水道魔導器奪還編
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やっと此処まで着く事が出来た
ユーリは魔刻泥棒の黒幕の足取りを追って、エステルはフレンを追って、カロルはギルドの仲間と想い人を追って・・・
私もユーリと同じく魔刻の事が気になるんだけど、本当はこの街に用事があった
ある人と会う為と、そしてこの街のある情報を集める為に・・・
15.再会
「・・・何か急に天気が変わったな」
カプワ・ノールは真っ黒な雲に覆われ、冷たい雨が大量に降り注いでいた
既にびしょ濡れになってしまった私達は特に走って雨宿りをするでもなく、街を見ているとエステルがボーと何処かを見ていた
「エステル?」
「あ、その、港町というのはもっと活気のある場所だと思っていました・・・」
「確かに、想像してたのと全然違うな・・・」
「でも、あんたが探してる魔刻ドロボウがいそうな感じよ」
エステルの言う通り、普通港町というのは賑わいや活気があり栄えている所だ
だがこの街は何処か陰鬱な雰囲気に包まれていた
「まぁ、こんな雰囲気になってるのはしょうがないんじゃないの?」
「どういう事だ?」
アスラの溜息混じりの言葉にこの街を初めて訪れるユーリ達は疑問を抱いた
「この街は今厄介な事になってるのよ」
「厄介な事?」
「うん。ノール港はさあ、帝国の圧力が・・・」
「金の用意が出来ない時は、お前等のガキがどうなるか良く解ってるよな?」
カロルが説明をしようとしていると、その言葉を遮るかのように男の語気を荒々しい声が聞こえ、私達はその声が聞こえた方を見た
一軒の民家の近く、帝国の役人であろう人が夫婦に詰め寄っていた
「お役人様!! どうか、それだけは! 息子だけは・・・返して下さい! この数ヶ月もの間、天候が悪くて船も出せません! 税金を払える状況でない事はお役人様もご存知でしょう?」
「ならば、早くリブガロって魔物を捕まえて来い」
「そうそう、あいつのツノを売れば一生分の税金を納められるぜ。前もそう言ったろう?」
夫婦は地面に座り土下座をして頭を深く下げているが役人達は嘲るように夫婦を笑い、そのまま立ち去ってしまった
「何、あの野蛮人」
「リア、カロル、今のがノール港の厄介の種か?」
「うん、このカプワ・ノールは帝国の威光が物凄く強いんだ」
「特に最近来た執政官は帝国でも結構な地位でやりたい放題なんだよ」
「悪い噂ばっかりで良い噂なんて一つもないわ・・・」
「その部下の役人が横暴な真似をしても、誰も文句が言えないって事ね」
『民衆の為』と言いつつ、自分達の理屈を並べて好き勝手にやっている帝国や役人達
それは何処に行っても同じだと世界中旅をして良く解った
その原因の一つは今現在、王位の座が空いているからだろう
王がいないから何をやっても良いと思っているのだろう
下町育ちの私とユーリはこの夫婦の様な光景を何度も見て来た
下町でも同じ様な光景が今でも見られる・・・
そんな事がない世の中にしようと思いユーリとフレンは騎士団に入り、国を変えようとしていたが、ユーリは騎士団のやり方が気に食わないと言って辞めてしまった
ふと目を夫婦に戻すと、旦那さんが立ち上がり街の外へ向かって歩き出そうとした
「もうやめて、ティグル! その怪我では・・・今度こそ貴方が死んじゃう!」
「だからって、俺が行かないとうちの子はどうなるんだ、ケラス!」
雲行きが怪しくなって来た所で、ユーリが数歩前に進んだ
何をするのかと思い見ていると急に走り出した旦那さんの足を自分の足で引っ掛けて転ばせた
傍から見れば何でそんな乱暴な止め方を・・・と思うかもしれないが賢明な判断だと思う
