満月の子編
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トリム港の宿に到着すると私達は部屋を2部屋借りて食事を済ませた後、ユーリ達男子部屋に集まり、リタとレイヴンがベッドに腰掛け、残りは部屋の壁に寄り掛かって立つか、地べたに座ってリタとレイヴンに二人と別れた後の出来事、フェローや凛々の明星の事を話した後、レイヴンがどうして此処まで着たのかを話してくれた
43.Light in the evening
「成る程な、ユニオンとしては帝国の姫様がぶらぶらしてるのを知りながらほっとけないって訳か」
「ドンはもうご存知なんですね。私が次の皇帝候補であるって事」
「そそ、なもんでドンにエステルを見ておけって言われたんさ」
「監視って事? あんま気分良くなくない?」
「そんなものです?」
「あれ・・・? ボクだけ?」
「エステルは立場上慣れてるんだろ」
「ま、ともかく、追っ駆けて来たらいきなり厄介事に首突っ込んでるし、おっさん着いてくの大変だったわよ」
「・・・でも、どうしてエステルを?」
「帝国とユニオンの関係を考えたら当然の事かもね」
「腹を探り合ってるとこだからなぁ。動きを追っておきたいのさ」
「んで、あんた等はフェローってのを追ってコゴール砂漠に行こうとしてると」
「はい」
素直に頷くエステルにリタは怪訝そうな顔をした
「砂漠がどういうとこか、解ってる?」
「暑くて、乾いてて、砂ばっかの所でしょ」
「簡単に言うわね。そう簡単じゃないわよ」
「とりあえず、近くまで皆さんと一緒に行こうと思って」
「それから?」
「色々回ってみて、フェローの行方を聞こうかと」
「・・・ツッコみたい事は沢山あるけど・・・ι お城に帰りたくなくなったって事じゃないんだよね?」
リタは整った顔をこれでもかというほど引き攣らせて、米神を押さえエステルを見た
「えと・・・それは」
「おっさんとしては城に戻ってくれた方が楽なんだけどなぁ」
「ごめんなさい。わたし、知りたいんです。フェローの言葉の真意を・・・」
「・・・・」
エステルの言葉に私は静かに同意した
それはあの場に一緒にいた私自身も気になっているし、ユーリ達も気になってる事だ
「ま、デズエール大陸ってんなら好都合っちゃ好都合なんだけども」
そう思っているとレイヴンがノードポリカの首領 ベリウスに手紙を持って行くと言う話しをしていて、レイヴンは封筒をユーリに放って寄越し、ユーリはその手紙を受ける
「その手紙の内容、知ってるの?」
「ん、ダングレストを襲った魔物に関する事だな。お前さん達の追っているフェローってヤツ。ベリウスならあの魔物の事知ってるって事だ」
「こりゃオレ達もベリウスってのに会う価値が出て来たな」
ユーリは手紙を横流しに読むと手紙を封筒に戻して同じようにレイヴンに返した
「っつー訳で、おっさんも一緒に連れてってね」
「解ったよ。でも一緒にいる間はちゃんと凛々の明星の掟は守ってもらうよ」
「了解、了解~。んでも、そっちのギルドに入る訳じゃないからそこんとこもよろしくな」
「どうして凛々の明星に入らないのです?」
「同時に二つ以上のギルドに所属する事は禁止されてるんだ。レイヴンだって一応、天を射る矢の人間だしね」
「一応ってなんだよ」
「話しは終わり? じゃああたしそろそろ休むわ」
「はい」
リタはそう言って部屋から出た
「リタは・・・どうするんでしょう?」
「さぁ、な」
「とりあえず明日は港に行ってみよう」
後は朝まで自由行動になり、みんな部屋を後にした
部屋に戻るとリタがベッドに腰掛け考え込んでいた
「ねえ・・・あいつ等、本当にそのフェローとかいう奴にエステルを会わせるつもり?」
リタは私とアスラが部屋に入ってきたのを見て私達にそう言った
