満月の子編
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ダングレストを離れた私達は騎士団が追って来ないようにとずっと走りっぱなしだった
「ユーリ、カロルとエステルがしんどそうだぞ」
二人を見ると確かに辛そうに息を吐いていた
「もう何も襲って来ないようだし、休んでも良いと思うわ」
その言葉に一斉にジュディスを見る
「・・・どうして解るんです?」
エステルの問いにジュディスは少し考えて答えた
「勘、かしら」
「勘・・・?」
「ボク達以外の気配はないから休んでも大丈夫だよ」
「それに暗くなって来たし、休むなら今のうちだと思うけど」
「そうだな、じゃあ此処で休憩にするか」
ジュディスとアスラの言葉を聞いて私も賛成するとユーリも納得した
「一休みしたらギルドの事も色々ちゃんと決めようね」
「一休みしたいのはカロル先生だけどな」
「ギルドを作って何をするの? 貴方達」
「何を、か・・・」
「ボクはギルドを大きくしたいな。それでドンの跡を継いで、ダングレストを守るんだ。それが街を守り続けるドンへの恩返しになると思うんだ」
「立派な夢ですね」
確かにギルドの街で育ったカロルならそう思うのも当然だろう
「オレはまぁ、首領 について行くぜ」
「え? ボ、首領? ボクが・・・?」
「ああ、お前が言い出しっぺなんだから」
カロルは首領と言う言葉に狼狽えるがユーリの言う通り、提案したのはカロルだから当然の流れではある
「そ、そうだよね。じゃあ、何からしよっか!」
「とりあえず落ち着け」
「うん!」
そう言って幸せそうな顔をしていると、その様子を見ながらジュディスが微笑む
「ふふっ・・・なんだかギルドって楽しそうね」
「ジュディスもギルドに入ってはどうです?」
「あら、良いのかしら。ご一緒させてもらっても」
「ギルドは掟を守る事が一番大事なんだ。その掟を破ると厳しい処罰を受ける。例えそれが友達でも、兄弟でも。それがギルドの誇りなんだ。だから掟に誓いを立てずには加入は出来ないんだよ」
「カロルのギルドの掟は何なんです?」
「えっと・・・」
まだ掟は決めていないのかカロルは困ったような顔をすると、ユーリが口を開いた
「お互いに助け合う、ギルドの事を考えて行動する。人として正しい行動をする。それに背けばお仕置きだな」
「え?」
「一人はギルドの為に、ギルドは一人の為に。義を持って事を成せ。不義には罰を、って事ですね」
「掟に反しない限りは、個々の意思は尊重する」
「ユーリ・・・それ・・・」
「だろ? 首領」
「一人はギルドの為に、ギルドは一人の為・・・う、うん! そう! それがボク達の掟!」
ユーリがそう優しく笑うと、カロルはその掟を復唱して反芻する
なんだかユーリらしい掟という気もする
そう思って微笑んでいるとジュディスもそれに賛同する
「今からは私の掟でもある、と言う事ね」
「そんな簡単に決めても良いのか?」
「ええ、気に入ったわ。一人はギルドの為・・・良いわね」
「じゃあ・・・」
「掟を守る誓いを立てるわ、私と・・・貴方達の為に」
「あんたの相棒はどうすんだ?」
「心配してくれて有り難う。でも平気よ、彼なら」
「相棒って・・・?」
「前に一緒に旅をしてた友達よ」
「へえ、そんな人がいたんだね。じゃあ今日からボク等がジュディスの相棒だね」
「よろしくお願いね」
「よろしく!」
「ワンワン!」
「わたしは・・・」
言い淀むエステルを見て、考える時間を与えるべきと判断し、私達は此処で野営をする事にした
39.ギルド・凛々の明星
夜、みんなまだ眠れないのか各々別の場所にいた
かく言う私も昼間の事が気になって寝れないでいて、昼間の事を兄さんとアスラに話していた
「・・・成る程な」
兄さんとアスラは私の話を聞き終わると少しだけ考えていた
「あいつはリアが言霊使いの姫、だって言ったんだよな」
