水道魔導器奪還編
夢主名変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
部屋を出るとフレンは私に絶対に無茶はしない事、と言って騎士団の方へ戻って行き、私達はリタが休んでいる部屋に向かい、ノックをするとリタから返事が返ってきて私達は部屋の中に入った
27.不確かなもの
「目、覚めたか。良かったな」
リタが休んでいるベッドの近くに行くとエステルが眠っている姿が見えた
「あれほど倒れる前に言えって言ったのに」
「解ってたんでしょ? 言っても聞かない事くらい」
「うう~ん・・・ふにぅ・・・・・・」
「・・・幸せそうな顔しちゃって」
「・・・ホント」
リタはそう言ってエステルを見てくすりと笑うと急に私達の方を見た
「あのさ、エステリーゼってあたしをどう思ってると思う?」
リタのその言葉に私は隣のベッドにある毛布をエステルに掛けてあげようとしている手が止まり、ユーリと兄さんとアスラは驚き、顔を見合わせていた
「・・・ って、何て顔してんのよ」
「いや、ちょっと意外だなって思ってな」
「自分がどう見られてるかなんて気にしてないと思ってた」
「うん・・・」
「も、もう良い、あっち行って」
リタは返ってきた言葉にか質問をした事に恥ずかしさを感じたのか少し顔を赤くしてそっぽを向いた
「エステルはリタの事、大事に思ってるよ」
「そ、そう・・・?」
「ええ」
私はエステルに毛布を掛けてニコリと笑ってリタに言うと、リタは少しだけ考えて私を見た
「・・・あんたは、どう・・なの?」
「え?」
リタは少しだけ頬を赤く染めてぼそりと呟いた
「勿論、私もユーリも兄さんもアスラもカロルもラピードも、リタの事大事に思ってるわよ」
私の言葉を聞くと、リタだけじゃなくユーリも兄さんもアスラも意表を突かれたような顔をしていた
「ふむぅ・・・あれ?」
そう話していると隣にいたエステルから小さな声が聞こえゆっくりと顔を上げた
そしてリタの姿を見ると勢い良く身体を起こした
「リタ! 目が覚めたんですね! あ、でも油断したらダメですよ! 治ったと思った頃が危ないんです」
エステルはそう言ってまたリタに治癒術を掛けてあげた
「もう、大丈夫よ」
その言葉に安心していると今度は隣にいる私を見た
「リアも、もう大丈夫なんです?」
「ええ。心配してくれてありがとう」
「リアもリタも無茶しないで下さいね」
「それ、お前が言っても説得力ねえぞ」
「あ、えと・・・」
すかさずユーリに言われエステルはあたふたとしていると、リタは少しだけ優しく笑ってエステルに言った
「後、魔導器使うフリ、もうやめて良いよ」
「! な、何の事です?」
「魔導器なくても治癒術使えるなんてすげえよな」
その様子を後ろで見ていたユーリも続けて言うとエステルは驚いた顔をした
「ど、どうしてそれを・・・で、でも、それなら、リアやセイも・・・」
エステルはそう言って私と兄さんを見て、ユーリとリタも自然と私達に視線を向ける
「エステルの言う通り、俺達もそんなに魔導器使ってねえからな」
「セイ・・・」
「気付いてるのに、今更隠してもしょうがないでしょ?」
「・・・・」
兄さんの言葉にユーリが反応して言うが、私の言葉を聞きそのまま黙った
「あんた達のはなんとなく解るから良いとして」