あんな風に思い詰めた顔をした人に普通に声を掛けて止めたとしても聞く耳を持たないだろう
勿論転ばされた旦那さんはむっとした顔でユーリを睨んだ
「痛っ・・・。あんた、何すんだ!」
「あ、悪ぃ、ひっかかっちまった」
然程悪いとは思っていない声音で謝罪し、エステルが転んでしまった旦那さんの足を治癒術で手早く治す
「あ、あの・・・私達、払える治療費が・・・」
「その前に言う事あんだろ」
「え・・・?」
「まったく、金と一緒に常識まで絞り取られてんのか」
粗雑な物言いだがユーリの言う通りだ
まぁあんなに取り乱していたのだから常識も飛んでしまうのかもしれないが、ユーリはとりあえず落ち着け、という意味も込めて言ったのだろう
「・・・ご、ごめんなさい。有り難う御座います」
奥さんは一度頭を下げ、それから旦那さんを起すのを手伝った
エステルのお陰で旦那さんは傷一つ残っていなかった
ホッと一息吐くと、少し先の路地から監視されている気配がした
みんなに気付かれないようちらりと見ると、あの赤眼の男が私達の様子を見て直ぐにその路地へと入って行った
「・・・・」
その気配をユーリも感じたようで私と同じようにそこを見ていて、そのまま気配を消してひっそりとエステル達から離れ一人で裏路地へ入って行った
ユーリがこうやって離れる時は自分一人で背負って他の人を巻き込まない様にしている為だった
「・・・アスラ」
「うん・・・」
ユーリの性格を解っている私とアスラはユーリと同じく気配を消してエステル達から離れ、人気のない路地裏に入った
更に気配を消し裏路地の隅に入りユーリがいる場所に目を向け様子を窺った
ユーリが路地裏の中程まで入り足を止めると二、三の黒い影が屋根から飛び降り、塀に着地するとユーリは手早く剣を構える
敵のうちの一人が塀から飛び降り、剣を押し付けるようにして斬り掛かって来たがユーリはそれを受け止める
ばちっと火花が飛んでユーリは力任せに敵を押し退けた
そして残りの二人も塀から飛び降りて来て剣を振るい、一気に相手を斬り付け距離を取る
紙一重の差で交わし後退ると、水溜りに溜まっていた水が大量に跳ねて服を濡らした
左足を思いっきり地面に押し付け、反動を利用して敵の一人に斬り付けると、黒い服が破けてそこから鮮血が噴出した
水溜りの中に碌に受身も取れずに倒れた身体は、暫く動けないだろう
(後、二人・・・!)
だが既に残りの二人は先程と同じく壁を蹴り、空中で体勢を整えユーリに斬り掛かろうとしていた
(ユーリ!!)
ユーリの今の体勢で同時にあの攻撃を受け止めるのは難しい
そう思い駆け出そうとしていると目の前を青いものが通り過ぎ、簡単に伏兵二人を斬り払い、伏兵達は後方に何メートルか飛んで尻餅を付いていた
「・・・え?」
「あれは・・・」
伏兵達を退けた人物の後姿を見て、私とアスラは一瞬固まった
雨に濡れた金色の髪、青が特徴的な鎧姿、そして綺麗に微笑む顔、その人物は私とアスラとユーリが良く見知った人物だった
「大丈夫か、ユーリ?」
「フレン! おまっ・・・それ、オレのセリフだろ」
フレンはゆっくりと振り返り左手をユーリに差し出した
「まったく、探したぞ」
「それもオレのセリフだ!」
そう言っている間に、フレンが尻餅を付かせた伏兵が立ち上ったのを確認するとユーリは一閃の光を浴びせる
そして奥で倒れていた伏兵も起き上がり、ユーリとフレンに向かって来て数回剣を交わらせ押し退けると、後ろで倒れていた伏兵が壁を伝いユーリとフレンの前に降り立った
そしてユーリとフレンは同時に技を伏兵にお見舞いし、伏兵は後ろの木箱に身を預ける形になり、ぶつかると崩れた木箱の破片が落ちてくる
「お見事・・・」
アスラは伏兵達が動かなくなった気配を感じ小声で褒めると私達は肩から力を抜いた
