満月の子編
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「人の命は尊い物。人間なんてそう長生き出来る生き物じゃないんだから・・・」
それはアスラがいつも口にしていた言葉
言霊使いはそれを一番身近に感じている事だった
だけど、その事を今回一番実感したかもしれない
そう思っていると何かふかふかしたものに横になっていると意識が錯覚し始めた
「・・・うっ・・・あれぇ?」
意識が戻り、私は起き上がり周りを見た
何処かの家のようで私達は一人一人ベッドの上に寝かされていた
窓の外からは鳥の囀りや子供達の声が聞こえ、緑の葉が見える
「・・・確か、砂漠で倒れて・・・それから・・・」
途切れ途切れで砂漠での出来事を思い出す
(確かあのエイみたいな魔物と戦って、みんな体力が尽きて・・・)
そこまで思い出してみんなを見るとまだ眠っていて、どうやら私が最初に目覚めたようだった
このまま起こすのも悪い気がして、みんなを起こさないようにゆっくりとベッドから降りた
「あ、目が覚めたんですね」
部屋を出ると廊下を掃除していた女性が私の姿を見つけ声を掛けた
「・・・はい。あの・・・貴女が助けてくれたんですか?」
「いいえ。貴方達が砂漠で倒れていた所を誰かが助けてくれたみたいなの」
「その人、どんな人か解りませんか?」
「ごめんないさい。解らないわ」
「そうですか・・・」
そこで言葉を切ると女性は部屋の中を見て私に視線を戻す
「まだお連れの方々は休んでいるようですし、ゆっくりしていって下さい」
「はい。有り難う御座います。あの、もう一つ聞いても良いですか?」
「はい、なんなりと」
私は疑問に思っている事をその女性に聞いてみた
「この街はなんという街ですか?」
「この街は・・・」
59.雲居の君
「・・・この街が、あの日誌に書いてあったヨームゲン・・・」
あれから私は外に出て来た
女性からこの街の名前を聞き、驚いてしまった
私が知っている限りではヨームゲンと言う街はないし、地図にも載っていない
念の為、部屋に戻って地図で確認したけどやっぱり載っていなかった
「・・・・・」
地図を仕舞って私はまた辺りを見て、ユーリ達と自分を見た
あの時、私達は疲労していて、所々に怪我をしていた
けど、今見る限りじゃ何処にも怪我の痕はない
「・・・あの人が使った訳じゃなさそうだけど・・」
そこで一旦考えるのをやめて、例の紅の小箱を持って宿の外に出た
そこは時間がのんびりと流れているように感じるようなとても豊な所だった
街の人々はこの豊かさに馴染んでいるような表情をしている
けど、彼等が着ている服は今私達が着ているものとは違う感じがした
「・・・。!?」
そしてふと空を見上げると、そこには無くてはならないものが見当たらなかった
「・・・結界が、ない?!」
この街には無くてはならないもの、結界魔導器が見当たらなかった
「・・・結界がない街。砂漠の中にある地図にも載っていない街で、結界が必要・・・」
そしてある事を思い出し、私は表情を変えて駆け出した
暫く街の人達から情報を集め、私は街の中央にある小さな見晴台に来ていて、手摺りに寄り掛かって海を見て集めた情報を整理していた
「結界がない街、ヨームゲン・・・。砂漠の中にある街で、結界が必要・・・」
確かにこの街は砂漠が近いのに結界の一つも見当たらない
それどころか街の人達は魔物に怯える様子もなく穏やかな表情 をしていて、砂漠の中にある街とは思えないほど緑豊かで気持ちの良い風が吹いている
けど、どことなく不思議な感覚があった
「この感覚、なんとなくだけど・・・」
「その箱・・・」
「?」
ふと後ろから女性の声が聞こえ振り向くと、年若い女性が私が持っている紅い小箱をじっと見ていた
「この箱の事、ご存知なんですか?」
「はい。その箱は・・・ロンチーの持っていた・・・それを何処で・・・?」
「アーセルム号と言う船の中で見つけました」
「アーセルム号!? では、ロンチーに会いませんでしたか?」
こう答えると彼女は必死の表情で聞き返した
「ロンチー?」
「あ、私の恋人の名前です。 ・・・すみません、突然で」
(恋人・・・? じゃあこの人が、あの日誌に書いてあったユイファンさん?)
