水道魔導器奪還編
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「性懲りもなく、また来たか」
「待たせて悪ぃな」
ガスファロストの最上階に辿り着くとバルボスが私達を待っていた
勿論その手には下町の魔刻がはめ込まれたあの剣もあった
「もしかして、あの剣に填ってる魔刻、水道魔導器の・・・!」
「ああ、間違いない・・・」
リタ達はユーリの言葉と私達の頷きを見てようやくユーリがあんな無茶までしてバルボスを追い駆けた理由が解ったようだった
「分を弁えぬバカ共が。カプワ・ノール、ダングレスト、遂にガスファロストまで! 忌々しい小僧共め!」
「バルボス、此処までです。潔く縛に就きなさい!」
「間もなく騎士団も来る。これ以上の抵抗は無駄だ!」
「そう、もうあんた終わりよ」
「ふんっ、まだ終わりではない。十年の歳月を費やしたこの大楼閣ガスファロストがあれば、ワシの野望は潰えぬ! あの男と帝国を利用して作り上げたこの魔導器があればな!」
「「「「『あの男』・・・?」」」」
バルボスのあの男と言う言葉が引っかかり、私とフレンと兄さんとアスラは小さく呟いた
だがバルボスはそんな事はお構いなしと言わんばかりに剣を私達の方に向けその剣から光が発せられ衝撃波のようなものが私達の手前に放たれ、更に続けて来るのが見え私達は一斉にその攻撃が当たらない場所に移動した
「下町の魔刻をくだらねえ事に使いやがって」
「全くだな。5大ギルドの紅の絆傭兵団も落ちぶれたものだな」
ユーリはバルボスの自信満々の言葉に皮肉口調で言い、兄さんも続けて言う
「くだらなくなどないわ。これでホワイトホースを消し、ワシがギルドの頂点に立つ! ギルドの後は帝国だ! この力さえあれば、世界はワシのものになるのだ!」
「そんな事の為に下町の大事な魔刻を使うなんて・・・」
「手始めに失せろ! ハエ共!」
バルボスが剣を振り下ろすとエアルの衝撃波のようなものが襲って来て、私達は直ぐに私達は下の階に飛び降りた
あの剣がある限り、遠距離の魔法などもガードされるだろうし、かと言って接近戦も危険だ
「大丈夫か、みんな」
フレンの言葉に私達は頷き直ぐにバルボスへと視線を戻す
「あの剣はちっとヤバイぜ」
「ヤバイって言うか・・・こりゃ反則でしょ」
「圧倒的ね」
「グハハっ!! 魔導器と馬鹿にしておったが使えるではないか!」
その威力を実感しバルボスは更に衝撃波を作り出し、辺りを壊し始める
「そんな・・・!」
「力に酔いしれてるね」
「っち、面倒だな」
「お遊びは此処までだ! ダングレストごと、消し飛ぶが良いわ!」
「っ・・!」
バルボスが剣を振り翳し力を解放しようとしている時、突然上から声が聞こえた
「伏せろ」
「デューク!?」
デュークが剣を翳すと、バルボスが使っていた剣のエアルが光り出し辺りが見えなくなった
「なにっ!?」
光が治まるとバルボスの剣は折れていた
デュークを見ると彼は何事も無かったかの様に去って行った
「あれは・・・?」
「・・・フレン?」
フレンはデュークを見て小さく呟いた
いや、正確にはデュークの持っている剣を見ていた、の方が正しいかもしれない
「あいつ・・・!」
「リタ、今はよそ見すんな!」
「・・・くっ、貧弱な」
バルボスは剣を振るうが、もう衝撃波すら発動しなくなっていた
「形勢逆転だな」
「・・・賢しい知恵と魔導器で得る力などまがい物にすぎん・・・か」
バルボスは使い物にならなくなった剣を捨てて、船上で見た時と同じ剣を取り出し、私達に剣を向け見据えた
「所詮、最後に頼れるのは己の力のみだったな。さあ、お前等剣を取れ!」
