ。みんなの道と凛々の明星の道を同じにしたいだけなんだよ」
カロルはユーリの言葉に少しだけ照れくさそうにしていたけど、何処か嬉しそうな顔をしていた
「そっか。そうだな。ジュディ、そういう事らしいぜ」
「おかしな人達ね、貴方達ホントに・・・。でも・・・そういうの、嫌いじゃないわ」
「じゃあ改めて凛々の明星、出発だね!」
「なーんかご都合。ギルドってそんなもん?」
「少なくとも、ドンのギルドとはひと味もふた味も違うな」
「そうねぇ」
「でもなんか素敵です」
「うん」
「凛々の明星、良いの」
「パティも入る?」
嬉しそうな私達の言葉を聞き、パティも続けて言うとカロルが嬉しそうにパティに聞いた
「今はまだダメなのじゃ」
「そっか、パティは記憶を取り戻さなきゃなんないんだよね」
カロルの言葉にパティは首を縦に振った
「で、罰はどうなるんだ?」
「あ! そっか、えっと・・・」
兄さんの言葉で罰を考えていなかった事を思い出したのか、考えようとしていると代わりにリタが答えた
「休まずに人探しってとこかな。あたし達はウチで待ってる」
「ちょっと! 勝手に決めないで・・・」
「何よ。文句ある?」
「はっはっは。ねぇよ」
「ええ」
「了解~・・・」
カロルは少しだけ項垂れてしまったけど、直ぐに顔を上げて気持ちを切り替え私達は街の中へ入り、ユーリ達と分かれてリタの家へと向かいだした
72.Beginning walking
「あれ・・? リアさん?」
「え?」
リタの家に向かって歩いてると急に後ろから名前を呼ばれ振り返ると一人の女性が立っていた
「やっぱり、情報屋のリアさんだ!」
「あ、貴女、あの時の」
「知り合いか?」
「うん、前にアスピオで依頼を受けた時の依頼者さん」
彼女とは以前依頼を受けた時に色々と話をして気が合い、また会えたら良いですね、とお互いに言った事があった
「兄さん、私暫く此処で話してるからみんなと先に行ってて」
「解った。じゃあ後でな」
まだユーリ達も時間が掛かるだろうし、此処で話していればユーリ達とも合流出来るだろうと思い、彼女と話をして待つ事にした
*
場所は変わってこちらは凛々の明星サイド
ユーリ達はある場所にいるクリティア族の男性を見つけた所だった
「あの人がそうかな?」
「だろうな」
「待って」
ユーリがその男性に話し掛けようかと思っているとジュディスが呼び止めた
「クリティア族は同胞以外には教えないと思うわ」
「じゃあボク達が聞いてもダメって事?」
「ええ。だから私に任せて」
言うとジュディスはそのまま男性の前まで行き、ユーリとカロルもその後に続いた
「こんにちは」
「ごきげんよう、我が同胞殿」
「ジュディスよ」
「私はトート」
ジュディスはにこりと笑ってトートに挨拶をするとトートもジュディスの方へと視線を向けて挨拶をした
「貴方、ミョルゾについて何か知っている事はない? 私達、ミョルゾへ行きたいの。ミョルゾが何処にあるのか・・・そしてどうすれば、其処へ辿り着けるのか、ね」
「辿りついても、何もありゃしない。それなのに何しに行くつもりなのさ」
「あら、クリティア族が自分の同胞の街に興味を持ったってのは行く理由にならない?」
「理由にならなくもない。でも私は知らないんだな、これが」
「貴方の名前を聞いた事があるわ、トート。人間の世界に残るクリティア族をミョルゾへ誘う導き手」
「「!」」
ジュディスの言葉にユーリとカロルは驚いてジュディスとトートを見る
「人間・・・彼等と一緒だから、教えてくれないの?」
「我が同胞以外にミョルゾへの道は教えるな、それが代々の掟だからな」
「なら、そこに言霊使いが一緒にいる、と言うのならどうかしら?」
「! 言霊使いだと」
ジュディスの言葉にトートは驚いて目を見張った
「言霊使い。まだ実在しているんだな」
「ええ。今此処にはいないけれど、ね」
「あんた言霊使いの事知ってるのか?」
「我々と同じく古い一族、そして稀な力を持ち式神を使う者達、と言う事だけはな。実際に会った事はないが・・・」
「言霊使いが、クリティア族と同じく古い一族・・・」
