水道魔導器奪還編
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私達は大森林の入り口まで歩いて来るとその場で立ち止まって周囲を見渡した
「世の中にはこんな大きな木があるんですね・・・」
ケーブ・モック大森林はその名の通り、木々が密集していて、下手をすれば迷子になりかねない程の規模の大きな所だった
「森林つーよりジャングルっぽいよな」
「此処まで成長すると逆に不健康な感じがすんな」
「カロルが言ってた通りね。ヘリオードで魔導器が暴走した時の感じになんとなく似てる」
「気を付けて・・・誰かいるよ」
その言葉に私達は警戒を強め辺りを見回すと近くの茂みが揺れた
私達は更に警戒を強めようとしているとそこから見覚えのある人物が草陰から出て来た
29.翠に眠る森
「よっ、偶然!」
「レイヴン!?」
茂みから出て来たのはレイヴンだった
レイヴンは軽い口調と足取りで私達の所へやって来た
「はぁ~い、リアちゃん、お久しぶり~!」
「レイヴン、久しぶり。・・・?」
レイヴンはニコニコとした顔で私達の方に歩いて来て、私もレイヴンの方に歩いて行こうとすると、急にユーリに腕を掴まれた
「・・・ユーリ? ・・みんな?」
私はエステル以外のみんなの雰囲気が違う事に気が付き振り返ると、みんなレイヴンを睨み付けていた
「こんなとこで何してんだよ?」
ユーリはそう言って更にレイヴンを睨む
「自然観察と森林浴って感じだな」
「胡散臭い・・・」
「あれ? 歓迎されてない?」
「歓迎されてない感じだよ、これ」
アスラの言葉に私は雰囲気的にそう感じて苦笑した
「本気で歓迎されるなんて思ってたんじゃないでしょうね」
「そんな事言うなよ、俺、役に立つぜ」
「役に立つって、まさか一緒に来たい、とか?」
「そうよ、一人じゃ寂しいしさ、何? ダメ?」
その言葉にエステルとカロルは顔を見合わせどうしよう? と言った顔をしてユーリとリタを交互に見ていた
そして先に口を開いたのはリタだった
「背後には気を付けてね。変な事したら殺すから」
レイヴンを白い目で見つめてリタは言うと、先に森の奥へと歩いて行く
一瞬リタの背後に黒い物が見えたような・・・ι
そう思っているとレイヴンがユーリに耳打ちするように尋ねた
「なあ、俺ってばそんなに胡散臭い?」
「ああ、胡散臭さが全身から滲み出てるな」
「どれどれ・・・」
そう言ってレイヴンは匂いをかぎ出す
「余計な真似したら、オレ何するか分かんないんでそこん所はよろしくな」
冷めた目でレイヴンを見ていたユーリが釘を刺すように言うと、ユーリは私の手を放し森の奥へと歩き出しその後をラピードが歩いて行きエステルとカロルもその後に続いた
ユーリの背後にも何か黒い物が見えたような・・・ι と思っているとレイヴンが私とアスラと兄さんの所へ来た
「もぉ~相変わらずね、あの青年は」
「そりゃあんな事があれば誰だって信用出来ねえだろ」
兄さんの言葉を聞いてレイヴンはバツが悪そうな顔をした
「あんな事って・・・?」
「そういや、あの時リアちゃんいなかったわよね?」
「あの時・・・?」
「ほら、リアがラゴウの屋敷にいた時だよ」
兄さん達に話しを聞くと、どうやらあの時、門の所でレイヴンと会ったらしい
その時にレイヴンが門番の傭兵達をどかす為に兄さん達を囮にして屋敷に入ったそうだ
そして入れ違いでレイヴンは上へ、兄さん達は地下に行ったらしい
「・・・それは、怒ってるのも当然かも・・ι」
「それとユーリから聞いたけど、カルボクラムでも何かやったらしいじゃん」
「うっわ、何、その嫌みっぽい言い方・・・」
「偽情報掴まされて行ったあげく、結局いたのは魔狩りの剣とデカい魔物。んで、最後は騎士団に捕まった・・・。そりゃユーリ達もあの態度取るだろ」
「・・・レイヴン・・ι」
流石に此処まで聞くと、さっきのユーリ達の態度にも納得がいった
