満月の子編
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セイ達と合流した後、急にセイとアスラの表情が変わり、上の階に向かって走り出した
それを見てオレは直ぐに何か遭ったと感じ急いでセイとアスラの後を追った
「今、何か聞こえなかったかの?」
パティが走りながらオレ達にそう言うとオレ達は立ち止まって辺りを見た
「・・・・た」
微かにだが何処からか声が聞こえた
「微かにだけど、聞こえるわね」
「ワンっ」
「あっちか」
ラピードが声の聞こえた方を見ると少し先にある部屋からその声は聞こえているようだった
「・・・お化け・・じゃ、ない・・ですよね?」
「な、何言ってるよ・・・」
「うわぁ!?」
怯えるエステルとリタを横目で見ていると突然大きな振動が響きオレ達は体勢を崩しそうになった
「きゃあっ!?」
「!」
そして聞き覚えのある声が聞こえた
「あの声、リアちゃんじゃない!?」
「正面の部屋からだよ!」
「っ、行くぞ!」
リアの悲鳴を聞き、オレ達は一斉に正面の部屋へと走り出した
48.静かなるサジェスト
「・・・アスール歴、ブルエールの月、ヨームゲンに橙明の核晶・・か」
私は空間から戻って来て船長さんから預かった紅の箱と日誌を見てぽつりと呟いた
「千年以上も昔の事だから、ヨームゲンっていう街もあるか解らないし・・・」
仕事で世界中を旅しているけど、そのヨームゲンという街には行った事がない
だけど、彼の為にも願いを叶えてあげなくてはいけない
それが私の仕事でもあるのだから・・・
「後でアスラ達に聞いてみようかな・・・」
アスラ達なら私達より長く生きているからそのヨームゲンが何処にあるのか、そしてその橙明の核晶というのがなんなのか、その辺りも聞けるだろう
「・・ちょっと早いけど、やっておこうかな・・・。・・っ、!?」
私は小さく笑っていつものをやろうと意識を集中させ周りの空気を感じようとしていると、背中に悪寒が走った
「っ、な・・に・・っ?」
それは今までこの船に漂っていた空気とは全く違う、とてもおぞましい空気だった
「!?」
そして何処からか視線を感じ顔を歪め少しだけ震える身体を起こし、顔を上げてその先、巨大な鏡の中を見ると、今までとは全く違う巨大な剣と銃を持ってマントを靡かせている骸骨が私の方を見ていた
「っ・・なっ・・・!!」
その骸骨と骸骨が背後に漂わせているおぞましい空気を見ていると、鏡の中からその骸骨が姿を現した
「っっ!!」
そしてその空気を浴びた途端、また少しだけ心臓が締め付けられ顔を歪め、その場に蹲ってしまった
(・・・な・・に、この変な感覚・・・。苦し・・・っ)
ギュッと胸元を掴んでいるとその苦しさで自然と荒い息が出ていた
「・・はぁ・・・はあ・・っ!? きゃあっ!?」
荒い息を抑えようとしていると骸骨が近付いて来る気配を感じたが、思いの外、骸骨の方が動きが速く床に振り下ろされた剣の衝撃で体勢を崩してしまう
「つっ・・・! はあっ!!」
起き上がろうとしているとまたこちらに向かって来ているのが見え、私は直ぐに防御壁を作った
(この中ならまだ大丈夫・・・。だけど、力が安定しない・・・)
あの妙な感覚の所為でなのか、私の力が安定していないようで、作った防御壁も長くは保たないだろう・・・
「このまま戦いに持ち込むのは、かなり無理・・ね・・・」
「リアっ!?」
「!? ユーリ、みんなっ!?」
そう思っているとこの部屋の扉が勢い良く開きユーリの声が聞こえ扉の方を見ると、ユーリや兄さん達が慌てて部屋に入って来た
「って、うわああっ!?」
「な、何よ、こいつ!?」
が、目の前にいる巨大な骸骨を見てみんな驚いていた
「驚いてる暇はねえぞ」
「こっちに来るよ!」
兄さんとアスラの言葉に反応するとみんなの方に向かって来ている骸骨の攻撃を避ける為に散らばり、武器を構えて向かって行った
「リア大丈夫か!?」
「・・兄・・さん・・・」
「無理に喋るな・・・」
