星喰み編
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光に包まれ、地を踏む感覚を感じ私はゆっくりと目を開いた
「・・・送ってくれてありがとう」
まだ微かに光っている魔刻に触れ、お礼を言うとその光は徐々に消えていき辺りは元の景色に戻った
「・・・今のは?」
「リア、何ともないか?」
ふと声が聞こえ振り返るとフキにそう尋ねられ頷いた
「うん、大丈夫。じゃあ行こう」
「え? リア、此処に用が遭ったんじゃ・・」
「もう済んだよ。さ、行こう。ユーリやフレン、みんなが待ってるよ」
「「あ、ああ・・・」」「う、うん・・・」
ニコリと笑って言うと私はそのまま踵を返して来た道を戻り出した
「・・・リア、何か機嫌良くなってたね」
「ああ。何が遭ったんだ?」
「さあな・・・。けど、あの様子じゃもう心配いらないんじゃないか」
セイはいつも通りの笑顔を見せたリアを見てそう思いアスラとフキに声を掛け顔を見合わせ微笑んだ
「そうだね。もう大丈夫みたいだし」
「そろそろ行かないと逆に心配されるな」
「ああ。じゃ、行くか」
色々と気になる事があるが、リアがいつも通りになったのを見て安堵したのかセイ達も遅れてリアの後を追った
120.silent DESIRE
「あ、ユーリ、フレン、みんな」
元居た場所でみんなを待っていると解除を終え戻って来たみんなに声を掛けた
「お疲れ様。大変じゃなかった?」
「ううん、リタとパティのお陰で直ぐに終わったよ」
「うちとリタ姐に掛かればこのくらい鯨を釣るのと同じくらい簡単なのじゃ」
「その例え、良く分かんないんだけど・・・ι まあでもこれであいつの所に行けるわ」
「やっと登らなくて済むのね」
そう言ってみんな昇降機の方へ移動を始めた
「ユーリ、フレン」
「「?」」
「ごめんね、遠くまで行かせちゃって」
二人に駆け寄ってそう言うとユーリとフレンは一瞬驚いた顔をした
「あ、いや、別に・・・」
「ユーリもフレンもみんなも、怪我してなくて良かった」
「あ、ああ、リアもね」
「うん。じゃ、ラピード、行こうか」
「ワン!」
二人に微笑んでそう言いラピードと一緒に先に歩き出した
「・・・セイ、リアのやつ、どうしたんだ?」
「なんだか妙に機嫌が良いみたいだが・・・」
「悪い、俺にも良く解らねえ・・・」
ついさっき別れるまで挙動不審のようにユーリとフレンを避けてた
数十分しか経っていないはずなのに、リアはいつものように自分達に接して来ていた
「リアが寄りたい所があるって言ってそこに行って気が付いたらああなってたんだよね・・」
「「「「「「・・・・・」」」」」」
そしてユーリ達はまたじっとリアを見つめた
「? ん、なに? どうかした?」
急に視線を感じ振り返るとユーリ達がじっと見ていてきょとんとして首を傾げた
「いや、なんもねえよ」
「そう? じゃ、早く行こう。遅いとみんなから文句言われるよ」
「ああ」
「「・・・・」」
「ま、いつも通りのリアに戻って良かったんじゃないか」
「「・・そうだな」」
フキの言葉にユーリとフレンは少し安堵した顔をして、リアの後を追った
*
「あの階段は・・・」
昇降機から降りると、長い長い階段が見えた
「どうやらこの上が頂上みたいですね」
「うん・・・」
ユーリは私達に視線を向け、一通り見て口を開いた
「此処が正念場だな。みんな、覚悟は良いか?」
「とっくに出来てるわよ」
「うん。ボク達がやらなちゃいけないんだもん」
「此処で逃げたら、今晩の食事が不味くなるのじゃ」
「そゆこと。おっさんも流石に頑張っちゃうよ」
「わたし達を信じて待っている人達の為にも必ず星喰みを倒します!」
「俺達もみんなも安心して暮らせるようにな」
「フェローやベリウス・・・始祖の隷長達の想いの為にも、ね」
「ボク達も覚悟は出来てるよ」
「ワン!」
そして私、ユーリ、フレン、兄さんは顔を見合わせ小さく頷いた
「行こう」
私達は長い階段を見つめて想いを固めユーリを先頭に歩き出し、階段を上りだした