トートの言葉を聞き、ユーリもカロルも少しだけ何か考えるような素振りを見せた
「じゃあ、言霊使いには教えるって事?」
「さっきも言ったが、なんであれ同胞以外には教えられない」
「人間とか言霊使いとかクリティア族とかよりも信頼出来るか出来ないか、じゃないかしら。少なくとも彼等は信用に足る人達だわ」
「・・・もう一度聞くが、何の為にミョルゾを求める?」
「世界が色々とマズイ方向に向かってる。魔導器の所為でな。過去に何が遭ったか、どうすれば止められるか、それを知る為に行く。クリティアも言霊使いも含む、全ての人の為・・・っての所でどうだ?」
ユーリの言葉を聞きトートは腕を組んで少しだけ考えて答えた
「・・・良いだろう。そこであんた達が答えを見つけられるかどうか保証は出来ないが、教えよう。まず、ミョルゾへ行く為にはその道標となる鐘が必要だ」
「鐘?」
「そう、ピピオニア大陸の南の洞窟に隠されている」
「ピピオニア大陸って言っても・・・広いよね?」
「洞窟は赤い花の咲く岸辺にある。それを目印にすれば辿り着けるよ。それから、その洞窟の奥にある扉は我等クリティアにしか開く事が出来ないから」
「どういう事・・・?」
「大丈夫よ。そこは私が何とかするわ」
「それで? その鐘をどうすれば良いんだ?」
「まぁ、焦らないでくれ。人間はせっかちでいけないな。鐘を手に入れたらエゴソーの森へ行くんだ」
「エゴソーの森? それも・・・ピピオニア大陸、だっけ? 聞いた事ある・・・」
「そう、そこはクリティア族にとって神聖なる場所よ。やっぱりあそこがミョルゾに続く扉となる場所・・・」
「そこで鐘を使えばその扉が開く。ただ一つ、問題がある」
「問題?」
トートは頷いて、少しだけ難しい顔をして言う
「そう。今、エゴソーの森は謎の集団によって踏み荒らされてる、連中は大勢で乗り込んだ上に妙な魔導器まで持ち込んでる。目的がなんなのか分からないけどとても気がかりだよ」
「ミョルゾへ行きたいなら、その連中を何とかしろって事か」
「そういう事。私達の聖地をそっとしておいてもらいたいんだ」
「なるほど。つまり、鐘を手に入れてその聖地って所で謎の集団ぶっ飛ばして、鐘を鳴らせば扉は開くって事なんだな」
ユーリが今までの事をまとめて指を鳴らして言うと、トートはそういう事だねと頷いた
「分かったわ・・・ありがとう」
「貴方の前途に幸多からん事を」
「貴方にも・・・みんなの所に戻りましょう」
「ああ。じゃ、・・・?」
ユーリは踵を返し歩き出そうとしていると、ふと何かが目に入った
「ユーリ、どうしたの?」
「悪い、先にリタんとこ戻っててくれ」
「え? あ、ユーリ!」
ユーリはカロルの言葉を遮りそのまま何処かへ走って行った
*
「・・・確かこっちに来てたよな」
カロル達とリタの家に戻ろうとしていると、ユーリはある人物が歩いているのを見て後を追って来た
今いるのはリタの家とは反対の方向で本ばかりある所だった
「こんなとこに用事でも・・って、あいつなら普通に読んでそうだな」
その人物の事を想像して小さく笑っていると、ある場所に目が止まる
「お、いた。リア」
ユーリが声を掛けた人物はリアだった
トートと話しを終えリタの家に戻ろうとしているとリアが何処かに向かって歩いているのが目に入りユーリはそのままリアの後を追い駆けて来たのだった
「・・・・」
声を掛けるがリアはただじっと本棚に並んでいる本を見つめている
「リア」
ユーリはもう一度声を掛けるとリアが少し反応しゆっくりと振り返り、
「・・・ユーリ・ローウェル、」
「・・・え?」
凜とした声が響き、ユーリは声の主であるリアを見る
「貴方は“この子”が大事?」
だが、その声はリアとは違う声だ
ユーリはじっとリアを見つめていると、また凜とした声で聞かれる
「・・・ユーリ・ローウェル、貴方は“この子”が、リア・ルーティアの事が大事?」
「・・・リ、ア・・?」
驚いて目を瞠ったままリアの名前を呼ぶと、リアは一度目を瞑りゆっくりと話す
「・・・・。一つだけ忠告しておくわ」