「問題はエステル、だね」
「・・・・」
私達の言葉を聞きエステルは私達の顔を見ると、暫く沈黙が流れた
「・・・・・」
エステルがその沈黙と私達の視線に耐えきれなくなり俯いていると突然窓の外に気配を感じると同時に何かの鳴き声が聞こえた
「「「!」」」
「何だ!?」
「あ、バカドラ!」
窓の外を見るとラゴウの屋敷で魔導器を壊した竜使いがいた
竜使いは槍を前に出し竜に指示を出すと、竜は口を大きく開け、火を噴き出そうとしていた
それに気付いたユーリは剣を抜き窓際へ走って行きエステルはリタを守るようにベッドから降り隅に隠れていた
「なっ、何!? どうなってるの?」
「分かんねえ、何で・・・」
「二人共、伏せて!」
私と兄さんが竜使いの行動に驚いているとアスラが竜が火を噴き出すのを察知し私達に知らせてくれた
煙が消えると竜は体制を変えて何処かへ飛び立とうとしていた
「凄い音がしたけどどうしたの・・・・・って、うわあっ!?」
カロルが物音を聞きつけ部屋に入って来て、窓の外の竜に驚き大きな声を出した
「なに? なんなの? な、何だったの、あれ?」
「「「・・・・・・」」」
竜はそのまま何処かへ飛び去って行き、私達は複雑な顔をしているとリタが少し歩き忌々しそうに呟いた
「大事な話の途中だったのに・・・」
「エステルの治癒術とリア達の事に関しては、とりあえず此処までな」
「別に良いわよ。あたしは大体理解したし」
ユーリとリタの言葉にエステルは少し不安そうな顔をしてユーリを見ていた
「何、悪い様にしないって。オレ、そんなに悪い奴に見える?」
「うん、見える」「見えるわ」
「即答だな」
「ふふっ」「・・・うふふ」
そのやり取りが可笑しくて私とエステルは笑ってしまった
すると一人蚊帳の外のカロルは何の事だか解らず聞こうとした
「何でもねえよ。ほら、そろそろ寝るぞ」
「え~! ねえ、教えてよ~!」
「じゃあこの部屋は『無茶する女子組』で使ってくれ」
「ちょ! 何よ、その『無茶する女子組』って」
「そのままの意味だよ」
「リタ、落ち着いて下さい」
「ほらみんな、他のお客さんに迷惑だからあんまり大きな声出さないの」
結局、リタとカロルは納得しないままカロルはユーリと兄さんに連れられ部屋を出て行き、この部屋は私達女子組が使う事になった
*
翌朝、私は早く目が覚めて朝の散歩に出掛けた
そして昨日の事を考えながら歩いていた
(・・・昨日の立ち眩み、一体何だったんだろう? 今まであんな事なかったのに・・・)
ユーリとフレンとも話しをしていた時にも思った事だったけど、確かに今までこんな事はなかった
ユーリもフレンも私の力の事も知っているし、あれくらいの結界ならそんなに体力を消耗する事がない
(・・・原因は・・やっぱり、あの時の不思議な感覚・・・? でも、あれは・・・)
私はその時の光景を思い出す
(・・・でも、あの場にはユーリや兄さん達もいた。けど、あの感覚を感じたのは私だけ・・・。アスラも兄さんも何かしら気付いている事があるみたいだけど、私の方を優先させちゃったからなぁ・・・)
「こうなるとなかなか聞けないのよね・・・。それにしても・・・」
(あの二人、何で急に襲って来たの? あそこにはあの魔導器はなかった。あの場にいたのは私達だけ・・・。でも、狙って来たのは確かだった・・・。狙いは・・・?)
