満月の子編
夢主名変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ユーリ達はテムザ山に到着し、バウルの苦しそうな声が聞こえ何か起こっていると思い急いで頂上を目指した
「此処がクリティア族の街・・・?」
「街と言うより、街の跡ね」
頂上へと辿り着いたユーリ達は各々別の場所に行き、辺りの様子を伺った
辿り着いた場所は元クリティア族が住んでいた街
リタの言う通り、此処は完全に街の跡だった
辺りには民家だったと思われるものが幾つもあったが、屋根も壁も粉々に砕けていて、街の外にも破片が散らばっている
街の少し奥には湖があるが、その近くの山は先程同様削られていた
「こういう場所にお宝があったりするもんなんじゃが・・・」
「ジュディスは此処に何しに来たんだろう・・・?」
「故郷を懐かしんで・・・って訳でもなさそうだな」
ユーリ達が辺りを見回していると、レイヴンに近くにいたラピードが突然呻りだした
「グルルル」
その様子に気が付き、振り返ると同時に二人の男が飛ばされてきてドサッと音を立て、ユーリとカロルの前に倒れた
「魔狩りの剣!」
カロルがいち早く男達の正体に気付き声を上げていると、騒ぎを聞きつけたエステルとリタがユーリ達の戻って来ていたがエステルが一点を見て驚いて声を出した
「ジュディス!」
「貴方達・・・」
エステルが見ている方を見ると、壊れた民家の横から槍を持ったジュディスが出て来た
お互いに驚いていると魔狩りの剣達は起き上がって腹ただしい顔をしてジュディスを見た
「くそっ!」
「ティソンさんとナンに知らせろ!」
「お前等! うちのモンに手ぇ出すんじゃねぇよ」
ユーリの言葉に驚いてジュディスはユーリを見た
「掟に反しているならケジメはオレ等でつける。引っ込んでな!」
「我々は奥に行って魔物を狩りたいだけだ!」
「邪魔をするな!」
「邪魔してんのはてめえ等だっての!」
その声にみんな反応して声の主を見ると私達と反対側、山道の方にセイとフキがいた
「セイ!」
「みんな手ぇ出すなよ。今のあいつ、本気 だからな」
「え?」
その言葉に皆ユーリを見ると、そこにはいつもと雰囲気が違うユーリの姿があった
「消えとけ。ホントに一戦やらかすか?」
ユーリの雰囲気に圧倒され、魔狩りの剣達は逃げて行った
「ジュディス・・・セイ・・・フキ・・・」
「追って来たのね、私を」
「ああ。ギルドのケジメをつける為にな」
「セイ兄とフキも一緒じゃったんじゃな」
「ああ」
「リアとアスラは?」
「一緒だが今は別の所にいる」
「けど、どうして此処に?」
「ジュディが此処にいるの知ってたんだな」
「ああ」
セイはそう返事を返すがその後は何も言おうとしない
いつもの雰囲気とは違うのが見ているだけでも解る
「セイ、あんたも何か知ってるのね」
「「「・・・・」」」
リタの言葉にセイもフキもジュディスも少しだけ黙る
「それは肯定って事よね?」
「まあな・・・」
レイヴンの言葉を聞きフキは小さく息を吐きながら答えるとカロルが一歩前に出て言う
「ジュディス。全部話して欲しいんだよ」
「何故魔導器を壊したのか。聖核の事、始祖の隷長の事、フェローとの関係。知ってること全部ね。セイ、フキ! 勿論あんた達もよ!」
リタはジュディスを見た後、睨むようにしてセイとフキを見た
「事と次第によっちゃジュディやセイ達でも許す訳にはいかない」
その言葉にエステル達は驚きユーリを見る
「「・・・・」」
「不義には罰を・・・だったかしらね」
ジュディスはセイに視線を送り、セイもフキも静かに目で返事を返した
「・・・そうね。それが良い事なのか正直解らないけど。貴方達はもう此処まで来てしまったのだから。来て」
ジュディスはそう言って歩き出し、エステル、リタ、レイヴン、セイと続いたが、ユーリとカロルとラピードは留まっていた
「ユーリ・・・ジュディスやセイ達でも許さないって・・・」
「・・・ドンの覚悟を見てまだまだ甘かった事を思い知らされた。討たなきゃいけないヤツは討つ。例えそれが仲間でも始祖の隷長でも、友でも」
「フレンやフェローでもって事?」
「・・・ああ。それがオレの選んだ道だ」
「リアでも・・・?」
「・・・・」