「あの子、そいつに毒って言われたんだっけ?」
「そんな事言われて気にするなって方が無理でしょ?」
「だからって皇位継承のごたごたから目を背けてもあの子の為になんないでしょ」
「そうかもだけど、エステル自身が決めたならユーリも私もエステルの自由にさせるな」
「・・・で、あんたはどうするの?」
「え?」
リタは一瞬だけ押し黙って小さく息を吐いて急に話しを変え、私の事を振られ、疑問を持っているとリタはそのまま言葉を続ける
「あんたも、そのフェローってのに何か言われたんでしょ?」
「エステルから聞いたの?」
「ええ」
「・・・あの時、フェローは私の事、言霊使いって呼んでたのよ」
「!?」
その言葉を聞き、リタは驚いて私とアスラを見た
「だから私もエステルと一緒に、フェローを探す。それに・・・」
「それに・・・?」
「・・・他にも気になる事があるからね」
「「・・・・」」
『世界の毒』、フェローは確かにエステルにそう言った
ただ、その言葉を聞いて私の心臓がドクンと脈を打った
それが未だに何なのか解らない
そして、フェローが私とエステルに告げたあの言葉
その意味を知る為にも、そしてあの妙な心臓の跳ねた事も含め、フェローならこの事を知っているだろうから、会いに行きたかった
「ま、あんたが決めた事ならあたし達は何にも言わないけど・・・、その事ユーリは知ってるワケ?」
「え? うーん、少しは・・・」
「肝心な事はまだ話してないんだよね」
何でそこでユーリの名前が? と思いながら答え、アスラは苦笑しながら言うとリタははあ・・・と大きな溜息を吐き米神に手を当てた
「エステルもだけど、あんた自身も心配されてるって気付きなさいよι」
「特にユーリに、ね・・・」
「?」
リタとアスラが小声で言った事は私には聞こえず、私は首を傾げていた
リタと話しを終えた後、私は港の近くで夜風に当たっていた
「そこのお嬢さん、良かったら俺様とお話ししない?」
ボーっと海を見ていると不意に聞き覚えのある声が後ろから聞こえた
「・・・レイヴン、それナンパみたいよ」
「みたいって・・・一応そうだったんだけどなぁ・・・ι」
私がくすりと笑って返すとレイヴンは少し項垂れて私の隣に座った
「で、リアちゃんはこんな所で何やってんの? あんまり遅くまで一人でいると、変な人に声掛けられちゃうよ?」
「今のレイヴンみたいに?」
「そ。って、もしかしてリアちゃんもそう思ってるの?」
「思ってないけど、兄さんとアスラ、あと、リタとユーリなら言うかもね」
「あー、確かに言いそうよねι そういや、ユーリで思い出したけど・・・」
「?」
そこで言葉を切られ、気になってレイヴンの方に顔を向けると少しだけ怪訝そうな顔をして言われる
「さっきセイから聞いたけど、リアちゃん達もフェローに会いに行くんだって?」
「うん」
「でも、まだ青年には話してないって言ってたっけ」
「うん・・・まだ言ってない」
その話は私がユーリにしろって兄さんが言っていたから、私が言う事になっていたけど、色々と遭って後回しになってしまっていた
「俺様達はともかく、青年にはちゃんと話さなきゃダメよ?」
「・・・それ、さっきリタにも言われた」
「みんな思ってる事は同じみたいね」
「え?」
「エステル嬢ちゃんもだけどリアちゃんもみんなに心配されてるのよ。特に青年に」
「・・・ユーリに?」
「そ」
レイヴンはそう言って深々と頷いた
「ま、とにかくその事は早めに青年に話した方が良いって」
「・・・うん、そうする」
私の返事を聞くとレイヴンは満足そうな顔をして立ち上がった
「さーてと、じゃ、話しも纏まった所で、青年、交代よ!」
「え?」
「んじゃ、貰ってくぜ」