「リ、リアちゃんまでそんな冷めた目で見ないでよぉ・・・。俺様だって、そのギルドが魔狩りの剣だなんて知らなかったんだし・・・」
レイヴンは更にバツの悪い顔をして兄さんとアスラに謝っていた
「はあ。ま、いいや。とりあえずあんまあいつ等に迷惑かけんなよ」
兄さんとアスラは溜息を吐き先に歩いて行った
「そういえば、レイヴンはラゴウの屋敷に何しに行ってたの?」
「ん? ドンに頼まれて探してる聖核 っていうやつがあの屋敷にあるって聞いてね」
「聖核・・・?」
「そっ。リアちゃん聞いた事ない?」
「うん・・・。それってどういうものなの?」
「ドンが言うには魔刻のスゴい版らしいよ」
「魔刻のスゴい版・・・」
確かにそんなものがあればドンが探すのも分かる
だけど私はその名前を聞いた事がない
だから知っているのはドンくらいかもしれない
聖核の事を知っていたらリタや他の魔導士が探しているはずだし・・・
(だけど、何だろう。聖核って聞いた時、一瞬だけ心臓が締め付けられる感じがしたような・・・)
「・・・ちゃん。リアちゃん」
「え? あ、何?」
考え込んでいていつの間にかレイヴンが私の顔を覗きこんでいた
「どうしたの、ボーとして」
「ちょっと考え事してただけだよ」
私は誤魔化すように笑って言うとレイヴンはもしかして・・・と言って私を見た
「青年と上手くいってないの?」
「えっ! なんで! じゃなくて、違うの! 私とユーリは///」
「あれ? そうなの? 俺様てっきり付き合っ「おっさん、何か言ったか?」
レイヴンの言葉に驚き少し困惑気味になりながら言っていると、ユーリは立ち止まって振り返りはしなかったもののその言葉には何処か威圧感があった
「いやぁ~、何でもないよ。うん」
レイヴンの返事を聞くとユーリはまた歩みを進めた
その様子を疑問符を出しながら見ているとレイヴンが私を見た
「リアちゃん、愛されてるねぇ~」
「? えと、前にも言ったけど、私とユーリは」
「幼馴染み、なんでしょ?」
「うん」
私の返事を聞くとレイヴンは複雑な表情を浮かべた
「・・・相変わらずね、リアちゃんは・・・」
言ってレイヴンは前を歩くユーリへと視線を向ける
「青年達が苦労するのも分かるわ・・・」
「? レイヴン、何か言った?」
「いいや、何も」
「そう?」
私はレイヴンが言った言葉が聞き返すがそう返され疑問符を出しているとポンと肩に手が乗り
「ま、頑張れ若人達よ!」
「は、はあ・・・」
レイヴンは楽しそうな顔をして歩き出し、曖昧な返事をして私も歩き出し、リタがちらりとレイヴンを見てエステルとカロルと話しを始めた
「改めて言う事じゃないけど、おっさん、マジで胡散臭いんだけど」
「何処まで一緒に来るつもりなんだろうね」
「ケーブ・モックの森に、用があるんでしょうか?」
「とか言われてるけど、何か答えられる事ねえのか?」
「ん? そりゃ何処までも着いて行きますよ。それと森に来た理由は、本当の自分を探す為って言ったでしょ?」
「あんたがさっき言った理由は、自然観察と森林浴でしょうが!」
「あれ、そうだっけ?」
「そう頻繁に記憶が飛ぶんじゃ、自分も探したくなるわな」
「そう言う事!」
「・・・本当に、胡散臭いね」
「まあ、俺の事は気にせずに、よろしくやって下さいよ」
いつものように悪気なく言うとエステルはユーリに視線を送った
「どうします?」
「おっさん、何かオレ等を納得させる芸とかないの?」
「俺を大道芸人かなんかと間違えてない?」
「間違ってないだろ」
「ちょ、セイ、ヒドいわよぉ~」
「そう言えば、あんた達知り合いだったわね?」
「ええ」
「一応ね」
「一応ってヒドイなぁ~」
「で、何かないの?」
「う゛~ん・・・」
少しの間唸って何かを考え急に乗っていた樹の根から飛び降り、ちょいちょいとカロルを手招きした
「・・・え? ・・・ボ、ボク?」
カロルは少し驚いたようだったが、渋々レイヴンに着いて行くと、レイヴンはカロルを連れて何処かへ走って行った