「うん。それと、世界の毒に満月の子って・・・」
「世界の毒・・・そして、満月の子・・・」
アスラはぽつりと呟き目を細めていた
「満月の子って、あの伝承の・・よね?」
「多分・・な・・・。けど、俺達の事もそう言う話しになってるからな」
「存在してる、って事?」
「「・・・・」」
その言葉に兄さんとアスラは答えず、何か考えているようだった
「考えても仕方ねえか」
「そうだね。ボク、ちょっと故郷に戻ってみるよ。朝までには戻るから」
「うん。じゃあお願いね」
「俺もフキと調べてみるか」
言ってアスラは故郷に向かい、兄さんは立ち上がってテントの方を向いた
「あ、なら、私も」
「リアは休んどけ。リアまでいなくなったら心配する奴が多いからな」
兄さんはそう言って私の頭を撫でてテントへと向かって行った
「・・・・」
「どうしたの、暗い顔して?」
「・・ジュディス」
兄さんとアスラを見送って私はそのまま視線を下へ落すとそう声が聞こえ顔を上げるとニコリと笑っているジュディスがいた
「何か考え事かしら?」
「・・・うん。あの鳥の魔物について、ね・・」
「あの子はフェローよ」
「ジュディス、知ってるの!」
「ええ。バウルがね」
「バウルが・・・?」
ジュディスは私の隣に座って答え、聞き返すとまたニコリと笑った
こういう時のジュディスはそれ以上聞いても答えてくれないだろうと思い違う話をする
「ユーリから聞いたけど、バウルの怪我大丈夫?」
ガスファロストに向かった時に、バルボスの攻撃を受けて怪我をしたと言う話しを聞き、心配だった
けど、私達が知り合いだと言う事は言っていないから聞こうにも聞けないままだった
「ええ。バウルは強い子ですもの。直ぐに元気になるわ」
「そっか。良かった」
「やっぱりリアは心配してくれるのね」
「当たり前でしょ。ジュディスの相棒だし私達の友達なんだから」
私がニコリとして言うとジュディスは一瞬驚いた顔をしたが直ぐにまた笑う
「ありがとう。リアにそう言って貰えてバウルも喜んでいるわ。それじゃあ私は先に休むわね」
「うん。お休み」
お互いに笑って返事を返すとジュディスはテントの方へ歩いて行ったが、そのまま横を通り過ぎた
「バウルと話しに行ったかな・・・」
「リア・・・」
「エステル」
ジュディスを見送っていると今度はエステルの声が聞こえ振り向くとエステルが私の方に歩いて来ていた
「どうしたの?」
「あの・・、少しお時間良いです?」
「ええ、どうぞ」
私は自分の座っている所を譲り、エステルはお礼を言ってそこに座った
が、エステルは浮かない顔をしていた
まるでさっきの私のように・・・
「リア、あの・・・」
そう思っているとエステルが先に口を開いた
「あの魔物が言った事、・・覚えてます?」
「ええ・・・」
フェローはエステルを見て『世界の毒』と言った
そして、
「何故、言霊使いの姫が、満月の子と共にいる!?」
と言った
さっきも兄さんとアスラにも話したけど、私が言霊使いだと言う事はユーリ、フレン、それにジュディス、ほんの僅かな人しか知らない
だけど何故かフェローは私が言霊使いで、そして、“姫”だと言う事を知っていた
「・・・言霊使いに満月の子、どちらも伝承やお伽話の人物ですよね?」
「ええ・・・。気になってるの?」
「はい・・・。リアは気になってないんです?」
「なってない、って言ったら嘘になるかな」
「じゃあやっぱり・・・」
エステルの言葉に私は頷いた
「エステルも私もあの場にいた。そして、あの魔物は私とエステルに向けてあの言葉を言った。私達が関係してるのは間違いないと思う」
「・・・一体、どういう事なんでしょう」
「・・・・」
その後はお互いに言葉が続かず沈黙が流れ出した
確かに今その答えを知っている人はいない
ジュディスや兄さんやアスラが何か知っているかも知れないけど、みんな、まだはっきりとした答えが出ていないのかもしれない
その答えを知っているのは・・・