レイヴンの言葉に驚き、更にユーリの声も聞こえ振り返えろうとしていると、急に腕を引かれ立ち上がり、その相手を見るとユーリだった
「え、ちょっと、ユーリ!」
「んじゃ、ごゆっくりぃ~♪」
そしてユーリは私の腕を引っ張ったまま歩き出し、レイヴンはそんな私達を見て楽しそうに笑って見送っていた
「はあ・・・。リアちゃん、鋭い所は鋭いのにホント自分の事に関しては鈍いんだから・・・ι」
ユーリとリアの姿が見えなくなるとレイヴンは大きな溜息を吐いた
みんながリアの事を心配しているのは確かだが、一番心配している事はユーリがリアを好きだとリア自身が気付いていない事だった
他の事や他人の事に関しては凄く気付くのが早いのだが、これだけは本人が気付くまでどうしようもない程の鈍さだったのだ
「ま、それが良い方に転ぶか悪い方に転がるかはリアちゃん次第、か。・・・色んな意味で、ね・・・」
レイヴンは何処か遠い目をして呟いた言葉は、波が波止場にぶつかる音に消えた
*
ユーリに手を引かれ、レイヴンといた港の方からだいぶ離れ、私達は宿へと続く海沿いの道を歩いていた
「「・・・・」」
けど、何故かお互いに無言のまま歩いていた
「あの、ユーリ」
「・・・のか?」
「え・・?」
このままだとずっと気まずい空気が流れるような気がして私はユーリに声を掛けると、ユーリは歩みを止めぽつりと何か呟き、私の方へ振り返った
「リアもエステルと一緒にフェローを探すのか?」
ユーリのその目はいつも以上に真剣な目でそして心配している目だった
「・・・うん」
私は静かに頷き、ユーリを見た
「エステルの事が心配だし、それにユーリ達も一緒に行くんでしょ。みんな無茶するから私や兄さんやアスラがいなきゃいけないし」
「けど、一番はあん時のフェローの言葉、か?」
「・・・うん。あの言葉の真意を確かめたい。ううん、確かめなきゃいけないと思うの。私自身の為にも、エステル自身の為にも」
私はいつもより真剣な表情でユーリを見るとユーリもその言葉をしっかりと受け止めていた
「それに・・・」
「それに・・・?」
「・・・良く解らないけど、言葉で説明は出来ないんだけど、その他の事でもフェローに会わなきゃいけない気がするの」
ユーリに言った通り、フェローの言葉の真意を確かめなきゃいけないのは確かだ
だけど、あの後から何故だか妙に心臓が脈打ったり、締め付けられる時がある
それがフェローに対してなのか、それとも違う何かに対してなのか・・・
色々と引っくるめてフェローに会わなくてはいけない、とずっと思っていた
そう思っていると私の頭の上にポンっと何かが乗り顔を上げて見るとユーリが手を置いて優しく微笑んでいた
「解った。リアが決めたんならオレは反対しないぜ」
「ユーリ・・・」
「けど、無茶だけはすんなよ。リアの事心配してんのはオレだけじゃねえんだからな」
「うん、解った」
ユーリはそう言って私の頭を優しく撫で、私は私の事を心配してくれているみんなの事を思って微笑んだ
「さてと、んじゃそろそろ帰るか」
「ユーリ」
「ん?」
「ありがとう」
「ああ」
私はユーリに優しく微笑むと、ユーリも微笑み返してくれ、私達は並んで何処か温かさを感じる夜の光を浴びて再び宿へと向かって歩き出した
続く
あとがき
やっと書き終わりました、43話
箱版と違う形に~、と思って書いてたんですが、何か納得いかない感じになり、かなり日にちを空けて書き上げました
でも、箱版同様年長者であるレイヴンには相談に乗って貰いたかったので、此処はカットせずに使い、そして最後のユーリの所はかなり変えました
こうして書いてて、最近こっち のリアちゃんが箱版と違いちょっとだけ精神年齢が下がってる・・・? と思って来てますι
まあ違う形に、だからしょうがないのかもですがι
さ、次回はノードポリカを目指し船の調達の所からかな?