「「「「「「?」」」」」」
不思議にその行動を見ていると暫くしてレイヴンだけ先に戻って来た
「ん? カロルはどうしたんだ、おっさん」
「う、う、うわぁあっ! ちょっと、一人にしないでぇ~~~!!!!」
カロルの叫び声が聞こえるや否、カロルの目の前には大きな虫の魔物がいた
「ほら、ガンバレ、少年!」
その様子をレイヴンは他人事のように観戦していた
「くっ、くそぉおっ!」
カロルは顔面蒼白になりながらも、目の前の魔物を追い払おうと必死になって剣を振り回している
あの表情は虫嫌いの顔だと直ぐに私は気が付きカロルを助けに行こうとしているとレイヴンが弓を構え、魔物に向かって矢を放った
カロルはそれに気付く余裕もないのか未だに剣を振り回していたが、剣の勢いが緩んだ瞬間、魔物が近寄って来て、カロルは情けない悲鳴を上げながら私達の方に逃げて来た
「も、もうイヤー!」
「もうそろそろかね・・・・」
「?」
レイヴンがそう呟いた瞬間、カロルの目の前を浮遊していた魔物が突然大きな音と共に爆発した
「うわっ!」
その音にか、爆発した魔物の破片に驚いたカロルが腰を抜かし、その場にへたりこんだ
「中で爆発した!?」
「な、何したんです!?」
「防御が崩れた瞬間、打ち込んで中から・・・ボンってね!」
「まったく・・・悪趣味な芸ね」
リタがそういうのも無理はない
確かに一撃で魔物を仕留めたものの、魔物の肉片が辺りに散らばって流石に好き好んで直視する人間はいないだろう
「良いんじゃないでしょうか?」
エステルが少し遠慮がちにユーリに言うと少しだけ間が出来た
「・・・良いのか?」
「ええ。それにリアとアスラとセイの知り合いですし」
「そこは否定はしないな」
「うん」
「実力も確かだし良いんじゃないの?」
私達の意見も聞いてユーリは少し考え小さく息を吐き私達を見た
「ま、いっか・・・」
「お、合格?」
嬉しそうなレイヴンを他所にカロルはぎょっとしてユーリを見た
「マ、マジで・・・?」
「傍に置いといた方が下手な真似しやがった時に色々やりやすいしな」
「おいおい、色々って・・・」
「・・・それもそうよねぇ」
「何か背筋が寒~くなって来たんだけど・・・ι」
「気のせいだ。気にすんな」
「余計気になるっつの!」
「えと、それならよろしくお願いします」
「よろしくね、レイヴン」
「はい、よろしく」
礼儀正しく頭を下げるエステルを見て、私もレイヴンに声を掛けるとレイヴンも軽く会釈をした
どうにかその場が丸く収まり新たにレイヴンを仲間に入れて歩き出そうとしていると、そうだ、とリタが口を開いた
「一応気を付けておいて。植物の異常生長がエアルの所為なら此処もエアルが溢れてる可能性があるから」
そう言えば、私達はこの森にエアルの調査に来ているのだった
ちょっと色々とあって忘れていたけど、早く調査を済ませてダングレストの様子を見に戻りたい
ドンやフレン達がいるし、結界も直ったから大丈夫だろうけど・・・
そう思っていると次に言葉を発したのは意外な人物だった
「過度なエアルは人体にも魔導器にも悪影響を及ぼすからね。エアルの取り込みすぎで代謝活動が活発になりすぎるから普段より疲れるわよ」
「良く知ってたわね」
リタが感心そうにレイヴンを見た
「へ? 常識でしょ」
「人体への影響は知ってても可笑しくはないけど・・・。無茶な使い方して、魔導器をエアル過多にするのは一般に知られてないと思ったわ」
「武醒魔導器扱う人間なら知ってて当然でしょ」
「ボク、リタに聞くまで知らなかった」
「勉強不足よ、少年」
「・・・・・」
その様子をユーリは訝しそうに見ていて私は首を傾げてユーリに声を掛けた
「ユーリ、どうかした?」
「いや・・・」
そう言って視線を外すものの、やっぱり何か引っ掛かっているようだった
続く
あとがき
今回はレイヴンとの会話を多めに書いてみました
屋敷とカルボクラムで絡んでないからねι
意外にぱっと書けたな、今回は