私はその時の事を思い出し、ある事に気が付いた
「・・・まさか、ね」
だけど、それは思い違いだろうと思い苦笑しているとふと広場の入り口に人影が見えた
「・・・エアルの乱れ・・・あの魔導器か」
「昨日、その結界魔導器のエアルが暴走して、爆発があったんです」
「・・・・」
私はそう言ってその人物に近付いて小さく微笑んで男性を見た
「前にデイドン砦でお会いしましたよね?」
その人物はデイドン砦で会ったあの銀髪の男性だった
「私、リア・ルーティアって言います」
「・・・ルーティア?」
銀髪の男性は私の名前に反応し私をじっと見ていた
「・・・あの、何か?」
「・・・いや」
「・・・?」
男性は私から視線を外したが、一瞬だけ寂しそうな目をしたような気がした
「あの、貴方の名前、聞いても良いですか?」
「・・・デュークだ」
「デュークさん」
「デュークで良い。敬語も使わなくて良い」
「あ、はい。あの、デューク」
「何だ?」
「さっきエアルの乱れって言ってたけど、貴方は魔導士なの?」
「いや・・・違うが私はエアルの乱れが解る」
「どうして?」
「・・・・」
そう聞くとデュークは黙って広場の中央にある結界魔導器をじっと見つめた
「あの魔導器は爆発を起こした後、安定したのか?」
「ええ。私の仲間に魔導器に詳しい子がいて、その子がもう平気だって言ってたわ」
今朝早く、リタは魔導器の様子を見に行って丁度部屋に帰って来た時に起きていた私にそう伝えてくれた
「そうか・・・」
言うとデュークは踵を返そうとしていた
「あ、デューク」
呼び止めるとデュークは私の方に視線を向けた
「もう一つ、聞いても良い?」
「何だ・・・?」
「貴方はどうして式神や言霊使いの事知ってるの?」
「・・・・」
これはデイドン砦で会った時から気になっていた事だった
まさかまた会えるとは思ってもいなかったし名前まで答えてくれるとは正直思っていなかった
「・・・今は答えられない」
そう答えが返ってきて、少しだけ疑問に思っていると次に発せられた言葉は意外なものだった
「それから気を付けろ」
「え? ・・・いない」
その言葉に驚き顔を上げるともうデュークの姿はなかった
「・・・気を付けるって、何に?」
最後に言われた事が気になったまま私は暫くその場に立ち竦んでいた
*
「ま、帝都までの道中は気を付けてな」
「はい」
あれから時間は過ぎて昼過ぎ、エステルが帝都に戻る時間になり、私達は宿の前で見送りに来ていた
「忘れ物とか無いだろうな? 後から思い出して、また迷惑かけんなよ」
「忘れて行ったら、ユーリが届けて下さい」
「バカ言ってんな、さっさとフレンとこ行くぞ。そこまでは送ってやっから」
「あ、あの、ユーリ達はこの後どうするんです?」
「そうだな。紅の絆傭兵団の足取りも途絶えちまったし・・・」
「だったら、この先にあるダングレ・・・「は、ダメだ・・・」? カロル?」
途中で言葉を遮られ不思議に思ってカロルを見るとカロルは俯いて何か言っていた
そう言えば、カロルはダングレストの出身だった
今のカロルの状況を考えれば行きたくないのは当然かもしれない・・・
でもギルドの情報を集めるならダングレストに向かうべきだろう
「ダングレストって言うと、確かギルドの街だったよな?」
「ああ。この街を出て西に行けば着く」
「なら、行くか。ギルド作るにしても、色々と参考になるだろうし」
「え? ギルドの為に? なら、行こう!」
さっきまでの暗い雰囲気は何処へやらと思う程の切り替えの早さでカロルは元気になった
フレンと待ち合わせの広場に向かう途中、私はさっきの会話で気になる事がありユーリの隣に行った
「ねえユーリ」
「ん?」
「さっきギルドを作る参考にって言ってたけど、ギルド作るの?」
「まだ考え中だけどな。昨日の晩、カロルが作らないかって話してたからな」
「そうなんだ」
ユーリとカロルが作るギルド、か
そう話していると広場に着いたが、肝心のフレンがいなかった
「フレンって騎士、いないじゃない」
「リア達はなんも聞いてねえのか?」
「うん・・・特には」
