水道魔導器奪還編
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「何か騎士の数増えてない?」
デイドン砦の中に入って最初に言葉を発したのはアスラだった
「確かに、増えてる気がする」
リアとアスラが此処に来た時は騎士の数は十数人しかいなかったが、今はそれよりも数が多かった
「ユーリを追って来た騎士でしょうか?」
「どうかな。ま、あんま目立たないようにな」
「そうね。エステルも気を付け・・・て、あれ?」
後ろにいるエステルに声を掛けたはずだったがその当人がいなかった
「・・・あっち」
アスラが言う方を見ればエステルは露天に並べられている1冊の本をまじまじと読んでいた
「・・・ホントに解ってんのかね」
「わふ・・・」
ユーリは溜息を吐きラピードと一緒にエステルの所まで行き、リアもその後に続いた
03.砦での出会い
「いらっしゃい。おや、お嬢さん」
「こんにちは、おじさん」
「帝都に帰ったんじゃなかったのかい?」
「ええ、帰りましたよ。でも仕事があるから直ぐに出て来たんです」
「そうかい。おや? そっちの彼は彼氏かい?」
「ち、違います/// 幼馴染みです///」
「・・・んなに否定されてもな」
「・・・ユーリ、リアだからι」
リアの反応を見て複雑な表情を浮かべているユーリとアスラだったが、これもいつもの事なので小さく溜息を吐いてユーリはリアを見た
「知り合いなのか?」
「うん。こっちに戻って来る時に此処まで乗せてもらったの」
「お嬢さんには店の手伝いまでしてもらって助かったよ」
「乗せてもらったお礼ですよ」
「ふーん。なら、結構繁盛したんじゃねえの?」
「兄さん良く解ったね。お嬢さんのお陰で大繁盛さ」
「だろうな」
ユーリはその光景が浮かんだのか小さく笑っていた
「でもどうしてまだ此処にいるんですか?」
「ああ、それが・・・」
リアの疑問におじさんは砦の向こうを見ながら言った
「それが魔物が出るって言うから向こうに行けなくて此処で足止め食ってるんだよ」
「魔物か・・・」
「ああ、何でもかなり凶暴な魔物らしい。此処にいる連中はそれで足止め食らってんだよ」
おじさんの言葉にリア達は辺りを見渡した
旅人、商人、旅行者、家族連れ、どう見ても戦える人達ではない
それも凶暴な魔物と言われればその魔物がいなくなるまで此処に留まるしかないだろう
「情報有り難う御座います。じゃあ私達はこれで失礼します」
「ああ」
リアがおじさんに挨拶しているとユーリはエステルに声を掛けて歩き出し、エステルはおじさんから本を貰いお礼を言ってユーリの後に続いた
「さて、どうするかね」
「どうって何がです?」
エステルの疑問にユーリ達は少し呆れた顔をした
「もしかして、さっきの話し聞いてなかった?」
「えっと、本に夢中で・・・」
ユーリは小さく溜息を吐き先程の話しを始めた
「この先に魔物が出るから今は通れないんだとさ」
「そんな、フレンが向かった花の街ハルルはこの先なのに・・・」
通れないと聞いて少し肩を落とすエステルとは別にリアは少し考えてユーリの方を見た
「ねえユーリ、少し情報集めしない?」
「そうだな。此処でじっとしてたら誰かさんが一人でフレンを追っ駆けそうだしな」
ユーリは横目でエステルを見るとエステルは一瞬きょとんとしてユーリとリアを見ると、二人は苦笑いしていた
「じゃあ後で合流しましょ」
そう言ってユーリ達と別の方向に歩き出そうとしたリアにエステルが慌てて声を掛けようとしたが、ユーリがエステルに声を掛けエステルは別の方向に行くリアを見た後ユーリの後を小走りで追い駆けた
ユーリ達と別れたリアは平原を見渡せる砦の上に来ていた
そして空を見上げるとそこから一枚の手紙が落ちて来てリアはそれを受け取り、そこに書かれているものを読んだ