長い階段を登ると、タルカロン上層部に着いた
そして数十メートル先に、大きな術式を展開して背を向けている銀髪の青年に目が止まる
「・・・デューク・・・」
私達はゆっくりとデュークの近くに歩み寄って行くと、デュークはちらりと私達を見た
「デューク! オレ達は四属性の精霊を得た。精霊の力は星喰みに対抗出来る」
「もう人の命を使って星喰みを討つ必要はありません」
私達はデュークと距離を置いた所で立ち止まり、ユーリとエステルがデュークに声を掛け、その言葉を聞くとデュークはそのまま空を覆っている星喰みへと目を向ける
「あの大きさを見るがいい。たった四体ではどうにもなるまい」
「四体は要よ。足りない分は魔導器の魔核を精霊にして補うわ」
「世界中の魔核だもん。凄い数になるはずだよ」
「ついでにおたくの嫌いな魔導器文明も今度こそ終わり。悪い話じゃないでしょ?」
「・・・人間達が大人しく魔導器を差し出すとは思えん。それとも無理矢理行うのか」
「無理矢理なんてしないのじゃ」
「人々が進んで応じるなんて信じられないのかしら?」
「一度手にしたものを手放せないのが人間だ」
「・・・解ってもらえねぇか。だけど、俺達は俺達の選んだ方法で星喰みを討つ。もう少し、待ってくれねぇか?」
「僕達は人々の決断を、そして僕達自身の決意を無にしたくないのです!」
「・・・その娘の力を解放する事になるのにか?」
「それはリアもユーリ達もボク達式神も納得して覚悟は決めてるよ」
デュークは少しだけ寂しそうな目をして言葉を続けた
「・・・それで世界が元に戻るというのか?」
「え?」
「始祖の隷長によりエアルは調整され、あらゆる命がもっとも自然に営まれていた頃に戻るのかと聞いている」
「それは・・・」
「お前達は人間の都合の良いように、この世界を・・・テルカ・リュミレースを作り替えているにすぎん」
「世界が成長の途中だという事は考えられませんか? 始祖の隷長達は精霊になる事を進化だと考えています。同じようには考えられませんか?」
「・・・彼等始祖の隷長の選択に口を挟む事はすまい。だが、私には私の選択がある」
「・・・・」
デュークの曲げられない想い
それはきっとエルシフルや始祖の隷長達、そして、シエラさんの事を言っているのかもしれない
「解ってくれねぇのは、それをやろうとしているオレ達が人間だからか?」
「人間が信用出来ないからって放っておいて、手遅れになったらいきなり消そうとするってどうなのよ!?」
「・・・お前達は、この塔がどういうものか知っているか?」
「元々都市だったタルカロンを古代人は、相容れない存在と思った始祖の隷長を全滅させる為に、兵器に替えた・・・」
「「「!」」」
私は静かにそう告げると、みんな驚いて一斉に私を見た
それはデュークも同じだったのか、振り返って私を見た
「・・・知っていたのか」
「ある女性 が教えてくれたの・・・。魔導器の危機を認めようとしなかった古代人にとって、魔導器を攻撃する始祖の隷長は邪魔でしかなかった・・・。そしてエアルが乱れ、星喰みが出現した・・・」
この事はシエラさんと話しをした時に教えて貰った事だった
「そうなって初めて人間は始祖の隷長の言葉に耳を傾けた。今の世界は多くの犠牲の上にある。なのに人間はまた過ちを犯した。必ずまた繰り返すだろう。どうしようもないところまで世界を蝕み、自分達の存続の為だけに世界のあり方まで変えようとする。そんな存在こそ星喰みをも凌駕する破滅の使徒だ」
「・・・それが貴方が人間を滅ぼそうとする理由なのですか」
デュークは一旦言葉を切り、フレンの言葉を聞き強い眼差しをして言葉を続ける
「私は友に誓ったのだ。この世界を守ると」
デュークの友、それは始祖の隷長の長エルシフル、そしてシエラさんと
その場面はあの記憶の中で見たからはっきりと解る
「エルシフル、ね」
「・・・クロームから聞いたか」
「ああ。彼女、あんたを止めてくれって言ってたぜ」
デュークを止めて欲しいと言ったのはクローム だけじゃない