「フェローだけ・・・」
「え?」
自分の中で確信を得るように呟くとエステルは首を傾げた
「エステルはこれからどうするの?」
エステルには聞こえていないようだったが、なんとなくこのままの雰囲気じゃ気まずくなる気がして私は話を変えた
「わたしは・・、まだ決めてません。・・けど・・・」
「あの魔物を捜す?」
「それも考えてます」
「急いで答えを探しても良い方向には向かないからね」
「はい。リアはどうするんです?」
「・・・・」
私はある場所にいる人物に目を向けると、エステルもつられてその人物を見た
「仕事が来るまではみんなといるつもりよ」
「そうですか。 ・・あの、」
「ん?」
「・・・あ、えっと・・・」
エステルは何かを切り出そうとするが、まだ迷っている雰囲気で少し考えて立ち上がって答えた
「わたし、ちょっと火の側に行ってから寝ますね」
「うん。じゃあお休み」
「お休みなさい」
エステルはそのまま火の側に歩いて行った
「・・・まだ、考えが纏まってないって感じね」
「そうだな。けど、それはリアもだろ」
「ユーリ、ラピード」
エステルの後ろ姿を見て苦笑していると、ユーリの声が聞こえ振り向くとユーリとラピードが私の側に来ていた
「聞いてたの?」
「いや、入れ違いだよ。で、何考えてたんだ?」
「あの魔物の事を、ね」
「ああ、あいつか。 ・・何か遭ったのか?」
私の表情を見て、ユーリは何か遭ったと感じた
「あの魔物が言った言葉、聞いた?」
「確か、世界の毒・・がどうとか言ってたな」
「・・・ユーリには聞こえてなかったんだ」
「何がだ?」
「あの後あの魔物、私の前に来たでしょ」
「ああ」
「その時に私の事『言霊使い』って言ったの」
「!」
その言葉を聞き、ユーリは驚いて目を見開いた
「・・・どういう事だ?」
「解らない。けど、あの魔物は私にはっきりとそう言ったの・・・」
「あいつの狙いはエステルだけじゃなく、リアも、って事か?」
「少なくとも狙われてたのはエステルだと思う。けど・・・」
「あいつはリアの事も見てた」
「うん・・・」
「「「・・・・」」」
そう言って私もユーリもラピードも黙ってしまった
確かに傍から見れば私も狙われていたと言えるのかもしれない
けど、フェローは私とエステルが一緒にいた事に凄く驚いていた
だからフェローは私も狙っていた、と言うのは違うだろう
そして、フェローは私を見て『言霊使い』と言い、伝承の『満月の子』の名前を口にした
(あの時の言葉を考えると、隣にいたエステルが満月の子って事・・・?)
考えれば考えるほど、色々と謎が浮かんで来る
「・・・っ!?」
途端、額に痛みを感じ現実に引き戻されると、ユーリが私の額を軽く弾いていた
「ユーリ、何するの」
「あんま深く考え込むなよ。お前、考え込んだらなかなかこっちに戻ってこないからな」
「あ・・・う、うん。ありがとう」
ユーリは私の返事を聞くと小さく笑って頭を撫でだし、私も小さく笑ってやっぱり幼馴染みというべきか、良く解ってるな・・・と思い、ある事を思い出す
「・・・ねえユーリ」
「ん?」
「あの時の言葉って昔、私がユーリに聞いた事だったね」
あの時の言葉、それはユーリがラゴウを手に懸けて私と話しをした時の事だった
「・・ああ、ガキん時にな」
『怖くないの?』
それは昔、私がユーリとフレンに私が言霊使いだと言う事を話した時だった
『リアはリアだろ。特別な力があってもリアはオレ達が知ってるリアだよ』
『それはセイも一緒だよ』
そう言ってユーリとフレンは優しく笑ってくれた
「あの時の言葉、ユーリに言うとは思わなかったな」
「オレも聞き返されるとは思ってなかったけどな」
そう言うとお互いに可笑しくなってくすりと笑った
お互いに笑ったお陰なのかさっきまでの重たい雰囲気は何処かに行ったようだった
「ワン!」
それに安堵して微笑んでいるとラピードが顔を上げて私とユーリを見た