「何か急用でも出来たんじゃない?」
「かもな・・・」
フレンに限って連絡なしで、と言うのは珍しい事で私もユーリも兄さんもアスラも顔を見合わせていた
「じゃあエステルもリア達も、このままボク等に着いてくる?」
「そうですね、そうしても良いです?」
「勝手をされては困ります。エステリーゼ様には帝都にお戻り頂かないと」
そう話しているとアレクセイとクロームがエステルの元へとやって来た
「フレンは別の用件があり既に旅立った」
「じゃあ、俺達の仕事も終わりって事だな」
「そう言う事になる。さて、リタ・モルディオ」
そう告げるとアレクセイはリタの方へ歩き出した
「君には昨日の魔導器の暴走の調査を依頼したい」
「・・・あれ調べるのもう無理。あの子、今朝少し見たけど結局何も解らなかったわ」
「いや、ケーブ・モック大森林に行ってもらいたい」
「・・・ケーブ・モック大森林か。暴走に巻き込まれた植物の感じ、あの森にそっくりだったかも」
「最近、森の木々に異常や魔物の大量発生、それに凶暴化が報告されている」
「それなら俺達情報屋の間でも噂になってるな」
「ええ。異常現象であの辺りは近付けないって」
「君達の言う通りだ。今、帝都に使者を送っているのだが、優秀な魔導士の派遣にはまだまだ時間を要する」
「あたしの専門は魔導器。植物は管轄外なんだけど?」
「エアル関連と考えれば、管轄外でもないはずだ」
「それに・・・あたしは・・・エステルが戻るなら、一緒に帝都に行きたい」
「「え?」」
リタのその言葉に私もエステルも驚き顔を見合わせ、エステルは周りを見て最後にリタを見た
「君は帝都直属の魔導器研究所の研究員だ。我々からの仕事を請け負うのは君達の義務だ」
リタはどうするべきか迷っているとエステルがリタの元へ走って行き、一緒に行けば問題ないですよねと言うとアレクセイは困った顔をして言葉を続けた
「姫様、あまり無理をおっしゃらないで頂きたい」
「エアルが関係しているのなら、私の治癒術も役に立つはずです」
「それは、確かに・・・」
「お願いです、アレクセイ! 私にも手伝わせて下さい」
「しかし、危険な大森林に姫様を行かせる訳には・・・」
「それなら・・・ユーリ、一緒に行きませんか?」
「え? オレが?」
「ユーリが一緒なら構いませんよね?」
アレクセイは暫く目を瞑って考えユーリに視線を向けた
「青年、姫様の護衛をお願いする。一度は騎士団の門を叩いた君を見込んでの頼みだ」
「・・・何でもかんでも勝手に見込んで押し付けやがって」
「その返答は承諾と受け取っても構わないようだな」
「ただし、オレにも用事がある。森に行くのはダングレストの後だ」
「致し方あるまい」
そう言ってアレクセイはクロームと歩いて行き私達から少し距離を取ると何か話しをしていた
すると急にフレンの名前が聞こえ私達はアレクセイに目を向けた
「フレンがどうかしたんですか?」
「『エステリーゼ様とリアを頼む』、フレンからの伝言だ」
その伝言を聞くとエステルはアレクセイの前に行き深くお辞儀をした
「良し! じゃあ、ダングレストの街経由でケーブ・モック大森林だね!」
カロルの言葉に私達は頷きそのまま街の外へと歩き出した
「・・・?」
だけど、一瞬妙な視線を感じ足を止め振り返ったが、その気配はなくなっていた
「・・・・!」
そう思っていると急に頭の上に何かが乗り顔を上げるとユーリが私の頭の上に手を乗せていた
「何してんだ、行くぞ」
「あ、うん」
私はその妙な視線の事を気にせず、そのままユーリとラピードと一緒にカロル達の後を追った
続く
あとがき
結構長く書けちゃったか?
此処、削ろうにも削れない所ですからね・・・
さて、エステルとリアちゃんとセイ兄ちゃんが魔導器を使ってない、と言う事がカロル以外にバレましたが、話の途中で例の竜使いが登場
今回はカルボクラムで会わせてないからどう書こうか悩んだけど、とりあえず悩むシーンはカットせず増やした感じで・・・
後はデュークとの会話もちょっと換えてみました
今後の会話も増やせたらなぁ~とか思ってますww
さ、次はダングレストだ!
