満月の子編
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テムザ山でバウルが始祖の隷長に成長し、魔狩りの剣の追っ手が来ないうちに、私達はバウルに乗ってフィエルティア号まで戻った
そしてバウルは直ぐに船の帆を咥え、そのまま空へと飛んだ
今までの光景とは違う物が目に入り、各々景色を見ていると急にジュディスが倒れた
直ぐに兄さんとエステルが運び、ベッドに寝かせた
ジュディスは疲れが溜まっていた為、その場で倒れてしまった
私達がジュディスの加勢に行ったとはいえ、ジュディスはあまり睡眠を取っていなかったのだろう
実際私も兄さんもそんなに寝ていないから、休まなきゃいけないんだろうけど・・・
(ユーリとちゃんと話さなきゃいけないからね・・・)
そう思いながらユーリを見ていると、今はジュディスを休ませるのを優先して私達も各自休憩を取る事になり、各々好きな所へ行くと兄さんも睡眠を取る為に部屋へと向かって行った
「リアはどうする? なるべく休んだ方が良いけど」
「話してくるのか?」
「うん・・・」
ユーリにはちゃんと話さなきゃいけない、あの時の事も、色々と
そう思っているとアスラとフキが心配そうにじっと私を見ていた
「心配しなくても大丈夫。話したら私もちゃんと休むから」
私は苦笑して答えると、アスラとフキはやっと表情を緩めた
「解った。じゃあ俺達も先に休んでるな」
「うん。何か遭ったら直ぐに知らせるから」
「了解」
言うとアスラとフキは姿を消した
「リア・・・」
それを見送っていると急に後ろから不安そうなカロルの声が聞こえた
「カロル? どうしたの?」
「えっと、・・話しがあるんだけど・・良いかな?」
けどそのカロルの表情はいつも以上に曇っていた
「・・・じゃあ場所変えようか」
その表情を見て、ユーリ達には聞かれたくない事だと分かり私は優しく微笑んでカロルと一緒に船内の一室へと移動した
70.Distinction with me and him
「カロル、話しって・・・?」
部屋に着き私は優しい声でカロルに聞くとカロルはゆっくりと顔を上げて言う
「うん・・・。ドンの事なんだけど」
「ドン・・・?」
ユーリの事や今までの私と兄さん達の事を聞かれると思っていたから意外な人の名前に少しだけ驚いてしまった
「リア、ドンと知り合いだったんだよね。だからボク等が知らないドンも知ってるだろうと思って」
カロルの中でドンの存在はとても大きいものだと言う事は知っていた
ダングレストで生まれ育ったカロルにとって憧れだったドン
けど、彼は街の人々にギルドの鑑と言うものを見せてこの世を去った
勿論カロルも彼の最期を見届けた
そして、カロルの中でまた彼の存在が大きくなり少しずつ変わって来ているのだろう
「じゃあ私と兄さんがドンと会った時の事から話すね」
私はそれを理解して、小さく微笑んでカロルにドンとの事を話し出した
ドンの話しをしている時、カロルは口を挟まずじっとその話しに聴き入っていた
「・・・ありがとう、リア。話してくれて」
「ううん。カロルが聞きたかった事が聞けてたら良いけど」
私はドンと出逢った時から今までの事、そして最期に話した事をカロルに話した
「ドンってやっぱり凄かったんだね」
改めて言っても、本当にドンは偉大だと私自身も思う
これを聞いてカロル自身が何かを見つけて、凛々の明星へと繋げていくのだろうな、と思った
けど、今はまだみんなの気持ちがバラバラになっているから少しだけ不安を感じてしまう
「ボク、まだドンみたいに上手くやっていける自身はないけど、いつかドンが見て笑われないような立派なギルドにしてみせるよ。だから、」
カロルはそこで言葉を切って私を見る
「リアも、ユーリとケジメ付けなきゃだよね」
「! ・・・ふふ、そうね」
カロルの言葉に私は驚いて目を瞠ったが、直ぐに小さく笑って答えた
「ユーリ、テムザ山で『ドンの覚悟を見てまだまだ甘かった事を思い知らされた。討たなきゃいけないヤツは討つ。例えそれが仲間でも始祖の隷長でも、友でも』って言ったんだ。フレンやフェローでも? って聞いたら選んだ道だからって・・・」