「どうしたの?」
「ワンワンワン」
私とユーリはラピードが言った事に耳を傾ける
どうやら見張りはラピードがやってくれるらしい
「そっか。んじゃ、オレ達は先に休ませて貰うか」
「うん。じゃあお願いねラピード」
「ワン!」
私はラピードの頭を撫でてお休みと言ってユーリと一緒にテントへと向かった
翌朝 ――
旅支度も終わり、テントを片付けようとしていると兄さんと故郷から戻って来たアスラに呼ばれ兄さんの所へ向かった
「どうしたの? もしかして何か解ったの?」
「うん。けど、その前に緊急の仕事が来てね」
「緊急?」
「前にヘリオードで調べてた事覚えてるか?」
「確か、住民が失踪してるって言うあれ?」
「うん、それがまだ続いてるらしいから本格的に調べろって依頼が来たんだ」
「だからヘリオードに着いたら準備が出来次第仕事に向かうぞ」
「了解。 ・・・ユーリ達はどうするんだろ?」
私はユーリ達を見ると兄さんもアスラもユーリ達を見る
「あいつ等もこのままヘリオードに向かうだろうな」
確かに今ダングレストに戻ればまだ騎士団もいるし、フェローが街を襲った事、そしてヘラクレスの砲撃を受けて橋が崩れてしまったから戻るにも戻れない状態だ
だからユーリ達もこのままヘリオードを目指すだろう
(それに、気になる事がいっぱいあるしね・・・)
私は昨日の出来事、そしてユーリ達と話した事も含めてじっとユーリ達を見ていた
「よーし! じゃあ勇気凛々胸いっぱい団、出発!」
「「「「「「・・・・・・・」」」」」」
が、途端、カロルが元気良くそう叫び、その言葉に私達(カロル以外)は固まってしまった
「・・・おい、カロル」
「え? なに?」
「それ、なんです?」
「え、ギルド名だよ」
「それ、が?」
「そうだけど」
上から兄さん、エステル、アスラ、間にカロルが言葉を挟む
いや、カロルのネーミングセンスがないのは知ってたけど・・・ιι
『勇気凛々胸いっぱい団』・・・
カロルらしいと言えばらしいけど・・・ιι
私も含めみんな、何とも言えない顔をしていた
「それじゃダメよ。名乗りを上げる時に言いやすくないと」
「そうですよ!」
私の言葉にエステルも賛成の声を上げる
「そ、そうなの? じゃあ・・・」
カロルが考えているとエステルが何かを思いついたようだった
「凛々の明星 なんてどうです? 夜空にあって、最も強い光を放つ星・・・」
「一番の星か、格好良いね!」
「凛々の明星・・・ね。気に入った、それにしようぜ」
「ワン!」
ユーリもラピードもその名前が気に入ったようでまたカロルが嬉しそうな顔をした
「大決定~! じゃあ早速トリム港に行って船を調達しよう! デズエール大陸まで船旅だ!」
「ヘリオードで休むのはもう良いのか?」
「もうへっちゃらだよ!」
「どっちにしろ、ヘリオード通んないとトリム港にゃ行けないけどな」
「ヘリオードと言えば、魔導器の暴走の後、街がどうなったのか気になります」
「確かにありゃ凄かったからな」
「「「・・・」」」
「んじゃ、ちょっと街の様子だけでも見て行く?」
「ええ」
「そうしてくれると助かるわ。俺等も仕事でヘリオードに寄りたいからな」
兄さんの言葉に私もアスラも頷く
「んじゃまずはヘリオード、その後トリム港から船でデズエール大陸だな」
「じゃあ改めて・・・凛々の明星、出発!」
カロルの元気の良い掛け声と共に、私達はヘリオードへと向かい始めた
続く
あとがき
下書きはかなり前からあったけど、箱版と同じく此処は何故か行き詰まってしまうι 何故ぇι
て事で年越えて完成しました
箱版と違う形にしたいから色々と変えてみたけど・・・カロル先生とだけ喋ってないι
うん、今度頑張って見せ場や会話増やすからι
でもみんなと話したけど、謎は深まる一方・・・それはこれから解る事ですけどねw
さ、次はみんな大好き! のあの回です
こっちも前回同様気合い入れて書きたいと思います
それでは!