「あちゃ~、力に酔ってた分、さっきまでの方が扱いやすかったのに」
「開き直ったバカ程扱いにくいものはないわね」
「ホワイトホースに並ぶ兵、剛嵐のバルボスと呼ばれたワシの力と・・・ワシが作り上げた『紅の絆傭兵団』の力、とくと味わうが良い!」
武器を構えバルボスに向けバルボスを見ると、余裕そうな彼に何か秘策でもあるのか、と警戒していると、脇から紅の絆傭兵団が出て来た
「諦めの悪い・・・行くぜ!」
ユーリの合図と共に私達は駆け出した
36.剛嵐との決着
「・・ちと、多いな」
ボソッと呟き、兄さんは剣を構えやって来た部下を攻撃する
一人、一人、また一人と部下を倒して行くが、一人倒す事に他の部下が四方の橋から武器を構えてやって来る
これではキリがない
「ちょっとちょっと、これじゃいつまで経っても終わらないわよ!?」
「おっさん。口じゃなく手動かせよ。けど、確かにこれじゃいつまで経っても終わんねえな」
「あら。じゃあ橋を無くして、来られなくするのはどう?」
「どうやって?」
「橋の目の前にある装置。あれを壊せば、この無限ループから解放されるんじゃないかしら?」
ジュディスは言って四方の橋の前にある装置を指差す
確かにあれさえ壊せば橋は無くなって部下が来なくなる
では、誰があの四つの装置を壊すのか
流石にこの状況で一人抜けるのは厳しい
となると、此処は・・・あの手で行くしかない・・・
私はそう思い兄さんを見ると兄さんも同じ事を考えていたのか同時に頷き、アスラへと視線を向ける
「アスラ、任せたぞ」
「了解」
アスラはそう言って呪文を唱えそれをバルボスに向ける
「何ぃっ!?」
「ユーリ、フレン!!」
「おう!」「ああ!」
途端、バルボス達の動きが止まり私はユーリとフレンに声を駆け、その隙を見て私、兄さん、ユーリ、フレンは一斉に装置を破壊した
「っ!?」
そして後方で詠唱をしていたエステル、リタ、レイヴンの魔術が発動し、部下達を倒していき、更にジュディス、ラピード、カロルも続き、私達は装置から離れ、バルボスへと攻撃を仕掛けた
「ごはっ!」
綺麗に連携が取れ、ユーリの一撃が見事に決まりバルボスは膝を付いた
「・・・もう部下もいない。器が知れたな。分を弁えないバカはあんたって事だ」
「ぐっ・・・ハハハっ。な、成る程、どうやらその様だ」
「では、大人しく・・・」
「こ、これ以上、無様をさらすつもりはない。・・・ユーリ、とか言ったな? お前は若い頃のドン・ホワイトホースに似ている・・・そっくりだ」
「オレがあんなじいさんになるってか。ぞっとしない話だな」
「ああ、貴様はいずれ世界に大きな敵を作る。あのドンのように・・・そして世界に食い潰される」
彼の最後の遺言、という名の警告なのか、何なのか
普段なら誰かが言葉を入れるだろうが今は皆、ギルドに生きた男の最期の言葉を黙って聞いていた
「悔やみ、嘆き、絶望した貴様がやってくるのを先に地獄で待つとしよう」
「・・・!」
そしてバルボスがそのまま身体の力を抜くのが見え、私とユーリとフレンとエステルは走って行ったがバルボスはガスファロストの下へと落ちていった
「・・・・・」
私達は暫くその場から動かず黙ったままだった
*
「まったく、魔刻が無事で良かったぜ」
「うん。これで下町も安心だね」
「ああ」
あれから暫くして私達は塔を降りて来た
「水道魔導器の魔刻ってそんなに小さいものだったんですね」
「さて、魔刻も取り戻した、これで一件落着だね」
「でも、バルボスを捕まえる事が出来ませんでした・・・」
「ええ・・・それだけが悔やまれます」
「何言ってんの、あんな悪人、死んで・・・ふぎゃっ・・・!」
リタの言葉を遮るように兄さんがリタを小突いた