兄さんは私に駆け寄り身体を支えてくれた
けど、少しだけ兄さんの表情が重たかった
「・・・もしかして、兄さんも・・?」
「リア程じゃないけどな・・・。けど、何なんだ、この妙な空気は・・・?」
兄さんもこの妙な空気に疑問を持っていた
だけど、この空気に違和感を感じているのは私と兄さんとアスラだけだろう・・・
ユーリ達は襲い掛かって来ている骸骨と戦っていたが、パティの前に行くと何故か骸骨の動きが止まった
「・・・・!?」
私達はその事に驚いて動きを止め骸骨を見ると、じっとパティを見ているようだった
「・・・・」
そして骸骨は踵を返してまた鏡の中に入り、何処かへ消えていった
「逃げるのじゃ」
「別にあの化け物と白黒つけなきゃいけない事もないだろ」
ユーリはパティの前に手を出し止めると、パティは渋々納得したようだった
「なんだったのかしら、あれは?」
「解らない・・・。この箱と日誌を見つけて少ししたら急に現れて」
「それで襲い掛かって来てたって事・・?」
「うん・・・」
「それよりリア、大丈夫なの?」
「ええ、平気よ。心配かけてごめんね」
あの骸骨がいなくなってあの妙な空気と感覚と苦しさがなくなり、みんなを安心させるように優しく微笑むと、各々別の反応を見せ、顔を赤くしたり、安堵して微笑み返してくれた
「で、それは何なの?」
リタは顔が赤いのを誤魔化すかのように私は持っていた日誌と隣に置いてある紅の小箱を見て言い、私は日誌をユーリに渡した
「日誌、か・・? アスール歴232年、ブルエールの月13?」
「アスール歴もブルエールの月も帝国が出来る前の暦ですね」
「千年以上も昔、か・・・」
「そんなに?」
「船が漂流して40と5日、水も食料も等に尽きた。・・・」
エステルはその日誌に目を戻し、日誌の内容を読み始めた
そしてエステルが読み終えると、各々表情が曇っていて、千年も前からあるならこんなにボロボロになるほどだ、と納得していた
しかしエステルだけは何処か違う事を考えているようだった
「エステル、千年も前、の話しよ」
「そんな長い間、この船は広い海を彷徨っておったのじゃな。寂しいのう・・・」
「ボク、ヨームゲンなんて街、聞いた事ないなぁ・・・」
「これがほんとに千年前の記憶なら街だって残ってるかどうか」
「アスラ、聞いた事ないか?」
「・・・確か砂漠の近くにそんな名前の街があったような気がするけど・・・」
「あるんですか!?」
アスラの言葉にエステルは反応するがアスラは考え込んで答える
「今はどうか解らないよ。その区域ってあんまり行かないし・・・」
「ま、そうだよな。 ・・・橙明の核晶ってのは?」
「あたしは知らないけど・・・どう?」
リタもまたアスラに振るが、直ぐには答えようとしなかった
「・・・魔物を退ける力、としか言いようがない・・・かな」
「知ってるの!?」
今度はリタが食いつくが、アスラは首を横に振る
「詳しくは知らないよ。けど、そう言う物があるって言うのしか・・・」
「結界みたいなものじゃないかしら?」
「そんな感じだと思う」
そう言うとリタはそう・・・と言って引き下がった
此処までアスラが言葉を濁して言いたくない、と言うのも珍しい
あまり触れたくない事なのかもしれない・・・
「で、リアが持ってる箱が橙明の核晶って事か?」
「多分中にその橙明の核晶が入ってるんだと思う」
「んで、リアちゃんはその箱をどうするつもりだったの?」
「え? えーと・・・」
レイヴンの言葉にどう答えていいものかと思いちらりと兄さんを見ると兄さんは私が思っている事を直ぐに理解してくれ、アスラも私の所に歩いて来た
「あの・・・」
話しをしようとしているとずっと黙っていたエステルが口を開き、私達は一斉にエステルへと視線を向ける
「あの・・・わたし、その橙明の核晶をヨームゲンに届けてあげたいです」
「何言い出すのよ!」
「橙明の核晶届けをギルドの仕事に加えてもらえないでしょうか?」
ユーリと兄さんをちらりと見るとやっぱりな、という顔をしていた