2010.01.05
「ユーリ、カロルとエステルがしんどそうだぞ」
二人を見ると確かに辛そうに息を吐いていた
「もう何も襲って来ないようだし、休んでも良いと思うわ」
その言葉に一斉にジュディスを見る
「・・・どうして解るんです?」
エステルの問いにジュディスは少し考えて答えた
「勘、かしら」
「勘・・・?」
「ボク達以外の気配はないから休んでも大丈夫だよ」
「それに暗くなって来たし、休むなら今のうちだと思うけど」
「そうだな、じゃあ此処で休憩にするか」
ジュディスとアスラの言葉を聞いて私も賛成するとユーリも納得した
「一休みしたらギルドの事も色々ちゃんと決めようね」
「一休みしたいのはカロル先生だけどな」
「ギルドを作って何をするの? 貴方達」
「何を、か・・・」
「ボクはギルドを大きくしたいな。それでドンの跡を継いで、ダングレストを守るんだ。それが街を守り続けるドンへの恩返しになると思うんだ」
「立派な夢ですね」
確かにギルドの街で育ったカロルならそう思うのも当然だろう
「オレはまぁ、
「え? ボ、首領? ボクが・・・?」
「ああ、お前が言い出しっぺなんだから」
カロルは首領と言う言葉に狼狽えるがユーリの言う通り、提案したのはカロルだから当然の流れではある
「そ、そうだよね。じゃあ、何からしよっか!」
「とりあえず落ち着け」
「うん!」
そう言って幸せそうな顔をしていると、その様子を見ながらジュディスが微笑む
「ふふっ・・・なんだかギルドって楽しそうね」
「ジュディスもギルドに入ってはどうです?」
「あら、良いのかしら。ご一緒させてもらっても」
「ギルドは掟を守る事が一番大事なんだ。その掟を破ると厳しい処罰を受ける。例えそれが友達でも、兄弟でも。それがギルドの誇りなんだ。だから掟に誓いを立てずには加入は出来ないんだよ」
「カロルのギルドの掟は何なんです?」
「えっと・・・」
まだ掟は決めていないのかカロルは困ったような顔をすると、ユーリが口を開いた
「お互いに助け合う、ギルドの事を考えて行動する。人として正しい行動をする。それに背けばお仕置きだな」
「え?」
「一人はギルドの為に、ギルドは一人の為に。義を持って事を成せ。不義には罰を、って事ですね」
「掟に反しない限りは、個々の意思は尊重する」
「ユーリ・・・それ・・・」
「だろ? 首領」
「一人はギルドの為に、ギルドは一人の為・・・う、うん! そう! それがボク達の掟!」
ユーリがそう優しく笑うと、カロルはその掟を復唱して反芻する
なんだかユーリらしい掟という気もする
そう思って微笑んでいるとジュディスもそれに賛同する
「今からは私の掟でもある、と言う事ね」
「そんな簡単に決めても良いのか?」
「ええ、気に入ったわ。一人はギルドの為・・・良いわね」
「じゃあ・・・」
「掟を守る誓いを立てるわ、私と・・・貴方達の為に」
「あんたの相棒はどうすんだ?」
「心配してくれて有り難う。でも平気よ、彼なら」
「相棒って・・・?」
「前に一緒に旅をしてた友達よ」
「へえ、そんな人がいたんだね。じゃあ今日からボク等がジュディスの相棒だね」
「よろしくお願いね」
「よろしく!」
「ワンワン!」
「わたしは・・・」
言い淀むエステルを見て、考える時間を与えるべきと判断し、私達は此処で野営をする事にした
39.ギルド・
夜、みんなまだ眠れないのか各々別の場所にいた
かく言う私も昼間の事が気になって寝れないでいて、昼間の事を兄さんとアスラに話していた
「・・・成る程な」
兄さんとアスラは私の話を聞き終わると少しだけ考えていた
「あいつはリアが言霊使いの姫、だって言ったんだよな」
「うん。それと、世界の毒に満月の子って・・・」
「世界の毒・・・そして、満月の子・・・」
アスラはぽつりと呟き目を細めていた
「満月の子って、あの伝承の・・よね?」
