星喰み編
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「・・・青い砂 暁の星に眠る」
「「「!」」」
兄さん達と巨大な魔刻の近くまでやって来て、魔刻に触れそう唱えた瞬間、私が触れている所の魔刻が光だし眩い光が放たれ辺りを包んだ
光が消え、ゆっくりと目を開けると辺りは先程の景色と打って変わり、神秘的な所にいた
「・・・エレアルーミンみたい。・・魔刻の中、だからかな」
何故かそう思いじっと先を見た
「・・・行ってみよう」
ある事を思い出しながら小さく呟き、先へと進んで行った
119.I have not given up hope yet
「・・・・・」
じっと魔刻を見ているとカツンっと何か音が聞こえた
それは誰かの足音が止まった音と似ていた
「・・・シエラさん」
リアは目の前にいる女性を見てぽつりとそう呟くとシエラは振り返り優しく微笑んだ
「私の言葉を信じてくれて有り難う御座います。リア様」
「兄さん達は、外・・ですか」
「ええ。此処に居るのは私と貴女だけです。大丈夫です、今外の時間は止めてありますから貴女がいない事に気付いている人はいません」
それを聞き少しだけほっとした
これ以上兄さんやアスラやフキに心配をさせたくなかったから
けどこんな事が出来るとなると、やっぱりシエラさんは私や兄さんみたいに力の強い言霊使いなのだろう
「リア様」
そう思っているとふとシエラさんに呼ばれ顔を上げると先程よりも真剣な表情をして私を見つめた
「私は貴女があの言葉を信じて此処に来ると思っていました。そして、貴女が此処に来た時に・・ちゃんと真実を話そうと思っていました」
「真実・・・?」
「・・・はい。貴女が気になっている事の大半が関わっていると思います。・・・タルカロンに入る前に、デュークの事、聞こうとしましたね」
「ええ。シエラさんと何度か話している内にずっとデュークの事を気に掛けてたから・・。だから知り合いなのかと思って」
「・・・」
シエラさんはそこで一旦言葉を切り少しだけ悲しい目をして答えた
「そうです。私とデュークは知り合い・・そしてもう一人、大切な友がいました」
「!」
その途端また眩い光が辺りを包み色褪せた世界が一変し、新しい世界を彩る
「・・此処、は?」
「私の記憶の一部です」
「シエラさんの?」
シエラさんは頷くとじっとある場所を見つめ、つられて私も同じ所を見た
そこは緑豊かで綺麗な青空と海が広がっていた
だけど、どことなく見覚えのある景色だった
「・・・エフミドの丘?」
この景色、そこは紛れもなくユーリ達と旅を初めて間もない頃にエフミドの丘に行き成り行きで通る事になってしまった獣道を越えた先にあったあの海が見渡せる所だった
そしてそこにいるのはデュークとシエラさん、そして見た事もない始祖の隷長
「彼はエルシフル」
「え、エルシフル? エルシフルって・・・あの?」
エルシフル、その名前はレレウィーゼで転生したシルフがデュークの友だったと話してくれ、その後に始祖の隷長の中では珍しく親子として生まれたと言う事を聞いた
「エルシフルは始祖の隷長の長であり、クロームの父親、そしてデュークと私の友だった」
「・・・・」
シエラさんはとても懐かしむような、そして何処か寂しげな目をしていた
エルシフル、確かに始祖の隷長の長と言うだけあって、此処から見ていても記憶の中だと言ってもエルシフルには迫力があった
「私達はある時、たまたま出会ったんです。最初は人間と始祖の隷長が一緒にいる事が珍しかった。けど、私達言霊使いも似たようなものだと言われて、色々話しているうちに、その後も何度か会うようになった」
彼女は懐かしむような目をして目の前の光景を見ていた
「じゃあこれからも、三人で一緒に居ましょう」
「そうだな。では行くか」
「ええ。デューク、エルシフル、これからもよろしくね」
三人共とても楽しそうに、そして幸せそうに笑い合っていた
更に記憶が流れ暫くその様子を見ていた
(なんだか、ユーリとフレンと初めて会った頃の事、思い出しちゃうな・・・)
シエラさんとデュークとエルシフル、彼等の出会った頃やその後の事を見ているとふとユーリとフレンと出会った頃を思い出した
(私達も最初はあんな風だったよね)
少しだけ自分達の姿を重ね微笑んで目の前の光景を見ていた
けど、途中でシエラさんとデュークを見ているとどことなくだけど安心した感が出ていた
まるで私がユーリとフレンの側にいる時みたいに・・・
「私達は信頼出来る友だったの。そして、私は段々と彼に惹かれ始めた・・・」
「・・・え?」
唐突にそう言われシエラさんを見ると幸せそうに微笑んでいた
「エルシフルも私の気持ちを知って応援してくれた。お互いに気持ちが通じ合った後もエルシフルは凄く喜んでくれたし、お祝いもしてくれた。あの頃、凄く幸せだった」