「ふぅ・・・マジで焦ったぜ・・・」
「さて・・・」
「「「!」」」
ユーリは剣を肩に担ぎ、大量に水を含んで頬に張り付いた髪の毛を払っているとフレンが無表情のまま剣を振り翳した
「ちょ、おまっ、何しやがる!」
「ユーリが結界の外へ旅立ってくれた事は嬉しく思っている」
「なら、もっと喜べよ。剣なんか振り回さないで!」
ユーリの言葉にフレンが言葉を発そうとすると頭部からユーリとフレンが剣を交えているタイミングを狙っていたかのようにまた新たな伏兵が数名現れた
「「!」」
二人は急いで構えようとしたが一瞬にして伏兵は倒れた
「「なっ!!」」
ユーリとフレンは何が起こったか解らないでいると二人の前に意外な人物が現れた
「二人共、大丈夫?」
「「リア!」」
「二人共、ちょっと油断しすぎだよ」
「アスラまで・・・」
いきなりの私とアスラの登場に驚きを隠せない二人
「お前等、いつから・・・」
「最初からだけど」
「気配消してたな・・・」
ユーリと話しをしているとユーリの隣にいたフレンの視線に気付きフレンを見た
「久しぶり、フレン。元気そうで良かった」
「・・・リア。本当に、君なのかい?」
「ええ。1年振りね」
「ああ・・・」
私が微笑むとフレンは表情を和らげた
ユーリは二人の様子を見ていると壁に貼ってあるモノに目が止まった
「お、10000ガルドに上がった。やりぃ」
その言葉を聞いて私もアスラもユーリが見ている紙を見た
そこにはあのヘタクソな絵の手配書が貼ってあった
そしてユーリが言っていた通り賞金は『10000ガルド』に上がっていた
成る程、それでフレンの機嫌が悪かったのか、と納得しているとフレンはユーリを睨み付けた
「騎士団を辞めたのは、犯罪者になる為ではないだろう」
「色々事情が遭ったんだよ」
「事情が遭ったとしても罪は罪だ」
「ったく、相変わらず、頭の固い奴だな・・・あっ」
ユーリが踵を返し路地裏を出ようとしていると路地の入り口からピンク色の髪の毛が見えた
「ユーリ、さっきそこで何か事件が遭ったようですけど・・・っ」
その声と姿はエステルだった
「丁度良い所に」
「・・・フレン!」
エステルはフレンの姿を認めた途端、フレンに向かって走り出した
そしてその勢いのままフレンに飛びつき、ぎゅ、と抱きついた
「え・・・」
急な出来事にフレンも、そしてフレンの隣にいた私とアスラも呆気に取られた
「良かった、フレン。無事だったんですね? ケガとかしてませんか?」
「・・・してませんから、その、エステリーゼ様・・・」
「あ、ご、ごめんなさい。わたし、嬉しくて、つい・・・」
エステルは慌ててフレンから離れたものの、勢いでやってしまった事に少し頬を赤く染めた
そしてその様子を隣でずっと見ていた私も赤くなってしまい、二人の世界に入った二人を見て居心地が悪くなりおずおずとユーリの所へ行った
「・・・お前、顔赤いぞ」
「え///! や、だって・・・」
「まああんなの近くで見せられたら誰だってそうなるよね」
アスラは苦笑しながらフレンとエステルを見ると相変わらずフレンは呆気に取られ困っており、エステルは嬉しそうにしていた
いくら心配していたとはいえ、流石にあの雰囲気の中、フレンに駆け寄って行き抱き付いたのには驚いた
エステルって意外に行動派だったんだ、と思っているとフレンが騎士らしくエステルの手を引いて路地裏から出て行こうとしていた
が、何を思ったのか私の前で立ち止まり空いてる手で私の手を取った
「リア、君にも来てもらうよ」
「え? ちょ、ちょっとフレン!?」
「あ、おいっ!」
そのままエステルと一緒に引っ張られ、ユーリも呆気に取られフレンに声を掛けていたが、フレンはそのまま私とエステルの手を引いて裏路地を後にした