「多分・・な・・・。けど、俺達の事もそう言う話しになってるからな」
「存在してる、って事?」
「「・・・・」」
その言葉に兄さんとアスラは答えず、何か考えているようだった
「考えても仕方ねえか」
「そうだね。ボク、ちょっと故郷に戻ってみるよ。朝までには戻るから」
「うん。じゃあお願いね」
「俺もフキと調べてみるか」
言ってアスラは故郷に向かい、兄さんは立ち上がってテントの方を向いた
「あ、なら、私も」
「リアは休んどけ。リアまでいなくなったら心配する奴が多いからな」
兄さんはそう言って私の頭を撫でてテントへと向かって行った
「・・・・」
「どうしたの、暗い顔して?」
「・・ジュディス」
兄さんとアスラを見送って私はそのまま視線を下へ落すとそう声が聞こえ顔を上げるとニコリと笑っているジュディスがいた
「何か考え事かしら?」
「・・・うん。あの鳥の魔物について、ね・・」
「あの子はフェローよ」
「ジュディス、知ってるの!」
「ええ。バウルがね」
「バウルが・・・?」
ジュディスは私の隣に座って答え、聞き返すとまたニコリと笑った
こういう時のジュディスはそれ以上聞いても答えてくれないだろうと思い違う話をする
「ユーリから聞いたけど、バウルの怪我大丈夫?」
ガスファロストに向かった時に、バルボスの攻撃を受けて怪我をしたと言う話しを聞き、心配だった
けど、私達が知り合いだと言う事は言っていないから聞こうにも聞けないままだった
「ええ。バウルは強い子ですもの。直ぐに元気になるわ」
「そっか。良かった」
「やっぱりリアは心配してくれるのね」
「当たり前でしょ。ジュディスの相棒だし私達の友達なんだから」
私がニコリとして言うとジュディスは一瞬驚いた顔をしたが直ぐにまた笑う
「ありがとう。リアにそう言って貰えてバウルも喜んでいるわ。それじゃあ私は先に休むわね」
「うん。お休み」
お互いに笑って返事を返すとジュディスはテントの方へ歩いて行ったが、そのまま横を通り過ぎた
「バウルと話しに行ったかな・・・」
「リア・・・」
「エステル」
ジュディスを見送っていると今度はエステルの声が聞こえ振り向くとエステルが私の方に歩いて来ていた
「どうしたの?」
「あの・・、少しお時間良いです?」
「ええ、どうぞ」
私は自分の座っている所を譲り、エステルはお礼を言ってそこに座った
が、エステルは浮かない顔をしていた
まるでさっきの私のように・・・
「リア、あの・・・」
そう思っているとエステルが先に口を開いた
「あの魔物が言った事、・・覚えてます?」
「ええ・・・」
フェローはエステルを見て『世界の毒』と言った
そして、
「何故、言霊使いの姫が、満月の子と共にいる!?」
と言った
さっきも兄さんとアスラにも話したけど、私が言霊使いだと言う事はユーリ、フレン、それにジュディス、ほんの僅かな人しか知らない
だけど何故かフェローは私が言霊使いで、そして、“姫”だと言う事を知っていた
「・・・言霊使いに満月の子、どちらも伝承やお伽話の人物ですよね?」
「ええ・・・。気になってるの?」
「はい・・・。リアは気になってないんです?」
「なってない、って言ったら嘘になるかな」
「じゃあやっぱり・・・」
エステルの言葉に私は頷いた
「エステルも私もあの場にいた。そして、あの魔物は私とエステルに向けてあの言葉を言った。私達が関係してるのは間違いないと思う」
「・・・一体、どういう事なんでしょう」
「・・・・」
その後はお互いに言葉が続かず沈黙が流れ出した
確かに今その答えを知っている人はいない
ジュディスや兄さんやアスラが何か知っているかも知れないけど、みんな、まだはっきりとした答えが出ていないのかもしれない
その答えを知っているのは・・・
「フェローだけ・・・」
「え?」
自分の中で確信を得るように呟くとエステルは首を傾げた