カロルの言葉にユーリは少しだけ黙り、ラピードと一緒に静かに歩き出した
「・・・ユーリ」
カロルは悲しそうな目をして小さく呟いた後、急いでユーリの後を追った
69.People who know the truth
街の後から少し離れた坂道を登りきると、広くなっている所に着いた
そして頂上に着くと元の姿に戻っているアスラがいた
皆アスラがいる事に驚いていたが、アスラはこの事態が把握出来ていたのか静かにセイの隣に移動した
ジュディスは全員いる事を確認するとユーリ達に向き合った
「此処が人魔戦争の戦場だった事はもう知ってる?」
「ああ、おっさんに聞いた」
「人魔戦争・・・あの戦争の発端はある魔導器だったの」
「なんですって!」
「その魔導器は発掘されたものじゃなく、テムザの街で開発された新しい技術で作られたもの。ヘルメス式魔導器」
「ヘルメス式・・・」
「初めて聞いたわ・・・それに新しく作られたって・・・」
「魔導器って新しく作れないんじゃないのかの?」
「ヘルメス式魔導器は従来のものよりもエアルを効率良く活動に変換して魔導器技術になる・・・はずだった」
「何か問題が遭ったんだな」
「ヘルメス式の術式を施された魔導器はエアルを大量に消費する」
「消費されたエアルを補う為に各地のエアルクレーネは活動を強め、異常にエアルを放出し始めた」
「そんなの人間どころか全ての生き物が生きていけなくなるわ!」
「ケーブ・モックやカドスの喉笛で見たアレか。そりゃやばいわな」
「人よりも先にヘルメス式魔導器の危険性に気付いた始祖の隷長はヘルメス式魔導器を破壊し始めた」
「それがやがて大きな戦いとなり人魔戦争へと発展した・・・」
ジュディス、セイ、フキ、アスラが順々に説明をしていき、ユーリの言葉に静かに頷いた
「じゃあ、始祖の隷長は世界の為に人と戦ったの?!」
「どうして始祖の隷長は人に伝えなかったんです?! その魔導器は危険だって!」
「互いに有無を言わずに滅ぼしゃ良いってなもんよ。元々相容れない者同士、そこまでする義理は無かった。そんなとこかねぇ」
「あるいは何か他にも理由があったのかもしれんの。でも、この話がジュディ姐やセイ兄達に何の関係があるのじゃ?」
「テムザの街が戦争で滅んで、ヘルメス式魔導器の技術は失われたはずだった・・・」
「まさか! そのヘルメス式がまだ稼働してる?!」
「ああ、俺達も何度か見てるはずだぜ」
「ラゴウの館、エフミドの丘、ガスファロスト。そして・・・」
「フィエルティア号の駆動魔導器か・・・」
「交換した駆動魔導器がヘルメス式だったんじゃな」
「それじゃあ、ジュディスは始祖の隷長に替わって魔導器を壊して・・・」
「でも、リアとセイは? 壊したりしてないよね?」
カロルは疑問符を出してセイとフキとアスラを見るとつられてユーリ達もセイ達を見る
「俺達はこの事実や始祖の隷長の存在を知ってるだけだ」
「それも情報で?」
「いや、昔ジュディスやフキ達から聞いた事だ」
「昔って、ジュディスと知り合いだったんですか?」
「うん。勿論リアもね」
「けど、俺達式神は始祖の隷長と同じように長く生きているから、この事態については知っていた」
フキの言葉を聞き驚いてエステルが口を開こうとした時だった
「なら! 言えば良かったじゃない!」
ずっと黙っていたリタが急に叫び、皆一斉にリタを見るとリタはセイ、フキ、アスラ、ジュディスを睨み付けた
「どうして話さなかったのよ! あんた達で世界を救ってるつもり? バカじゃないの?!」
「「「「・・・・」」」」
その言葉にジュディスは少し寂しそうな顔をして黙ってしまい、セイもフキも黙ってしまう
「・・・外はだいぶ静かになったね」
場所は変わってこちらはリアサイド
リアはバウルを優しく撫でながら少しだけ外の様子を伺う
結界を強めているからこの場所は知っている人しか見えない
だから、心配はないのだが・・・
「・・・ジュディスや兄さん達、無理してないかな」
いくらセイ達が加勢しているにしろ、あまり休む暇もない状態が続いているからリアはずっと心配だった
そう思っていると、外に貼ってある結界が急に光り出した
「! な、何っ!?」
それは危険を知らせるように光っていた
(リア! 魔狩りの剣が攻めて来た!!)