「どうぞ、こちらです」
状況が掴めないまま私はフレンに手を引かれエステルと一緒に騎士団が泊まっている宿の一室に通された
部屋に入るとフレンと似た鎧を着た猫目で泣き黒子がある茶髪の女性と、カロルと同じ位の年頃の白いローブを着た、自分の背位もある杖を持った男の子がいた
二人はフレンに気付くと敬礼をして女性がフレンとエステルの元へ来た
「エステリーゼ様。ご無事で何よりです」
「心配をおかけしました」
女性の言葉にエステルは申し訳なさそうな顔をした
そしてエステルの隣にいる私を見て訝しげな顔をし、男の子がフレンに聞いた
「フレン様、こちらの方は・・・?」
「ああ、彼女はボ・・・私の親友のリアだ」
「初めまして、リア・ルーティアです」
「・・・ルーティア?」
「?」
フレンに紹介されお辞儀をすると女性と男の子は私の名前に疑問を持ち、フレンに視線を向ける
「フレン様、あの、こちら方はもしかして・・・」
「その通りだよ」
「えっと、フレン・・?」
「紹介するよ、」
二人の言葉の意味が解らずにフレンを見ると、フレンは小さく笑って二人の紹介をしてくれた
女性の方はソディアさんと言ってフレンの部下で、男の子はウィチル君と言ってリタと同じくアスピオの研究者でリタが断ったと言う帝国の協力要請に同行している魔導士らしい
各々紹介が終わるとフレンはウィチル君に合図を出し、ウィチル君は部屋を出て行った
「あの、フレン。どうしてリアまで連れて来たんです?」
それは等の本人である私も疑問に思っていた事だった
エステルを連れて来たのは解るが、何故私まで? と思っているとフレンは軽く笑うとソファに座らせてくれた
「会わせたい人がいるんですよ」
「会わせたい人、ですか?」
「はい」
エステルの疑問に笑顔で答えていると先程部屋を出たウィチル君がある人物を連れて戻って来た
「遅かったな、リア」
私はその人物を見るとソファから思いっきり立ち上がってしまった
「に、兄さん!!」
「え!?」
私の言葉にエステルは驚き目の前にいる兄さんと私を見比べた
「何で此処にいるの?」
「ノール港で待ってるって言っただろ」
「それは知ってるけど、でも何でフレンと一緒に?」
「この街に来て宿に泊まった時に偶然会ってね」
「それからちょっとだけフレンの仕事の手伝いをしてたって訳だ」
兄さんとフレンから事情を聞き私は納得していると一人状況が掴めないでいるエステルと目が合った
「えっと・・・」
「ああ、ごめんね。この人は私の兄の」
「セイ・ルーティアです。初めまして、エステリーゼ様」
「あ、エステリーゼです。初めまして」
兄さんが挨拶するとエステルもお辞儀をしてお互いに握手をした
そして兄さんはフレンの隣に座り私とエステルも座ると、フレンと兄さんは私達を見た
「これで全員揃ったね。さて、リア、エステリーゼ様。これまでの事を詳しく話して頂けますか」
フレンの顔はいつも以上に真剣な表情で、でも少し心配した顔をしていた
隣にいるエステルを見るとエステルが私を見ていたので私は優しく微笑み頷くとエステルも安心し頷いた
「・・・解りました」
そしてエステルは意を決し私と一緒に今までの事を話した
話しが終わった時には既に日付が変わっていた
続く
あとがき
ノール港、突入!!
そして、フレンとセイ兄ちゃんの登場です!!
追加されたセリフも足したけど、戦闘シーンは若干箱版と変わってるとこがあったから書くの結構大変でしたι
え? PS3版なのに、パティが出てない?
いやぁ、流れ的に出せなかったので・・・ι
でもパティの登場はまだ先ですから!
さ、次回は幼馴染み達を思いっきり絡ませたいと思いますvv
前より絡み増やせたらいいな・・・
では!