「エステルはこれからどうするの?」
エステルには聞こえていないようだったが、なんとなくこのままの雰囲気じゃ気まずくなる気がして私は話を変えた
「わたしは・・、まだ決めてません。・・けど・・・」
「あの魔物を捜す?」
「それも考えてます」
「急いで答えを探しても良い方向には向かないからね」
「はい。リアはどうするんです?」
「・・・・」
私はある場所にいる人物に目を向けると、エステルもつられてその人物を見た
「仕事が来るまではみんなといるつもりよ」
「そうですか。 ・・あの、」
「ん?」
「・・・あ、えっと・・・」
エステルは何かを切り出そうとするが、まだ迷っている雰囲気で少し考えて立ち上がって答えた
「わたし、ちょっと火の側に行ってから寝ますね」
「うん。じゃあお休み」
「お休みなさい」
エステルはそのまま火の側に歩いて行った
「・・・まだ、考えが纏まってないって感じね」
「そうだな。けど、それはリアもだろ」
「ユーリ、ラピード」
エステルの後ろ姿を見て苦笑していると、ユーリの声が聞こえ振り向くとユーリとラピードが私の側に来ていた
「聞いてたの?」
「いや、入れ違いだよ。で、何考えてたんだ?」
「あの魔物の事を、ね」
「ああ、あいつか。 ・・何か遭ったのか?」
私の表情を見て、ユーリは何か遭ったと感じた
「あの魔物が言った言葉、聞いた?」
「確か、世界の毒・・がどうとか言ってたな」
「・・・ユーリには聞こえてなかったんだ」
「何がだ?」
「あの後あの魔物、私の前に来たでしょ」
「ああ」
「その時に私の事『言霊使い』って言ったの」
「!」
その言葉を聞き、ユーリは驚いて目を見開いた
「・・・どういう事だ?」
「解らない。けど、あの魔物は私にはっきりとそう言ったの・・・」
「あいつの狙いはエステルだけじゃなく、リアも、って事か?」
「少なくとも狙われてたのはエステルだと思う。けど・・・」
「あいつはリアの事も見てた」
「うん・・・」
「「「・・・・」」」
そう言って私もユーリもラピードも黙ってしまった
確かに傍から見れば私も狙われていたと言えるのかもしれない
けど、フェローは私とエステルが一緒にいた事に凄く驚いていた
だからフェローは私も狙っていた、と言うのは違うだろう
そして、フェローは私を見て『言霊使い』と言い、伝承の『満月の子』の名前を口にした
(あの時の言葉を考えると、隣にいたエステルが満月の子って事・・・?)
考えれば考えるほど、色々と謎が浮かんで来る
「・・・っ!?」
途端、額に痛みを感じ現実に引き戻されると、ユーリが私の額を軽く弾いていた
「ユーリ、何するの」
「あんま深く考え込むなよ。お前、考え込んだらなかなかこっちに戻ってこないからな」
「あ・・・う、うん。ありがとう」
ユーリは私の返事を聞くと小さく笑って頭を撫でだし、私も小さく笑ってやっぱり幼馴染みというべきか、良く解ってるな・・・と思い、ある事を思い出す
「・・・ねえユーリ」
「ん?」
「あの時の言葉って昔、私がユーリに聞いた事だったね」
あの時の言葉、それはユーリがラゴウを手に懸けて私と話しをした時の事だった
「・・ああ、ガキん時にな」
『怖くないの?』
それは昔、私がユーリとフレンに私が言霊使いだと言う事を話した時だった
『リアはリアだろ。特別な力があってもリアはオレ達が知ってるリアだよ』
『それはセイも一緒だよ』
そう言ってユーリとフレンは優しく笑ってくれた
「あの時の言葉、ユーリに言うとは思わなかったな」
「オレも聞き返されるとは思ってなかったけどな」
そう言うとお互いに可笑しくなってくすりと笑った
お互いに笑ったお陰なのかさっきまでの重たい雰囲気は何処かに行ったようだった
「ワン!」
それに安堵して微笑んでいるとラピードが顔を上げて私とユーリを見た
「どうしたの?」