頑張って書くぞ!
2009.11.26
27.不確かなもの
「目、覚めたか。良かったな」
リタが休んでいるベッドの近くに行くとエステルが眠っている姿が見えた
「あれほど倒れる前に言えって言ったのに」
「解ってたんでしょ? 言っても聞かない事くらい」
「うう~ん・・・ふにぅ・・・・・・」
「・・・幸せそうな顔しちゃって」
「・・・ホント」
リタはそう言ってエステルを見てくすりと笑うと急に私達の方を見た
「あのさ、エステリーゼってあたしをどう思ってると思う?」
リタのその言葉に私は隣のベッドにある毛布をエステルに掛けてあげようとしている手が止まり、ユーリと兄さんとアスラは驚き、顔を見合わせていた
「・・・ って、何て顔してんのよ」
「いや、ちょっと意外だなって思ってな」
「自分がどう見られてるかなんて気にしてないと思ってた」
「うん・・・」
「も、もう良い、あっち行って」
リタは返ってきた言葉にか質問をした事に恥ずかしさを感じたのか少し顔を赤くしてそっぽを向いた
「エステルはリタの事、大事に思ってるよ」
「そ、そう・・・?」
「ええ」
私はエステルに毛布を掛けてニコリと笑ってリタに言うと、リタは少しだけ考えて私を見た
「・・・あんたは、どう・・なの?」
「え?」
リタは少しだけ頬を赤く染めてぼそりと呟いた
「勿論、私もユーリも兄さんもアスラもカロルもラピードも、リタの事大事に思ってるわよ」
私の言葉を聞くと、リタだけじゃなくユーリも兄さんもアスラも意表を突かれたような顔をしていた
「ふむぅ・・・あれ?」
そう話していると隣にいたエステルから小さな声が聞こえゆっくりと顔を上げた
そしてリタの姿を見ると勢い良く身体を起こした
「リタ! 目が覚めたんですね! あ、でも油断したらダメですよ! 治ったと思った頃が危ないんです」
エステルはそう言ってまたリタに治癒術を掛けてあげた
「もう、大丈夫よ」
その言葉に安心していると今度は隣にいる私を見た
「リアも、もう大丈夫なんです?」
「ええ。心配してくれてありがとう」
「リアもリタも無茶しないで下さいね」
「それ、お前が言っても説得力ねえぞ」
「あ、えと・・・」
すかさずユーリに言われエステルはあたふたとしていると、リタは少しだけ優しく笑ってエステルに言った
「後、魔導器使うフリ、もうやめて良いよ」
「! な、何の事です?」
「魔導器なくても治癒術使えるなんてすげえよな」
その様子を後ろで見ていたユーリも続けて言うとエステルは驚いた顔をした
「ど、どうしてそれを・・・で、でも、それなら、リアやセイも・・・」
エステルはそう言って私と兄さんを見て、ユーリとリタも自然と私達に視線を向ける
「エステルの言う通り、俺達もそんなに魔導器使ってねえからな」
「セイ・・・」
「気付いてるのに、今更隠してもしょうがないでしょ?」
「・・・・」
兄さんの言葉にユーリが反応して言うが、私の言葉を聞きそのまま黙った
「あんた達のはなんとなく解るから良いとして」
「問題はエステル、だね」
「・・・・」
私達の言葉を聞きエステルは私達の顔を見ると、暫く沈黙が流れた
「・・・・・」