幸せそうに微笑んでいたが、それは直ぐに消えまた悲しい顔をした
「・・・けど、その幸せは・・・10年前の人魔戦争で崩れてしまった」
シエラさんの言葉を聞いていると何かが爆発する音が聞こえ、世界に目を戻すと大きな戦いが始まっていた
「・・・これって・・・人魔戦争?」
「ええ。・・・人魔戦争の事はリア様もご存じですよね」
「ええ。人と魔物が戦った。だけど本当は始祖の隷長と人との戦いだった」
「そう。そして戦いは始祖の隷長と協力して戦った人々が勝った。だけど、エルシフルの力を恐れた帝国の連中が私とデュークの友だったエルシフルを・・・っ」
「・・・・」
その先の言葉はツラくなったのか言えないでいたけど、私もその先の事を知っている
エルシフルは殺されてしまい、デュークとシエラさん、そしてクロームや始祖の隷長の元へ静観する事がなかった
「・・・エル、シフル・・、っ」
「「「・・・・」」」
人魔戦争の景色からまたエフミドの丘へ景色が変わった
そして崖から少し離れた所にある石の前でシエラさんはデュークの胸に顔を埋め泣いていて、デュークやクローム達はそのお墓を見つめていた
「・・・人間・・・。やはり捨て置けん!!」
「こんな事ならやはり手を貸すべきではなかったのだ」
「シエラ、クローム、大丈夫か?」
「・・・ええ」
クロームは答えるも寂しげな目をしていてシエラさんは少し泣き止んだのか小さく頷いた
そして時間が流れ、シエラさんとデュークは夕日を眺めていた
「シエラ、私は私達の友を奪った奴等を・・・。・・・こればかりは許されない事だ」
「・・・そう、ね・・」
デュークの言葉には憎しみが混じっていた
大事にしていた友を殺されてしまったのだから無理もない
「デューク、これから貴方はどうするの?」
「・・・私は人間の身を捨て、始祖の隷長側に身を寄せる。お前はどうする」
「私は、勿論貴方の傍に居るわ。 ・・・故郷の勤めがない限りは」
「・・・シエラ」
そこでこの記憶は終わったのか景色は消え、元の魔刻の中の景色へと戻った
「・・・・」
「リア、様? ・・・泣いてらっしゃるんですか?」
「っ・・、」
景色が戻り何も言わなくなってしまった私を見てシエラさんは驚いた顔をして私に駆け寄った
「ごめ・・っ・・!」
「・・ごめんなさい、貴女を泣かせるつもりじゃなかったんですけど」
「いい・・んです。・・勝手に泣いちゃったの、私の方・・だから・・・」
あの記憶を見てシエラさんやデューク、そしてクローム達始祖の隷長の痛みが伝わった
「シエラさんもデュークもクローム達も、こんなツライ事が遭ったんですね」
「・・・リア様」
人や生き物の死を身近に感じる仕事をしている言霊使い
だけどそれでも一番大事に思っている人達がいなくなってしまうのは誰だってツライ事
あの人魔戦争で数え切れない程多くの人が大事なものを失い、傷ついた
レイヴンもジュディスもその内の一人だけど、デュークもシエラさんも、同じように深い傷を背負っていた
*
「落ち着きましたか」
「はい。ごめんなさい、取り乱しちゃって」
「いいえ。私達の為に泣いてくれた事、凄く嬉しかったです」
暫くの間、私はシエラさんに抱き締めて頭を撫でて貰いやっと落ち着いた
「話しの続きをしても、大丈夫ですか?」
「はい・・・。お願いします」
私の返事を聞くとシエラさんは魔刻の向こうを見て話し出した
「あれから暫くして私達は始祖の隷長側に身を寄せた。言霊使いも始祖の隷長側に近い関係性があったのはリア様も知っていると思うので省きますけど、その後私もデュークも始祖の隷長と一緒に世界を見ていた」
「エアルの調整をしたり、ですか?」
「言霊使いの力が不安定になるからってみんなに言われて私は何もしてないけど。けど、その間にも私は私で言霊使いの仕事をしていたわ」
「だからデュークは言霊使いの事知ってたんですね」
「リア様がユーリさんとフレンさんに言霊使いだと話しているように、本当に信頼出来る相手だけに。けど、私はずっとみんなに隠していた事があったんです」
「え?」
「リア様ももう気付いていると思いますけど、私は言霊使いの中でも力は強い方です。じゃないとこんな事出来ないですから」
シエラさんの言う通り、人の精神世界に入ったり意識だけを他の場所に移したりという事は高度な技術が必要になる
私や兄さんもやろうと思えば出来るけど、今まで使う必要がなかったから使った事がないしアスラ達からもあまりオススメしないと言われていた
「じゃあどうしてシエラさんは私の精神世界や此処に・・・?」
「・・・・私の役目、それは言霊使いの姫であるリア様を陰からお守りする事。それがルーティア家の遠縁にあたる私の役目」
「え?」
(シエラさんと私が、遠縁!?)