「アスラ! 兄さんとフキとジュディスは無事!」
(うん、みんな無事だよ。勿論ユーリ達もね)
「! ユーリ達!?」
アスラのユーリ達、と言う言葉に驚いてリアは目を瞠った
「(・・・ジュディスの事、追い駆けて来たんだ)そっちは、まだ大丈夫なの?」
(うん。みんなやる気になってるから)
苦笑気味のアスラの声が聞こえ、リアもそんなユーリ達の姿が浮かんだのか小さく笑った
(こっちが片付いたら多分そっちに行くと思うから・・・)
「・・・大丈夫よ」
アスラの心配そうな声が聞こえリアは薄く笑って答えた
「私も、覚悟決めなきゃ、だから」
リアは強い眼差しをして言うとアスラはリアの決意の籠もった声を聞き小さく笑って返事を返した
(・・・解った。なら、終わったら行くよ)
「うん・・・」
アスラと連絡を終えると、リアは一旦目を閉じて息を吐きまたバウルを優しく撫でた
「バウル、みんなも外で頑張ってる。だから、私達も、此処で頑張ろう」
「キュウゥゥン」
リアはバウルに声を掛けじっと見守っていた
「! リア!」
暫くすると外が静かになり、エステルの驚いた声が聞こえゆっくりと振り返ると、ジュディスがユーリ達を連れて結界の中に入って来た
「・・・久しぶり、みんな」
リアは薄く笑うとまたバウルへと視線を戻す
バウルの身体は先程よりも強い光を放っていた
「・・・これは」
「バウルは今始祖の隷長に成長してる途中なの」
エステルが怪我をしているバウルに治癒術を掛けようとするがジュディスがそれを止める
「貴方にとってわたしの力は毒なんですよね・・・」
「傷を癒せるってのがエステルの力じゃないぜ」
「え?」
「ベリウスの言葉・・・覚えてない?」
ユーリとリタにそう言われエステルはベリウスの言葉を思い出し小さく呟いた
「慈しむ心・・・」
「バウルにも伝わっているわ。きっと・・・。貴女の気持ち」
「ええ」
ジュディスの言葉にリアも頷くとエステルはリアとジュディスを交互に見ると、突然バウルが一声鳴き、眩い光が放たれた
そしてその光が消えた瞬間、バウルは宙に浮かんでいた
バウルの姿は前より更に大きくなり、見た感じ大きなクジラのような姿だった
「おほー」
「凄い・・・」
「頑張ったわね。バウル」
「新たな始祖の隷長の誕生、だな」
「うん」
「どうやら相棒はもう大丈夫のようだな」
「ええ。ありがとう、バウルを守ってくれて・・・私だけだときっと守りきれなかったわ。セイもフキもアスラも、そしてリアも本当にありがとう」
「仲間だもん。当たり前だよ!」
「じゃの!」
「ああ」
カロルの言葉にリア達も笑って同意しているとバウルがリア達の近くに降りて来た
「バウル、良かった」
リアは優しくバウルを撫でてあげているとエステルもバウルに近付いてそっと触れると、バウルは瞬きをした
「言ったでしょう? ちゃんと伝わってるって」
エステルはそのままバウルを撫でているとバウルは気持ちよさそうに目を細めた
「ふふ」
バウルの様子を見てエステルは嬉しそうに笑いリア達も微笑んでいるとジュディスが真剣な表情をしてエステルを見た
「フェローにも伝わるかもしれない」
そう声が聞こえ皆、ジュディスとエステルを見る