「『クオイの森の調査』、か・・・」
クオイの森とは、このデイドン砦の西にある森の事だ
だが、この森には色々な噂がありあまり人が近付く事はない
「・・・クオイの森?」
「どうしたの、アスラ?」
ふとその言葉にアスラが疑問を抱いた
「確かクオイの森からハルルの方に抜けられたと思うんだよね」
「本当?」
「随分と昔に行ったから今はどうか分かんないけど・・・」
「行ってみる価値はありそうね」
「だね。でもユーリはともかく心配なのはエステルだよね」
「確かに、ダメそうだしね」
アスラの言葉にリアは苦笑していた
一体何の話しをしているのだろうと思われる会話を繰り広げているリアとアスラ
けど、此処にはリアとアスラしかいないのでいつも通りに話している
アスラの姿は普通の人には見えないのだが、たまに見える人もいるが、見えたとしても犬か猫に話し掛けているようにしか見えないだろう
アスラ同様、さっきリアが手にした手紙もリアとアスラしか見えない
あれもリアの一族が使えるものだった
すると後ろから人の気配がした
振り返って見ると不思議な雰囲気を纏った銀髪の長髪の男がリアをじっと見ていた
そしてリアもその男に惹かれるように彼に目が止まった
(・・・何でだろう。初めて会うのに、懐かしい感じがする)
そう思っていると一瞬、トクンと心臓が脈打った
(・・・それに、どうしてそんなに哀しい目をしてるの?)
その目が見えたのは一瞬だけで、男はゆっくりとリアの隣へと視線を向けた
(・・・もしかしてこの人、アスラの事見えてる?)
そんな疑問を思って男を見ていると男がアスラを見て普通の人なら知らない事を言った
「・・・式神と言霊使いか」
「「!」」
男の言葉にリアとアスラは驚き警戒した
「へぇ、式神や言霊使いの事知ってるって事はただ者じゃないよね?」
「・・・・」
アスラの声はいつもより低めの声だった
男は問いに答えず黙ったままお互いに睨み合うような形になった
「・・・貴方、いった・・・」
カーン カーン カーン
「な、何!?」
突然危険を知らせる警鐘が鳴った
それと同時に物凄い地響きが聞こえだした
「リア、向こう!!」
アスラの声に反応し振り返って平原を見ると魔物の群れがこの砦を目掛けて走って来ていた
「! あれは、平原の主!?」
「まだ来る時期じゃ!?」
「早く入りなさい!! 門が閉まるわ!!」
魔物の正体に驚いていると女性の声が聞こえ砦の下を見てみると人々が次々に砦の中へと入って来ていたが、見張りの騎士達は急いで門を閉じようとしていた
だが、平原には小さな女の子と足を怪我した青年が残されていた
「このままじゃあの二人が危ないよ!」
「解ってる! 行くよ、アスラ!」
「了解!!」
「おい! あぶなっ!!」
アスラの返事を聞くとリアは見張りの騎士の制止の声を気にする事なく砦に足を掛けそのまま砦を飛び越え平原へと降りて行った
平原に降りる途中、エステルがユーリの横をすり抜け青年の方に向かって行ったのが見えた
リアは着地すると砦の上を見たが先程の男の姿と気配はなかった
それを確認するとユーリの元へと向かった
「ユーリ!!」
「リア!! お前どっから!?」
「上からだよ。それより女の子を!!」
「ああ!!」
ユーリはそのまま女の子の元へと走って行き、女の子を抱えて戻って来ていたが途中で女の子が人形を落としてしまった
それを見たリアは戻って来ている二人の横をすり抜け人形を拾いに行った
「おい、リア!!」「リア!!」
すり抜ける時にユーリとエステルがリアの名前を呼んだがリアはアスラと共に人形を拾いに行った
人形を手に取ると直ぐに踵を返し走り出すと門が再度動き出していた
「リア、急げ!!」
砦の入り口でユーリが叫ぶとエステルも心配そうな顔をして叫んでいた