ユイファンさんは首を傾げている私を見て少しだけテレたような申し訳ない顔をした
「・・・私は・・・、!?」
そう言い掛けて、一瞬の違和感に気付きそこで言葉を切った
「あ、あの・・・?」
そして今度はユイファンさんが首を傾げた
「あ、えっと、私と今宿で休んでいる仲間達が見たのはその船だけなんです」
「そ、そうですか・・・」
私はその違和感を誤魔化すように答えるとユイファンさんは表情を曇らせた
「あの、貴女の名前を聞いて良いですか?」
「あ、私はユイファンと言います」
そこでやっぱり彼女があのアーセルム号の日記にあった名前の人だと再確認し、話しを続けた
「ユイファンさんは、橙明の核晶と言う物はご存じですか?」
「結界を作る為に必要な物だと賢人様がおっしゃっていました」
そこまで聞くと私は持っていた紅の小箱をすっと前に出した
「私はこの箱を届けに来たんです」
「え?」
「アーセルム号を見つけて中に入った時、中には誰もいませんでした。けど、この箱を見つけた時に、この箱をあるべき場所に届けて欲しい、と言う気持ちが伝わってきました。それは多分、貴女の恋人であるロンチーさんの気持ちだったと思うんです」
「ロンチーの?」
私は頷いて箱を見て話しを続ける
「だからその気持ちを私と仲間達が引き継いで、このヨームゲンまでやって着たんです」
「そう、だったんですか」
「多分、この中にその橙明の核晶と言う物が入っていると思うんです。だからこれは貴女が受け取って下さい」
ユイファンさんは少しだけ俯いたが、私はニコリと笑ってそう伝えるとユイファンさんも微笑んで頷き、箱を受け取った
そしてポケットから鍵を取り出した
鍵を鍵穴に差込みゆっくり回すとあれほど固く閉ざされていた箱ががちゃりと音を立ててあっさりと開いてしまった
開いた箱から出てきたのは青く透き通った光を放つ大きめの結晶だった
「・・・これが、橙明の核晶?」
「私も本物は始めて見ました・・・」
その綺麗な結晶である橙明の核晶を見た私とユイファンさんは、自然とそう呟いていた
それはとても綺麗な結晶、だけど、何となくだけど、心が締め付けられるような感じがした
「これでこの街の結界を賢人様に作っていただけます」
「その賢人様っと言う人は・・・?」
「賢人様は、砂漠の向こうからいらしたクリティア族の偉いお方です」
「クリティア族・・・?」
まさか此処でクリティア族の名前が出てくるとは思っていなく、そう呟いてしまった
確かに魔導器を作り出したのはクリティア族だ
でも今の技術では魔導器を作り出すのは難しい事だ
「・・・魔導器を作れる人がまだいるって事・・?」
「ブラス・・・ティ・・・ア?・・」
いつの間にか考えていた事が言葉になっていたようで、その言葉を聞くとユイファンさんは首を傾げた
その様子を見る限り、彼女は魔導器の存在を知らないようだった
否、彼女だけじゃない、恐らくその賢人様と言う人以外は、魔導器の事を知らないのだろう
「その賢人様は何処にいるんですか?」
「街の一番奥の家にいらっしゃいます」
そう言ってユイファンさんはその家を指指してくれた
「じゃあ、私は仲間と一緒に賢人様に会いに行きます」
「なら、この橙明の核晶を持って行って頂けますか?」
「え?」
そう言われ思わず目を瞠ってユイファンさんを見た
「貴女はさっきこの箱をあるべき場所に届けて欲しいと言う思いを届けに来たと言いました。きっとロンチーが貴女に届けて欲しいと願いを託したんだと思います。そしてこの箱は私の所へ戻って来た。私はロンチーの思いと、この箱が戻って来た事だけでも十分嬉しいです」
ユイファンさんはそう言うと箱を大事に抱えてニコリと笑って答えた
「だから橙明の核晶は貴女と仲間の方が賢人様に届けるのが一番だと思うんです。だからお願いします」
「解りました。じゃあ橙明の核晶は私と仲間が責任を持って賢人様に持って行きますね」
「はい。お願いします」
ユイファンさんの気持ちが伝わり、私は橙明の核晶を受け取って、お互いに会釈をしてその場を離れた
「リア」
そう声が聞こえ前を見ると兄さんがいた
「兄さん、ユーリ達は?」
「あいつ等ならもうすぐ来るぞ」
どうやら兄さん達も目が覚めた後に情報収集の為に兄さんとレイヴン、ラピードが情報集めをしていたようだった