「ユーリらしい答えよね」
「え?」
カロルの言葉を聞き、私は小さく微笑んで答えると今度はカロルが驚いた顔をした
「ユーリはね、昔から決めた事は絶対に曲げない人なの。どんなにツライ道を選ぶ事になっても、最後までその道を貫き通す。それが、ユーリなのよ」
「だからリアはユーリがラゴウやキュモールを手に懸けた事を・・・」
「最初はやっぱりショックだったけど、ユーリ一人だけに背負わせたく無かったのもあったから、見届けるって言ったんだと思う」
私の言葉を聞くとカロルは少しだけ黙って考え、少しだけ不安そうな顔をして私を見る
「けど、・・ユーリはリアやセイでも許さないって言ったんだよ?」
「ユーリならそうするかな。それがツラくないって言ったら嘘になるけど、ケジメを付けなきゃいけないのは私も兄さんも同じだから」
昔から一緒にいたけど、話してなかった事は多いから・・・
実際につい最近知った事はまだ話せていないし、言ってない事も多い
だから、ちゃんとケジメを付ける事を私自身も決めた
テムザ山でジュディスに言った通り、エステルがフェローに会いに行くと言ったら、私が兄さんやアスラ達に聞いた事を話さなきゃいけない
勿論私自身もフェローに会って確かめなきゃいけない事があるからまだ全部話せる訳じゃないけど
「心配しないで。これでもみんなよりユーリと付き合いが長いから、ユーリとの話し合いはどうすれば良いかちゃんと解ってるから」
カロルの不安そうな顔と目を見て私は優しく微笑んで言うと、カロルはやっと表情を緩めた
「そうだよね、リアなら大丈夫だよね」
言うとカロルは椅子から降りた
「リア、色々と話してくれてありがとう!」
「私の方こそ、話しを聞いてくれてありがとう」
「うん。あ、そうだ」
カロルは元気に頷いて扉の前まで移動したが、何か思い出し私の方へ視線を向ける
「リアとセイは、これからどうするの?」
「みんなと同じフェローに会いに行くよ」
「じゃあ、一緒って事だよね」
「ええ。仕事がない限りはね」
そう言うとカロルは嬉しそうな顔をした
「良かったぁ、みんな心配だったからさ」
「ごめんね、心配かけて」
「ううん。じゃ、ボク、みんなに伝えてくるね」
言うとカロルは部屋を飛び出して行った
私はその様子を見て苦笑し、カロルの気配が無くなった後少しだけ表情を曇らせた
(・・・フェローの答えを聞いて、一緒にいられたら、だけどね)
そして小さく息を吐いて扉の向こうに言葉を投げた
「盗み聞きって良くないよ、ユーリ」
「最後の方しか聞いてねえよ」
開け放たれた扉の向こうからユーリが入って来て扉を閉めて私の方へと歩いてくる
「最後の方でも聞いてた事には変わりないでしょ」
「細かい事気にすんなって」
ユーリはそのまま私の前の席に座った
「ユーリ、今まで黙ってた事があったのはごめんなさい」
「ジュディと知り合いだった事、始祖の隷長や聖核の事、か?」
「うん・・・。それと、ユーリの正義を見届けるって言ったのにちゃんと見届けられなかった事も・・・」
「それはあん時に謝ってただろ」
「・・・聞こえてたんだ」
「微かに、だったけどな」
言うとユーリは私に向き合い更に真剣な目をする
「さっきカロルに言ってた通り、ちゃんと話してくれるんだよな?」
「うん。けど、私もまだ解らない所があるからそれだけは省くけど良い?」
「ああ、知ってるとこまでで良い」
「解った。じゃあユーリが聞きたい所から話すわ」
私の言葉を聞き、ユーリは気になっていた事を振った
「あん時、何が遭ったんだ」
「・・・あの時、私と兄さんに異変が起きてたの」
「異変?」
「兄さんは平気そうな顔してたけど、実際は結構負担が来てたみたい」
「その原因ってのは何だったんだ?」
「・・・・」
その言葉を聞き少しだけ黙ってしまう
「私に関しては原因は二つ。一つは精神面、」
精神面、そう言葉を聞くとユーリは直ぐにある事を思い出す
「・・やっぱ負担来てたんだな」