そんな二人を見てリアは苦笑いして走るスピードを上げ門に向かい、もう少しで門が閉まるという時にリアは門の中に入った
数秒後、平原の主達は門に体当たりをするように門にぶつかり地響きが鳴った
リアはそれを横目で確認すると女の子に目線を合わせるように座り優しく微笑み人形を渡した
「はい、お人形」
「ありがとう、おねーちゃん!!」
人形を渡すと少女は嬉しそうに微笑み近くにいた母親と、先程エステルが治療した男が感謝した
「なんとお礼を言えばいいか」
「怪我まで治してもらって、本当に助かりました」
「いえ、皆さんが無事で何よりです」
リアは笑顔で言うと母親と男がまたお礼を言い、女の子は人形を大事に抱えリアに手を振って母親と手を繋いで歩いて行った
その姿を見てエステルは嬉しそうに言った
「・・・みんなが無事で本当に良かった・・・あ、あれ?」
すると、安心して力が抜けたのかエステルは地面に座り込んだ
「安心した途端それかよ」
ユーリとリアは苦笑しエステルのようにその場に座った
「結界の外って、凶暴な魔物が沢山いてこんなに危険だったんですね」
「あんな大群でこられたら、結界が欲しくなるな」
「此処に、結界魔導器を設置出来ないんでしょうか?」
エステルは首を傾げリアは寄ってきたラピードを撫でながら答えた
「無理でしょうね。結界は貴重品だし今の技術じゃ作り出せないから」
「それにそんな技術があればもっと良い暮らしが出来てると思うけど・・・」
「けど・・・?」
「帝国が民衆の為にってのはちょっと想像しにくいな」
「「同感」」
ユーリとリアとアスラの言葉にエステルは肩を落とした
すると1人の騎士がこちらへとやって来るのが見え座っていたリア達は立ち上がり、騎士を見た
「そこの3人、少し話を聞かせてもらいたい」
どうするべきか、そう悩んでいると怒りを含んだ男の声が聞こえた
「だから、何故に通さんのだ! 魔物など俺様がこの拳で、ノックアウトしてやるものを!」
3人と騎士はその声の主を見た
緑色のフードを被って今怒鳴った男と、腕を組み、いかにも強そうな男と少し離れた所に巨大な円形の刃を持った女の子と、困惑している騎士の姿が目に入った
「簡単に倒せる魔物じゃない! 何度言えば解るんだ!」
「貴様は我々の実力を侮るというのだな?」
そうフードを被った男が言えば、もう1人の男は背中に掛けてある大剣を手にした
「や、やめろ!」
その騒ぎを聞きつけ見張りの騎士達が集まって来た
「今のうちに逃げよう」
アスラの判断にリア達は頷きその場を離れた
「やっぱあの様子じゃ門を抜けんのは無理だな」
「そんな・・・」
エステルは悲しそうな顔をして肩を落とし、リアは苦笑してエステルに声を掛けようとした時だった
「ねえ、貴方達、私の下で働かない?」
突然後ろから女性の声が聞こえた
声の主に視線をやれば赤髪に眼鏡を掛けた女性と、サングラスを掛け深い緑の髪をした男性がいた
「報酬は弾むわよ」
女性はユーリとリアを交互に見て、お金の入った袋を見せた
ユーリは興味がなさそうに視線を外し、リアは小さく溜息を吐いた
「社長 に対して、失礼だぞ。返事はどうした」
「名乗りもせずに金で吊るのは失礼って言わないんだな。いや、勉強になったわ」
「そうね。でも、これは失礼だと思いますけど」
ユーリは視線を向けず、リアは苦笑しながら言った
「お前等っ!」
男が痺れを切らしたのかこちらに足を踏み出したが、女は男の前に腕を出して止めた
「予想通り面白い子達ね。私はギルド『幸福の市場 』のカウフマンよ。商売から流通までを仕切らせてもらってるわ」
「ふ~ん、ギルドね・・・」
ユーリは相変わらず興味がなさそうに小さく呟いた
すると、大きく地面が揺れた
「私、今困っているのよ。この地響きの元凶の所為で」
