水道魔導器奪還編
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「あ、あの、もしかして此処ですか?」
後ろにいたエステルが少し怯え声で聞いてきたのでリア達は振り返りエステルを見た
「ええ、そうよ」
「此処ってクオイの森、ですよね?」
「ご名答」
「呪いの森!!」
「知ってるのか?」
ユーリの返事を聞くとエステルはますます怯え声になりながら言葉を続けた
「クオイに踏み入る者、その身に呪い、降りかかる、と本で読んだ事が・・・」
「成る程、それがお楽しみって訳か」
「そう言う事」
エステルの言葉を聞きユーリとアスラは小さく笑い、歩き出した
「エステル、行こう」
「で、でも・・・」
「心配すんなって。ちゃんとそこに専門家がいるから」
「・・・専門家? あの、専門家って・・・」
「大丈夫だから。ね、行きましょ」
ユーリの言葉にエステルは疑問符を出しリアを見るがリアは笑顔でエステルの疑問を流し、エステルの手を握って歩き出した
04.呪いの森の真実
クオイの森に入って暫く歩いているとエステルがこの森の雰囲気と静けさに耐えきれなくなり繋いでいたリアの手をギュッと握った
「エステル、大丈夫?」
「は、はい・・・」
エステルは怯え声になりながら答えた
デイドン砦で話していた通り、やはりエステルにはこの手がニガテなのだろうと苦笑していた
「リアは怖くないんですか?」
「え? ええ、大丈夫よ」
「実際にそうだったら今の仕事出来てないけどね」
「まあな。つか、そんなリア想像出来ねえ」
先頭を歩くユーリとその横にいるアスラが小声で話しているのが聞こえた
そしてエステルはきょろきょろと辺りを見てユーリ達に視線を向ける
「この森、本当に砦の向こうに抜けられるんですか?」
「抜けられなければ戻りゃいいって」
「・・・もし呪いでカエルやヘビになったりしたら、どうしましょう」
リアの隣を歩きながらエステルは言うと、リアがエステルの方を向いて口を開いた
「大丈夫よ、エステル。もしそうなったらユーリが責任持って面倒みるから」
「面倒みる・・って・・?」
「ユーリは子供の頃、カエルもヘビも飼ってた事あるからね」
「ああ。だから世話の仕方はばっちりだぜ」
「で・・でも、わたし・・・ユーリがカエルやヘビになったら、お世話する自信ありません・・・よ?」
「私も、ない・・・って言うか、絶対無理・・・」
「まあ、そうだろうね」
「だな」
「?」
リアの言葉にアスラとユーリは納得したものの、エステルだけは疑問符を出していた
暫く足を進めていると、段々足元がひんやりと冷たくなっていくのに気が付いた
それに連れて何かおかしな音が聞こえた
ユーリが足を止めると皆足を止め、エステルは再度リアの手を握った
「何の音・・・です? 足元がひんやりします・・・。まさか! これが呪い!?」
「どんな呪いだよ」
エステルの言葉にユーリは苦笑混じりに言うがエステルにはユーリの声は届いておらず、震えた声で言葉を続けた
「木の下に埋められた死体から、呪いの声がじわじわと這い上がりわたし達を道連れに・・・」
「いや、それはないからι」
「エステル、落ち着いて。大丈夫だから」
リアはエステルを落ち着かせようと頭を優しく撫でてやりながら辺りに目をやると森の隅にある物体が目に入った
ユーリもアスラもその物体に気が付き物体に近付いた
「これ、魔導器か。何でこんな場所に・・・」
「しかもこれ、かなり古い魔導器だよ・・・」
「・・・」
リアが二人の様子と魔導器を見て何か考えていると、エステルが魔導器の近くに行き魔導器を見て疑問を抱き触れた瞬間
「「うわっ」」「「きゃっ」」
突然眩い光が現れリア達は目を瞑った
「・・・っ、みんな大丈夫?」
「うん、何とか。ユーリは?」
「オレも大丈夫だ。エステルは・・・っと、気絶してるか」
ユーリとリアとアスラは魔導器の近くで倒れているエステルを見た
「このまま起こすのも可哀想だし、少し休もうか」