2009.10.12
ユーリは魔刻泥棒の黒幕の足取りを追って、エステルはフレンを追って、カロルはギルドの仲間と想い人を追って・・・
私もユーリと同じく魔刻の事が気になるんだけど、本当はこの街に用事があった
ある人と会う為と、そしてこの街のある情報を集める為に・・・
15.再会
「・・・何か急に天気が変わったな」
カプワ・ノールは真っ黒な雲に覆われ、冷たい雨が大量に降り注いでいた
既にびしょ濡れになってしまった私達は特に走って雨宿りをするでもなく、街を見ているとエステルがボーと何処かを見ていた
「エステル?」
「あ、その、港町というのはもっと活気のある場所だと思っていました・・・」
「確かに、想像してたのと全然違うな・・・」
「でも、あんたが探してる魔刻ドロボウがいそうな感じよ」
エステルの言う通り、普通港町というのは賑わいや活気があり栄えている所だ
だがこの街は何処か陰鬱な雰囲気に包まれていた
「まぁ、こんな雰囲気になってるのはしょうがないんじゃないの?」
「どういう事だ?」
アスラの溜息混じりの言葉にこの街を初めて訪れるユーリ達は疑問を抱いた
「この街は今厄介な事になってるのよ」
「厄介な事?」
「うん。ノール港はさあ、帝国の圧力が・・・」
「金の用意が出来ない時は、お前等のガキがどうなるか良く解ってるよな?」
カロルが説明をしようとしていると、その言葉を遮るかのように男の語気を荒々しい声が聞こえ、私達はその声が聞こえた方を見た
一軒の民家の近く、帝国の役人であろう人が夫婦に詰め寄っていた
「お役人様!! どうか、それだけは! 息子だけは・・・返して下さい! この数ヶ月もの間、天候が悪くて船も出せません! 税金を払える状況でない事はお役人様もご存知でしょう?」
「ならば、早くリブガロって魔物を捕まえて来い」
「そうそう、あいつのツノを売れば一生分の税金を納められるぜ。前もそう言ったろう?」
夫婦は地面に座り土下座をして頭を深く下げているが役人達は嘲るように夫婦を笑い、そのまま立ち去ってしまった
「何、あの野蛮人」
「リア、カロル、今のがノール港の厄介の種か?」
「うん、このカプワ・ノールは帝国の威光が物凄く強いんだ」
「特に最近来た執政官は帝国でも結構な地位でやりたい放題なんだよ」
「悪い噂ばっかりで良い噂なんて一つもないわ・・・」
「その部下の役人が横暴な真似をしても、誰も文句が言えないって事ね」
『民衆の為』と言いつつ、自分達の理屈を並べて好き勝手にやっている帝国や役人達
それは何処に行っても同じだと世界中旅をして良く解った
その原因の一つは今現在、王位の座が空いているからだろう
王がいないから何をやっても良いと思っているのだろう
下町育ちの私とユーリはこの夫婦の様な光景を何度も見て来た
下町でも同じ様な光景が今でも見られる・・・
そんな事がない世の中にしようと思いユーリとフレンは騎士団に入り、国を変えようとしていたが、ユーリは騎士団のやり方が気に食わないと言って辞めてしまった
ふと目を夫婦に戻すと、旦那さんが立ち上がり街の外へ向かって歩き出そうとした
「もうやめて、ティグル! その怪我では・・・今度こそ貴方が死んじゃう!」
「だからって、俺が行かないとうちの子はどうなるんだ、ケラス!」
雲行きが怪しくなって来た所で、ユーリが数歩前に進んだ
何をするのかと思い見ていると急に走り出した旦那さんの足を自分の足で引っ掛けて転ばせた
傍から見れば何でそんな乱暴な止め方を・・・と思うかもしれないが賢明な判断だと思う
あんな風に思い詰めた顔をした人に普通に声を掛けて止めたとしても聞く耳を持たないだろう
勿論転ばされた旦那さんはむっとした顔でユーリを睨んだ