「ワンワンワン」
私とユーリはラピードが言った事に耳を傾ける
どうやら見張りはラピードがやってくれるらしい
「そっか。んじゃ、オレ達は先に休ませて貰うか」
「うん。じゃあお願いねラピード」
「ワン!」
私はラピードの頭を撫でてお休みと言ってユーリと一緒にテントへと向かった
翌朝 ――
旅支度も終わり、テントを片付けようとしていると兄さんと故郷から戻って来たアスラに呼ばれ兄さんの所へ向かった
「どうしたの? もしかして何か解ったの?」
「うん。けど、その前に緊急の仕事が来てね」
「緊急?」
「前にヘリオードで調べてた事覚えてるか?」
「確か、住民が失踪してるって言うあれ?」
「うん、それがまだ続いてるらしいから本格的に調べろって依頼が来たんだ」
「だからヘリオードに着いたら準備が出来次第仕事に向かうぞ」
「了解。 ・・・ユーリ達はどうするんだろ?」
私はユーリ達を見ると兄さんもアスラもユーリ達を見る
「あいつ等もこのままヘリオードに向かうだろうな」
確かに今ダングレストに戻ればまだ騎士団もいるし、フェローが街を襲った事、そしてヘラクレスの砲撃を受けて橋が崩れてしまったから戻るにも戻れない状態だ
だからユーリ達もこのままヘリオードを目指すだろう
(それに、気になる事がいっぱいあるしね・・・)
私は昨日の出来事、そしてユーリ達と話した事も含めてじっとユーリ達を見ていた
「よーし! じゃあ勇気凛々胸いっぱい団、出発!」
「「「「「「・・・・・・・」」」」」」
が、途端、カロルが元気良くそう叫び、その言葉に私達(カロル以外)は固まってしまった
「・・・おい、カロル」
「え? なに?」
「それ、なんです?」
「え、ギルド名だよ」
「それ、が?」
「そうだけど」
上から兄さん、エステル、アスラ、間にカロルが言葉を挟む
いや、カロルのネーミングセンスがないのは知ってたけど・・・ιι
『勇気凛々胸いっぱい団』・・・
カロルらしいと言えばらしいけど・・・ιι
私も含めみんな、何とも言えない顔をしていた
「それじゃダメよ。名乗りを上げる時に言いやすくないと」
「そうですよ!」
私の言葉にエステルも賛成の声を上げる
「そ、そうなの? じゃあ・・・」
カロルが考えているとエステルが何かを思いついたようだった
「
「一番の星か、格好良いね!」
「凛々の明星・・・ね。気に入った、それにしようぜ」
「ワン!」
ユーリもラピードもその名前が気に入ったようでまたカロルが嬉しそうな顔をした
「大決定~! じゃあ早速トリム港に行って船を調達しよう! デズエール大陸まで船旅だ!」
「ヘリオードで休むのはもう良いのか?」
「もうへっちゃらだよ!」
「どっちにしろ、ヘリオード通んないとトリム港にゃ行けないけどな」
「ヘリオードと言えば、魔導器の暴走の後、街がどうなったのか気になります」
「確かにありゃ凄かったからな」
「「「・・・」」」
「んじゃ、ちょっと街の様子だけでも見て行く?」
「ええ」
「そうしてくれると助かるわ。俺等も仕事でヘリオードに寄りたいからな」
兄さんの言葉に私もアスラも頷く
「んじゃまずはヘリオード、その後トリム港から船でデズエール大陸だな」
「じゃあ改めて・・・凛々の明星、出発!」
カロルの元気の良い掛け声と共に、私達はヘリオードへと向かい始めた
続く
あとがき
下書きはかなり前からあったけど、箱版と同じく此処は何故か行き詰まってしまうι 何故ぇι
て事で年越えて完成しました
箱版と違う形にしたいから色々と変えてみたけど・・・カロル先生とだけ喋ってないι
うん、今度頑張って見せ場や会話増やすからι
でもみんなと話したけど、謎は深まる一方・・・それはこれから解る事ですけどねw
さ、次はみんな大好き! のあの回です
こっちも前回同様気合い入れて書きたいと思います
それでは!
2010.01.05