頑張って書こう!
Light in the evening:夜の光
2010.01.31
43.Light in the evening
「成る程な、ユニオンとしては帝国の姫様がぶらぶらしてるのを知りながらほっとけないって訳か」
「ドンはもうご存知なんですね。私が次の皇帝候補であるって事」
「そそ、なもんでドンにエステルを見ておけって言われたんさ」
「監視って事? あんま気分良くなくない?」
「そんなものです?」
「あれ・・・? ボクだけ?」
「エステルは立場上慣れてるんだろ」
「ま、ともかく、追っ駆けて来たらいきなり厄介事に首突っ込んでるし、おっさん着いてくの大変だったわよ」
「・・・でも、どうしてエステルを?」
「帝国とユニオンの関係を考えたら当然の事かもね」
「腹を探り合ってるとこだからなぁ。動きを追っておきたいのさ」
「んで、あんた等はフェローってのを追ってコゴール砂漠に行こうとしてると」
「はい」
素直に頷くエステルにリタは怪訝そうな顔をした
「砂漠がどういうとこか、解ってる?」
「暑くて、乾いてて、砂ばっかの所でしょ」
「簡単に言うわね。そう簡単じゃないわよ」
「とりあえず、近くまで皆さんと一緒に行こうと思って」
「それから?」
「色々回ってみて、フェローの行方を聞こうかと」
「・・・ツッコみたい事は沢山あるけど・・・ι お城に帰りたくなくなったって事じゃないんだよね?」
リタは整った顔をこれでもかというほど引き攣らせて、米神を押さえエステルを見た
「えと・・・それは」
「おっさんとしては城に戻ってくれた方が楽なんだけどなぁ」
「ごめんなさい。わたし、知りたいんです。フェローの言葉の真意を・・・」
「・・・・」
エステルの言葉に私は静かに同意した
それはあの場に一緒にいた私自身も気になっているし、ユーリ達も気になってる事だ
「ま、デズエール大陸ってんなら好都合っちゃ好都合なんだけども」
そう思っているとレイヴンがノードポリカの
「その手紙の内容、知ってるの?」
「ん、ダングレストを襲った魔物に関する事だな。お前さん達の追っているフェローってヤツ。ベリウスならあの魔物の事知ってるって事だ」
「こりゃオレ達もベリウスってのに会う価値が出て来たな」
ユーリは手紙を横流しに読むと手紙を封筒に戻して同じようにレイヴンに返した
「っつー訳で、おっさんも一緒に連れてってね」
「解ったよ。でも一緒にいる間はちゃんと凛々の明星の掟は守ってもらうよ」
「了解、了解~。んでも、そっちのギルドに入る訳じゃないからそこんとこもよろしくな」
「どうして凛々の明星に入らないのです?」
「同時に二つ以上のギルドに所属する事は禁止されてるんだ。レイヴンだって一応、天を射る矢の人間だしね」
「一応ってなんだよ」
「話しは終わり? じゃああたしそろそろ休むわ」
「はい」
リタはそう言って部屋から出た
「リタは・・・どうするんでしょう?」
「さぁ、な」
「とりあえず明日は港に行ってみよう」
後は朝まで自由行動になり、みんな部屋を後にした
部屋に戻るとリタがベッドに腰掛け考え込んでいた
「ねえ・・・あいつ等、本当にそのフェローとかいう奴にエステルを会わせるつもり?」
リタは私とアスラが部屋に入ってきたのを見て私達にそう言った
「あの子、そいつに毒って言われたんだっけ?」
「そんな事言われて気にするなって方が無理でしょ?」
「だからって皇位継承のごたごたから目を背けてもあの子の為になんないでしょ」
「そうかもだけど、エステル自身が決めたならユーリも私もエステルの自由にさせるな」
「・・・で、あんたはどうするの?」