ユーリは少しだけバツが悪そうな顔をして悪ぃ・・・と呟いたが、私は薄く笑って小さく首を横に振る
「まあ、あの時に大技使っちゃったからっていうのもあるんだけどね。・・もう一つの方は・・・」
苦笑して言った後一旦言葉を切って固唾を呑んでユーリを見る
「フェローに会って確認したいから、待って欲しいの」
その言葉を聞くとユーリは少しだけ驚いたような顔をした
はっきりと言ったつもりだったけど、少しだけ不安が交ざって声が震えていてた気がした
お互いに何か言おうと口を開くが、直ぐに言葉が出てこなかったが、ユーリは少しだけ息を吐いて違う事を聞いた
「あの後、何処に戻ってたんだ?」
「私と兄さんの生まれ育った場所、そして私達言霊使いが住んでいる所『言霊使いの故郷』」
「言霊使いの故郷・・・?」
「言霊使いが住んでいる所よ。この世界とは別次元にあるけど」
「別次元?」
「言霊使いの云われは昔兄さんやアスラから聞いたでしょ。存在しないものって言われてるのは別次元に住んでいて、故郷の外に出ている言霊使いが少ないからなの」
「リアやセイの他にも言霊使いがいるのか」
「ユーリ、イサキの事覚えてる?」
「確かリアの友達で何度か下町に来た事あるヤツだったよな。イサキも言霊使いなのか?」
「うん。私と兄さんみたいに本家の人間じゃないけどね。そこにはアスラ達式神も住んでる」
「けどアスラ達は神将ってヤツなんだろ」
「アスラ達は私の一族に昔から使えてる式神なの。あの時会ったリンコウもね」
そう言われユーリはあの時に会った青い髪の女性を思い出す
「昔から故郷と下町や世界中の行き来はしてたんだけどね。けど、長時間こっちとの次元の扉を開けておく事は出来ないの。だからあの時急いでたの。それから一日置いて、兄さんやアスラ達に始祖の隷長や聖核、そして今起こっている事をある程度聞いたの」
「リアは最初から始祖の隷長の事知ってた訳じゃなかったんだな」
「少しだけジュディスから聞いてたけどね。バウルが始祖の隷長だって事は知ってたけど、兄さん達から教えて貰うまでは殆ど知らなかったよ。その後はダングレストに行ってドンと会って」
「さっきカロルに話してた通り、か」
ユーリの言葉に私は頷いた
ドンの事に関しては、ユーリも一番ツライ役回りを引き受けたのだからユーリ自身も思う所はあると思う
あの時、ドンと何か話しをしていたのも含め・・・
「その後直ぐにジュディんとこに行ったんだな」
「うん。アスラ達からジュディスとバウルの事も聞いてたから。本当は余裕があればユーリ達を連れて行きたかったんだけどね。・・・?」
言って薄く笑っていると急にユーリが立ち上がって私の前に移動してきた
「・・ユーリ?」
ユーリはじっと私を見つめ私の頭に手を乗せた
「・・・リアもあんま寝てないんだろ」
「・・え、う、うん」
魔狩りの剣達と戦っていたのはジュディスと兄さんとアスラとフキだけど、私も殆ど寝ずの状態で、結界を貼ってバウルの様子を見ていた
みんなと合流して休もうとも思ったけど、やっぱりユーリにはちゃんと話せる所まで話しておきたかったから
そう思っていると少しだけ視界がぼやけた
そして何か温かいものに包まれた気がして顔を上げると直ぐ近くにユーリの顔があった
「疲れてんだろ」
「ちょっとだけ」
「今にも寝そうな顔して言っても説得力ねえぞ」
「でも、ユーリにはちゃんと話しておきたかったから・・・。ちゃんとケジメ、付けておきたかったから」
まだ全部話せた訳じゃない
けど、今言っておくべき事は話せたと思う
「なら、最初のケジメはクリアだ。後の事は寝た後、フェローに会った後にでも考えれば良いだろ」
「・・ユーリは、それで良いの?」
「リアだってまだ解かんねえ事多いんだろ」
「うん・・」
「じゃ、決まりだな。とにかく今はゆっくり休め、後で倒れられても困るしな」
「・・・うん、じゃあ・・そう、する・・ね・・・」
ユーリの優しい声を聞いて自然と微笑みながら、襲ってくる睡魔と戦いながら返事を返した
けど、いつのもユーリの温かさを感じで安心したのか、私はそのままユーリの腕の中で小さな寝息を立てて眠ってしまった