「それにまだ一件落着には早いな」
「ああ、こいつがちゃんと動くかどうか確認しないとな」
「・・・・」
だが、フレンはやっぱり浮かない顔をしていた
「・・・フレン?」
「あ、いや、何でもない・・」
私の視線に気付いたのかフレンはそう言って安心させるように笑ったがやっぱり浮かない顔をしていた
それは多分、バルボスが言った『あの男』と言うのが引っかかっているからかもしれない
それはフレンだけじゃなく、私もアスラも兄さんも引っかかっている事だったからだ
「魔導器の魔刻はそんなに簡単に壊れないわよ」
「ふ~ん、そうなんだ、知ってたレイヴン・・・?」
辺りを見渡すがレイヴンの姿は何処にもなかった
「ったく、相変わらず神出鬼没だな」
「また、あのおっさんは・・・本当に自分勝手ね」
「それをリタが言うんだ」
「人それぞれで良いんじゃない?」
「ダングレストに帰ったんだろ。会いたきゃ会えるさ」
ユーリの言う通り、先にダングレストに戻ってドンに報告しているのだろう
「僕も一足先に戻る。部下に仕事を押し付けたままだから・・・エステリーゼ様もどうか私とご一緒に」
「ええと・・・わたし・・・もう少しみんなと一緒にいてはいけませんか・・・?」
エステルの言葉を聞きフレンは少し困ったような顔をしたが直ぐにユーリが溜息を吐いて助け船を出した
「聞き分けのない姫さんの面倒はもう少しこっちで見てやるよ。その方がそっちも楽だろ? 責任もってダングレストには送り届けるから」
「・・・分かった。その代り、絶対に間違いのないように頼む。寄り道も駄目だ、良いね?」
「分かった分かった」
「ではエステリーゼ様、ダングレストで」
「ありがとう、フレン」
「フレン」
「?」
フレンがエステルに一礼して離れようとしていると兄さんがフレンを呼び止め、フレンの所まで歩いて行って兄さんは私達の方に振り返った
「ユーリ、俺も先にダングレストに戻るわ」
「なんか用事でもあんのか?」
「ああ、ちょっと、な・・・」
言うと兄さんはちらりとフレンを見て、そして私とアスラを見た
おそらく、さっきの事を話すのかもしれない
「分かった。んじゃ、後でな」
「ああ」
ユーリはそれ以上深くは聞かないで、そう言って兄さんを見て兄さんは軽い返事を返してフレンと先にダングレストへと戻って行った
「・・・・」
兄さん達を見送り視線を戻すと、今度はユーリが浮かない顔をしていた
「浮かない顔して、どうかした?」
「いや、まだデデッキの野郎をぶん殴ってねえと思ってさ」
「魔導器の魔刻は戻ったんだから良いんじゃないの? そんなコソ泥なんて」
「ま、それもそうだな。どっかで会ったら絶対にぶん殴るけど・・・」
ユーリのその言葉に苦笑していると小声で何か呟いた
「・・・地獄で待ってる、か。やな事言うぜ」
「・・・・・」
その言葉が聞こえたのは隣にいた私だけだろう
ユーリと私の間に少し重たい空気が流れようとしているとカロルが少しだけ走り出し振り返った
「ほらほら、いい加減ダングレストに戻ろうよ」
「そうだね」
「じゃあ、私は此処でお別れね」
カロルの言葉にアスラが同意していると、後ろにいたジュディスがそう言って私達とは反対の方に向かって歩き出そうとしていた
「相棒のとこ戻るのか?」
「相棒? 誰です、それ?」
「此処からは別行動、お互いの行動に干渉はなしね」
「そっか、じゃあな」
「ええ・・・」
通り過ぎ際に、ジュディスにアイコンタクトを送るとそれを受け取りニッコリとして返してくれ私もつられて笑った
「さてと、じゃあダングレストに戻るか」
そうして私達はダングレストを目指し歩き始めた
続く
あとがき
水道魔導器奪還編完結!
さ、次回からは満月の子編に入ります!