そして先に兄さんだけ此処に来たようだった
「アスラは?」
「故郷に戻って休んでるぜ」
「あ、そっか」
あの時かなり体力を削られてしまったから、故郷に戻って休んだ方が早く回復するから故郷に戻ったのだろう
「そう言えばアルフとライラの両親は?」
「無事だ。今街の中を見て回ってる所だ」
それを聞き安堵の息を吐くと兄さんが私が持っている物に目を止めた
「・・・それ、何だ?」
「あ、これ・・・」
「リア」
聞き覚えのある声が聞こえ振り向くと、ユーリ達が私達の所に向かって歩いて来ていた
「ユーリ、みんな、目が覚めたんだ」
「ああ。リアも無事みたいだな」
「それ、何?」
リタは直ぐに私が持っている物に目が止まり、みんなも惹かれるようにそれを見た
「これが、あの日誌に書いてあった橙明の核晶だって」
「橙明の核晶! これが・・・」
「ピカピカキラキラ、海面で瞬く夜光虫よりもキレイなお宝なのじゃ」
橙明の核晶と聞き、みんな驚いてまた橙明の核晶見て、パティとカロルが弾んだ声を上げ、リタは魔導士らしく興味深げに橙明の核晶を見ていた
「でも、どうやって箱を開けたのかしら?」
「みんなが休んでる間に、あの箱と鍵の持ち主と会ったの」
「じゃあ思いを届けられたって事です?」
「ええ。ごめんね、一緒に届けられなくて」
「いいえ。本人に届いたならそれで十分です」
そう言うとエステルは安心した顔をした
「それで、何でリアちゃんが橙明の核晶を持ってるの?」
「ユイファンさんから、私達から賢人様に届けて欲しいって言われたの」
「ユイファン・・? 賢人様・・・?」
「色々と思う所はあるだろうけど、とにかく賢人様がいる家に行こう」
みんな次々に解らない事が出て来て頭の上に疑問符が出ていたけど、私は苦笑して答えて歩き出し、その後にみんなも続いた
続く
あとがき
やっと完成しました、ヨームゲン到着ww
箱版と違う感じで仕上げるとなると、やっぱり小箱を預かった辺りの事を此処で出すべきだろうと思ってこういう形にしてみました
まあリアちゃんがちょっと違和感を感じている所はありますが、それは次回話します
とりあえず、橙明の核晶を預かったので賢人様に届けにいきますけどね
次は久々にあの人の登場です
思ってる所まで書けると良いけどなぁ・・・ι
2010.03.17
それはアスラがいつも口にしていた言葉
言霊使いはそれを一番身近に感じている事だった
だけど、その事を今回一番実感したかもしれない
そう思っていると何かふかふかしたものに横になっていると意識が錯覚し始めた
「・・・うっ・・・あれぇ?」
意識が戻り、私は起き上がり周りを見た
何処かの家のようで私達は一人一人ベッドの上に寝かされていた
窓の外からは鳥の囀りや子供達の声が聞こえ、緑の葉が見える
「・・・確か、砂漠で倒れて・・・それから・・・」
途切れ途切れで砂漠での出来事を思い出す
(確かあのエイみたいな魔物と戦って、みんな体力が尽きて・・・)
そこまで思い出してみんなを見るとまだ眠っていて、どうやら私が最初に目覚めたようだった
このまま起こすのも悪い気がして、みんなを起こさないようにゆっくりとベッドから降りた
「あ、目が覚めたんですね」
部屋を出ると廊下を掃除していた女性が私の姿を見つけ声を掛けた
「・・・はい。あの・・・貴女が助けてくれたんですか?」
「いいえ。貴方達が砂漠で倒れていた所を誰かが助けてくれたみたいなの」
「その人、どんな人か解りませんか?」
「ごめんないさい。解らないわ」
「そうですか・・・」
そこで言葉を切ると女性は部屋の中を見て私に視線を戻す
「まだお連れの方々は休んでいるようですし、ゆっくりしていって下さい」
「はい。有り難う御座います。あの、もう一つ聞いても良いですか?」
「はい、なんなりと」
私は疑問に思っている事をその女性に聞いてみた
「この街はなんという街ですか?」
「この街は・・・」
59.雲居の君
「・・・この街が、あの日誌に書いてあったヨームゲン・・・」
あれから私は外に出て来た
女性からこの街の名前を聞き、驚いてしまった
私が知っている限りではヨームゲンと言う街はないし、地図にも載っていない
念の為、部屋に戻って地図で確認したけどやっぱり載っていなかった
「・・・・・」