エステルがその沈黙と私達の視線に耐えきれなくなり俯いていると突然窓の外に気配を感じると同時に何かの鳴き声が聞こえた
「「「!」」」
「何だ!?」
「あ、バカドラ!」
窓の外を見るとラゴウの屋敷で魔導器を壊した竜使いがいた
竜使いは槍を前に出し竜に指示を出すと、竜は口を大きく開け、火を噴き出そうとしていた
それに気付いたユーリは剣を抜き窓際へ走って行きエステルはリタを守るようにベッドから降り隅に隠れていた
「なっ、何!? どうなってるの?」
「分かんねえ、何で・・・」
「二人共、伏せて!」
私と兄さんが竜使いの行動に驚いているとアスラが竜が火を噴き出すのを察知し私達に知らせてくれた
煙が消えると竜は体制を変えて何処かへ飛び立とうとしていた
「凄い音がしたけどどうしたの・・・・・って、うわあっ!?」
カロルが物音を聞きつけ部屋に入って来て、窓の外の竜に驚き大きな声を出した
「なに? なんなの? な、何だったの、あれ?」
「「「・・・・・・」」」
竜はそのまま何処かへ飛び去って行き、私達は複雑な顔をしているとリタが少し歩き忌々しそうに呟いた
「大事な話の途中だったのに・・・」
「エステルの治癒術とリア達の事に関しては、とりあえず此処までな」
「別に良いわよ。あたしは大体理解したし」
ユーリとリタの言葉にエステルは少し不安そうな顔をしてユーリを見ていた
「何、悪い様にしないって。オレ、そんなに悪い奴に見える?」
「うん、見える」「見えるわ」
「即答だな」
「ふふっ」「・・・うふふ」
そのやり取りが可笑しくて私とエステルは笑ってしまった
すると一人蚊帳の外のカロルは何の事だか解らず聞こうとした
「何でもねえよ。ほら、そろそろ寝るぞ」
「え~! ねえ、教えてよ~!」
「じゃあこの部屋は『無茶する女子組』で使ってくれ」
「ちょ! 何よ、その『無茶する女子組』って」
「そのままの意味だよ」
「リタ、落ち着いて下さい」
「ほらみんな、他のお客さんに迷惑だからあんまり大きな声出さないの」
結局、リタとカロルは納得しないままカロルはユーリと兄さんに連れられ部屋を出て行き、この部屋は私達女子組が使う事になった
*
翌朝、私は早く目が覚めて朝の散歩に出掛けた
そして昨日の事を考えながら歩いていた
(・・・昨日の立ち眩み、一体何だったんだろう? 今まであんな事なかったのに・・・)
ユーリとフレンとも話しをしていた時にも思った事だったけど、確かに今までこんな事はなかった
ユーリもフレンも私の力の事も知っているし、あれくらいの結界ならそんなに体力を消耗する事がない
(・・・原因は・・やっぱり、あの時の不思議な感覚・・・? でも、あれは・・・)
私はその時の光景を思い出す
(・・・でも、あの場にはユーリや兄さん達もいた。けど、あの感覚を感じたのは私だけ・・・。アスラも兄さんも何かしら気付いている事があるみたいだけど、私の方を優先させちゃったからなぁ・・・)
「こうなるとなかなか聞けないのよね・・・。それにしても・・・」
(あの二人、何で急に襲って来たの? あそこにはあの魔導器はなかった。あの場にいたのは私達だけ・・・。でも、狙って来たのは確かだった・・・。狙いは・・・?)