「そうだな。ラピード、背中貸してくれ」
「ワン」
木の根元までエステルを運びラピードの背中を借りてエステルを横にしユーリとリアはその場に腰を下ろした
「・・・なんだったんだ、あれ」
「エアルだよ」
「エアル・・・? エアルって、あの?」
どうしてそんなものがと言う顔をしてユーリはリアを見た
「エアルって大気中にもあるって言うでしょ。その大気中に溢れているエアルの量が多いと、人間に害を与えるものになるの」
「だからエステルもエアルに酔ったんじゃないかな」
「成る程な。で、結局この魔導器が呪いの正体だったと?」
「そう言う事みたいね。じゃ、報告書出さなきゃね」
言ってリアはポケットから一枚の紙を取り出し、少しだけ目を閉じてその紙を空へと放つとその紙は鳥の姿になって何処かへ消えていった
「調査終了、だね」
「やっぱ此処に来たのはその為だったんだな」
今の行動を一通り見ていたユーリが小さく笑いながらリアとアスラに聞いた
「うん。普通の人はこう言う事は調べようとしないしね」
「こう言う事はボク達しか出来ない仕事だしね」
「まあな」
言うとユーリはその場に落ちていた木の実を拾い一口囓った
「・・・にがっ」
そんなユーリを見てリアは苦笑いしながらお茶注ぐとユーリに渡した
「お腹空いてるなら何か作ろうか?」
「悪ぃな。簡単なもんで良いぜ」
「解った」
リアは荷物の中から材料を取りだし調理を始めた
「・・・うぅ・・・」
調理が終わるとエステルが気が付きユーリとリアとアスラはエステルに目をやった
「大丈夫か?」
「少し頭が・・・。でも平気です。わたし、一体・・・」
「エアルに酔って倒れたみたいだね」
「エアルに・・・?」
倒れる前の記憶を思い出しエステルは立ち上がろうとしたがリアに止められる
「少し休みましょう。また倒れたら困るでしょ」
「でも・・・」
「また倒れて、今度は一晩中起きなかったらどうすんだよ」
「・・・そうですね。ごめんなさい」
ユーリの言葉を聞いてエステルは渋々と納得した
「お腹空いたでしょ。はい、どうぞ」
「有り難う御座います。リアが作ったんですか?」
「ええ。簡単なものだけどね」
「とても美味しいです」
エステルは一口食べ笑顔で言うとまた食べ出し、リア達も安心し食事を続けた
食事を終えお茶を飲みながら一息吐いているとエステルがじっとユーリとリアを見ていた
「エステル、どうしたの?」
「いえ。フレンが危険なのにユーリ達は心配ではないんです?」
エステルの疑問にユーリとリアはきょとんとしたが直ぐにいつもの顔に戻るとユーリが冗談めいた口調で答えた
「ん? そう見える?」
「・・・はい」
「実際、心配してないからね」
「ああ。あいつなら自分で何とかしちまうだろうし。あいつを狙ってる連中にはホント同情するよ」
「ホントだよね」
ユーリの言葉にアスラも苦笑いで言うと今度はエステルがきょとんとしてユーリを見た
「ガキの頃から何やってもフレンには勝てなかったもんな。駆けっこだろうが、剣だろうが。その上、余裕かましてこう言うんだぜ? 大丈夫、ユーリ? ってさ」
「その後二人して私の所に来て意見の言い合いになってくるのよね」
「二人して違う事言うからまた面白いんだよね」
「そうそう!」
「お前等、楽しんでたのかよι」
そんなユーリとリアとアスラを見てエステルは少し俯きながら言った
「羨ましいな・・・。私にはそういう人、誰もいないから」
「いても口煩いだけだぞ」
口ではそう言うもののそれはユーリの良い所で、魅力でもある
だからフレンも無理に直したりしないし、親友としてのある程度の注意だけで私もフレンもユーリの好きにさせているのだから
それから出発し暫く進んでいると突然ラピードが何かの気配を感じて立ち止まった
何かとラピードを振り返るとなにやら姿勢を低くして警戒している
魔物か、とユーリが剣の柄に手を掛けると、まだ幼さの残る声が聞こえてきた
「エッグベアめ、か、覚悟!」
少しどもって台無しになってしまった台詞と共に小さな影が木の後ろから飛び出して来た