「痛っ・・・。あんた、何すんだ!」
「あ、悪ぃ、ひっかかっちまった」
然程悪いとは思っていない声音で謝罪し、エステルが転んでしまった旦那さんの足を治癒術で手早く治す
「あ、あの・・・私達、払える治療費が・・・」
「その前に言う事あんだろ」
「え・・・?」
「まったく、金と一緒に常識まで絞り取られてんのか」
粗雑な物言いだがユーリの言う通りだ
まぁあんなに取り乱していたのだから常識も飛んでしまうのかもしれないが、ユーリはとりあえず落ち着け、という意味も込めて言ったのだろう
「・・・ご、ごめんなさい。有り難う御座います」
奥さんは一度頭を下げ、それから旦那さんを起すのを手伝った
エステルのお陰で旦那さんは傷一つ残っていなかった
ホッと一息吐くと、少し先の路地から監視されている気配がした
みんなに気付かれないようちらりと見ると、あの赤眼の男が私達の様子を見て直ぐにその路地へと入って行った
「・・・・」
その気配をユーリも感じたようで私と同じようにそこを見ていて、そのまま気配を消してひっそりとエステル達から離れ一人で裏路地へ入って行った
ユーリがこうやって離れる時は自分一人で背負って他の人を巻き込まない様にしている為だった
「・・・アスラ」
「うん・・・」
ユーリの性格を解っている私とアスラはユーリと同じく気配を消してエステル達から離れ、人気のない路地裏に入った
更に気配を消し裏路地の隅に入りユーリがいる場所に目を向け様子を窺った
ユーリが路地裏の中程まで入り足を止めると二、三の黒い影が屋根から飛び降り、塀に着地するとユーリは手早く剣を構える
敵のうちの一人が塀から飛び降り、剣を押し付けるようにして斬り掛かって来たがユーリはそれを受け止める
ばちっと火花が飛んでユーリは力任せに敵を押し退けた
そして残りの二人も塀から飛び降りて来て剣を振るい、一気に相手を斬り付け距離を取る
紙一重の差で交わし後退ると、水溜りに溜まっていた水が大量に跳ねて服を濡らした
左足を思いっきり地面に押し付け、反動を利用して敵の一人に斬り付けると、黒い服が破けてそこから鮮血が噴出した
水溜りの中に碌に受身も取れずに倒れた身体は、暫く動けないだろう
(後、二人・・・!)
だが既に残りの二人は先程と同じく壁を蹴り、空中で体勢を整えユーリに斬り掛かろうとしていた
(ユーリ!!)
ユーリの今の体勢で同時にあの攻撃を受け止めるのは難しい
そう思い駆け出そうとしていると目の前を青いものが通り過ぎ、簡単に伏兵二人を斬り払い、伏兵達は後方に何メートルか飛んで尻餅を付いていた
「・・・え?」
「あれは・・・」
伏兵達を退けた人物の後姿を見て、私とアスラは一瞬固まった
雨に濡れた金色の髪、青が特徴的な鎧姿、そして綺麗に微笑む顔、その人物は私とアスラとユーリが良く見知った人物だった
「大丈夫か、ユーリ?」
「フレン! おまっ・・・それ、オレのセリフだろ」
フレンはゆっくりと振り返り左手をユーリに差し出した
「まったく、探したぞ」
「それもオレのセリフだ!」
そう言っている間に、フレンが尻餅を付かせた伏兵が立ち上ったのを確認するとユーリは一閃の光を浴びせる
そして奥で倒れていた伏兵も起き上がり、ユーリとフレンに向かって来て数回剣を交わらせ押し退けると、後ろで倒れていた伏兵が壁を伝いユーリとフレンの前に降り立った
そしてユーリとフレンは同時に技を伏兵にお見舞いし、伏兵は後ろの木箱に身を預ける形になり、ぶつかると崩れた木箱の破片が落ちてくる
「お見事・・・」
アスラは伏兵達が動かなくなった気配を感じ小声で褒めると私達は肩から力を抜いた
「ふぅ・・・マジで焦ったぜ・・・」
「さて・・・」
「「「!」」」