地図を仕舞って私はまた辺りを見て、ユーリ達と自分を見た
あの時、私達は疲労していて、所々に怪我をしていた
けど、今見る限りじゃ何処にも怪我の痕はない
「・・・あの人が使った訳じゃなさそうだけど・・」
そこで一旦考えるのをやめて、例の紅の小箱を持って宿の外に出た
そこは時間がのんびりと流れているように感じるようなとても豊な所だった
街の人々はこの豊かさに馴染んでいるような表情をしている
けど、彼等が着ている服は今私達が着ているものとは違う感じがした
「・・・。!?」
そしてふと空を見上げると、そこには無くてはならないものが見当たらなかった
「・・・結界が、ない?!」
この街には無くてはならないもの、結界魔導器が見当たらなかった
「・・・結界がない街。砂漠の中にある地図にも載っていない街で、結界が必要・・・」
そしてある事を思い出し、私は表情を変えて駆け出した
暫く街の人達から情報を集め、私は街の中央にある小さな見晴台に来ていて、手摺りに寄り掛かって海を見て集めた情報を整理していた
「結界がない街、ヨームゲン・・・。砂漠の中にある街で、結界が必要・・・」
確かにこの街は砂漠が近いのに結界の一つも見当たらない
それどころか街の人達は魔物に怯える様子もなく穏やかな
けど、どことなく不思議な感覚があった
「この感覚、なんとなくだけど・・・」
「その箱・・・」
「?」
ふと後ろから女性の声が聞こえ振り向くと、年若い女性が私が持っている紅い小箱をじっと見ていた
「この箱の事、ご存知なんですか?」
「はい。その箱は・・・ロンチーの持っていた・・・それを何処で・・・?」
「アーセルム号と言う船の中で見つけました」
「アーセルム号!? では、ロンチーに会いませんでしたか?」
こう答えると彼女は必死の表情で聞き返した
「ロンチー?」
「あ、私の恋人の名前です。 ・・・すみません、突然で」
(恋人・・・? じゃあこの人が、あの日誌に書いてあったユイファンさん?)
ユイファンさんは首を傾げている私を見て少しだけテレたような申し訳ない顔をした
「・・・私は・・・、!?」
そう言い掛けて、一瞬の違和感に気付きそこで言葉を切った
「あ、あの・・・?」
そして今度はユイファンさんが首を傾げた
「あ、えっと、私と今宿で休んでいる仲間達が見たのはその船だけなんです」
「そ、そうですか・・・」
私はその違和感を誤魔化すように答えるとユイファンさんは表情を曇らせた
「あの、貴女の名前を聞いて良いですか?」
「あ、私はユイファンと言います」
そこでやっぱり彼女があのアーセルム号の日記にあった名前の人だと再確認し、話しを続けた
「ユイファンさんは、橙明の核晶と言う物はご存じですか?」
「結界を作る為に必要な物だと賢人様がおっしゃっていました」
そこまで聞くと私は持っていた紅の小箱をすっと前に出した
「私はこの箱を届けに来たんです」
「え?」
「アーセルム号を見つけて中に入った時、中には誰もいませんでした。けど、この箱を見つけた時に、この箱をあるべき場所に届けて欲しい、と言う気持ちが伝わってきました。それは多分、貴女の恋人であるロンチーさんの気持ちだったと思うんです」
「ロンチーの?」
私は頷いて箱を見て話しを続ける
「だからその気持ちを私と仲間達が引き継いで、このヨームゲンまでやって着たんです」
「そう、だったんですか」
「多分、この中にその橙明の核晶と言う物が入っていると思うんです。だからこれは貴女が受け取って下さい」
ユイファンさんは少しだけ俯いたが、私はニコリと笑ってそう伝えるとユイファンさんも微笑んで頷き、箱を受け取った
そしてポケットから鍵を取り出した
鍵を鍵穴に差込みゆっくり回すとあれほど固く閉ざされていた箱ががちゃりと音を立ててあっさりと開いてしまった
開いた箱から出てきたのは青く透き通った光を放つ大きめの結晶だった
「・・・これが、橙明の核晶?」
「私も本物は始めて見ました・・・」
その綺麗な結晶である橙明の核晶を見た私とユイファンさんは、自然とそう呟いていた
それはとても綺麗な結晶、だけど、何となくだけど、心が締め付けられるような感じがした
「これでこの街の結界を賢人様に作っていただけます」
「その賢人様っと言う人は・・・?」
「賢人様は、砂漠の向こうからいらしたクリティア族の偉いお方です」