それは大きな刃物を持った小さな少年
「うわっ、とっとっ!」
少年はその小さな体躯に似合わぬ大きな獲物を持って力任せに振り回すが、勢い余って空振りどころか見当違いな所でくるくると回って止まらなくなってしまった
三人と二匹はきょとんとしてその様子を見ていたがユーリが鞘から剣を抜き、少年が来るであろうコースに剣を構えユーリは少年の持つ大剣を半分程度の所を狙って叩き折った
「うああああっ! あうっ! いたたっ・・・」
少年はその衝撃に耐え切れずに悲鳴を上げ倒れ、ラピードが少年に近寄った
「ひぃ!!」
匂いを嗅ぐようにして顔を寄せると、少年はまた悲鳴を上げ今度は死んだふりをし泣き声のような弱々しい声で言った
「ボ、ボクなんか食べても美味しくないし、お腹壊すんだから」
「ガウっ!!」
「ほ、ほほほんとに、たたたすけて、ぎゃあああ~~~~!!」
ラピードが一声吠えると少年はまた悲鳴を上げた
「・・・元気な子だねι」
「うん、て言うかラピード・・・ι」
「絶対楽しんでんな」
苦笑しながらその様子を見ていたユーリ達と変わり、エステルは微笑みながら少年に近付いた
「大丈夫ですよ」
「あれ? 魔物が女の人に?」
「立てる?」
「え、あ、うん」
少年はエステルの姿を見て疑問符を出し、リアも少年に近付き手を出して立たせてあげた
「ありがと」
「いいえ。ところで君は?」
「ボクはカロル・カペル! 魔物を狩って世界を渡り歩く、ギルド『魔狩りの剣』の一員さ!」
「オレはユーリ。それにリアとエステルとラピードだ。んじゃ、そういう事で」
カロルの挨拶の後に自分達の紹介をするとユーリは踵を返し歩き出した
「あ、え? ちょっと、ユーリ!?」
エステルはユーリの行動に驚き隣にいるリアを見るとリアは軽く呆れた顔をし、カロルに声を掛けた
「ごめんね。私達も行かなきゃいけないから。またね」
「ほら、エステル行くよ」
「え! あの、じゃあわたしも失礼します」
リアとアスラに促されエステルもカロルに挨拶をしてリアの後を追った
「へ? ・・・って。わ~、待って待って待って!」
一瞬きょとんとしたが急いで走って三人と二匹の前に止まった
「三人共、森に入りたくて此処に来たんでしょ?」
「残念だけど抜けて来たんだ」
「へ? うそ!? 呪いの森を?」
「はい。これから花の街ハルルに向かう所です」
カロルは驚いてユーリ達を見た
確かに呪いの正体を知らない人が聞けば驚くのも当然だとリア達は思った
「あ、なら、エッグベア見なかった?」
「エッグベアってあのエッグベア?」
「そう。もしかして見たの?」
リアの言葉にカロルは目をキラキラさせながら聞いた
「知ってはいるけど、此処では見なかったよ」
「そっか・・・」
リアが答えるとカロルは残念そうな顔をした
「なら、ボクも町に戻ろうかな・・・あんまり待たせると、絶対に怒るし・・・。うん、よし!」
独り言を言った後にカロルはニッコリと笑いながら振り返った
「三人じゃ心配だから、魔狩りの剣のエースであるボクが街まで一緒に行ってあげるよ」
そして自分が持っている鞄を見せ必死でアピールした
「ほらほら、なんたってボクは魔導器だって持ってるんだよ」
だが、カロルは三人を見て驚いた
「あ、あれ、三人共なんで魔導器持ってるの!」
「何でと聞かれてもねぇ・・・」
アスラの呟きにリア達は少し苦笑した
確かに魔導器は限られた者しか持てないからカロルが驚くのも無理はないだろう
「行くぞ」
ユーリはカロルの疑問を無視して歩き出した
「ちょ、あ、方向解ってんの~? ハルルは森を出て北の方だよ。もぉ、置いてかないでよ~!」
最後には泣きそうな声で追い駆けて来るカロルの声が聞こえた
続く
あとがき
付け足しで書いたけど、箱版と殆ど変わってないι
けど、次からはあの話し入れるのでちょっと変わるかな?
あ、因みに、エステルが言ったカエルやヘビに(以下略)、リアちゃんが嫌がった理由はニガテだからです(オレもニガテ。でもヘビは大丈夫だったり(笑))
それではまた次回!