ユーリは剣を肩に担ぎ、大量に水を含んで頬に張り付いた髪の毛を払っているとフレンが無表情のまま剣を振り翳した
「ちょ、おまっ、何しやがる!」
「ユーリが結界の外へ旅立ってくれた事は嬉しく思っている」
「なら、もっと喜べよ。剣なんか振り回さないで!」
ユーリの言葉にフレンが言葉を発そうとすると頭部からユーリとフレンが剣を交えているタイミングを狙っていたかのようにまた新たな伏兵が数名現れた
「「!」」
二人は急いで構えようとしたが一瞬にして伏兵は倒れた
「「なっ!!」」
ユーリとフレンは何が起こったか解らないでいると二人の前に意外な人物が現れた
「二人共、大丈夫?」
「「リア!」」
「二人共、ちょっと油断しすぎだよ」
「アスラまで・・・」
いきなりの私とアスラの登場に驚きを隠せない二人
「お前等、いつから・・・」
「最初からだけど」
「気配消してたな・・・」
ユーリと話しをしているとユーリの隣にいたフレンの視線に気付きフレンを見た
「久しぶり、フレン。元気そうで良かった」
「・・・リア。本当に、君なのかい?」
「ええ。1年振りね」
「ああ・・・」
私が微笑むとフレンは表情を和らげた
ユーリは二人の様子を見ていると壁に貼ってあるモノに目が止まった
「お、10000ガルドに上がった。やりぃ」
その言葉を聞いて私もアスラもユーリが見ている紙を見た
そこにはあのヘタクソな絵の手配書が貼ってあった
そしてユーリが言っていた通り賞金は『10000ガルド』に上がっていた
成る程、それでフレンの機嫌が悪かったのか、と納得しているとフレンはユーリを睨み付けた
「騎士団を辞めたのは、犯罪者になる為ではないだろう」
「色々事情が遭ったんだよ」
「事情が遭ったとしても罪は罪だ」
「ったく、相変わらず、頭の固い奴だな・・・あっ」
ユーリが踵を返し路地裏を出ようとしていると路地の入り口からピンク色の髪の毛が見えた
「ユーリ、さっきそこで何か事件が遭ったようですけど・・・っ」
その声と姿はエステルだった
「丁度良い所に」
「・・・フレン!」
エステルはフレンの姿を認めた途端、フレンに向かって走り出した
そしてその勢いのままフレンに飛びつき、ぎゅ、と抱きついた
「え・・・」
急な出来事にフレンも、そしてフレンの隣にいた私とアスラも呆気に取られた
「良かった、フレン。無事だったんですね? ケガとかしてませんか?」
「・・・してませんから、その、エステリーゼ様・・・」
「あ、ご、ごめんなさい。わたし、嬉しくて、つい・・・」
エステルは慌ててフレンから離れたものの、勢いでやってしまった事に少し頬を赤く染めた
そしてその様子を隣でずっと見ていた私も赤くなってしまい、二人の世界に入った二人を見て居心地が悪くなりおずおずとユーリの所へ行った
「・・・お前、顔赤いぞ」
「え///! や、だって・・・」
「まああんなの近くで見せられたら誰だってそうなるよね」
アスラは苦笑しながらフレンとエステルを見ると相変わらずフレンは呆気に取られ困っており、エステルは嬉しそうにしていた
いくら心配していたとはいえ、流石にあの雰囲気の中、フレンに駆け寄って行き抱き付いたのには驚いた
エステルって意外に行動派だったんだ、と思っているとフレンが騎士らしくエステルの手を引いて路地裏から出て行こうとしていた
が、何を思ったのか私の前で立ち止まり空いてる手で私の手を取った
「リア、君にも来てもらうよ」
「え? ちょ、ちょっとフレン!?」
「あ、おいっ!」
そのままエステルと一緒に引っ張られ、ユーリも呆気に取られフレンに声を掛けていたが、フレンはそのまま私とエステルの手を引いて裏路地を後にした
「どうぞ、こちらです」