「ホントに寝たな・・・つか、いくらなんでも無防備すぎだろι」
そう言うものの、ユーリは優しく微笑んで自分の腕の中で眠っているリアを見ていた
「・・・ま、安心したのはオレも同じだけどな」
ダングレストで会った時のリアとセイはいつもと違う雰囲気を漂わせ、誰も近付けさせない感じがしていた
それはリアから事情を聞くまでも思っていた事だったが、段々といつもの雰囲気に戻って行きカロルにみんなと一緒にいると言った事と今こうして自分の知っているいつものリアがいる事に安堵し、自然と微笑んでいた
「流石にずっとこの状態じゃゆっくり寝れないよな」
ユーリは苦笑してリアを抱えてベッドへと移動し、少しだけ名残惜しそうにリアをベッドに寝かせた
「・・・ユー、リ」
「?」
毛布を掛けてやっていると急に名前を呼ばれ顔を上げるとリアはぽつりと呟いた
「・・ごめん、・・・ありがと・・・」
「!」
ユーリは驚いて少しだけ目を瞠って起きてるのか? と思い暫くじっとリアを見るがリアはそのまま何も言わず小さな寝息を立てていた
「・・・寝言、か?」
毛布を掛け終えリアの顔を覗き込むと少しだけ身じろぎ小さい声を漏らし気持ち良さそうに寝ていた
「無防備に寝すぎだって・・・。ったく、こういうとこは昔から変わんねえよな」
言うとユーリは小さく笑ってリアの頭を撫でて、
「ゆっくり休めよ」
ユーリは部屋を後にした
続く
あとがき
やっっっっと書き終わったーーーー!!!
此処もどう書くかホンッットに悩みましたι
けど、カロルとの会話は直ぐに浮かんだし此処で絶対に入れておきたかったので冒頭はカロル先生に頑張って貰いましたw
そしてユーリとリアちゃんとの会話、もといケジメ!
ちゃんとケジメがついたかと言われるとあれですがι
でも本編でユーリも言ってる通り、ひとまずはって事で
最後はお互いに安心した感じで、ちょっとだけニヤニヤして貰えてたら嬉しいですw
さ、次回はいよいよフェローに会いに行きます!!
ではまた次回~
Distinction with me and him:私と彼とのケジメ
2010.04.18
そしてバウルは直ぐに船の帆を咥え、そのまま空へと飛んだ
今までの光景とは違う物が目に入り、各々景色を見ていると急にジュディスが倒れた
直ぐに兄さんとエステルが運び、ベッドに寝かせた
ジュディスは疲れが溜まっていた為、その場で倒れてしまった
私達がジュディスの加勢に行ったとはいえ、ジュディスはあまり睡眠を取っていなかったのだろう
実際私も兄さんもそんなに寝ていないから、休まなきゃいけないんだろうけど・・・
(ユーリとちゃんと話さなきゃいけないからね・・・)
そう思いながらユーリを見ていると、今はジュディスを休ませるのを優先して私達も各自休憩を取る事になり、各々好きな所へ行くと兄さんも睡眠を取る為に部屋へと向かって行った
「リアはどうする? なるべく休んだ方が良いけど」
「話してくるのか?」
「うん・・・」
ユーリにはちゃんと話さなきゃいけない、あの時の事も、色々と
そう思っているとアスラとフキが心配そうにじっと私を見ていた
「心配しなくても大丈夫。話したら私もちゃんと休むから」
私は苦笑して答えると、アスラとフキはやっと表情を緩めた
「解った。じゃあ俺達も先に休んでるな」
「うん。何か遭ったら直ぐに知らせるから」
「了解」
言うとアスラとフキは姿を消した
「リア・・・」
それを見送っていると急に後ろから不安そうなカロルの声が聞こえた
「カロル? どうしたの?」
「えっと、・・話しがあるんだけど・・良いかな?」
けどそのカロルの表情はいつも以上に曇っていた
「・・・じゃあ場所変えようか」
その表情を見て、ユーリ達には聞かれたくない事だと分かり私は優しく微笑んでカロルと一緒に船内の一室へと移動した
70.Distinction with me and him
「カロル、話しって・・・?」
部屋に着き私は優しい声でカロルに聞くとカロルはゆっくりと顔を上げて言う