ユーリを一瞥しリアは目を瞑って小さく息を吐きゆっくり顔を上げる
「この子の事が大事なら、どんな事が遭っても、何が遭っても手放さない事よ」
「・・・。 !?」
先程よりも真剣な表情と声で言われ、その言葉が妙に耳に残りリアを見ると倒れ掛かっているのが見え急いで抱き留めた
「おい、リア」
「・・・・」
「リア!」
「・・・んっ・・・」
声を掛けるが気を失っている感じがし軽くリアの肩を揺さぶると小さい声が聞こえリアはゆっくりと目を開ける
「・・・あれぇ・・、ユーリ・・・?」
「大丈夫か?」
「大丈夫って・・・? !?///」
顔を上げるとユーリと目が合い、更に抱き留められている事に驚いて思わずユーリから離れてしまう
「あれ? 私、なんで・・・? それにどうしてユーリが此処に? ていうか、なんでユーリに抱き留められてたの?」
「・・・もしかして、覚えてないのか?」
「覚えてって・・・?」
ユーリに言われリアは疑問を持ち少しだけ首を傾げるとユーリは驚いた顔をした
「・・・リア」
「?」
「オレ達と別れた後、リタんとこに行ったのか?」
「うん。けど途中で前の依頼人さんと会って話し込んでたの。その後リタの家に向かってたんだけど・・・気付いたらユーリに抱き留められてて・・・」
「・・・・」
お互いの言葉を聞き驚いていたが、リアが頷いた後ユーリは難しい顔をしていた
「ユーリ、どうかした?」
「・・・いや」
「そういう割に難しい顔してるけど・・・」
「・・・・」
「?」
じっとリアを見ているユーリを見てリアは更に首を傾げた
(じゃあさっきのは何だったんだ?)
『この子の事が大事なら――』
「・・・・」
さっきの言葉がまた過ぎり考えているとリアの心配そうな声が聞こえた
「・・・ユーリ?」
「・・・考えても仕方ねえか」
「え?」
「ほら、そろそろリタんとこ行くぞ」
「え、あ、待って」
ユーリはこれ以上考えても答えが出る訳でもないと思い小さく息を吐きリアに声を掛け歩き出し、少し遅れてリアも歩き出した
続く
あとがき
いつも以上に謎なまま終わらせましたw
これは後々色々と関わって来る事だからまだ触れ始めで謎なまま良いんですよ(笑)
てか、連載もとい小説書いたのすっげー久々~
久々だから文章とか可笑しい所あるかも・・・ι(リハビリ中ι)
そのうち修正かけるかなぁ・・・ι
次は・・・、あの話しか・・・
かなり重たくなるだろうなぁ・・・
Beginning walking:歩き始め
2010.07.07
なんだか前にアスピオに来たのが凄く懐かしく感じるな
そう思い小さく笑っていると先頭を歩いていたリタが立ち止まって少しだけ疲れた顔をして私達を見た
「流石に疲れたわね。とりあえず、人捜しは明日にしましょ」
「賛成~、久しぶりにまともなベッドで寝られるわ~」
「じゃあ、あたしの家に・・・」
「待って。先に話しておきたい事があるんだ」
リタが入り口に向かって歩き出そうとしていると今までずっと黙っていたカロルがそう言い、みんなの顔が見える所まで移動する
「・・・私の事ね」
「カロル・・・」
「ギルドの話し合いよ。横やりは無しにしようや」
心配そうなエステルの声が聞こえレイヴンが言うとエステルは黙ってカロルへと視線を向ける
「ボク、ずっと考えてた。ギルドとしてどうすべきなんだろうって。で、思ったんだ。やっぱりギルドとしてやっていく為にも決めなきゃいけないって」
それはギルドとしての掟の事だろう
「どうするか決めたんだな?」
ユーリの言葉にカロルは首を縦に振った
「言ったよね。ギルドは掟を守る事が一番大事、掟を破ると厳しい処罰を受ける。例えそれが友達でも、兄弟でも。それがギルドの誇りなんだって」
「ええ」
「だから・・・」
カロルはそこで少し間を置いて静かにこう告げた
「みんなで罰を受けよう」
「え?」
カロルの言葉にユーリやジュディスだけじゃなく、この場にいた私達も驚いた
「ボク、ジュディスが一人で世界の為に頑張ってるの知らなかった。知らなかったからって仲間を手伝ってあげなかったのは事実でしょ。だから、ボクも罰を受けなきゃ。ユーリ」