「会う? フェローに」
「決めるのはエステルだ」
ジュディスとユーリの言葉にエステルに視線が集まる
エステルは一呼吸置いて真剣な表情をしてリア達を見た
「・・・会います。それがわたしの旅の目的だから」
「良いの? 殺されちゃうかもしれないのよ」
「はい。わたしも覚悟を決めなきゃ・・・」
「そろそろ魔狩り剣の増援が来そうよ。ややこしくなる前に移動した方が良いんじゃない?」
レイヴンはちらりと後ろを見て言うと微かに人の気配が近付いて来ていた
「でも下りる道一つしかないよ。鉢合わせちゃう」
「上が開いてるのじゃ」
「んな無茶な・・・」
「乗って。とりあえずフィエルティア号まで飛ぶわ。話の続きはそこで、ね」
そう言ってジュディスはバウルの背に乗り、リアとセイもその後に続き、ユーリ達は顔を見合わせた後、バウルの背中に乗った
全員が背中に乗ったのを確認するとバウルはゆっくりと浮上してフィエルティア号へと向かい出した
続く
あとがき
ようやく此処まで完成~
けど、まだ謎は多いままですが・・・
リアちゃんが何か決意したのは次回ちゃんと書けると良いなw
でも冒頭は意外な子と喋ってたり!?ww
良し、頑張って書くぞ~!!
People who know the truth:真実を知る者達
2010.04.13
「此処がクリティア族の街・・・?」
「街と言うより、街の跡ね」
頂上へと辿り着いたユーリ達は各々別の場所に行き、辺りの様子を伺った
辿り着いた場所は元クリティア族が住んでいた街
リタの言う通り、此処は完全に街の跡だった
辺りには民家だったと思われるものが幾つもあったが、屋根も壁も粉々に砕けていて、街の外にも破片が散らばっている
街の少し奥には湖があるが、その近くの山は先程同様削られていた
「こういう場所にお宝があったりするもんなんじゃが・・・」
「ジュディスは此処に何しに来たんだろう・・・?」
「故郷を懐かしんで・・・って訳でもなさそうだな」
ユーリ達が辺りを見回していると、レイヴンに近くにいたラピードが突然呻りだした
「グルルル」
その様子に気が付き、振り返ると同時に二人の男が飛ばされてきてドサッと音を立て、ユーリとカロルの前に倒れた
「魔狩りの剣!」
カロルがいち早く男達の正体に気付き声を上げていると、騒ぎを聞きつけたエステルとリタがユーリ達の戻って来ていたがエステルが一点を見て驚いて声を出した
「ジュディス!」
「貴方達・・・」
エステルが見ている方を見ると、壊れた民家の横から槍を持ったジュディスが出て来た
お互いに驚いていると魔狩りの剣達は起き上がって腹ただしい顔をしてジュディスを見た
「くそっ!」
「ティソンさんとナンに知らせろ!」
「お前等! うちのモンに手ぇ出すんじゃねぇよ」
ユーリの言葉に驚いてジュディスはユーリを見た
「掟に反しているならケジメはオレ等でつける。引っ込んでな!」
「我々は奥に行って魔物を狩りたいだけだ!」
「邪魔をするな!」
「邪魔してんのはてめえ等だっての!」
その声にみんな反応して声の主を見ると私達と反対側、山道の方にセイとフキがいた
「セイ!」
「みんな手ぇ出すなよ。今のあいつ、
「え?」