「だめだよ。エステル。基本的にボク達みたいなちっちゃなギルドは一つの仕事を完了するまで次の仕事は受けないんだ」
「一つ一つしっかり仕事していくのがギルドの信用に繋がるからなぁ」
「あら? またその娘の宛もない話でギルドが右往左往するの?」
「ちょっと! あんた、他に言い方があるんじゃないの!?」
「リタ待って・・・ごめんなさい、ジュディス。でも、この人の思いを届けてあげたい・・・。待っている人に」
「待ってる人っつっても千年も前の話なんだよなあ」
「流石に千年は待ちくたびれるのじゃ」
「そう言う事じゃあないと、思うんだけど・・・」
「アスラの話しを聞く限り、街もあるか分かんないみたいだし・・・」
その言葉にみんなも複雑な顔をする
「だったら、私達と一緒にやらない?」
「えっ?」
そして急に聞こえた私の言葉に驚き一斉に視線を向けられる
「エステルがそう言うだろうと思ってたけど、その依頼は私が引き受けてるのよ」
「引き受けてるって・・誰にじゃ?」
「そう言う事だから、探すならボク達と一緒にって事だね」
「どうするんだ、エステル?」
私達はみんなの疑問を綺麗に流し、エステルへと視線を向ける
「一緒に探しても良いんです?」
「彼の思いを届けてあげたいんでしょ。それにフェローを探すって言う目的も一緒なんだから、私は構わないわよ」
「リアが良いなら俺もアスラも良いぜ」
「うん」
「有り難う御座います!」
「ちょっと、何あんた達だけで話し進めてるよの」
そう声が聞こえ振り返ると、不満オーラー全開のリタとカロルがいた
「なんだ、お前等も手伝ってくれるのか?」
「あ、当たり前でしょ///」
「そうだよ」
兄さんは少しだけ意地悪げな顔をしてリタとカロルに言うと二人は慌てて答えた
「どうせオレ達に着いてくんだろ。だったら仕事外として少し手伝う分にゃ、問題ない、だろ?」
「ええ」
「ユーリ、みんな・・・有り難う御座います」
ユーリ達の言葉を聞きエステルは嬉しそうな顔をしお辞儀をしてお礼を言い、私と兄さんとアスラは小さく笑っていた
「若人は元気があって良いねぇ・・・」
「みんな仲が良いのじゃ。リタ姐良いのう」
「あ、あたしは喜んでなんてないわよ」
「そうなのかの?」
どことなく嬉しそうな顔をしているリタを見てパティが声を掛けるが、リタは慌てて否定をし、リタらしいな、と思っているとレイヴンが窓の外を見て怪訝そうな顔をした
「・・・ん?」
「どうかした?」
「外に何か煙みたいのが・・・」
レイヴンのその言葉に私達は彼が体を向けている方へ顔を向ける
すると、発煙筒が登ってくるのが見えた
「お、発煙筒か? 駆動魔導器、直ったか?」
「戻ってみようよ」
「そんな事言っても、来た道戻れなくなっちゃってるわよ」
「あそこの扉は?」
「さっきボクが試したけど開かな「開いたぞ」
兄さんはカロルの言葉の前に動き扉を開けていた
「え? 何で? さっきは開かなかったのに・・・」
「こっから戻れるな」
「・・・ははあ、呪いが解けたな」
「そ、そんなわけないでしょ!? バカ言ってないで行くわよ!」
「きっと、この方が透明の刻晶を誰かに渡したくて、わたし達を呼んだんじゃないでしょうか」
「・・・うん、そうだと思う」
カロルとリタは少し怯えながら言うがエステルがフォローを入れ、私達は骸骨と紅い箱を交互に見て私もエステルの言った事に同感して微笑んだ
実際に言霊使いの仕事をしているとこういう事があるのは珍しい事じゃないし、船長さんの願いはそうだったから
「とりあえず開いたんだ。行ってみようぜ」
「うん」
そしてエステル達は歩き出したが私は骸骨の所まで戻り、懐から一枚の札を出し目を閉じて念じ、その札を机の上に置いてユーリ達の後を追った
続く
あとがき
なんとかアーセルム号の話しが終わりました
かなりセリフとか入れ替えてますがι
そしてリアちゃんやセイ兄ちゃんの身に何か異変もあり、パティとあの骸骨も何かあるような・・・?