あ、因みに、「前にも言った」って言うのは過去の話し の事です(劇場版読んだら解るけど)
さ、次回は・・・あそこか
頑張って書こう~
2009.11.26
「世の中にはこんな大きな木があるんですね・・・」
ケーブ・モック大森林はその名の通り、木々が密集していて、下手をすれば迷子になりかねない程の規模の大きな所だった
「森林つーよりジャングルっぽいよな」
「此処まで成長すると逆に不健康な感じがすんな」
「カロルが言ってた通りね。ヘリオードで魔導器が暴走した時の感じになんとなく似てる」
「気を付けて・・・誰かいるよ」
その言葉に私達は警戒を強め辺りを見回すと近くの茂みが揺れた
私達は更に警戒を強めようとしているとそこから見覚えのある人物が草陰から出て来た
29.翠に眠る森
「よっ、偶然!」
「レイヴン!?」
茂みから出て来たのはレイヴンだった
レイヴンは軽い口調と足取りで私達の所へやって来た
「はぁ~い、リアちゃん、お久しぶり~!」
「レイヴン、久しぶり。・・・?」
レイヴンはニコニコとした顔で私達の方に歩いて来て、私もレイヴンの方に歩いて行こうとすると、急にユーリに腕を掴まれた
「・・・ユーリ? ・・みんな?」
私はエステル以外のみんなの雰囲気が違う事に気が付き振り返ると、みんなレイヴンを睨み付けていた
「こんなとこで何してんだよ?」
ユーリはそう言って更にレイヴンを睨む
「自然観察と森林浴って感じだな」
「胡散臭い・・・」
「あれ? 歓迎されてない?」
「歓迎されてない感じだよ、これ」
アスラの言葉に私は雰囲気的にそう感じて苦笑した
「本気で歓迎されるなんて思ってたんじゃないでしょうね」
「そんな事言うなよ、俺、役に立つぜ」
「役に立つって、まさか一緒に来たい、とか?」
「そうよ、一人じゃ寂しいしさ、何? ダメ?」
その言葉にエステルとカロルは顔を見合わせどうしよう? と言った顔をしてユーリとリタを交互に見ていた
そして先に口を開いたのはリタだった
「背後には気を付けてね。変な事したら殺すから」
レイヴンを白い目で見つめてリタは言うと、先に森の奥へと歩いて行く
一瞬リタの背後に黒い物が見えたような・・・ι
そう思っているとレイヴンがユーリに耳打ちするように尋ねた
「なあ、俺ってばそんなに胡散臭い?」
「ああ、胡散臭さが全身から滲み出てるな」
「どれどれ・・・」
そう言ってレイヴンは匂いをかぎ出す
「余計な真似したら、オレ何するか分かんないんでそこん所はよろしくな」
冷めた目でレイヴンを見ていたユーリが釘を刺すように言うと、ユーリは私の手を放し森の奥へと歩き出しその後をラピードが歩いて行きエステルとカロルもその後に続いた
ユーリの背後にも何か黒い物が見えたような・・・ι と思っているとレイヴンが私とアスラと兄さんの所へ来た
「もぉ~相変わらずね、あの青年は」
「そりゃあんな事があれば誰だって信用出来ねえだろ」
兄さんの言葉を聞いてレイヴンはバツが悪そうな顔をした
「あんな事って・・・?」
「そういや、あの時リアちゃんいなかったわよね?」
「あの時・・・?」
「ほら、リアがラゴウの屋敷にいた時だよ」
兄さん達に話しを聞くと、どうやらあの時、門の所でレイヴンと会ったらしい
その時にレイヴンが門番の傭兵達をどかす為に兄さん達を囮にして屋敷に入ったそうだ
そして入れ違いでレイヴンは上へ、兄さん達は地下に行ったらしい
「・・・それは、怒ってるのも当然かも・・ι」
「それとユーリから聞いたけど、カルボクラムでも何かやったらしいじゃん」
「うっわ、何、その嫌みっぽい言い方・・・」
「偽情報掴まされて行ったあげく、結局いたのは魔狩りの剣とデカい魔物。んで、最後は騎士団に捕まった・・・。そりゃユーリ達もあの態度取るだろ」
「・・・レイヴン・・ι」
流石に此処まで聞くと、さっきのユーリ達の態度にも納得がいった
「リ、リアちゃんまでそんな冷めた目で見ないでよぉ・・・。俺様だって、そのギルドが魔狩りの剣だなんて知らなかったんだし・・・」