その言葉に皆ユーリを見ると、そこにはいつもと雰囲気が違うユーリの姿があった
「消えとけ。ホントに一戦やらかすか?」
ユーリの雰囲気に圧倒され、魔狩りの剣達は逃げて行った
「ジュディス・・・セイ・・・フキ・・・」
「追って来たのね、私を」
「ああ。ギルドのケジメをつける為にな」
「セイ兄とフキも一緒じゃったんじゃな」
「ああ」
「リアとアスラは?」
「一緒だが今は別の所にいる」
「けど、どうして此処に?」
「ジュディが此処にいるの知ってたんだな」
「ああ」
セイはそう返事を返すがその後は何も言おうとしない
いつもの雰囲気とは違うのが見ているだけでも解る
「セイ、あんたも何か知ってるのね」
「「「・・・・」」」
リタの言葉にセイもフキもジュディスも少しだけ黙る
「それは肯定って事よね?」
「まあな・・・」
レイヴンの言葉を聞きフキは小さく息を吐きながら答えるとカロルが一歩前に出て言う
「ジュディス。全部話して欲しいんだよ」
「何故魔導器を壊したのか。聖核の事、始祖の隷長の事、フェローとの関係。知ってること全部ね。セイ、フキ! 勿論あんた達もよ!」
リタはジュディスを見た後、睨むようにしてセイとフキを見た
「事と次第によっちゃジュディやセイ達でも許す訳にはいかない」
その言葉にエステル達は驚きユーリを見る
「「・・・・」」
「不義には罰を・・・だったかしらね」
ジュディスはセイに視線を送り、セイもフキも静かに目で返事を返した
「・・・そうね。それが良い事なのか正直解らないけど。貴方達はもう此処まで来てしまったのだから。来て」
ジュディスはそう言って歩き出し、エステル、リタ、レイヴン、セイと続いたが、ユーリとカロルとラピードは留まっていた
「ユーリ・・・ジュディスやセイ達でも許さないって・・・」
「・・・ドンの覚悟を見てまだまだ甘かった事を思い知らされた。討たなきゃいけないヤツは討つ。例えそれが仲間でも始祖の隷長でも、友でも」
「フレンやフェローでもって事?」
「・・・ああ。それがオレの選んだ道だ」
「リアでも・・・?」
「・・・・」
カロルの言葉にユーリは少しだけ黙り、ラピードと一緒に静かに歩き出した
「・・・ユーリ」
カロルは悲しそうな目をして小さく呟いた後、急いでユーリの後を追った
69.People who know the truth
街の後から少し離れた坂道を登りきると、広くなっている所に着いた
そして頂上に着くと元の姿に戻っているアスラがいた
皆アスラがいる事に驚いていたが、アスラはこの事態が把握出来ていたのか静かにセイの隣に移動した
ジュディスは全員いる事を確認するとユーリ達に向き合った
「此処が人魔戦争の戦場だった事はもう知ってる?」
「ああ、おっさんに聞いた」
「人魔戦争・・・あの戦争の発端はある魔導器だったの」
「なんですって!」
「その魔導器は発掘されたものじゃなく、テムザの街で開発された新しい技術で作られたもの。ヘルメス式魔導器」
「ヘルメス式・・・」
「初めて聞いたわ・・・それに新しく作られたって・・・」
「魔導器って新しく作れないんじゃないのかの?」