ま、気になる事はいっぱいですが、とりあえず終わりです!ww
次はやっとノードポリカですね
頑張って書こう・・・
2010.02.03
それを見てオレは直ぐに何か遭ったと感じ急いでセイとアスラの後を追った
「今、何か聞こえなかったかの?」
パティが走りながらオレ達にそう言うとオレ達は立ち止まって辺りを見た
「・・・・た」
微かにだが何処からか声が聞こえた
「微かにだけど、聞こえるわね」
「ワンっ」
「あっちか」
ラピードが声の聞こえた方を見ると少し先にある部屋からその声は聞こえているようだった
「・・・お化け・・じゃ、ない・・ですよね?」
「な、何言ってるよ・・・」
「うわぁ!?」
怯えるエステルとリタを横目で見ていると突然大きな振動が響きオレ達は体勢を崩しそうになった
「きゃあっ!?」
「!」
そして聞き覚えのある声が聞こえた
「あの声、リアちゃんじゃない!?」
「正面の部屋からだよ!」
「っ、行くぞ!」
リアの悲鳴を聞き、オレ達は一斉に正面の部屋へと走り出した
48.静かなるサジェスト
「・・・アスール歴、ブルエールの月、ヨームゲンに橙明の核晶・・か」
私は空間から戻って来て船長さんから預かった紅の箱と日誌を見てぽつりと呟いた
「千年以上も昔の事だから、ヨームゲンっていう街もあるか解らないし・・・」
仕事で世界中を旅しているけど、そのヨームゲンという街には行った事がない
だけど、彼の為にも願いを叶えてあげなくてはいけない
それが私の仕事でもあるのだから・・・
「後でアスラ達に聞いてみようかな・・・」
アスラ達なら私達より長く生きているからそのヨームゲンが何処にあるのか、そしてその橙明の核晶というのがなんなのか、その辺りも聞けるだろう
「・・ちょっと早いけど、やっておこうかな・・・。・・っ、!?」
私は小さく笑っていつものをやろうと意識を集中させ周りの空気を感じようとしていると、背中に悪寒が走った
「っ、な・・に・・っ?」
それは今までこの船に漂っていた空気とは全く違う、とてもおぞましい空気だった
「!?」
そして何処からか視線を感じ顔を歪め少しだけ震える身体を起こし、顔を上げてその先、巨大な鏡の中を見ると、今までとは全く違う巨大な剣と銃を持ってマントを靡かせている骸骨が私の方を見ていた
「っ・・なっ・・・!!」
その骸骨と骸骨が背後に漂わせているおぞましい空気を見ていると、鏡の中からその骸骨が姿を現した
「っっ!!」
そしてその空気を浴びた途端、また少しだけ心臓が締め付けられ顔を歪め、その場に蹲ってしまった
(・・・な・・に、この変な感覚・・・。苦し・・・っ)
ギュッと胸元を掴んでいるとその苦しさで自然と荒い息が出ていた
「・・はぁ・・・はあ・・っ!? きゃあっ!?」
荒い息を抑えようとしていると骸骨が近付いて来る気配を感じたが、思いの外、骸骨の方が動きが速く床に振り下ろされた剣の衝撃で体勢を崩してしまう
「つっ・・・! はあっ!!」
起き上がろうとしているとまたこちらに向かって来ているのが見え、私は直ぐに防御壁を作った
(この中ならまだ大丈夫・・・。だけど、力が安定しない・・・)
あの妙な感覚の所為でなのか、私の力が安定していないようで、作った防御壁も長くは保たないだろう・・・
「このまま戦いに持ち込むのは、かなり無理・・ね・・・」
「リアっ!?」
「!? ユーリ、みんなっ!?」
そう思っているとこの部屋の扉が勢い良く開きユーリの声が聞こえ扉の方を見ると、ユーリや兄さん達が慌てて部屋に入って来た
「って、うわああっ!?」
「な、何よ、こいつ!?」
が、目の前にいる巨大な骸骨を見てみんな驚いていた
「驚いてる暇はねえぞ」
「こっちに来るよ!」
兄さんとアスラの言葉に反応するとみんなの方に向かって来ている骸骨の攻撃を避ける為に散らばり、武器を構えて向かって行った
「リア大丈夫か!?」
「・・兄・・さん・・・」
「無理に喋るな・・・」
兄さんは私に駆け寄り身体を支えてくれた
けど、少しだけ兄さんの表情が重たかった