「うん・・・。ドンの事なんだけど」
「ドン・・・?」
ユーリの事や今までの私と兄さん達の事を聞かれると思っていたから意外な人の名前に少しだけ驚いてしまった
「リア、ドンと知り合いだったんだよね。だからボク等が知らないドンも知ってるだろうと思って」
カロルの中でドンの存在はとても大きいものだと言う事は知っていた
ダングレストで生まれ育ったカロルにとって憧れだったドン
けど、彼は街の人々にギルドの鑑と言うものを見せてこの世を去った
勿論カロルも彼の最期を見届けた
そして、カロルの中でまた彼の存在が大きくなり少しずつ変わって来ているのだろう
「じゃあ私と兄さんがドンと会った時の事から話すね」
私はそれを理解して、小さく微笑んでカロルにドンとの事を話し出した
ドンの話しをしている時、カロルは口を挟まずじっとその話しに聴き入っていた
「・・・ありがとう、リア。話してくれて」
「ううん。カロルが聞きたかった事が聞けてたら良いけど」
私はドンと出逢った時から今までの事、そして最期に話した事をカロルに話した
「ドンってやっぱり凄かったんだね」
改めて言っても、本当にドンは偉大だと私自身も思う
これを聞いてカロル自身が何かを見つけて、凛々の明星へと繋げていくのだろうな、と思った
けど、今はまだみんなの気持ちがバラバラになっているから少しだけ不安を感じてしまう
「ボク、まだドンみたいに上手くやっていける自身はないけど、いつかドンが見て笑われないような立派なギルドにしてみせるよ。だから、」
カロルはそこで言葉を切って私を見る
「リアも、ユーリとケジメ付けなきゃだよね」
「! ・・・ふふ、そうね」
カロルの言葉に私は驚いて目を瞠ったが、直ぐに小さく笑って答えた
「ユーリ、テムザ山で『ドンの覚悟を見てまだまだ甘かった事を思い知らされた。討たなきゃいけないヤツは討つ。例えそれが仲間でも始祖の隷長でも、友でも』って言ったんだ。フレンやフェローでも? って聞いたら選んだ道だからって・・・」
「ユーリらしい答えよね」
「え?」
カロルの言葉を聞き、私は小さく微笑んで答えると今度はカロルが驚いた顔をした
「ユーリはね、昔から決めた事は絶対に曲げない人なの。どんなにツライ道を選ぶ事になっても、最後までその道を貫き通す。それが、ユーリなのよ」
「だからリアはユーリがラゴウやキュモールを手に懸けた事を・・・」
「最初はやっぱりショックだったけど、ユーリ一人だけに背負わせたく無かったのもあったから、見届けるって言ったんだと思う」
私の言葉を聞くとカロルは少しだけ黙って考え、少しだけ不安そうな顔をして私を見る
「けど、・・ユーリはリアやセイでも許さないって言ったんだよ?」
「ユーリならそうするかな。それがツラくないって言ったら嘘になるけど、ケジメを付けなきゃいけないのは私も兄さんも同じだから」
昔から一緒にいたけど、話してなかった事は多いから・・・
実際につい最近知った事はまだ話せていないし、言ってない事も多い
だから、ちゃんとケジメを付ける事を私自身も決めた
テムザ山でジュディスに言った通り、エステルがフェローに会いに行くと言ったら、私が兄さんやアスラ達に聞いた事を話さなきゃいけない
勿論私自身もフェローに会って確かめなきゃいけない事があるからまだ全部話せる訳じゃないけど
「心配しないで。これでもみんなよりユーリと付き合いが長いから、ユーリとの話し合いはどうすれば良いかちゃんと解ってるから」
カロルの不安そうな顔と目を見て私は優しく微笑んで言うと、カロルはやっと表情を緩めた
「そうだよね、リアなら大丈夫だよね」
言うとカロルは椅子から降りた
「リア、色々と話してくれてありがとう!」
「私の方こそ、話しを聞いてくれてありがとう」
「うん。あ、そうだ」
カロルは元気に頷いて扉の前まで移動したが、何か思い出し私の方へ視線を向ける
「リアとセイは、これからどうするの?」
「みんなと同じフェローに会いに行くよ」
「じゃあ、一緒って事だよね」
「ええ。仕事がない限りはね」
そう言うとカロルは嬉しそうな顔をした