「オレ?」
「ユーリも自分の道だからって秘密にしてる事があった。それって仲間の為にならないでしょ」
「ま、まぁな・・・」
その言葉を聞き私はちらりとユーリを見るとユーリも私の方をちらりと見て、お互いにみんなに気付かれないように直ぐに視線を戻した
「だから、罰受けないとね」
「ものすごいこじつけ」
「・・・掟は大事だよ。でも正しい事をしてるのに掟に反してるからって罰を与えるべきなのか・・・ホント言うとまだ分かんない・・・。なら、みんなで罰を受けて全部やり直そうって思ったんだ。これじゃ、ダメ?」
「オレ、また秘密で何かするかもしれないぜ?」
「信頼してもらえなくてそうなっちゃうんならしょうがないよ。それはボクが悪いんだ」
「またギルドの必要としてる魔導器を破壊するかもしれないわよ? ギルドの為に、という掟に反するわ」
「でもそれは世界の為だもん。それに掟を守る為にギルドがあるワケじゃないもん。許容範囲じゃないかな」
「それって掟の意味あるの?」
「はっはっは。そんなギルド聞いた事ないわ、面白いじゃないの」
「うむ、型にとらわれる事はないのじゃ。自由が良いのじゃ」
「「ふふふ」」
カロルやレイヴン、パティの言葉に私もエステルも笑ってしまい、兄さんもユーリと一緒に小さく笑っていた
「カロル、お前凄いな。オレは自分がどするかってのは考えてたが、仲間としてどうしていくかって考えられてなかったかもしれない。オレには思いもつかないけじめの付け方だ」
「ボ、ボクはただみんなと旅を続けたいだけなんだ。みんなの道と凛々の明星の道を同じにしたいだけなんだよ」
カロルはユーリの言葉に少しだけ照れくさそうにしていたけど、何処か嬉しそうな顔をしていた
「そっか。そうだな。ジュディ、そういう事らしいぜ」
「おかしな人達ね、貴方達ホントに・・・。でも・・・そういうの、嫌いじゃないわ」
「じゃあ改めて凛々の明星、出発だね!」
「なーんかご都合。ギルドってそんなもん?」
「少なくとも、ドンのギルドとはひと味もふた味も違うな」
「そうねぇ」
「でもなんか素敵です」
「うん」
「凛々の明星、良いの」
「パティも入る?」
嬉しそうな私達の言葉を聞き、パティも続けて言うとカロルが嬉しそうにパティに聞いた
「今はまだダメなのじゃ」
「そっか、パティは記憶を取り戻さなきゃなんないんだよね」
カロルの言葉にパティは首を縦に振った
「で、罰はどうなるんだ?」
「あ! そっか、えっと・・・」
兄さんの言葉で罰を考えていなかった事を思い出したのか、考えようとしていると代わりにリタが答えた
「休まずに人探しってとこかな。あたし達はウチで待ってる」
「ちょっと! 勝手に決めないで・・・」
「何よ。文句ある?」
「はっはっは。ねぇよ」
「ええ」
「了解~・・・」
カロルは少しだけ項垂れてしまったけど、直ぐに顔を上げて気持ちを切り替え私達は街の中へ入り、ユーリ達と分かれてリタの家へと向かいだした
72.Beginning walking
「あれ・・? リアさん?」
「え?」
リタの家に向かって歩いてると急に後ろから名前を呼ばれ振り返ると一人の女性が立っていた
「やっぱり、情報屋のリアさんだ!」
「あ、貴女、あの時の」
「知り合いか?」
「うん、前にアスピオで依頼を受けた時の依頼者さん」
彼女とは以前依頼を受けた時に色々と話をして気が合い、また会えたら良いですね、とお互いに言った事があった
「兄さん、私暫く此処で話してるからみんなと先に行ってて」
「解った。じゃあ後でな」
まだユーリ達も時間が掛かるだろうし、此処で話していればユーリ達とも合流出来るだろうと思い、彼女と話をして待つ事にした
*
場所は変わってこちらは凛々の明星サイド
ユーリ達はある場所にいるクリティア族の男性を見つけた所だった
「あの人がそうかな?」
「だろうな」
「待って」
ユーリがその男性に話し掛けようかと思っているとジュディスが呼び止めた
「クリティア族は同胞以外には教えないと思うわ」
「じゃあボク達が聞いてもダメって事?」