私はその時の事を思い出し、ある事に気が付いた
「・・・まさか、ね」
だけど、それは思い違いだろうと思い苦笑しているとふと広場の入り口に人影が見えた
「・・・エアルの乱れ・・・あの魔導器か」
「昨日、その結界魔導器のエアルが暴走して、爆発があったんです」
「・・・・」
私はそう言ってその人物に近付いて小さく微笑んで男性を見た
「前にデイドン砦でお会いしましたよね?」
その人物はデイドン砦で会ったあの銀髪の男性だった
「私、リア・ルーティアって言います」
「・・・ルーティア?」
銀髪の男性は私の名前に反応し私をじっと見ていた
「・・・あの、何か?」
「・・・いや」
「・・・?」
男性は私から視線を外したが、一瞬だけ寂しそうな目をしたような気がした
「あの、貴方の名前、聞いても良いですか?」
「・・・デュークだ」
「デュークさん」
「デュークで良い。敬語も使わなくて良い」
「あ、はい。あの、デューク」
「何だ?」
「さっきエアルの乱れって言ってたけど、貴方は魔導士なの?」
「いや・・・違うが私はエアルの乱れが解る」
「どうして?」
「・・・・」
そう聞くとデュークは黙って広場の中央にある結界魔導器をじっと見つめた
「あの魔導器は爆発を起こした後、安定したのか?」
「ええ。私の仲間に魔導器に詳しい子がいて、その子がもう平気だって言ってたわ」
今朝早く、リタは魔導器の様子を見に行って丁度部屋に帰って来た時に起きていた私にそう伝えてくれた
「そうか・・・」
言うとデュークは踵を返そうとしていた
「あ、デューク」
呼び止めるとデュークは私の方に視線を向けた
「もう一つ、聞いても良い?」
「何だ・・・?」
「貴方はどうして式神や言霊使いの事知ってるの?」
「・・・・」
これはデイドン砦で会った時から気になっていた事だった
まさかまた会えるとは思ってもいなかったし名前まで答えてくれるとは正直思っていなかった
「・・・今は答えられない」
そう答えが返ってきて、少しだけ疑問に思っていると次に発せられた言葉は意外なものだった
「それから気を付けろ」
「え? ・・・いない」
その言葉に驚き顔を上げるともうデュークの姿はなかった
「・・・気を付けるって、何に?」
最後に言われた事が気になったまま私は暫くその場に立ち竦んでいた
*
「ま、帝都までの道中は気を付けてな」
「はい」
あれから時間は過ぎて昼過ぎ、エステルが帝都に戻る時間になり、私達は宿の前で見送りに来ていた
「忘れ物とか無いだろうな? 後から思い出して、また迷惑かけんなよ」
「忘れて行ったら、ユーリが届けて下さい」
「バカ言ってんな、さっさとフレンとこ行くぞ。そこまでは送ってやっから」
「あ、あの、ユーリ達はこの後どうするんです?」
「そうだな。紅の絆傭兵団の足取りも途絶えちまったし・・・」
「だったら、この先にあるダングレ・・・「は、ダメだ・・・」? カロル?」
途中で言葉を遮られ不思議に思ってカロルを見るとカロルは俯いて何か言っていた
そう言えば、カロルはダングレストの出身だった
今のカロルの状況を考えれば行きたくないのは当然かもしれない・・・
でもギルドの情報を集めるならダングレストに向かうべきだろう
「ダングレストって言うと、確かギルドの街だったよな?」
「ああ。この街を出て西に行けば着く」
「なら、行くか。ギルド作るにしても、色々と参考になるだろうし」
「え? ギルドの為に? なら、行こう!」
さっきまでの暗い雰囲気は何処へやらと思う程の切り替えの早さでカロルは元気になった
フレンと待ち合わせの広場に向かう途中、私はさっきの会話で気になる事がありユーリの隣に行った
「ねえユーリ」
「ん?」
「さっきギルドを作る参考にって言ってたけど、ギルド作るの?」
「まだ考え中だけどな。昨日の晩、カロルが作らないかって話してたからな」
「そうなんだ」
ユーリとカロルが作るギルド、か
そう話していると広場に着いたが、肝心のフレンがいなかった
「フレンって騎士、いないじゃない」
「リア達はなんも聞いてねえのか?」
「うん・・・特には」
「何か急用でも出来たんじゃない?」