こっちは色々と変わってくると思いますよ?(でも疑問系w)
2009.12.05
「待たせて悪ぃな」
ガスファロストの最上階に辿り着くとバルボスが私達を待っていた
勿論その手には下町の魔刻がはめ込まれたあの剣もあった
「もしかして、あの剣に填ってる魔刻、水道魔導器の・・・!」
「ああ、間違いない・・・」
リタ達はユーリの言葉と私達の頷きを見てようやくユーリがあんな無茶までしてバルボスを追い駆けた理由が解ったようだった
「分を弁えぬバカ共が。カプワ・ノール、ダングレスト、遂にガスファロストまで! 忌々しい小僧共め!」
「バルボス、此処までです。潔く縛に就きなさい!」
「間もなく騎士団も来る。これ以上の抵抗は無駄だ!」
「そう、もうあんた終わりよ」
「ふんっ、まだ終わりではない。十年の歳月を費やしたこの大楼閣ガスファロストがあれば、ワシの野望は潰えぬ! あの男と帝国を利用して作り上げたこの魔導器があればな!」
「「「「『あの男』・・・?」」」」
バルボスのあの男と言う言葉が引っかかり、私とフレンと兄さんとアスラは小さく呟いた
だがバルボスはそんな事はお構いなしと言わんばかりに剣を私達の方に向けその剣から光が発せられ衝撃波のようなものが私達の手前に放たれ、更に続けて来るのが見え私達は一斉にその攻撃が当たらない場所に移動した
「下町の魔刻をくだらねえ事に使いやがって」
「全くだな。5大ギルドの紅の絆傭兵団も落ちぶれたものだな」
ユーリはバルボスの自信満々の言葉に皮肉口調で言い、兄さんも続けて言う
「くだらなくなどないわ。これでホワイトホースを消し、ワシがギルドの頂点に立つ! ギルドの後は帝国だ! この力さえあれば、世界はワシのものになるのだ!」
「そんな事の為に下町の大事な魔刻を使うなんて・・・」
「手始めに失せろ! ハエ共!」
バルボスが剣を振り下ろすとエアルの衝撃波のようなものが襲って来て、私達は直ぐに私達は下の階に飛び降りた
あの剣がある限り、遠距離の魔法などもガードされるだろうし、かと言って接近戦も危険だ
「大丈夫か、みんな」
フレンの言葉に私達は頷き直ぐにバルボスへと視線を戻す
「あの剣はちっとヤバイぜ」
「ヤバイって言うか・・・こりゃ反則でしょ」
「圧倒的ね」
「グハハっ!! 魔導器と馬鹿にしておったが使えるではないか!」
その威力を実感しバルボスは更に衝撃波を作り出し、辺りを壊し始める
「そんな・・・!」
「力に酔いしれてるね」
「っち、面倒だな」
「お遊びは此処までだ! ダングレストごと、消し飛ぶが良いわ!」
「っ・・!」
バルボスが剣を振り翳し力を解放しようとしている時、突然上から声が聞こえた
「伏せろ」
「デューク!?」
デュークが剣を翳すと、バルボスが使っていた剣のエアルが光り出し辺りが見えなくなった
「なにっ!?」
光が治まるとバルボスの剣は折れていた
デュークを見ると彼は何事も無かったかの様に去って行った
「あれは・・・?」
「・・・フレン?」
フレンはデュークを見て小さく呟いた
いや、正確にはデュークの持っている剣を見ていた、の方が正しいかもしれない
「あいつ・・・!」
「リタ、今はよそ見すんな!」
「・・・くっ、貧弱な」
バルボスは剣を振るうが、もう衝撃波すら発動しなくなっていた
「形勢逆転だな」
「・・・賢しい知恵と魔導器で得る力などまがい物にすぎん・・・か」
バルボスは使い物にならなくなった剣を捨てて、船上で見た時と同じ剣を取り出し、私達に剣を向け見据えた
「所詮、最後に頼れるのは己の力のみだったな。さあ、お前等剣を取れ!」
「あちゃ~、力に酔ってた分、さっきまでの方が扱いやすかったのに」
「開き直ったバカ程扱いにくいものはないわね」