レイヴンは更にバツの悪い顔をして兄さんとアスラに謝っていた
「はあ。ま、いいや。とりあえずあんまあいつ等に迷惑かけんなよ」
兄さんとアスラは溜息を吐き先に歩いて行った
「そういえば、レイヴンはラゴウの屋敷に何しに行ってたの?」
「ん? ドンに頼まれて探してる
「聖核・・・?」
「そっ。リアちゃん聞いた事ない?」
「うん・・・。それってどういうものなの?」
「ドンが言うには魔刻のスゴい版らしいよ」
「魔刻のスゴい版・・・」
確かにそんなものがあればドンが探すのも分かる
だけど私はその名前を聞いた事がない
だから知っているのはドンくらいかもしれない
聖核の事を知っていたらリタや他の魔導士が探しているはずだし・・・
(だけど、何だろう。聖核って聞いた時、一瞬だけ心臓が締め付けられる感じがしたような・・・)
「・・・ちゃん。リアちゃん」
「え? あ、何?」
考え込んでいていつの間にかレイヴンが私の顔を覗きこんでいた
「どうしたの、ボーとして」
「ちょっと考え事してただけだよ」
私は誤魔化すように笑って言うとレイヴンはもしかして・・・と言って私を見た
「青年と上手くいってないの?」
「えっ! なんで! じゃなくて、違うの! 私とユーリは///」
「あれ? そうなの? 俺様てっきり付き合っ「おっさん、何か言ったか?」
レイヴンの言葉に驚き少し困惑気味になりながら言っていると、ユーリは立ち止まって振り返りはしなかったもののその言葉には何処か威圧感があった
「いやぁ~、何でもないよ。うん」
レイヴンの返事を聞くとユーリはまた歩みを進めた
その様子を疑問符を出しながら見ているとレイヴンが私を見た
「リアちゃん、愛されてるねぇ~」
「? えと、前にも言ったけど、私とユーリは」
「幼馴染み、なんでしょ?」
「うん」
私の返事を聞くとレイヴンは複雑な表情を浮かべた
「・・・相変わらずね、リアちゃんは・・・」
言ってレイヴンは前を歩くユーリへと視線を向ける
「青年達が苦労するのも分かるわ・・・」
「? レイヴン、何か言った?」
「いいや、何も」
「そう?」
私はレイヴンが言った言葉が聞き返すがそう返され疑問符を出しているとポンと肩に手が乗り
「ま、頑張れ若人達よ!」
「は、はあ・・・」
レイヴンは楽しそうな顔をして歩き出し、曖昧な返事をして私も歩き出し、リタがちらりとレイヴンを見てエステルとカロルと話しを始めた
「改めて言う事じゃないけど、おっさん、マジで胡散臭いんだけど」
「何処まで一緒に来るつもりなんだろうね」
「ケーブ・モックの森に、用があるんでしょうか?」
「とか言われてるけど、何か答えられる事ねえのか?」
「ん? そりゃ何処までも着いて行きますよ。それと森に来た理由は、本当の自分を探す為って言ったでしょ?」
「あんたがさっき言った理由は、自然観察と森林浴でしょうが!」
「あれ、そうだっけ?」
「そう頻繁に記憶が飛ぶんじゃ、自分も探したくなるわな」
「そう言う事!」
「・・・本当に、胡散臭いね」
「まあ、俺の事は気にせずに、よろしくやって下さいよ」
いつものように悪気なく言うとエステルはユーリに視線を送った
「どうします?」
「おっさん、何かオレ等を納得させる芸とかないの?」
「俺を大道芸人かなんかと間違えてない?」
「間違ってないだろ」
「ちょ、セイ、ヒドいわよぉ~」
「そう言えば、あんた達知り合いだったわね?」
「ええ」
「一応ね」
「一応ってヒドイなぁ~」
「で、何かないの?」
「う゛~ん・・・」
少しの間唸って何かを考え急に乗っていた樹の根から飛び降り、ちょいちょいとカロルを手招きした
「・・・え? ・・・ボ、ボク?」
カロルは少し驚いたようだったが、渋々レイヴンに着いて行くと、レイヴンはカロルを連れて何処かへ走って行った
「「「「「「?」」」」」」
不思議にその行動を見ていると暫くしてレイヴンだけ先に戻って来た