2009.10.08
後ろにいたエステルが少し怯え声で聞いてきたのでリア達は振り返りエステルを見た
「ええ、そうよ」
「此処ってクオイの森、ですよね?」
「ご名答」
「呪いの森!!」
「知ってるのか?」
ユーリの返事を聞くとエステルはますます怯え声になりながら言葉を続けた
「クオイに踏み入る者、その身に呪い、降りかかる、と本で読んだ事が・・・」
「成る程、それがお楽しみって訳か」
「そう言う事」
エステルの言葉を聞きユーリとアスラは小さく笑い、歩き出した
「エステル、行こう」
「で、でも・・・」
「心配すんなって。ちゃんとそこに専門家がいるから」
「・・・専門家? あの、専門家って・・・」
「大丈夫だから。ね、行きましょ」
ユーリの言葉にエステルは疑問符を出しリアを見るがリアは笑顔でエステルの疑問を流し、エステルの手を握って歩き出した
04.呪いの森の真実
クオイの森に入って暫く歩いているとエステルがこの森の雰囲気と静けさに耐えきれなくなり繋いでいたリアの手をギュッと握った
「エステル、大丈夫?」
「は、はい・・・」
エステルは怯え声になりながら答えた
デイドン砦で話していた通り、やはりエステルにはこの手がニガテなのだろうと苦笑していた
「リアは怖くないんですか?」
「え? ええ、大丈夫よ」
「実際にそうだったら今の仕事出来てないけどね」
「まあな。つか、そんなリア想像出来ねえ」
先頭を歩くユーリとその横にいるアスラが小声で話しているのが聞こえた
そしてエステルはきょろきょろと辺りを見てユーリ達に視線を向ける
「この森、本当に砦の向こうに抜けられるんですか?」
「抜けられなければ戻りゃいいって」
「・・・もし呪いでカエルやヘビになったりしたら、どうしましょう」
リアの隣を歩きながらエステルは言うと、リアがエステルの方を向いて口を開いた
「大丈夫よ、エステル。もしそうなったらユーリが責任持って面倒みるから」
「面倒みる・・って・・?」
「ユーリは子供の頃、カエルもヘビも飼ってた事あるからね」
「ああ。だから世話の仕方はばっちりだぜ」
「で・・でも、わたし・・・ユーリがカエルやヘビになったら、お世話する自信ありません・・・よ?」
「私も、ない・・・って言うか、絶対無理・・・」
「まあ、そうだろうね」
「だな」
「?」
リアの言葉にアスラとユーリは納得したものの、エステルだけは疑問符を出していた
暫く足を進めていると、段々足元がひんやりと冷たくなっていくのに気が付いた
それに連れて何かおかしな音が聞こえた
ユーリが足を止めると皆足を止め、エステルは再度リアの手を握った
「何の音・・・です? 足元がひんやりします・・・。まさか! これが呪い!?」
「どんな呪いだよ」
エステルの言葉にユーリは苦笑混じりに言うがエステルにはユーリの声は届いておらず、震えた声で言葉を続けた
「木の下に埋められた死体から、呪いの声がじわじわと這い上がりわたし達を道連れに・・・」
「いや、それはないからι」
「エステル、落ち着いて。大丈夫だから」
リアはエステルを落ち着かせようと頭を優しく撫でてやりながら辺りに目をやると森の隅にある物体が目に入った
ユーリもアスラもその物体に気が付き物体に近付いた
「これ、魔導器か。何でこんな場所に・・・」
「しかもこれ、かなり古い魔導器だよ・・・」
「・・・」
リアが二人の様子と魔導器を見て何か考えていると、エステルが魔導器の近くに行き魔導器を見て疑問を抱き触れた瞬間
「「うわっ」」「「きゃっ」」
突然眩い光が現れリア達は目を瞑った
「・・・っ、みんな大丈夫?」
「うん、何とか。ユーリは?」
「オレも大丈夫だ。エステルは・・・っと、気絶してるか」
ユーリとリアとアスラは魔導器の近くで倒れているエステルを見た
「このまま起こすのも可哀想だし、少し休もうか」
「そうだな。ラピード、背中貸してくれ」
「ワン」
木の根元までエステルを運びラピードの背中を借りてエステルを横にしユーリとリアはその場に腰を下ろした