「ホワイトホースに並ぶ兵、剛嵐のバルボスと呼ばれたワシの力と・・・ワシが作り上げた『紅の絆傭兵団』の力、とくと味わうが良い!」
武器を構えバルボスに向けバルボスを見ると、余裕そうな彼に何か秘策でもあるのか、と警戒していると、脇から紅の絆傭兵団が出て来た
「諦めの悪い・・・行くぜ!」
ユーリの合図と共に私達は駆け出した
36.剛嵐との決着
「・・ちと、多いな」
ボソッと呟き、兄さんは剣を構えやって来た部下を攻撃する
一人、一人、また一人と部下を倒して行くが、一人倒す事に他の部下が四方の橋から武器を構えてやって来る
これではキリがない
「ちょっとちょっと、これじゃいつまで経っても終わらないわよ!?」
「おっさん。口じゃなく手動かせよ。けど、確かにこれじゃいつまで経っても終わんねえな」
「あら。じゃあ橋を無くして、来られなくするのはどう?」
「どうやって?」
「橋の目の前にある装置。あれを壊せば、この無限ループから解放されるんじゃないかしら?」
ジュディスは言って四方の橋の前にある装置を指差す
確かにあれさえ壊せば橋は無くなって部下が来なくなる
では、誰があの四つの装置を壊すのか
流石にこの状況で一人抜けるのは厳しい
となると、此処は・・・あの手で行くしかない・・・
私はそう思い兄さんを見ると兄さんも同じ事を考えていたのか同時に頷き、アスラへと視線を向ける
「アスラ、任せたぞ」
「了解」
アスラはそう言って呪文を唱えそれをバルボスに向ける
「何ぃっ!?」
「ユーリ、フレン!!」
「おう!」「ああ!」
途端、バルボス達の動きが止まり私はユーリとフレンに声を駆け、その隙を見て私、兄さん、ユーリ、フレンは一斉に装置を破壊した
「っ!?」
そして後方で詠唱をしていたエステル、リタ、レイヴンの魔術が発動し、部下達を倒していき、更にジュディス、ラピード、カロルも続き、私達は装置から離れ、バルボスへと攻撃を仕掛けた
「ごはっ!」
綺麗に連携が取れ、ユーリの一撃が見事に決まりバルボスは膝を付いた
「・・・もう部下もいない。器が知れたな。分を弁えないバカはあんたって事だ」
「ぐっ・・・ハハハっ。な、成る程、どうやらその様だ」
「では、大人しく・・・」
「こ、これ以上、無様をさらすつもりはない。・・・ユーリ、とか言ったな? お前は若い頃のドン・ホワイトホースに似ている・・・そっくりだ」
「オレがあんなじいさんになるってか。ぞっとしない話だな」
「ああ、貴様はいずれ世界に大きな敵を作る。あのドンのように・・・そして世界に食い潰される」
彼の最後の遺言、という名の警告なのか、何なのか
普段なら誰かが言葉を入れるだろうが今は皆、ギルドに生きた男の最期の言葉を黙って聞いていた
「悔やみ、嘆き、絶望した貴様がやってくるのを先に地獄で待つとしよう」
「・・・!」
そしてバルボスがそのまま身体の力を抜くのが見え、私とユーリとフレンとエステルは走って行ったがバルボスはガスファロストの下へと落ちていった
「・・・・・」
私達は暫くその場から動かず黙ったままだった
*
「まったく、魔刻が無事で良かったぜ」
「うん。これで下町も安心だね」
「ああ」
あれから暫くして私達は塔を降りて来た
「水道魔導器の魔刻ってそんなに小さいものだったんですね」
「さて、魔刻も取り戻した、これで一件落着だね」
「でも、バルボスを捕まえる事が出来ませんでした・・・」
「ええ・・・それだけが悔やまれます」
「何言ってんの、あんな悪人、死んで・・・ふぎゃっ・・・!」
リタの言葉を遮るように兄さんがリタを小突いた
「それにまだ一件落着には早いな」
「ああ、こいつがちゃんと動くかどうか確認しないとな」