「ええ。だから私に任せて」
言うとジュディスはそのまま男性の前まで行き、ユーリとカロルもその後に続いた
「こんにちは」
「ごきげんよう、我が同胞殿」
「ジュディスよ」
「私はトート」
ジュディスはにこりと笑ってトートに挨拶をするとトートもジュディスの方へと視線を向けて挨拶をした
「貴方、ミョルゾについて何か知っている事はない? 私達、ミョルゾへ行きたいの。ミョルゾが何処にあるのか・・・そしてどうすれば、其処へ辿り着けるのか、ね」
「辿りついても、何もありゃしない。それなのに何しに行くつもりなのさ」
「あら、クリティア族が自分の同胞の街に興味を持ったってのは行く理由にならない?」
「理由にならなくもない。でも私は知らないんだな、これが」
「貴方の名前を聞いた事があるわ、トート。人間の世界に残るクリティア族をミョルゾへ誘う導き手」
「「!」」
ジュディスの言葉にユーリとカロルは驚いてジュディスとトートを見る
「人間・・・彼等と一緒だから、教えてくれないの?」
「我が同胞以外にミョルゾへの道は教えるな、それが代々の掟だからな」
「なら、そこに言霊使いが一緒にいる、と言うのならどうかしら?」
「! 言霊使いだと」
ジュディスの言葉にトートは驚いて目を見張った
「言霊使い。まだ実在しているんだな」
「ええ。今此処にはいないけれど、ね」
「あんた言霊使いの事知ってるのか?」
「我々と同じく古い一族、そして稀な力を持ち式神を使う者達、と言う事だけはな。実際に会った事はないが・・・」
「言霊使いが、クリティア族と同じく古い一族・・・」
トートの言葉を聞き、ユーリもカロルも少しだけ何か考えるような素振りを見せた
「じゃあ、言霊使いには教えるって事?」
「さっきも言ったが、なんであれ同胞以外には教えられない」
「人間とか言霊使いとかクリティア族とかよりも信頼出来るか出来ないか、じゃないかしら。少なくとも彼等は信用に足る人達だわ」
「・・・もう一度聞くが、何の為にミョルゾを求める?」
「世界が色々とマズイ方向に向かってる。魔導器の所為でな。過去に何が遭ったか、どうすれば止められるか、それを知る為に行く。クリティアも言霊使いも含む、全ての人の為・・・っての所でどうだ?」
ユーリの言葉を聞きトートは腕を組んで少しだけ考えて答えた
「・・・良いだろう。そこであんた達が答えを見つけられるかどうか保証は出来ないが、教えよう。まず、ミョルゾへ行く為にはその道標となる鐘が必要だ」
「鐘?」
「そう、ピピオニア大陸の南の洞窟に隠されている」
「ピピオニア大陸って言っても・・・広いよね?」
「洞窟は赤い花の咲く岸辺にある。それを目印にすれば辿り着けるよ。それから、その洞窟の奥にある扉は我等クリティアにしか開く事が出来ないから」
「どういう事・・・?」
「大丈夫よ。そこは私が何とかするわ」
「それで? その鐘をどうすれば良いんだ?」
「まぁ、焦らないでくれ。人間はせっかちでいけないな。鐘を手に入れたらエゴソーの森へ行くんだ」
「エゴソーの森? それも・・・ピピオニア大陸、だっけ? 聞いた事ある・・・」
「そう、そこはクリティア族にとって神聖なる場所よ。やっぱりあそこがミョルゾに続く扉となる場所・・・」
「そこで鐘を使えばその扉が開く。ただ一つ、問題がある」
「問題?」
トートは頷いて、少しだけ難しい顔をして言う
「そう。今、エゴソーの森は謎の集団によって踏み荒らされてる、連中は大勢で乗り込んだ上に妙な魔導器まで持ち込んでる。目的がなんなのか分からないけどとても気がかりだよ」
「ミョルゾへ行きたいなら、その連中を何とかしろって事か」
「そういう事。私達の聖地をそっとしておいてもらいたいんだ」
「なるほど。つまり、鐘を手に入れてその聖地って所で謎の集団ぶっ飛ばして、鐘を鳴らせば扉は開くって事なんだな」
ユーリが今までの事をまとめて指を鳴らして言うと、トートはそういう事だねと頷いた
「分かったわ・・・ありがとう」
「貴方の前途に幸多からん事を」
「貴方にも・・・みんなの所に戻りましょう」
「ああ。じゃ、・・・?」