「ん? カロルはどうしたんだ、おっさん」
「う、う、うわぁあっ! ちょっと、一人にしないでぇ~~~!!!!」
カロルの叫び声が聞こえるや否、カロルの目の前には大きな虫の魔物がいた
「ほら、ガンバレ、少年!」
その様子をレイヴンは他人事のように観戦していた
「くっ、くそぉおっ!」
カロルは顔面蒼白になりながらも、目の前の魔物を追い払おうと必死になって剣を振り回している
あの表情は虫嫌いの顔だと直ぐに私は気が付きカロルを助けに行こうとしているとレイヴンが弓を構え、魔物に向かって矢を放った
カロルはそれに気付く余裕もないのか未だに剣を振り回していたが、剣の勢いが緩んだ瞬間、魔物が近寄って来て、カロルは情けない悲鳴を上げながら私達の方に逃げて来た
「も、もうイヤー!」
「もうそろそろかね・・・・」
「?」
レイヴンがそう呟いた瞬間、カロルの目の前を浮遊していた魔物が突然大きな音と共に爆発した
「うわっ!」
その音にか、爆発した魔物の破片に驚いたカロルが腰を抜かし、その場にへたりこんだ
「中で爆発した!?」
「な、何したんです!?」
「防御が崩れた瞬間、打ち込んで中から・・・ボンってね!」
「まったく・・・悪趣味な芸ね」
リタがそういうのも無理はない
確かに一撃で魔物を仕留めたものの、魔物の肉片が辺りに散らばって流石に好き好んで直視する人間はいないだろう
「良いんじゃないでしょうか?」
エステルが少し遠慮がちにユーリに言うと少しだけ間が出来た
「・・・良いのか?」
「ええ。それにリアとアスラとセイの知り合いですし」
「そこは否定はしないな」
「うん」
「実力も確かだし良いんじゃないの?」
私達の意見も聞いてユーリは少し考え小さく息を吐き私達を見た
「ま、いっか・・・」
「お、合格?」
嬉しそうなレイヴンを他所にカロルはぎょっとしてユーリを見た
「マ、マジで・・・?」
「傍に置いといた方が下手な真似しやがった時に色々やりやすいしな」
「おいおい、色々って・・・」
「・・・それもそうよねぇ」
「何か背筋が寒~くなって来たんだけど・・・ι」
「気のせいだ。気にすんな」
「余計気になるっつの!」
「えと、それならよろしくお願いします」
「よろしくね、レイヴン」
「はい、よろしく」
礼儀正しく頭を下げるエステルを見て、私もレイヴンに声を掛けるとレイヴンも軽く会釈をした
どうにかその場が丸く収まり新たにレイヴンを仲間に入れて歩き出そうとしていると、そうだ、とリタが口を開いた
「一応気を付けておいて。植物の異常生長がエアルの所為なら此処もエアルが溢れてる可能性があるから」
そう言えば、私達はこの森にエアルの調査に来ているのだった
ちょっと色々とあって忘れていたけど、早く調査を済ませてダングレストの様子を見に戻りたい
ドンやフレン達がいるし、結界も直ったから大丈夫だろうけど・・・
そう思っていると次に言葉を発したのは意外な人物だった
「過度なエアルは人体にも魔導器にも悪影響を及ぼすからね。エアルの取り込みすぎで代謝活動が活発になりすぎるから普段より疲れるわよ」
「良く知ってたわね」
リタが感心そうにレイヴンを見た
「へ? 常識でしょ」
「人体への影響は知ってても可笑しくはないけど・・・。無茶な使い方して、魔導器をエアル過多にするのは一般に知られてないと思ったわ」
「武醒魔導器扱う人間なら知ってて当然でしょ」
「ボク、リタに聞くまで知らなかった」
「勉強不足よ、少年」
「・・・・・」
その様子をユーリは訝しそうに見ていて私は首を傾げてユーリに声を掛けた
「ユーリ、どうかした?」
「いや・・・」
そう言って視線を外すものの、やっぱり何か引っ掛かっているようだった
続く
あとがき
今回はレイヴンとの会話を多めに書いてみました
屋敷とカルボクラムで絡んでないからねι
意外にぱっと書けたな、今回は
あ、因みに、「前にも言った」って言うのは
さ、次回は・・・あそこか
頑張って書こう~
2009.11.26