「・・・もしかして、兄さんも・・?」
「リア程じゃないけどな・・・。けど、何なんだ、この妙な空気は・・・?」
兄さんもこの妙な空気に疑問を持っていた
だけど、この空気に違和感を感じているのは私と兄さんとアスラだけだろう・・・
ユーリ達は襲い掛かって来ている骸骨と戦っていたが、パティの前に行くと何故か骸骨の動きが止まった
「・・・・!?」
私達はその事に驚いて動きを止め骸骨を見ると、じっとパティを見ているようだった
「・・・・」
そして骸骨は踵を返してまた鏡の中に入り、何処かへ消えていった
「逃げるのじゃ」
「別にあの化け物と白黒つけなきゃいけない事もないだろ」
ユーリはパティの前に手を出し止めると、パティは渋々納得したようだった
「なんだったのかしら、あれは?」
「解らない・・・。この箱と日誌を見つけて少ししたら急に現れて」
「それで襲い掛かって来てたって事・・?」
「うん・・・」
「それよりリア、大丈夫なの?」
「ええ、平気よ。心配かけてごめんね」
あの骸骨がいなくなってあの妙な空気と感覚と苦しさがなくなり、みんなを安心させるように優しく微笑むと、各々別の反応を見せ、顔を赤くしたり、安堵して微笑み返してくれた
「で、それは何なの?」
リタは顔が赤いのを誤魔化すかのように私は持っていた日誌と隣に置いてある紅の小箱を見て言い、私は日誌をユーリに渡した
「日誌、か・・? アスール歴232年、ブルエールの月13?」
「アスール歴もブルエールの月も帝国が出来る前の暦ですね」
「千年以上も昔、か・・・」
「そんなに?」
「船が漂流して40と5日、水も食料も等に尽きた。・・・」
エステルはその日誌に目を戻し、日誌の内容を読み始めた
そしてエステルが読み終えると、各々表情が曇っていて、千年も前からあるならこんなにボロボロになるほどだ、と納得していた
しかしエステルだけは何処か違う事を考えているようだった
「エステル、千年も前、の話しよ」
「そんな長い間、この船は広い海を彷徨っておったのじゃな。寂しいのう・・・」
「ボク、ヨームゲンなんて街、聞いた事ないなぁ・・・」
「これがほんとに千年前の記憶なら街だって残ってるかどうか」
「アスラ、聞いた事ないか?」
「・・・確か砂漠の近くにそんな名前の街があったような気がするけど・・・」
「あるんですか!?」
アスラの言葉にエステルは反応するがアスラは考え込んで答える
「今はどうか解らないよ。その区域ってあんまり行かないし・・・」
「ま、そうだよな。 ・・・橙明の核晶ってのは?」
「あたしは知らないけど・・・どう?」
リタもまたアスラに振るが、直ぐには答えようとしなかった
「・・・魔物を退ける力、としか言いようがない・・・かな」
「知ってるの!?」
今度はリタが食いつくが、アスラは首を横に振る
「詳しくは知らないよ。けど、そう言う物があるって言うのしか・・・」
「結界みたいなものじゃないかしら?」
「そんな感じだと思う」
そう言うとリタはそう・・・と言って引き下がった
此処までアスラが言葉を濁して言いたくない、と言うのも珍しい
あまり触れたくない事なのかもしれない・・・
「で、リアが持ってる箱が橙明の核晶って事か?」
「多分中にその橙明の核晶が入ってるんだと思う」
「んで、リアちゃんはその箱をどうするつもりだったの?」
「え? えーと・・・」
レイヴンの言葉にどう答えていいものかと思いちらりと兄さんを見ると兄さんは私が思っている事を直ぐに理解してくれ、アスラも私の所に歩いて来た
「あの・・・」
話しをしようとしているとずっと黙っていたエステルが口を開き、私達は一斉にエステルへと視線を向ける
「あの・・・わたし、その橙明の核晶をヨームゲンに届けてあげたいです」
「何言い出すのよ!」
「橙明の核晶届けをギルドの仕事に加えてもらえないでしょうか?」
ユーリと兄さんをちらりと見るとやっぱりな、という顔をしていた
「だめだよ。エステル。基本的にボク達みたいなちっちゃなギルドは一つの仕事を完了するまで次の仕事は受けないんだ」