ユーリは踵を返し歩き出そうとしていると、ふと何かが目に入った
「ユーリ、どうしたの?」
「悪い、先にリタんとこ戻っててくれ」
「え? あ、ユーリ!」
ユーリはカロルの言葉を遮りそのまま何処かへ走って行った
*
「・・・確かこっちに来てたよな」
カロル達とリタの家に戻ろうとしていると、ユーリはある人物が歩いているのを見て後を追って来た
今いるのはリタの家とは反対の方向で本ばかりある所だった
「こんなとこに用事でも・・って、あいつなら普通に読んでそうだな」
その人物の事を想像して小さく笑っていると、ある場所に目が止まる
「お、いた。リア」
ユーリが声を掛けた人物はリアだった
トートと話しを終えリタの家に戻ろうとしているとリアが何処かに向かって歩いているのが目に入りユーリはそのままリアの後を追い駆けて来たのだった
「・・・・」
声を掛けるがリアはただじっと本棚に並んでいる本を見つめている
「リア」
ユーリはもう一度声を掛けるとリアが少し反応しゆっくりと振り返り、
「・・・ユーリ・ローウェル、」
「・・・え?」
凜とした声が響き、ユーリは声の主であるリアを見る
「貴方は“この子”が大事?」
だが、その声はリアとは違う声だ
ユーリはじっとリアを見つめていると、また凜とした声で聞かれる
「・・・ユーリ・ローウェル、貴方は“この子”が、リア・ルーティアの事が大事?」
「・・・リ、ア・・?」
驚いて目を瞠ったままリアの名前を呼ぶと、リアは一度目を瞑りゆっくりと話す
「・・・・。一つだけ忠告しておくわ」
ユーリを一瞥しリアは目を瞑って小さく息を吐きゆっくり顔を上げる
「この子の事が大事なら、どんな事が遭っても、何が遭っても手放さない事よ」
「・・・。 !?」
先程よりも真剣な表情と声で言われ、その言葉が妙に耳に残りリアを見ると倒れ掛かっているのが見え急いで抱き留めた
「おい、リア」
「・・・・」
「リア!」
「・・・んっ・・・」
声を掛けるが気を失っている感じがし軽くリアの肩を揺さぶると小さい声が聞こえリアはゆっくりと目を開ける
「・・・あれぇ・・、ユーリ・・・?」
「大丈夫か?」
「大丈夫って・・・? !?///」
顔を上げるとユーリと目が合い、更に抱き留められている事に驚いて思わずユーリから離れてしまう
「あれ? 私、なんで・・・? それにどうしてユーリが此処に? ていうか、なんでユーリに抱き留められてたの?」
「・・・もしかして、覚えてないのか?」
「覚えてって・・・?」
ユーリに言われリアは疑問を持ち少しだけ首を傾げるとユーリは驚いた顔をした
「・・・リア」
「?」
「オレ達と別れた後、リタんとこに行ったのか?」
「うん。けど途中で前の依頼人さんと会って話し込んでたの。その後リタの家に向かってたんだけど・・・気付いたらユーリに抱き留められてて・・・」
「・・・・」
お互いの言葉を聞き驚いていたが、リアが頷いた後ユーリは難しい顔をしていた
「ユーリ、どうかした?」
「・・・いや」
「そういう割に難しい顔してるけど・・・」
「・・・・」
「?」
じっとリアを見ているユーリを見てリアは更に首を傾げた
(じゃあさっきのは何だったんだ?)
『この子の事が大事なら――』
「・・・・」
さっきの言葉がまた過ぎり考えているとリアの心配そうな声が聞こえた
「・・・ユーリ?」
「・・・考えても仕方ねえか」
「え?」
「ほら、そろそろリタんとこ行くぞ」
「え、あ、待って」
ユーリはこれ以上考えても答えが出る訳でもないと思い小さく息を吐きリアに声を掛け歩き出し、少し遅れてリアも歩き出した
続く
あとがき
いつも以上に謎なまま終わらせましたw
これは後々色々と関わって来る事だからまだ触れ始めで謎なまま良いんですよ(笑)
てか、連載もとい小説書いたのすっげー久々~
久々だから文章とか可笑しい所あるかも・・・ι(リハビリ中ι)
そのうち修正かけるかなぁ・・・ι
次は・・・、あの話しか・・・
かなり重たくなるだろうなぁ・・・
Beginning walking:歩き始め
2010.07.07