「クリティア族・・・?」
まさか此処でクリティア族の名前が出てくるとは思っていなく、そう呟いてしまった
確かに魔導器を作り出したのはクリティア族だ
でも今の技術では魔導器を作り出すのは難しい事だ
「・・・魔導器を作れる人がまだいるって事・・?」
「ブラス・・・ティ・・・ア?・・」
いつの間にか考えていた事が言葉になっていたようで、その言葉を聞くとユイファンさんは首を傾げた
その様子を見る限り、彼女は魔導器の存在を知らないようだった
否、彼女だけじゃない、恐らくその賢人様と言う人以外は、魔導器の事を知らないのだろう
「その賢人様は何処にいるんですか?」
「街の一番奥の家にいらっしゃいます」
そう言ってユイファンさんはその家を指指してくれた
「じゃあ、私は仲間と一緒に賢人様に会いに行きます」
「なら、この橙明の核晶を持って行って頂けますか?」
「え?」
そう言われ思わず目を瞠ってユイファンさんを見た
「貴女はさっきこの箱をあるべき場所に届けて欲しいと言う思いを届けに来たと言いました。きっとロンチーが貴女に届けて欲しいと願いを託したんだと思います。そしてこの箱は私の所へ戻って来た。私はロンチーの思いと、この箱が戻って来た事だけでも十分嬉しいです」
ユイファンさんはそう言うと箱を大事に抱えてニコリと笑って答えた
「だから橙明の核晶は貴女と仲間の方が賢人様に届けるのが一番だと思うんです。だからお願いします」
「解りました。じゃあ橙明の核晶は私と仲間が責任を持って賢人様に持って行きますね」
「はい。お願いします」
ユイファンさんの気持ちが伝わり、私は橙明の核晶を受け取って、お互いに会釈をしてその場を離れた
「リア」
そう声が聞こえ前を見ると兄さんがいた
「兄さん、ユーリ達は?」
「あいつ等ならもうすぐ来るぞ」
どうやら兄さん達も目が覚めた後に情報収集の為に兄さんとレイヴン、ラピードが情報集めをしていたようだった
そして先に兄さんだけ此処に来たようだった
「アスラは?」
「故郷に戻って休んでるぜ」
「あ、そっか」
あの時かなり体力を削られてしまったから、故郷に戻って休んだ方が早く回復するから故郷に戻ったのだろう
「そう言えばアルフとライラの両親は?」
「無事だ。今街の中を見て回ってる所だ」
それを聞き安堵の息を吐くと兄さんが私が持っている物に目を止めた
「・・・それ、何だ?」
「あ、これ・・・」
「リア」
聞き覚えのある声が聞こえ振り向くと、ユーリ達が私達の所に向かって歩いて来ていた
「ユーリ、みんな、目が覚めたんだ」
「ああ。リアも無事みたいだな」
「それ、何?」
リタは直ぐに私が持っている物に目が止まり、みんなも惹かれるようにそれを見た
「これが、あの日誌に書いてあった橙明の核晶だって」
「橙明の核晶! これが・・・」
「ピカピカキラキラ、海面で瞬く夜光虫よりもキレイなお宝なのじゃ」
橙明の核晶と聞き、みんな驚いてまた橙明の核晶見て、パティとカロルが弾んだ声を上げ、リタは魔導士らしく興味深げに橙明の核晶を見ていた
「でも、どうやって箱を開けたのかしら?」
「みんなが休んでる間に、あの箱と鍵の持ち主と会ったの」
「じゃあ思いを届けられたって事です?」
「ええ。ごめんね、一緒に届けられなくて」
「いいえ。本人に届いたならそれで十分です」
そう言うとエステルは安心した顔をした
「それで、何でリアちゃんが橙明の核晶を持ってるの?」
「ユイファンさんから、私達から賢人様に届けて欲しいって言われたの」
「ユイファン・・? 賢人様・・・?」
「色々と思う所はあるだろうけど、とにかく賢人様がいる家に行こう」
みんな次々に解らない事が出て来て頭の上に疑問符が出ていたけど、私は苦笑して答えて歩き出し、その後にみんなも続いた
続く
あとがき
やっと完成しました、ヨームゲン到着ww
箱版と違う感じで仕上げるとなると、やっぱり小箱を預かった辺りの事を此処で出すべきだろうと思ってこういう形にしてみました
まあリアちゃんがちょっと違和感を感じている所はありますが、それは次回話します
とりあえず、橙明の核晶を預かったので賢人様に届けにいきますけどね
次は久々にあの人の登場です
思ってる所まで書けると良いけどなぁ・・・ι
2010.03.17