シエラさんもデュークを止めて欲しい、と願っていた
「彼女もわたし達の話を聞きいれてくれて精霊に転生しました。だからどうか一緒に・・・」
「ふざけるな。始祖の隷長がその使命を放棄するというのなら私が引き継ぐ。お前達の手段を待つまでもなく私がこの術式を完成させれば世界は救われる」
「デューク・・・やめるんだ!」
「このまま人間が世を治めていけば、必ず同じ過ちを繰り返す。そうなれば人の心は荒みより辛い未来になるのではないか?」
デュークは術式の真ん中に突き刺してある宙の戒典を見ながら私達に背を向けて問う
「例えそうであっても、自分達で選んだ道です。傷ついても立ち止まっても諦めなければまた歩き出せるはずです」
「そうよ。間違ったり失敗したりするのを怖がっていたら、新しい事なんて何も見つからないもんね。それにあたし達はあんたみたいに勝手に決めつけてこの道を選んだんじゃない。みんなで決めたよ!」
「うん。一人じゃ難しいのかもしれない。でもボク達は一人じゃないんだ。一人で出来なかったらみんなでがんばる。そうやって歩いていけるって事に気付いたんだ。だから!」
「のじゃ。一人で出した答えはいつか必ず行き止まりにぶち当たる。でも、みんなで船を漕げば、どんな凪でも嵐でも、いつか海を越えられるのじゃ」
「心が繋がっている者同士はそれでいいのだろう。だが必ず辛い未来を受け入れられぬものがいる。それが解らぬお前達ではないだろう?」
「そうね。厳しいけど、それが現実でしょうね。けど、変わろうとしていくものを受け止め、考え、また変わっていく、人も世界も、ね。だから何年、何十年、何百年掛かったとしてもいつか受け入れてくれる。今はそう思えるわ。だって、それが生きるという事なのだから」
「変化とは痛みを伴うもの。でも、それを恐れていては前に進めない・・・。誰もが同じように進める訳じゃないというなら、僕等がそれを支えます。その為の騎士団、その為のギルドです」
「んだな。守らなきゃいけないもんは確かにあるだろうが・・・おっさん、次の時代に生きる奴らの将来 、見てみたいわ。バカどもが変わっていくのを先に逝っちまった奴等の代わりにさ」
「・・・・」
「俺も同意見だな。魔導器が無くなって混乱する奴も多いだろう。けど、それでも精一杯暮らせるようになると思うぜ」
「ボク等も長年この世界を見てきた。だからデュークの言いたい事は解らなくはないよ。でも、変わった世界をボク等式神は今まで通り干渉せず、変わっていく世界を見守るつもりだよ」
「世界がどう変わっていくか、それを俺達がこの目で見ていくさ。何十年も、何百年も、ずっとな」
エステル、リタ、カロル、パティ、ジュディス、フレン、レイヴン、兄さん、アスラ、そしてフキが、それぞれの思いをデュークに伝える
デュークはみんなの言葉を聞いて、宙の戒典からゆっくりと私達に目を向ける
「・・・相容れぬな。お互い世界を思う気持ちは変わらぬというのに不思議なものだ」
「不思議じゃねぇ。あんたとオレ達は選んだ先・・・未来に見ているものが違う」
「未来は守らねばならん。守らねば破滅が待っている」
「未来は創り出すもんだろ。選んだ道を信じて創り出すもんだ」
「・・・・」
ユーリの言葉を聞いてデュークは少しだけ間を置いて浮かび上がっていた術式のモニターを消した
(・・・やっぱり、こうなっちゃうのね・・・)
私はそれを見て目を伏せていると、デュークは術式の真ん中に突き刺してあった宙の戒典を抜いた
そして、それを見た私達も互いに剣を抜いて構えていた
「・・・是非もない。来るがいい!」
デュークの言葉を合図に皆一斉に気を引き締め戦闘態勢に入り、私は後方へと下がった
「青き扉、暁の扉と共に開かれん ――」
ぽつりと呪文を唱えるとこの場の空気が少しだけ変わった
(・・・これで大丈夫)
「・・・、」
空気が変わったのを確認すると目の前で繰り広げられている戦いに目を戻し、気を引き締め前に向かって行った
続く
あとがき
遂にデューク戦までやってきました!
決着が着くのは次回か!?