「え?」
リタは一瞬だけ押し黙って小さく息を吐いて急に話しを変え、私の事を振られ、疑問を持っているとリタはそのまま言葉を続ける
「あんたも、そのフェローってのに何か言われたんでしょ?」
「エステルから聞いたの?」
「ええ」
「・・・あの時、フェローは私の事、言霊使いって呼んでたのよ」
「!?」
その言葉を聞き、リタは驚いて私とアスラを見た
「だから私もエステルと一緒に、フェローを探す。それに・・・」
「それに・・・?」
「・・・他にも気になる事があるからね」
「「・・・・」」
『世界の毒』、フェローは確かにエステルにそう言った
ただ、その言葉を聞いて私の心臓がドクンと脈を打った
それが未だに何なのか解らない
そして、フェローが私とエステルに告げたあの言葉
その意味を知る為にも、そしてあの妙な心臓の跳ねた事も含め、フェローならこの事を知っているだろうから、会いに行きたかった
「ま、あんたが決めた事ならあたし達は何にも言わないけど・・・、その事ユーリは知ってるワケ?」
「え? うーん、少しは・・・」
「肝心な事はまだ話してないんだよね」
何でそこでユーリの名前が? と思いながら答え、アスラは苦笑しながら言うとリタははあ・・・と大きな溜息を吐き米神に手を当てた
「エステルもだけど、あんた自身も心配されてるって気付きなさいよι」
「特にユーリに、ね・・・」
「?」
リタとアスラが小声で言った事は私には聞こえず、私は首を傾げていた
リタと話しを終えた後、私は港の近くで夜風に当たっていた
「そこのお嬢さん、良かったら俺様とお話ししない?」
ボーっと海を見ていると不意に聞き覚えのある声が後ろから聞こえた
「・・・レイヴン、それナンパみたいよ」
「みたいって・・・一応そうだったんだけどなぁ・・・ι」
私がくすりと笑って返すとレイヴンは少し項垂れて私の隣に座った
「で、リアちゃんはこんな所で何やってんの? あんまり遅くまで一人でいると、変な人に声掛けられちゃうよ?」
「今のレイヴンみたいに?」
「そ。って、もしかしてリアちゃんもそう思ってるの?」
「思ってないけど、兄さんとアスラ、あと、リタとユーリなら言うかもね」
「あー、確かに言いそうよねι そういや、ユーリで思い出したけど・・・」
「?」
そこで言葉を切られ、気になってレイヴンの方に顔を向けると少しだけ怪訝そうな顔をして言われる
「さっきセイから聞いたけど、リアちゃん達もフェローに会いに行くんだって?」
「うん」
「でも、まだ青年には話してないって言ってたっけ」
「うん・・・まだ言ってない」
その話は私がユーリにしろって兄さんが言っていたから、私が言う事になっていたけど、色々と遭って後回しになってしまっていた
「俺様達はともかく、青年にはちゃんと話さなきゃダメよ?」
「・・・それ、さっきリタにも言われた」
「みんな思ってる事は同じみたいね」
「え?」
「エステル嬢ちゃんもだけどリアちゃんもみんなに心配されてるのよ。特に青年に」
「・・・ユーリに?」
「そ」
レイヴンはそう言って深々と頷いた
「ま、とにかくその事は早めに青年に話した方が良いって」
「・・・うん、そうする」
私の返事を聞くとレイヴンは満足そうな顔をして立ち上がった
「さーてと、じゃ、話しも纏まった所で、青年、交代よ!」
「え?」
「んじゃ、貰ってくぜ」
レイヴンの言葉に驚き、更にユーリの声も聞こえ振り返えろうとしていると、急に腕を引かれ立ち上がり、その相手を見るとユーリだった
「え、ちょっと、ユーリ!」
「んじゃ、ごゆっくりぃ~♪」