「・・・平原の主、ですか」
ユーリ達は首を傾げ、カウフマンは嬉しそうに微笑んだ
「あら、貴女良く知ってるじゃない」
「平原の主?」
「平原の主はあの大群の親玉の事よ」
「あの群れの親玉って・・・世の中すげえのがいるな」
ユーリの言葉にリアとアスラは苦笑しているとエステルは困ったようにカウフマンに近付いた
「何処か別の道から平原を越えられませんか? 先を急いでいるんです」
「さあ? 平原の主が去るのを、待つしかないんじゃない?」
カウフマンは何食わぬ顔で言い、リア達は肩を竦めなんと嘘が上手い事・・・と思った
「焦っても仕方ねえって訳だ」
ユーリがそういえば、エステルは真剣な表情をしてこちらへ寄って来た
「待ってなんていられません。わたし他の人にも聞いてきます!」
「あ、エステル!」
リアが声を掛けるがエステルはそのまま走って行きその後をラピードと一緒に追い駆けた
エステルを追い駆けるとエステルはテントの前に座っていた
「エステル」
「リア。あの、ユーリは?」
「ユーリならまだお話中」
リアもエステルの横に座り、その横にラピードが座ったので撫でてあげた
「ねえエステル。平原を越える方法だけど」
その言葉にエステルはリアを見た
「エステル達と別れた後、越えられそうな所が解ったの」
「本当ですか!」
「お、なんだ、エステルの機嫌が直ってるじゃねえか」
「あ、ユーリ」
そう言うとエステルは嬉しそうな顔をして立ち上がると、話し終わったユーリがやって来た
「リアが平原の越え方を見つけたそうなんです!」
「へぇ奇遇だな。オレもついさっき見つけた所だ」
「やっぱり越えるにはあそこを通るみたいだよ」
アスラがリアの元に戻って来て小声で言うとリアはそっかと言ってユーリとエステルを見た
「それじゃあ行きましょうか」
「ああ」「はい!」「ワン!」
それぞれの返事を聞くとリア達は西にあるクオイの森を目指して行った
続く
あとがき
前回に比べてだいぶ付け足しで書いてみました
おじさんとの会話は前回考えていたけどカットになったので今回使ってみました
デュークとの出会いは・・・箱版書き終わった後なのでこういう形になりました
それにこう書いた方が逆ハーっぽくなるしね(笑)
さて、次はいよいよクオイの森に行くのでカロル先生の登場です!
頑張って違う風に書けると良いなι
2009.10.08
デイドン砦の中に入って最初に言葉を発したのはアスラだった
「確かに、増えてる気がする」
リアとアスラが此処に来た時は騎士の数は十数人しかいなかったが、今はそれよりも数が多かった
「ユーリを追って来た騎士でしょうか?」
「どうかな。ま、あんま目立たないようにな」
「そうね。エステルも気を付け・・・て、あれ?」
後ろにいるエステルに声を掛けたはずだったがその当人がいなかった
「・・・あっち」
アスラが言う方を見ればエステルは露天に並べられている1冊の本をまじまじと読んでいた
「・・・ホントに解ってんのかね」
「わふ・・・」
ユーリは溜息を吐きラピードと一緒にエステルの所まで行き、リアもその後に続いた
03.砦での出会い
「いらっしゃい。おや、お嬢さん」
「こんにちは、おじさん」
「帝都に帰ったんじゃなかったのかい?」
「ええ、帰りましたよ。でも仕事があるから直ぐに出て来たんです」
「そうかい。おや? そっちの彼は彼氏かい?」
「ち、違います/// 幼馴染みです///」
「・・・んなに否定されてもな」
「・・・ユーリ、リアだからι」
リアの反応を見て複雑な表情を浮かべているユーリとアスラだったが、これもいつもの事なので小さく溜息を吐いてユーリはリアを見た
「知り合いなのか?」
「うん。こっちに戻って来る時に此処まで乗せてもらったの」
「お嬢さんには店の手伝いまでしてもらって助かったよ」