「・・・なんだったんだ、あれ」
「エアルだよ」
「エアル・・・? エアルって、あの?」
どうしてそんなものがと言う顔をしてユーリはリアを見た
「エアルって大気中にもあるって言うでしょ。その大気中に溢れているエアルの量が多いと、人間に害を与えるものになるの」
「だからエステルもエアルに酔ったんじゃないかな」
「成る程な。で、結局この魔導器が呪いの正体だったと?」
「そう言う事みたいね。じゃ、報告書出さなきゃね」
言ってリアはポケットから一枚の紙を取り出し、少しだけ目を閉じてその紙を空へと放つとその紙は鳥の姿になって何処かへ消えていった
「調査終了、だね」
「やっぱ此処に来たのはその為だったんだな」
今の行動を一通り見ていたユーリが小さく笑いながらリアとアスラに聞いた
「うん。普通の人はこう言う事は調べようとしないしね」
「こう言う事はボク達しか出来ない仕事だしね」
「まあな」
言うとユーリはその場に落ちていた木の実を拾い一口囓った
「・・・にがっ」
そんなユーリを見てリアは苦笑いしながらお茶注ぐとユーリに渡した
「お腹空いてるなら何か作ろうか?」
「悪ぃな。簡単なもんで良いぜ」
「解った」
リアは荷物の中から材料を取りだし調理を始めた
「・・・うぅ・・・」
調理が終わるとエステルが気が付きユーリとリアとアスラはエステルに目をやった
「大丈夫か?」
「少し頭が・・・。でも平気です。わたし、一体・・・」
「エアルに酔って倒れたみたいだね」
「エアルに・・・?」
倒れる前の記憶を思い出しエステルは立ち上がろうとしたがリアに止められる
「少し休みましょう。また倒れたら困るでしょ」
「でも・・・」
「また倒れて、今度は一晩中起きなかったらどうすんだよ」
「・・・そうですね。ごめんなさい」
ユーリの言葉を聞いてエステルは渋々と納得した
「お腹空いたでしょ。はい、どうぞ」
「有り難う御座います。リアが作ったんですか?」
「ええ。簡単なものだけどね」
「とても美味しいです」
エステルは一口食べ笑顔で言うとまた食べ出し、リア達も安心し食事を続けた
食事を終えお茶を飲みながら一息吐いているとエステルがじっとユーリとリアを見ていた
「エステル、どうしたの?」
「いえ。フレンが危険なのにユーリ達は心配ではないんです?」
エステルの疑問にユーリとリアはきょとんとしたが直ぐにいつもの顔に戻るとユーリが冗談めいた口調で答えた
「ん? そう見える?」
「・・・はい」
「実際、心配してないからね」
「ああ。あいつなら自分で何とかしちまうだろうし。あいつを狙ってる連中にはホント同情するよ」
「ホントだよね」
ユーリの言葉にアスラも苦笑いで言うと今度はエステルがきょとんとしてユーリを見た
「ガキの頃から何やってもフレンには勝てなかったもんな。駆けっこだろうが、剣だろうが。その上、余裕かましてこう言うんだぜ? 大丈夫、ユーリ? ってさ」
「その後二人して私の所に来て意見の言い合いになってくるのよね」
「二人して違う事言うからまた面白いんだよね」
「そうそう!」
「お前等、楽しんでたのかよι」
そんなユーリとリアとアスラを見てエステルは少し俯きながら言った
「羨ましいな・・・。私にはそういう人、誰もいないから」
「いても口煩いだけだぞ」
口ではそう言うもののそれはユーリの良い所で、魅力でもある
だからフレンも無理に直したりしないし、親友としてのある程度の注意だけで私もフレンもユーリの好きにさせているのだから
それから出発し暫く進んでいると突然ラピードが何かの気配を感じて立ち止まった
何かとラピードを振り返るとなにやら姿勢を低くして警戒している
魔物か、とユーリが剣の柄に手を掛けると、まだ幼さの残る声が聞こえてきた
「エッグベアめ、か、覚悟!」
少しどもって台無しになってしまった台詞と共に小さな影が木の後ろから飛び出して来た
それは大きな刃物を持った小さな少年
「うわっ、とっとっ!」