残りもあと僅か!
頑張って仕上げるぞ
GRANRODEO 3rdアルバム「BRUSH the SCAR LEMON」&GRANRODEO 曲名でお題 43.silent DESIRE より
2011.08.02
「・・・送ってくれてありがとう」
まだ微かに光っている魔刻に触れ、お礼を言うとその光は徐々に消えていき辺りは元の景色に戻った
「・・・今のは?」
「リア、何ともないか?」
ふと声が聞こえ振り返るとフキにそう尋ねられ頷いた
「うん、大丈夫。じゃあ行こう」
「え? リア、此処に用が遭ったんじゃ・・」
「もう済んだよ。さ、行こう。ユーリやフレン、みんなが待ってるよ」
「「あ、ああ・・・」」「う、うん・・・」
ニコリと笑って言うと私はそのまま踵を返して来た道を戻り出した
「・・・リア、何か機嫌良くなってたね」
「ああ。何が遭ったんだ?」
「さあな・・・。けど、あの様子じゃもう心配いらないんじゃないか」
セイはいつも通りの笑顔を見せたリアを見てそう思いアスラとフキに声を掛け顔を見合わせ微笑んだ
「そうだね。もう大丈夫みたいだし」
「そろそろ行かないと逆に心配されるな」
「ああ。じゃ、行くか」
色々と気になる事があるが、リアがいつも通りになったのを見て安堵したのかセイ達も遅れてリアの後を追った
120.silent DESIRE
「あ、ユーリ、フレン、みんな」
元居た場所でみんなを待っていると解除を終え戻って来たみんなに声を掛けた
「お疲れ様。大変じゃなかった?」
「ううん、リタとパティのお陰で直ぐに終わったよ」
「うちとリタ姐に掛かればこのくらい鯨を釣るのと同じくらい簡単なのじゃ」
「その例え、良く分かんないんだけど・・・ι まあでもこれであいつの所に行けるわ」
「やっと登らなくて済むのね」
そう言ってみんな昇降機の方へ移動を始めた
「ユーリ、フレン」
「「?」」
「ごめんね、遠くまで行かせちゃって」
二人に駆け寄ってそう言うとユーリとフレンは一瞬驚いた顔をした
「あ、いや、別に・・・」
「ユーリもフレンもみんなも、怪我してなくて良かった」
「あ、ああ、リアもね」
「うん。じゃ、ラピード、行こうか」
「ワン!」
二人に微笑んでそう言いラピードと一緒に先に歩き出した
「・・・セイ、リアのやつ、どうしたんだ?」
「なんだか妙に機嫌が良いみたいだが・・・」
「悪い、俺にも良く解らねえ・・・」
ついさっき別れるまで挙動不審のようにユーリとフレンを避けてた
数十分しか経っていないはずなのに、リアはいつものように自分達に接して来ていた
「リアが寄りたい所があるって言ってそこに行って気が付いたらああなってたんだよね・・」
「「「「「「・・・・・」」」」」」
そしてユーリ達はまたじっとリアを見つめた
「? ん、なに? どうかした?」
急に視線を感じ振り返るとユーリ達がじっと見ていてきょとんとして首を傾げた
「いや、なんもねえよ」
「そう? じゃ、早く行こう。遅いとみんなから文句言われるよ」
「ああ」
「「・・・・」」
「ま、いつも通りのリアに戻って良かったんじゃないか」
「「・・そうだな」」
フキの言葉にユーリとフレンは少し安堵した顔をして、リアの後を追った
*
「あの階段は・・・」
昇降機から降りると、長い長い階段が見えた
「どうやらこの上が頂上みたいですね」
「うん・・・」
ユーリは私達に視線を向け、一通り見て口を開いた
「此処が正念場だな。みんな、覚悟は良いか?」
「とっくに出来てるわよ」
「うん。ボク達がやらなちゃいけないんだもん」
「此処で逃げたら、今晩の食事が不味くなるのじゃ」
「そゆこと。おっさんも流石に頑張っちゃうよ」
「わたし達を信じて待っている人達の為にも必ず星喰みを倒します!」
「俺達もみんなも安心して暮らせるようにな」
「フェローやベリウス・・・始祖の隷長達の想いの為にも、ね」
「ボク達も覚悟は出来てるよ」
「ワン!」
そして私、ユーリ、フレン、兄さんは顔を見合わせ小さく頷いた
「行こう」