「乗せてもらったお礼ですよ」
「ふーん。なら、結構繁盛したんじゃねえの?」
「兄さん良く解ったね。お嬢さんのお陰で大繁盛さ」
「だろうな」
ユーリはその光景が浮かんだのか小さく笑っていた
「でもどうしてまだ此処にいるんですか?」
「ああ、それが・・・」
リアの疑問におじさんは砦の向こうを見ながら言った
「それが魔物が出るって言うから向こうに行けなくて此処で足止め食ってるんだよ」
「魔物か・・・」
「ああ、何でもかなり凶暴な魔物らしい。此処にいる連中はそれで足止め食らってんだよ」
おじさんの言葉にリア達は辺りを見渡した
旅人、商人、旅行者、家族連れ、どう見ても戦える人達ではない
それも凶暴な魔物と言われればその魔物がいなくなるまで此処に留まるしかないだろう
「情報有り難う御座います。じゃあ私達はこれで失礼します」
「ああ」
リアがおじさんに挨拶しているとユーリはエステルに声を掛けて歩き出し、エステルはおじさんから本を貰いお礼を言ってユーリの後に続いた
「さて、どうするかね」
「どうって何がです?」
エステルの疑問にユーリ達は少し呆れた顔をした
「もしかして、さっきの話し聞いてなかった?」
「えっと、本に夢中で・・・」
ユーリは小さく溜息を吐き先程の話しを始めた
「この先に魔物が出るから今は通れないんだとさ」
「そんな、フレンが向かった花の街ハルルはこの先なのに・・・」
通れないと聞いて少し肩を落とすエステルとは別にリアは少し考えてユーリの方を見た
「ねえユーリ、少し情報集めしない?」
「そうだな。此処でじっとしてたら誰かさんが一人でフレンを追っ駆けそうだしな」
ユーリは横目でエステルを見るとエステルは一瞬きょとんとしてユーリとリアを見ると、二人は苦笑いしていた
「じゃあ後で合流しましょ」
そう言ってユーリ達と別の方向に歩き出そうとしたリアにエステルが慌てて声を掛けようとしたが、ユーリがエステルに声を掛けエステルは別の方向に行くリアを見た後ユーリの後を小走りで追い駆けた
ユーリ達と別れたリアは平原を見渡せる砦の上に来ていた
そして空を見上げるとそこから一枚の手紙が落ちて来てリアはそれを受け取り、そこに書かれているものを読んだ
「『クオイの森の調査』、か・・・」
クオイの森とは、このデイドン砦の西にある森の事だ
だが、この森には色々な噂がありあまり人が近付く事はない
「・・・クオイの森?」
「どうしたの、アスラ?」
ふとその言葉にアスラが疑問を抱いた
「確かクオイの森からハルルの方に抜けられたと思うんだよね」
「本当?」
「随分と昔に行ったから今はどうか分かんないけど・・・」
「行ってみる価値はありそうね」
「だね。でもユーリはともかく心配なのはエステルだよね」
「確かに、ダメそうだしね」
アスラの言葉にリアは苦笑していた
一体何の話しをしているのだろうと思われる会話を繰り広げているリアとアスラ
けど、此処にはリアとアスラしかいないのでいつも通りに話している
アスラの姿は普通の人には見えないのだが、たまに見える人もいるが、見えたとしても犬か猫に話し掛けているようにしか見えないだろう
アスラ同様、さっきリアが手にした手紙もリアとアスラしか見えない
あれもリアの一族が使えるものだった
すると後ろから人の気配がした
振り返って見ると不思議な雰囲気を纏った銀髪の長髪の男がリアをじっと見ていた
そしてリアもその男に惹かれるように彼に目が止まった
(・・・何でだろう。初めて会うのに、懐かしい感じがする)
そう思っていると一瞬、トクンと心臓が脈打った
(・・・それに、どうしてそんなに哀しい目をしてるの?)
その目が見えたのは一瞬だけで、男はゆっくりとリアの隣へと視線を向けた
(・・・もしかしてこの人、アスラの事見えてる?)