少年はその小さな体躯に似合わぬ大きな獲物を持って力任せに振り回すが、勢い余って空振りどころか見当違いな所でくるくると回って止まらなくなってしまった
三人と二匹はきょとんとしてその様子を見ていたがユーリが鞘から剣を抜き、少年が来るであろうコースに剣を構えユーリは少年の持つ大剣を半分程度の所を狙って叩き折った
「うああああっ! あうっ! いたたっ・・・」
少年はその衝撃に耐え切れずに悲鳴を上げ倒れ、ラピードが少年に近寄った
「ひぃ!!」
匂いを嗅ぐようにして顔を寄せると、少年はまた悲鳴を上げ今度は死んだふりをし泣き声のような弱々しい声で言った
「ボ、ボクなんか食べても美味しくないし、お腹壊すんだから」
「ガウっ!!」
「ほ、ほほほんとに、たたたすけて、ぎゃあああ~~~~!!」
ラピードが一声吠えると少年はまた悲鳴を上げた
「・・・元気な子だねι」
「うん、て言うかラピード・・・ι」
「絶対楽しんでんな」
苦笑しながらその様子を見ていたユーリ達と変わり、エステルは微笑みながら少年に近付いた
「大丈夫ですよ」
「あれ? 魔物が女の人に?」
「立てる?」
「え、あ、うん」
少年はエステルの姿を見て疑問符を出し、リアも少年に近付き手を出して立たせてあげた
「ありがと」
「いいえ。ところで君は?」
「ボクはカロル・カペル! 魔物を狩って世界を渡り歩く、ギルド『魔狩りの剣』の一員さ!」
「オレはユーリ。それにリアとエステルとラピードだ。んじゃ、そういう事で」
カロルの挨拶の後に自分達の紹介をするとユーリは踵を返し歩き出した
「あ、え? ちょっと、ユーリ!?」
エステルはユーリの行動に驚き隣にいるリアを見るとリアは軽く呆れた顔をし、カロルに声を掛けた
「ごめんね。私達も行かなきゃいけないから。またね」
「ほら、エステル行くよ」
「え! あの、じゃあわたしも失礼します」
リアとアスラに促されエステルもカロルに挨拶をしてリアの後を追った
「へ? ・・・って。わ~、待って待って待って!」
一瞬きょとんとしたが急いで走って三人と二匹の前に止まった
「三人共、森に入りたくて此処に来たんでしょ?」
「残念だけど抜けて来たんだ」
「へ? うそ!? 呪いの森を?」
「はい。これから花の街ハルルに向かう所です」
カロルは驚いてユーリ達を見た
確かに呪いの正体を知らない人が聞けば驚くのも当然だとリア達は思った
「あ、なら、エッグベア見なかった?」
「エッグベアってあのエッグベア?」
「そう。もしかして見たの?」
リアの言葉にカロルは目をキラキラさせながら聞いた
「知ってはいるけど、此処では見なかったよ」
「そっか・・・」
リアが答えるとカロルは残念そうな顔をした
「なら、ボクも町に戻ろうかな・・・あんまり待たせると、絶対に怒るし・・・。うん、よし!」
独り言を言った後にカロルはニッコリと笑いながら振り返った
「三人じゃ心配だから、魔狩りの剣のエースであるボクが街まで一緒に行ってあげるよ」
そして自分が持っている鞄を見せ必死でアピールした
「ほらほら、なんたってボクは魔導器だって持ってるんだよ」
だが、カロルは三人を見て驚いた
「あ、あれ、三人共なんで魔導器持ってるの!」
「何でと聞かれてもねぇ・・・」
アスラの呟きにリア達は少し苦笑した
確かに魔導器は限られた者しか持てないからカロルが驚くのも無理はないだろう
「行くぞ」
ユーリはカロルの疑問を無視して歩き出した
「ちょ、あ、方向解ってんの~? ハルルは森を出て北の方だよ。もぉ、置いてかないでよ~!」
最後には泣きそうな声で追い駆けて来るカロルの声が聞こえた
続く
あとがき
付け足しで書いたけど、箱版と殆ど変わってないι
けど、次からはあの話し入れるのでちょっと変わるかな?
あ、因みに、エステルが言ったカエルやヘビに(以下略)、リアちゃんが嫌がった理由はニガテだからです(オレもニガテ。でもヘビは大丈夫だったり(笑))
それではまた次回!
2009.10.08