状況が掴めないまま私はフレンに手を引かれエステルと一緒に騎士団が泊まっている宿の一室に通された
部屋に入るとフレンと似た鎧を着た猫目で泣き黒子がある茶髪の女性と、カロルと同じ位の年頃の白いローブを着た、自分の背位もある杖を持った男の子がいた
二人はフレンに気付くと敬礼をして女性がフレンとエステルの元へ来た
「エステリーゼ様。ご無事で何よりです」
「心配をおかけしました」
女性の言葉にエステルは申し訳なさそうな顔をした
そしてエステルの隣にいる私を見て訝しげな顔をし、男の子がフレンに聞いた
「フレン様、こちらの方は・・・?」
「ああ、彼女はボ・・・私の親友のリアだ」
「初めまして、リア・ルーティアです」
「・・・ルーティア?」
「?」
フレンに紹介されお辞儀をすると女性と男の子は私の名前に疑問を持ち、フレンに視線を向ける
「フレン様、あの、こちら方はもしかして・・・」
「その通りだよ」
「えっと、フレン・・?」
「紹介するよ、」
二人の言葉の意味が解らずにフレンを見ると、フレンは小さく笑って二人の紹介をしてくれた
女性の方はソディアさんと言ってフレンの部下で、男の子はウィチル君と言ってリタと同じくアスピオの研究者でリタが断ったと言う帝国の協力要請に同行している魔導士らしい
各々紹介が終わるとフレンはウィチル君に合図を出し、ウィチル君は部屋を出て行った
「あの、フレン。どうしてリアまで連れて来たんです?」
それは等の本人である私も疑問に思っていた事だった
エステルを連れて来たのは解るが、何故私まで? と思っているとフレンは軽く笑うとソファに座らせてくれた
「会わせたい人がいるんですよ」
「会わせたい人、ですか?」
「はい」
エステルの疑問に笑顔で答えていると先程部屋を出たウィチル君がある人物を連れて戻って来た
「遅かったな、リア」
私はその人物を見るとソファから思いっきり立ち上がってしまった
「に、兄さん!!」
「え!?」
私の言葉にエステルは驚き目の前にいる兄さんと私を見比べた
「何で此処にいるの?」
「ノール港で待ってるって言っただろ」
「それは知ってるけど、でも何でフレンと一緒に?」
「この街に来て宿に泊まった時に偶然会ってね」
「それからちょっとだけフレンの仕事の手伝いをしてたって訳だ」
兄さんとフレンから事情を聞き私は納得していると一人状況が掴めないでいるエステルと目が合った
「えっと・・・」
「ああ、ごめんね。この人は私の兄の」
「セイ・ルーティアです。初めまして、エステリーゼ様」
「あ、エステリーゼです。初めまして」
兄さんが挨拶するとエステルもお辞儀をしてお互いに握手をした
そして兄さんはフレンの隣に座り私とエステルも座ると、フレンと兄さんは私達を見た
「これで全員揃ったね。さて、リア、エステリーゼ様。これまでの事を詳しく話して頂けますか」
フレンの顔はいつも以上に真剣な表情で、でも少し心配した顔をしていた
隣にいるエステルを見るとエステルが私を見ていたので私は優しく微笑み頷くとエステルも安心し頷いた
「・・・解りました」
そしてエステルは意を決し私と一緒に今までの事を話した
話しが終わった時には既に日付が変わっていた
続く
あとがき
ノール港、突入!!
そして、フレンとセイ兄ちゃんの登場です!!
追加されたセリフも足したけど、戦闘シーンは若干箱版と変わってるとこがあったから書くの結構大変でしたι
え? PS3版なのに、パティが出てない?
いやぁ、流れ的に出せなかったので・・・ι
でもパティの登場はまだ先ですから!
さ、次回は幼馴染み達を思いっきり絡ませたいと思いますvv
前より絡み増やせたらいいな・・・
では!
2009.10.12