「一つ一つしっかり仕事していくのがギルドの信用に繋がるからなぁ」
「あら? またその娘の宛もない話でギルドが右往左往するの?」
「ちょっと! あんた、他に言い方があるんじゃないの!?」
「リタ待って・・・ごめんなさい、ジュディス。でも、この人の思いを届けてあげたい・・・。待っている人に」
「待ってる人っつっても千年も前の話なんだよなあ」
「流石に千年は待ちくたびれるのじゃ」
「そう言う事じゃあないと、思うんだけど・・・」
「アスラの話しを聞く限り、街もあるか分かんないみたいだし・・・」
その言葉にみんなも複雑な顔をする
「だったら、私達と一緒にやらない?」
「えっ?」
そして急に聞こえた私の言葉に驚き一斉に視線を向けられる
「エステルがそう言うだろうと思ってたけど、その依頼は私が引き受けてるのよ」
「引き受けてるって・・誰にじゃ?」
「そう言う事だから、探すならボク達と一緒にって事だね」
「どうするんだ、エステル?」
私達はみんなの疑問を綺麗に流し、エステルへと視線を向ける
「一緒に探しても良いんです?」
「彼の思いを届けてあげたいんでしょ。それにフェローを探すって言う目的も一緒なんだから、私は構わないわよ」
「リアが良いなら俺もアスラも良いぜ」
「うん」
「有り難う御座います!」
「ちょっと、何あんた達だけで話し進めてるよの」
そう声が聞こえ振り返ると、不満オーラー全開のリタとカロルがいた
「なんだ、お前等も手伝ってくれるのか?」
「あ、当たり前でしょ///」
「そうだよ」
兄さんは少しだけ意地悪げな顔をしてリタとカロルに言うと二人は慌てて答えた
「どうせオレ達に着いてくんだろ。だったら仕事外として少し手伝う分にゃ、問題ない、だろ?」
「ええ」
「ユーリ、みんな・・・有り難う御座います」
ユーリ達の言葉を聞きエステルは嬉しそうな顔をしお辞儀をしてお礼を言い、私と兄さんとアスラは小さく笑っていた
「若人は元気があって良いねぇ・・・」
「みんな仲が良いのじゃ。リタ姐良いのう」
「あ、あたしは喜んでなんてないわよ」
「そうなのかの?」
どことなく嬉しそうな顔をしているリタを見てパティが声を掛けるが、リタは慌てて否定をし、リタらしいな、と思っているとレイヴンが窓の外を見て怪訝そうな顔をした
「・・・ん?」
「どうかした?」
「外に何か煙みたいのが・・・」
レイヴンのその言葉に私達は彼が体を向けている方へ顔を向ける
すると、発煙筒が登ってくるのが見えた
「お、発煙筒か? 駆動魔導器、直ったか?」
「戻ってみようよ」
「そんな事言っても、来た道戻れなくなっちゃってるわよ」
「あそこの扉は?」
「さっきボクが試したけど開かな「開いたぞ」
兄さんはカロルの言葉の前に動き扉を開けていた
「え? 何で? さっきは開かなかったのに・・・」
「こっから戻れるな」
「・・・ははあ、呪いが解けたな」
「そ、そんなわけないでしょ!? バカ言ってないで行くわよ!」
「きっと、この方が透明の刻晶を誰かに渡したくて、わたし達を呼んだんじゃないでしょうか」
「・・・うん、そうだと思う」
カロルとリタは少し怯えながら言うがエステルがフォローを入れ、私達は骸骨と紅い箱を交互に見て私もエステルの言った事に同感して微笑んだ
実際に言霊使いの仕事をしているとこういう事があるのは珍しい事じゃないし、船長さんの願いはそうだったから
「とりあえず開いたんだ。行ってみようぜ」
「うん」
そしてエステル達は歩き出したが私は骸骨の所まで戻り、懐から一枚の札を出し目を閉じて念じ、その札を机の上に置いてユーリ達の後を追った
続く
あとがき
なんとかアーセルム号の話しが終わりました
かなりセリフとか入れ替えてますがι
そしてリアちゃんやセイ兄ちゃんの身に何か異変もあり、パティとあの骸骨も何かあるような・・・?
ま、気になる事はいっぱいですが、とりあえず終わりです!ww
次はやっとノードポリカですね
頑張って書こう・・・
2010.02.03