「良かったぁ、みんな心配だったからさ」
「ごめんね、心配かけて」
「ううん。じゃ、ボク、みんなに伝えてくるね」
言うとカロルは部屋を飛び出して行った
私はその様子を見て苦笑し、カロルの気配が無くなった後少しだけ表情を曇らせた
(・・・フェローの答えを聞いて、一緒にいられたら、だけどね)
そして小さく息を吐いて扉の向こうに言葉を投げた
「盗み聞きって良くないよ、ユーリ」
「最後の方しか聞いてねえよ」
開け放たれた扉の向こうからユーリが入って来て扉を閉めて私の方へと歩いてくる
「最後の方でも聞いてた事には変わりないでしょ」
「細かい事気にすんなって」
ユーリはそのまま私の前の席に座った
「ユーリ、今まで黙ってた事があったのはごめんなさい」
「ジュディと知り合いだった事、始祖の隷長や聖核の事、か?」
「うん・・・。それと、ユーリの正義を見届けるって言ったのにちゃんと見届けられなかった事も・・・」
「それはあん時に謝ってただろ」
「・・・聞こえてたんだ」
「微かに、だったけどな」
言うとユーリは私に向き合い更に真剣な目をする
「さっきカロルに言ってた通り、ちゃんと話してくれるんだよな?」
「うん。けど、私もまだ解らない所があるからそれだけは省くけど良い?」
「ああ、知ってるとこまでで良い」
「解った。じゃあユーリが聞きたい所から話すわ」
私の言葉を聞き、ユーリは気になっていた事を振った
「あん時、何が遭ったんだ」
「・・・あの時、私と兄さんに異変が起きてたの」
「異変?」
「兄さんは平気そうな顔してたけど、実際は結構負担が来てたみたい」
「その原因ってのは何だったんだ?」
「・・・・」
その言葉を聞き少しだけ黙ってしまう
「私に関しては原因は二つ。一つは精神面、」
精神面、そう言葉を聞くとユーリは直ぐにある事を思い出す
「・・やっぱ負担来てたんだな」
ユーリは少しだけバツが悪そうな顔をして悪ぃ・・・と呟いたが、私は薄く笑って小さく首を横に振る
「まあ、あの時に大技使っちゃったからっていうのもあるんだけどね。・・もう一つの方は・・・」
苦笑して言った後一旦言葉を切って固唾を呑んでユーリを見る
「フェローに会って確認したいから、待って欲しいの」
その言葉を聞くとユーリは少しだけ驚いたような顔をした
はっきりと言ったつもりだったけど、少しだけ不安が交ざって声が震えていてた気がした
お互いに何か言おうと口を開くが、直ぐに言葉が出てこなかったが、ユーリは少しだけ息を吐いて違う事を聞いた
「あの後、何処に戻ってたんだ?」
「私と兄さんの生まれ育った場所、そして私達言霊使いが住んでいる所『言霊使いの故郷』」
「言霊使いの故郷・・・?」
「言霊使いが住んでいる所よ。この世界とは別次元にあるけど」
「別次元?」
「言霊使いの云われは昔兄さんやアスラから聞いたでしょ。存在しないものって言われてるのは別次元に住んでいて、故郷の外に出ている言霊使いが少ないからなの」
「リアやセイの他にも言霊使いがいるのか」
「ユーリ、イサキの事覚えてる?」
「確かリアの友達で何度か下町に来た事あるヤツだったよな。イサキも言霊使いなのか?」
「うん。私と兄さんみたいに本家の人間じゃないけどね。そこにはアスラ達式神も住んでる」
「けどアスラ達は神将ってヤツなんだろ」
「アスラ達は私の一族に昔から使えてる式神なの。あの時会ったリンコウもね」
そう言われユーリはあの時に会った青い髪の女性を思い出す
「昔から故郷と下町や世界中の行き来はしてたんだけどね。けど、長時間こっちとの次元の扉を開けておく事は出来ないの。だからあの時急いでたの。それから一日置いて、兄さんやアスラ達に始祖の隷長や聖核、そして今起こっている事をある程度聞いたの」
「リアは最初から始祖の隷長の事知ってた訳じゃなかったんだな」
「少しだけジュディスから聞いてたけどね。バウルが始祖の隷長だって事は知ってたけど、兄さん達から教えて貰うまでは殆ど知らなかったよ。その後はダングレストに行ってドンと会って」
「さっきカロルに話してた通り、か」