私達は長い階段を見つめて想いを固めユーリを先頭に歩き出し、階段を上りだした
長い階段を登ると、タルカロン上層部に着いた
そして数十メートル先に、大きな術式を展開して背を向けている銀髪の青年に目が止まる
「・・・デューク・・・」
私達はゆっくりとデュークの近くに歩み寄って行くと、デュークはちらりと私達を見た
「デューク! オレ達は四属性の精霊を得た。精霊の力は星喰みに対抗出来る」
「もう人の命を使って星喰みを討つ必要はありません」
私達はデュークと距離を置いた所で立ち止まり、ユーリとエステルがデュークに声を掛け、その言葉を聞くとデュークはそのまま空を覆っている星喰みへと目を向ける
「あの大きさを見るがいい。たった四体ではどうにもなるまい」
「四体は要よ。足りない分は魔導器の魔核を精霊にして補うわ」
「世界中の魔核だもん。凄い数になるはずだよ」
「ついでにおたくの嫌いな魔導器文明も今度こそ終わり。悪い話じゃないでしょ?」
「・・・人間達が大人しく魔導器を差し出すとは思えん。それとも無理矢理行うのか」
「無理矢理なんてしないのじゃ」
「人々が進んで応じるなんて信じられないのかしら?」
「一度手にしたものを手放せないのが人間だ」
「・・・解ってもらえねぇか。だけど、俺達は俺達の選んだ方法で星喰みを討つ。もう少し、待ってくれねぇか?」
「僕達は人々の決断を、そして僕達自身の決意を無にしたくないのです!」
「・・・その娘の力を解放する事になるのにか?」
「それはリアもユーリ達もボク達式神も納得して覚悟は決めてるよ」
デュークは少しだけ寂しそうな目をして言葉を続けた
「・・・それで世界が元に戻るというのか?」
「え?」
「始祖の隷長によりエアルは調整され、あらゆる命がもっとも自然に営まれていた頃に戻るのかと聞いている」
「それは・・・」
「お前達は人間の都合の良いように、この世界を・・・テルカ・リュミレースを作り替えているにすぎん」
「世界が成長の途中だという事は考えられませんか? 始祖の隷長達は精霊になる事を進化だと考えています。同じようには考えられませんか?」
「・・・彼等始祖の隷長の選択に口を挟む事はすまい。だが、私には私の選択がある」
「・・・・」
デュークの曲げられない想い
それはきっとエルシフルや始祖の隷長達、そして、シエラさんの事を言っているのかもしれない
「解ってくれねぇのは、それをやろうとしているオレ達が人間だからか?」
「人間が信用出来ないからって放っておいて、手遅れになったらいきなり消そうとするってどうなのよ!?」
「・・・お前達は、この塔がどういうものか知っているか?」
「元々都市だったタルカロンを古代人は、相容れない存在と思った始祖の隷長を全滅させる為に、兵器に替えた・・・」
「「「!」」」
私は静かにそう告げると、みんな驚いて一斉に私を見た
それはデュークも同じだったのか、振り返って私を見た
「・・・知っていたのか」
「ある
この事はシエラさんと話しをした時に教えて貰った事だった
「そうなって初めて人間は始祖の隷長の言葉に耳を傾けた。今の世界は多くの犠牲の上にある。なのに人間はまた過ちを犯した。必ずまた繰り返すだろう。どうしようもないところまで世界を蝕み、自分達の存続の為だけに世界のあり方まで変えようとする。そんな存在こそ星喰みをも凌駕する破滅の使徒だ」
「・・・それが貴方が人間を滅ぼそうとする理由なのですか」
デュークは一旦言葉を切り、フレンの言葉を聞き強い眼差しをして言葉を続ける
「私は友に誓ったのだ。この世界を守ると」
デュークの友、それは始祖の隷長の長エルシフル、そしてシエラさんと
その場面はあの記憶の中で見たからはっきりと解る
「エルシフル、ね」
「・・・クロームから聞いたか」
「ああ。彼女、あんたを止めてくれって言ってたぜ」
デュークを止めて欲しいと言ったのは
シエラさんもデュークを止めて欲しい、と願っていた
「彼女もわたし達の話を聞きいれてくれて精霊に転生しました。だからどうか一緒に・・・」