そんな疑問を思って男を見ていると男がアスラを見て普通の人なら知らない事を言った
「・・・式神と言霊使いか」
「「!」」
男の言葉にリアとアスラは驚き警戒した
「へぇ、式神や言霊使いの事知ってるって事はただ者じゃないよね?」
「・・・・」
アスラの声はいつもより低めの声だった
男は問いに答えず黙ったままお互いに睨み合うような形になった
「・・・貴方、いった・・・」
カーン カーン カーン
「な、何!?」
突然危険を知らせる警鐘が鳴った
それと同時に物凄い地響きが聞こえだした
「リア、向こう!!」
アスラの声に反応し振り返って平原を見ると魔物の群れがこの砦を目掛けて走って来ていた
「! あれは、平原の主!?」
「まだ来る時期じゃ!?」
「早く入りなさい!! 門が閉まるわ!!」
魔物の正体に驚いていると女性の声が聞こえ砦の下を見てみると人々が次々に砦の中へと入って来ていたが、見張りの騎士達は急いで門を閉じようとしていた
だが、平原には小さな女の子と足を怪我した青年が残されていた
「このままじゃあの二人が危ないよ!」
「解ってる! 行くよ、アスラ!」
「了解!!」
「おい! あぶなっ!!」
アスラの返事を聞くとリアは見張りの騎士の制止の声を気にする事なく砦に足を掛けそのまま砦を飛び越え平原へと降りて行った
平原に降りる途中、エステルがユーリの横をすり抜け青年の方に向かって行ったのが見えた
リアは着地すると砦の上を見たが先程の男の姿と気配はなかった
それを確認するとユーリの元へと向かった
「ユーリ!!」
「リア!! お前どっから!?」
「上からだよ。それより女の子を!!」
「ああ!!」
ユーリはそのまま女の子の元へと走って行き、女の子を抱えて戻って来ていたが途中で女の子が人形を落としてしまった
それを見たリアは戻って来ている二人の横をすり抜け人形を拾いに行った
「おい、リア!!」「リア!!」
すり抜ける時にユーリとエステルがリアの名前を呼んだがリアはアスラと共に人形を拾いに行った
人形を手に取ると直ぐに踵を返し走り出すと門が再度動き出していた
「リア、急げ!!」
砦の入り口でユーリが叫ぶとエステルも心配そうな顔をして叫んでいた
そんな二人を見てリアは苦笑いして走るスピードを上げ門に向かい、もう少しで門が閉まるという時にリアは門の中に入った
数秒後、平原の主達は門に体当たりをするように門にぶつかり地響きが鳴った
リアはそれを横目で確認すると女の子に目線を合わせるように座り優しく微笑み人形を渡した
「はい、お人形」
「ありがとう、おねーちゃん!!」
人形を渡すと少女は嬉しそうに微笑み近くにいた母親と、先程エステルが治療した男が感謝した
「なんとお礼を言えばいいか」
「怪我まで治してもらって、本当に助かりました」
「いえ、皆さんが無事で何よりです」
リアは笑顔で言うと母親と男がまたお礼を言い、女の子は人形を大事に抱えリアに手を振って母親と手を繋いで歩いて行った
その姿を見てエステルは嬉しそうに言った
「・・・みんなが無事で本当に良かった・・・あ、あれ?」
すると、安心して力が抜けたのかエステルは地面に座り込んだ
「安心した途端それかよ」
ユーリとリアは苦笑しエステルのようにその場に座った
「結界の外って、凶暴な魔物が沢山いてこんなに危険だったんですね」
「あんな大群でこられたら、結界が欲しくなるな」
「此処に、結界魔導器を設置出来ないんでしょうか?」
エステルは首を傾げリアは寄ってきたラピードを撫でながら答えた
「無理でしょうね。結界は貴重品だし今の技術じゃ作り出せないから」
「それにそんな技術があればもっと良い暮らしが出来てると思うけど・・・」
「けど・・・?」
「帝国が民衆の為にってのはちょっと想像しにくいな」
「「同感」」
ユーリとリアとアスラの言葉にエステルは肩を落とした
すると1人の騎士がこちらへとやって来るのが見え座っていたリア達は立ち上がり、騎士を見た
「そこの3人、少し話を聞かせてもらいたい」
どうするべきか、そう悩んでいると怒りを含んだ男の声が聞こえた