ユーリの言葉に私は頷いた
ドンの事に関しては、ユーリも一番ツライ役回りを引き受けたのだからユーリ自身も思う所はあると思う
あの時、ドンと何か話しをしていたのも含め・・・
「その後直ぐにジュディんとこに行ったんだな」
「うん。アスラ達からジュディスとバウルの事も聞いてたから。本当は余裕があればユーリ達を連れて行きたかったんだけどね。・・・?」
言って薄く笑っていると急にユーリが立ち上がって私の前に移動してきた
「・・ユーリ?」
ユーリはじっと私を見つめ私の頭に手を乗せた
「・・・リアもあんま寝てないんだろ」
「・・え、う、うん」
魔狩りの剣達と戦っていたのはジュディスと兄さんとアスラとフキだけど、私も殆ど寝ずの状態で、結界を貼ってバウルの様子を見ていた
みんなと合流して休もうとも思ったけど、やっぱりユーリにはちゃんと話せる所まで話しておきたかったから
そう思っていると少しだけ視界がぼやけた
そして何か温かいものに包まれた気がして顔を上げると直ぐ近くにユーリの顔があった
「疲れてんだろ」
「ちょっとだけ」
「今にも寝そうな顔して言っても説得力ねえぞ」
「でも、ユーリにはちゃんと話しておきたかったから・・・。ちゃんとケジメ、付けておきたかったから」
まだ全部話せた訳じゃない
けど、今言っておくべき事は話せたと思う
「なら、最初のケジメはクリアだ。後の事は寝た後、フェローに会った後にでも考えれば良いだろ」
「・・ユーリは、それで良いの?」
「リアだってまだ解かんねえ事多いんだろ」
「うん・・」
「じゃ、決まりだな。とにかく今はゆっくり休め、後で倒れられても困るしな」
「・・・うん、じゃあ・・そう、する・・ね・・・」
ユーリの優しい声を聞いて自然と微笑みながら、襲ってくる睡魔と戦いながら返事を返した
けど、いつのもユーリの温かさを感じで安心したのか、私はそのままユーリの腕の中で小さな寝息を立てて眠ってしまった
「ホントに寝たな・・・つか、いくらなんでも無防備すぎだろι」
そう言うものの、ユーリは優しく微笑んで自分の腕の中で眠っているリアを見ていた
「・・・ま、安心したのはオレも同じだけどな」
ダングレストで会った時のリアとセイはいつもと違う雰囲気を漂わせ、誰も近付けさせない感じがしていた
それはリアから事情を聞くまでも思っていた事だったが、段々といつもの雰囲気に戻って行きカロルにみんなと一緒にいると言った事と今こうして自分の知っているいつものリアがいる事に安堵し、自然と微笑んでいた
「流石にずっとこの状態じゃゆっくり寝れないよな」
ユーリは苦笑してリアを抱えてベッドへと移動し、少しだけ名残惜しそうにリアをベッドに寝かせた
「・・・ユー、リ」
「?」
毛布を掛けてやっていると急に名前を呼ばれ顔を上げるとリアはぽつりと呟いた
「・・ごめん、・・・ありがと・・・」
「!」
ユーリは驚いて少しだけ目を瞠って起きてるのか? と思い暫くじっとリアを見るがリアはそのまま何も言わず小さな寝息を立てていた
「・・・寝言、か?」
毛布を掛け終えリアの顔を覗き込むと少しだけ身じろぎ小さい声を漏らし気持ち良さそうに寝ていた
「無防備に寝すぎだって・・・。ったく、こういうとこは昔から変わんねえよな」
言うとユーリは小さく笑ってリアの頭を撫でて、
「ゆっくり休めよ」
ユーリは部屋を後にした
続く
あとがき
やっっっっと書き終わったーーーー!!!
此処もどう書くかホンッットに悩みましたι
けど、カロルとの会話は直ぐに浮かんだし此処で絶対に入れておきたかったので冒頭はカロル先生に頑張って貰いましたw
そしてユーリとリアちゃんとの会話、もといケジメ!
ちゃんとケジメがついたかと言われるとあれですがι
でも本編でユーリも言ってる通り、ひとまずはって事で
最後はお互いに安心した感じで、ちょっとだけニヤニヤして貰えてたら嬉しいですw
さ、次回はいよいよフェローに会いに行きます!!
ではまた次回~
Distinction with me and him:私と彼とのケジメ
2010.04.18