そしてユーリは私の腕を引っ張ったまま歩き出し、レイヴンはそんな私達を見て楽しそうに笑って見送っていた
「はあ・・・。リアちゃん、鋭い所は鋭いのにホント自分の事に関しては鈍いんだから・・・ι」
ユーリとリアの姿が見えなくなるとレイヴンは大きな溜息を吐いた
みんながリアの事を心配しているのは確かだが、一番心配している事はユーリがリアを好きだとリア自身が気付いていない事だった
他の事や他人の事に関しては凄く気付くのが早いのだが、これだけは本人が気付くまでどうしようもない程の鈍さだったのだ
「ま、それが良い方に転ぶか悪い方に転がるかはリアちゃん次第、か。・・・色んな意味で、ね・・・」
レイヴンは何処か遠い目をして呟いた言葉は、波が波止場にぶつかる音に消えた
*
ユーリに手を引かれ、レイヴンといた港の方からだいぶ離れ、私達は宿へと続く海沿いの道を歩いていた
「「・・・・」」
けど、何故かお互いに無言のまま歩いていた
「あの、ユーリ」
「・・・のか?」
「え・・?」
このままだとずっと気まずい空気が流れるような気がして私はユーリに声を掛けると、ユーリは歩みを止めぽつりと何か呟き、私の方へ振り返った
「リアもエステルと一緒にフェローを探すのか?」
ユーリのその目はいつも以上に真剣な目でそして心配している目だった
「・・・うん」
私は静かに頷き、ユーリを見た
「エステルの事が心配だし、それにユーリ達も一緒に行くんでしょ。みんな無茶するから私や兄さんやアスラがいなきゃいけないし」
「けど、一番はあん時のフェローの言葉、か?」
「・・・うん。あの言葉の真意を確かめたい。ううん、確かめなきゃいけないと思うの。私自身の為にも、エステル自身の為にも」
私はいつもより真剣な表情でユーリを見るとユーリもその言葉をしっかりと受け止めていた
「それに・・・」
「それに・・・?」
「・・・良く解らないけど、言葉で説明は出来ないんだけど、その他の事でもフェローに会わなきゃいけない気がするの」
ユーリに言った通り、フェローの言葉の真意を確かめなきゃいけないのは確かだ
だけど、あの後から何故だか妙に心臓が脈打ったり、締め付けられる時がある
それがフェローに対してなのか、それとも違う何かに対してなのか・・・
色々と引っくるめてフェローに会わなくてはいけない、とずっと思っていた
そう思っていると私の頭の上にポンっと何かが乗り顔を上げて見るとユーリが手を置いて優しく微笑んでいた
「解った。リアが決めたんならオレは反対しないぜ」
「ユーリ・・・」
「けど、無茶だけはすんなよ。リアの事心配してんのはオレだけじゃねえんだからな」
「うん、解った」
ユーリはそう言って私の頭を優しく撫で、私は私の事を心配してくれているみんなの事を思って微笑んだ
「さてと、んじゃそろそろ帰るか」
「ユーリ」
「ん?」
「ありがとう」
「ああ」
私はユーリに優しく微笑むと、ユーリも微笑み返してくれ、私達は並んで何処か温かさを感じる夜の光を浴びて再び宿へと向かって歩き出した
続く
あとがき
やっと書き終わりました、43話
箱版と違う形に~、と思って書いてたんですが、何か納得いかない感じになり、かなり日にちを空けて書き上げました
でも、箱版同様年長者であるレイヴンには相談に乗って貰いたかったので、此処はカットせずに使い、そして最後のユーリの所はかなり変えました
こうして書いてて、最近
まあ違う形に、だからしょうがないのかもですがι
さ、次回はノードポリカを目指し船の調達の所からかな?
頑張って書こう!
Light in the evening:夜の光
2010.01.31