「ふざけるな。始祖の隷長がその使命を放棄するというのなら私が引き継ぐ。お前達の手段を待つまでもなく私がこの術式を完成させれば世界は救われる」
「デューク・・・やめるんだ!」
「このまま人間が世を治めていけば、必ず同じ過ちを繰り返す。そうなれば人の心は荒みより辛い未来になるのではないか?」
デュークは術式の真ん中に突き刺してある宙の戒典を見ながら私達に背を向けて問う
「例えそうであっても、自分達で選んだ道です。傷ついても立ち止まっても諦めなければまた歩き出せるはずです」
「そうよ。間違ったり失敗したりするのを怖がっていたら、新しい事なんて何も見つからないもんね。それにあたし達はあんたみたいに勝手に決めつけてこの道を選んだんじゃない。みんなで決めたよ!」
「うん。一人じゃ難しいのかもしれない。でもボク達は一人じゃないんだ。一人で出来なかったらみんなでがんばる。そうやって歩いていけるって事に気付いたんだ。だから!」
「のじゃ。一人で出した答えはいつか必ず行き止まりにぶち当たる。でも、みんなで船を漕げば、どんな凪でも嵐でも、いつか海を越えられるのじゃ」
「心が繋がっている者同士はそれでいいのだろう。だが必ず辛い未来を受け入れられぬものがいる。それが解らぬお前達ではないだろう?」
「そうね。厳しいけど、それが現実でしょうね。けど、変わろうとしていくものを受け止め、考え、また変わっていく、人も世界も、ね。だから何年、何十年、何百年掛かったとしてもいつか受け入れてくれる。今はそう思えるわ。だって、それが生きるという事なのだから」
「変化とは痛みを伴うもの。でも、それを恐れていては前に進めない・・・。誰もが同じように進める訳じゃないというなら、僕等がそれを支えます。その為の騎士団、その為のギルドです」
「んだな。守らなきゃいけないもんは確かにあるだろうが・・・おっさん、次の時代に生きる奴らの
「・・・・」
「俺も同意見だな。魔導器が無くなって混乱する奴も多いだろう。けど、それでも精一杯暮らせるようになると思うぜ」
「ボク等も長年この世界を見てきた。だからデュークの言いたい事は解らなくはないよ。でも、変わった世界をボク等式神は今まで通り干渉せず、変わっていく世界を見守るつもりだよ」
「世界がどう変わっていくか、それを俺達がこの目で見ていくさ。何十年も、何百年も、ずっとな」
エステル、リタ、カロル、パティ、ジュディス、フレン、レイヴン、兄さん、アスラ、そしてフキが、それぞれの思いをデュークに伝える
デュークはみんなの言葉を聞いて、宙の戒典からゆっくりと私達に目を向ける
「・・・相容れぬな。お互い世界を思う気持ちは変わらぬというのに不思議なものだ」
「不思議じゃねぇ。あんたとオレ達は選んだ先・・・未来に見ているものが違う」
「未来は守らねばならん。守らねば破滅が待っている」
「未来は創り出すもんだろ。選んだ道を信じて創り出すもんだ」
「・・・・」
ユーリの言葉を聞いてデュークは少しだけ間を置いて浮かび上がっていた術式のモニターを消した
(・・・やっぱり、こうなっちゃうのね・・・)
私はそれを見て目を伏せていると、デュークは術式の真ん中に突き刺してあった宙の戒典を抜いた
そして、それを見た私達も互いに剣を抜いて構えていた
「・・・是非もない。来るがいい!」
デュークの言葉を合図に皆一斉に気を引き締め戦闘態勢に入り、私は後方へと下がった
「青き扉、暁の扉と共に開かれん ――」
ぽつりと呪文を唱えるとこの場の空気が少しだけ変わった
(・・・これで大丈夫)
「・・・、」
空気が変わったのを確認すると目の前で繰り広げられている戦いに目を戻し、気を引き締め前に向かって行った
続く
あとがき
遂にデューク戦までやってきました!
決着が着くのは次回か!?
残りもあと僅か!
頑張って仕上げるぞ
GRANRODEO 3rdアルバム「BRUSH the SCAR LEMON」&GRANRODEO 曲名でお題 43.silent DESIRE より
2011.08.02