「かもな・・・」
フレンに限って連絡なしで、と言うのは珍しい事で私もユーリも兄さんもアスラも顔を見合わせていた
「じゃあエステルもリア達も、このままボク等に着いてくる?」
「そうですね、そうしても良いです?」
「勝手をされては困ります。エステリーゼ様には帝都にお戻り頂かないと」
そう話しているとアレクセイとクロームがエステルの元へとやって来た
「フレンは別の用件があり既に旅立った」
「じゃあ、俺達の仕事も終わりって事だな」
「そう言う事になる。さて、リタ・モルディオ」
そう告げるとアレクセイはリタの方へ歩き出した
「君には昨日の魔導器の暴走の調査を依頼したい」
「・・・あれ調べるのもう無理。あの子、今朝少し見たけど結局何も解らなかったわ」
「いや、ケーブ・モック大森林に行ってもらいたい」
「・・・ケーブ・モック大森林か。暴走に巻き込まれた植物の感じ、あの森にそっくりだったかも」
「最近、森の木々に異常や魔物の大量発生、それに凶暴化が報告されている」
「それなら俺達情報屋の間でも噂になってるな」
「ええ。異常現象であの辺りは近付けないって」
「君達の言う通りだ。今、帝都に使者を送っているのだが、優秀な魔導士の派遣にはまだまだ時間を要する」
「あたしの専門は魔導器。植物は管轄外なんだけど?」
「エアル関連と考えれば、管轄外でもないはずだ」
「それに・・・あたしは・・・エステルが戻るなら、一緒に帝都に行きたい」
「「え?」」
リタのその言葉に私もエステルも驚き顔を見合わせ、エステルは周りを見て最後にリタを見た
「君は帝都直属の魔導器研究所の研究員だ。我々からの仕事を請け負うのは君達の義務だ」
リタはどうするべきか迷っているとエステルがリタの元へ走って行き、一緒に行けば問題ないですよねと言うとアレクセイは困った顔をして言葉を続けた
「姫様、あまり無理をおっしゃらないで頂きたい」
「エアルが関係しているのなら、私の治癒術も役に立つはずです」
「それは、確かに・・・」
「お願いです、アレクセイ! 私にも手伝わせて下さい」
「しかし、危険な大森林に姫様を行かせる訳には・・・」
「それなら・・・ユーリ、一緒に行きませんか?」
「え? オレが?」
「ユーリが一緒なら構いませんよね?」
アレクセイは暫く目を瞑って考えユーリに視線を向けた
「青年、姫様の護衛をお願いする。一度は騎士団の門を叩いた君を見込んでの頼みだ」
「・・・何でもかんでも勝手に見込んで押し付けやがって」
「その返答は承諾と受け取っても構わないようだな」
「ただし、オレにも用事がある。森に行くのはダングレストの後だ」
「致し方あるまい」
そう言ってアレクセイはクロームと歩いて行き私達から少し距離を取ると何か話しをしていた
すると急にフレンの名前が聞こえ私達はアレクセイに目を向けた
「フレンがどうかしたんですか?」
「『エステリーゼ様とリアを頼む』、フレンからの伝言だ」
その伝言を聞くとエステルはアレクセイの前に行き深くお辞儀をした
「良し! じゃあ、ダングレストの街経由でケーブ・モック大森林だね!」
カロルの言葉に私達は頷きそのまま街の外へと歩き出した
「・・・?」
だけど、一瞬妙な視線を感じ足を止め振り返ったが、その気配はなくなっていた
「・・・・!」
そう思っていると急に頭の上に何かが乗り顔を上げるとユーリが私の頭の上に手を乗せていた
「何してんだ、行くぞ」
「あ、うん」
私はその妙な視線の事を気にせず、そのままユーリとラピードと一緒にカロル達の後を追った
続く
あとがき
結構長く書けちゃったか?
此処、削ろうにも削れない所ですからね・・・
さて、エステルとリアちゃんとセイ兄ちゃんが魔導器を使ってない、と言う事がカロル以外にバレましたが、話の途中で例の竜使いが登場
今回はカルボクラムで会わせてないからどう書こうか悩んだけど、とりあえず悩むシーンはカットせず増やした感じで・・・
後はデュークとの会話もちょっと換えてみました
今後の会話も増やせたらなぁ~とか思ってますww
さ、次はダングレストだ!
頑張って書くぞ!
2009.11.26