「だから、何故に通さんのだ! 魔物など俺様がこの拳で、ノックアウトしてやるものを!」
3人と騎士はその声の主を見た
緑色のフードを被って今怒鳴った男と、腕を組み、いかにも強そうな男と少し離れた所に巨大な円形の刃を持った女の子と、困惑している騎士の姿が目に入った
「簡単に倒せる魔物じゃない! 何度言えば解るんだ!」
「貴様は我々の実力を侮るというのだな?」
そうフードを被った男が言えば、もう1人の男は背中に掛けてある大剣を手にした
「や、やめろ!」
その騒ぎを聞きつけ見張りの騎士達が集まって来た
「今のうちに逃げよう」
アスラの判断にリア達は頷きその場を離れた
「やっぱあの様子じゃ門を抜けんのは無理だな」
「そんな・・・」
エステルは悲しそうな顔をして肩を落とし、リアは苦笑してエステルに声を掛けようとした時だった
「ねえ、貴方達、私の下で働かない?」
突然後ろから女性の声が聞こえた
声の主に視線をやれば赤髪に眼鏡を掛けた女性と、サングラスを掛け深い緑の髪をした男性がいた
「報酬は弾むわよ」
女性はユーリとリアを交互に見て、お金の入った袋を見せた
ユーリは興味がなさそうに視線を外し、リアは小さく溜息を吐いた
「
「名乗りもせずに金で吊るのは失礼って言わないんだな。いや、勉強になったわ」
「そうね。でも、これは失礼だと思いますけど」
ユーリは視線を向けず、リアは苦笑しながら言った
「お前等っ!」
男が痺れを切らしたのかこちらに足を踏み出したが、女は男の前に腕を出して止めた
「予想通り面白い子達ね。私はギルド『
「ふ~ん、ギルドね・・・」
ユーリは相変わらず興味がなさそうに小さく呟いた
すると、大きく地面が揺れた
「私、今困っているのよ。この地響きの元凶の所為で」
「・・・平原の主、ですか」
ユーリ達は首を傾げ、カウフマンは嬉しそうに微笑んだ
「あら、貴女良く知ってるじゃない」
「平原の主?」
「平原の主はあの大群の親玉の事よ」
「あの群れの親玉って・・・世の中すげえのがいるな」
ユーリの言葉にリアとアスラは苦笑しているとエステルは困ったようにカウフマンに近付いた
「何処か別の道から平原を越えられませんか? 先を急いでいるんです」
「さあ? 平原の主が去るのを、待つしかないんじゃない?」
カウフマンは何食わぬ顔で言い、リア達は肩を竦めなんと嘘が上手い事・・・と思った
「焦っても仕方ねえって訳だ」
ユーリがそういえば、エステルは真剣な表情をしてこちらへ寄って来た
「待ってなんていられません。わたし他の人にも聞いてきます!」
「あ、エステル!」
リアが声を掛けるがエステルはそのまま走って行きその後をラピードと一緒に追い駆けた
エステルを追い駆けるとエステルはテントの前に座っていた
「エステル」
「リア。あの、ユーリは?」
「ユーリならまだお話中」
リアもエステルの横に座り、その横にラピードが座ったので撫でてあげた
「ねえエステル。平原を越える方法だけど」
その言葉にエステルはリアを見た
「エステル達と別れた後、越えられそうな所が解ったの」
「本当ですか!」
「お、なんだ、エステルの機嫌が直ってるじゃねえか」
「あ、ユーリ」
そう言うとエステルは嬉しそうな顔をして立ち上がると、話し終わったユーリがやって来た
「リアが平原の越え方を見つけたそうなんです!」
「へぇ奇遇だな。オレもついさっき見つけた所だ」
「やっぱり越えるにはあそこを通るみたいだよ」
アスラがリアの元に戻って来て小声で言うとリアはそっかと言ってユーリとエステルを見た
「それじゃあ行きましょうか」
「ああ」「はい!」「ワン!」
それぞれの返事を聞くとリア達は西にあるクオイの森を目指して行った
続く
あとがき
前回に比べてだいぶ付け足しで書いてみました
おじさんとの会話は前回考えていたけどカットになったので今回使ってみました
デュークとの出会いは・・・箱版書き終わった後なのでこういう形になりました
それにこう書いた方が逆ハーっぽくなるしね(笑)
さて、次はいよいよクオイの森に行くのでカロル先生の登場です!
頑張って違う風に書けると良いなι
2009.10.08