「ヘルメス式魔導器は従来のものよりもエアルを効率良く活動に変換して魔導器技術になる・・・はずだった」
「何か問題が遭ったんだな」
「ヘルメス式の術式を施された魔導器はエアルを大量に消費する」
「消費されたエアルを補う為に各地のエアルクレーネは活動を強め、異常にエアルを放出し始めた」
「そんなの人間どころか全ての生き物が生きていけなくなるわ!」
「ケーブ・モックやカドスの喉笛で見たアレか。そりゃやばいわな」
「人よりも先にヘルメス式魔導器の危険性に気付いた始祖の隷長はヘルメス式魔導器を破壊し始めた」
「それがやがて大きな戦いとなり人魔戦争へと発展した・・・」
ジュディス、セイ、フキ、アスラが順々に説明をしていき、ユーリの言葉に静かに頷いた
「じゃあ、始祖の隷長は世界の為に人と戦ったの?!」
「どうして始祖の隷長は人に伝えなかったんです?! その魔導器は危険だって!」
「互いに有無を言わずに滅ぼしゃ良いってなもんよ。元々相容れない者同士、そこまでする義理は無かった。そんなとこかねぇ」
「あるいは何か他にも理由があったのかもしれんの。でも、この話がジュディ姐やセイ兄達に何の関係があるのじゃ?」
「テムザの街が戦争で滅んで、ヘルメス式魔導器の技術は失われたはずだった・・・」
「まさか! そのヘルメス式がまだ稼働してる?!」
「ああ、俺達も何度か見てるはずだぜ」
「ラゴウの館、エフミドの丘、ガスファロスト。そして・・・」
「フィエルティア号の駆動魔導器か・・・」
「交換した駆動魔導器がヘルメス式だったんじゃな」
「それじゃあ、ジュディスは始祖の隷長に替わって魔導器を壊して・・・」
「でも、リアとセイは? 壊したりしてないよね?」
カロルは疑問符を出してセイとフキとアスラを見るとつられてユーリ達もセイ達を見る
「俺達はこの事実や始祖の隷長の存在を知ってるだけだ」
「それも情報で?」
「いや、昔ジュディスやフキ達から聞いた事だ」
「昔って、ジュディスと知り合いだったんですか?」
「うん。勿論リアもね」
「けど、俺達式神は始祖の隷長と同じように長く生きているから、この事態については知っていた」
フキの言葉を聞き驚いてエステルが口を開こうとした時だった
「なら! 言えば良かったじゃない!」
ずっと黙っていたリタが急に叫び、皆一斉にリタを見るとリタはセイ、フキ、アスラ、ジュディスを睨み付けた
「どうして話さなかったのよ! あんた達で世界を救ってるつもり? バカじゃないの?!」
「「「「・・・・」」」」
その言葉にジュディスは少し寂しそうな顔をして黙ってしまい、セイもフキも黙ってしまう
「・・・外はだいぶ静かになったね」
場所は変わってこちらはリアサイド
リアはバウルを優しく撫でながら少しだけ外の様子を伺う
結界を強めているからこの場所は知っている人しか見えない
だから、心配はないのだが・・・
「・・・ジュディスや兄さん達、無理してないかな」
いくらセイ達が加勢しているにしろ、あまり休む暇もない状態が続いているからリアはずっと心配だった
そう思っていると、外に貼ってある結界が急に光り出した
「! な、何っ!?」
それは危険を知らせるように光っていた
(リア! 魔狩りの剣が攻めて来た!!)