「・・・・」
だが、フレンはやっぱり浮かない顔をしていた
「・・・フレン?」
「あ、いや、何でもない・・」
私の視線に気付いたのかフレンはそう言って安心させるように笑ったがやっぱり浮かない顔をしていた
それは多分、バルボスが言った『あの男』と言うのが引っかかっているからかもしれない
それはフレンだけじゃなく、私もアスラも兄さんも引っかかっている事だったからだ
「魔導器の魔刻はそんなに簡単に壊れないわよ」
「ふ~ん、そうなんだ、知ってたレイヴン・・・?」
辺りを見渡すがレイヴンの姿は何処にもなかった
「ったく、相変わらず神出鬼没だな」
「また、あのおっさんは・・・本当に自分勝手ね」
「それをリタが言うんだ」
「人それぞれで良いんじゃない?」
「ダングレストに帰ったんだろ。会いたきゃ会えるさ」
ユーリの言う通り、先にダングレストに戻ってドンに報告しているのだろう
「僕も一足先に戻る。部下に仕事を押し付けたままだから・・・エステリーゼ様もどうか私とご一緒に」
「ええと・・・わたし・・・もう少しみんなと一緒にいてはいけませんか・・・?」
エステルの言葉を聞きフレンは少し困ったような顔をしたが直ぐにユーリが溜息を吐いて助け船を出した
「聞き分けのない姫さんの面倒はもう少しこっちで見てやるよ。その方がそっちも楽だろ? 責任もってダングレストには送り届けるから」
「・・・分かった。その代り、絶対に間違いのないように頼む。寄り道も駄目だ、良いね?」
「分かった分かった」
「ではエステリーゼ様、ダングレストで」
「ありがとう、フレン」
「フレン」
「?」
フレンがエステルに一礼して離れようとしていると兄さんがフレンを呼び止め、フレンの所まで歩いて行って兄さんは私達の方に振り返った
「ユーリ、俺も先にダングレストに戻るわ」
「なんか用事でもあんのか?」
「ああ、ちょっと、な・・・」
言うと兄さんはちらりとフレンを見て、そして私とアスラを見た
おそらく、さっきの事を話すのかもしれない
「分かった。んじゃ、後でな」
「ああ」
ユーリはそれ以上深くは聞かないで、そう言って兄さんを見て兄さんは軽い返事を返してフレンと先にダングレストへと戻って行った
「・・・・」
兄さん達を見送り視線を戻すと、今度はユーリが浮かない顔をしていた
「浮かない顔して、どうかした?」
「いや、まだデデッキの野郎をぶん殴ってねえと思ってさ」
「魔導器の魔刻は戻ったんだから良いんじゃないの? そんなコソ泥なんて」
「ま、それもそうだな。どっかで会ったら絶対にぶん殴るけど・・・」
ユーリのその言葉に苦笑していると小声で何か呟いた
「・・・地獄で待ってる、か。やな事言うぜ」
「・・・・・」
その言葉が聞こえたのは隣にいた私だけだろう
ユーリと私の間に少し重たい空気が流れようとしているとカロルが少しだけ走り出し振り返った
「ほらほら、いい加減ダングレストに戻ろうよ」
「そうだね」
「じゃあ、私は此処でお別れね」
カロルの言葉にアスラが同意していると、後ろにいたジュディスがそう言って私達とは反対の方に向かって歩き出そうとしていた
「相棒のとこ戻るのか?」
「相棒? 誰です、それ?」
「此処からは別行動、お互いの行動に干渉はなしね」
「そっか、じゃあな」
「ええ・・・」
通り過ぎ際に、ジュディスにアイコンタクトを送るとそれを受け取りニッコリとして返してくれ私もつられて笑った
「さてと、じゃあダングレストに戻るか」
そうして私達はダングレストを目指し歩き始めた
続く
あとがき
水道魔導器奪還編完結!
さ、次回からは満月の子編に入ります!
こっちは色々と変わってくると思いますよ?(でも疑問系w)
2009.12.05