「アスラ! 兄さんとフキとジュディスは無事!」
(うん、みんな無事だよ。勿論ユーリ達もね)
「! ユーリ達!?」
アスラのユーリ達、と言う言葉に驚いてリアは目を瞠った
「(・・・ジュディスの事、追い駆けて来たんだ)そっちは、まだ大丈夫なの?」
(うん。みんなやる気になってるから)
苦笑気味のアスラの声が聞こえ、リアもそんなユーリ達の姿が浮かんだのか小さく笑った
(こっちが片付いたら多分そっちに行くと思うから・・・)
「・・・大丈夫よ」
アスラの心配そうな声が聞こえリアは薄く笑って答えた
「私も、覚悟決めなきゃ、だから」
リアは強い眼差しをして言うとアスラはリアの決意の籠もった声を聞き小さく笑って返事を返した
(・・・解った。なら、終わったら行くよ)
「うん・・・」
アスラと連絡を終えると、リアは一旦目を閉じて息を吐きまたバウルを優しく撫でた
「バウル、みんなも外で頑張ってる。だから、私達も、此処で頑張ろう」
「キュウゥゥン」
リアはバウルに声を掛けじっと見守っていた
「! リア!」
暫くすると外が静かになり、エステルの驚いた声が聞こえゆっくりと振り返ると、ジュディスがユーリ達を連れて結界の中に入って来た
「・・・久しぶり、みんな」
リアは薄く笑うとまたバウルへと視線を戻す
バウルの身体は先程よりも強い光を放っていた
「・・・これは」
「バウルは今始祖の隷長に成長してる途中なの」
エステルが怪我をしているバウルに治癒術を掛けようとするがジュディスがそれを止める
「貴方にとってわたしの力は毒なんですよね・・・」
「傷を癒せるってのがエステルの力じゃないぜ」
「え?」
「ベリウスの言葉・・・覚えてない?」
ユーリとリタにそう言われエステルはベリウスの言葉を思い出し小さく呟いた
「慈しむ心・・・」
「バウルにも伝わっているわ。きっと・・・。貴女の気持ち」
「ええ」
ジュディスの言葉にリアも頷くとエステルはリアとジュディスを交互に見ると、突然バウルが一声鳴き、眩い光が放たれた
そしてその光が消えた瞬間、バウルは宙に浮かんでいた
バウルの姿は前より更に大きくなり、見た感じ大きなクジラのような姿だった
「おほー」
「凄い・・・」
「頑張ったわね。バウル」
「新たな始祖の隷長の誕生、だな」
「うん」
「どうやら相棒はもう大丈夫のようだな」
「ええ。ありがとう、バウルを守ってくれて・・・私だけだときっと守りきれなかったわ。セイもフキもアスラも、そしてリアも本当にありがとう」
「仲間だもん。当たり前だよ!」
「じゃの!」
「ああ」
カロルの言葉にリア達も笑って同意しているとバウルがリア達の近くに降りて来た
「バウル、良かった」
リアは優しくバウルを撫でてあげているとエステルもバウルに近付いてそっと触れると、バウルは瞬きをした
「言ったでしょう? ちゃんと伝わってるって」
エステルはそのままバウルを撫でているとバウルは気持ちよさそうに目を細めた
「ふふ」
バウルの様子を見てエステルは嬉しそうに笑いリア達も微笑んでいるとジュディスが真剣な表情をしてエステルを見た
「フェローにも伝わるかもしれない」
そう声が聞こえ皆、ジュディスとエステルを見る
「会う? フェローに」
「決めるのはエステルだ」
ジュディスとユーリの言葉にエステルに視線が集まる
エステルは一呼吸置いて真剣な表情をしてリア達を見た
「・・・会います。それがわたしの旅の目的だから」
「良いの? 殺されちゃうかもしれないのよ」
「はい。わたしも覚悟を決めなきゃ・・・」
「そろそろ魔狩り剣の増援が来そうよ。ややこしくなる前に移動した方が良いんじゃない?」
レイヴンはちらりと後ろを見て言うと微かに人の気配が近付いて来ていた
「でも下りる道一つしかないよ。鉢合わせちゃう」
「上が開いてるのじゃ」
「んな無茶な・・・」
「乗って。とりあえずフィエルティア号まで飛ぶわ。話の続きはそこで、ね」
そう言ってジュディスはバウルの背に乗り、リアとセイもその後に続き、ユーリ達は顔を見合わせた後、バウルの背中に乗った
全員が背中に乗ったのを確認するとバウルはゆっくりと浮上してフィエルティア号へと向かい出した
続く
あとがき
ようやく此処まで完成~
けど、まだ謎は多いままですが・・・
リアちゃんが何か決意したのは次回ちゃんと書けると良いなw
でも冒頭は意外な子と喋ってたり!?ww
良し、頑張って書くぞ~!!
People who know the truth:真実を知る者達
2010.04.13