そんな事は今まで一度も聞いた事がなかったので思わず目を見開いたまま固まってしまった
けどこんなに高度な事が出来るのは、本家に近しい人だからと今なら納得がいった
「人魔戦争が終わって数年から、私は貴女に何度かリンクしていたの。アレクセイの動きを知ってから」
「え・・?」
「アレクセイが始祖の隷長を狙っている理由、それは聖核を狙っていたから。そうなると考えられる事はただ一つ、ザウデを復活させる事。その事に気付いたフェローや始祖の隷長達は今まで以上に警戒し、デュークも私も自分達の役目を果たす為に動き出したの」
「じゃあクロームがアレクセイの側に居たのは・・・」
「アレクセイの監視を任せていたからよ。勿論アレクセイはそんな事知らず、だったけど。けど、私の力も限界になってザウデではツライ思いをさせてしまって・・本当にごめんなさい」
シエラさんの力、それを聞きザウデでアレクセイが言っていた言葉が今ようやく解った
確かにアレクセイにしてみれば私を護っていたシエラさんの力は忌々しかっただろう
計画に使う人間の力を守られていたのだから
「その事はもう良いんですよ。私は今、こうやって此処に居るんですから」
「・・・リア様は本当に強い人ですね」
「強くなんて、ないですよ・・・。ユーリとフレンの気持ちに答えてあげられてないですから・・・」
シエラさんの言葉にふとあの夜の事を思い出してしまいぽつりと呟いていた
「リア様、リア様が悩むのは当然の事ですよ。誰だって最初から自分の大切な気持ちを言える人なんていないし、それに直ぐに答えられる人の方が少ないんですから」
「・・・シエラさんもそうだったんですか?」
「ええ。さっきも話した通りエルシフルが相談に乗ってくれて応援してくれたから、私はデュークに自分の気持ちを伝えられたんです。・・きっと、彼も私の知らない所で悩んでたはずだから」
言うとシエラさんは私を優しく抱き締めてくれた
「・・・リア様はまだ恋に抵抗がある程若いんです。彼等が大事だからこそこんなに悩んでいるんですよね」
「はい・・・」
「彼等ならリア様の事、ちゃんと解ってくれています。どんなに時間が経ってもきっと貴方の本当の気持ちを待ってくれていて、受け入れてくれますよ」
「シエラさん・・・。ありがとう御座います」
恋の経験は今までにないにしても恋愛相談は受けた事はあった
それで上手くいって感謝された事も何度もあった
けど、いざ自分がその立場になるとどうして良いのか解らなかった
その相手が一番大事思っている、ユーリとフレンだったから
故郷に戻ってイサキや女性の神将達に話そうとも思ったけど、世界の危機は一刻を争っていた
だから誰にも相談出来ずにいたけど、シエラさんの言葉で今までずっと苦しかったものや胸の痛みが一気に軽くなった
「それに、今は大事なお仕事の途中ですものね。あの人を止められるのはもう貴方達しかいないから」
「シエラさん・・・」
私をゆっくりと放すとシエラさんは悲しそうに微笑んでいた
「人魔戦争が終わって1年位した時に私、未来の
“破片を見る”
それは言霊使い特有の力でもあった
夢の中、白い世界に来ると必ずと言って良い程、途中で違う世界の破片がある
それは過去、現在、未来、どれかの破片で、これから起こる事や過去にあった出来事を見る事が出来る
「デュークのやろうとしている事はエルシフルが守った世界を、人々を見捨てる事になってしまう。確かにあの人は人から裏切られた事で人を嫌っているし憎んでいる。それでも私は彼のやり方に賛成は出来ない」
「だからデュークの側から離れて私達に協力してくれてるんですか?」
「言霊使いの、いえ、私の使命を彼は知っていたから離れているんです。私がこうやってリア様達に協力している事は彼は知りません。私は故郷のある場所にずっといるから、唯一接触出来るリア様達に望みを掛けたんです。貴方達なら、彼を救えるって」
シエラさんの目はとても真っ直ぐで揺るぎのない眼だった
「はい、絶対にデュークを止めます。世界中のみんなの為にも、シエラさんの為にも」
「姫・・・ありがとう」
「その代わり、一つ約束してくれませんか?」
「え?」
私の唐突な言葉に驚いてシエラさんは顔を上げ、更に私が言った言葉に意表を突かれた顔をした
*
辺りが眩い光に包まれていたがその光も段々と小さくなり、その場にはシエラしか残っていなかった
すると魔刻の一部がシエラに話し掛けるように光り出した
「・・・ええ、良いのよ。それが姫様との約束ですもの」
シエラもその光に答えるように返事を返すとまた光が答える
「・・・大丈夫、私達言霊使いの姫は誰よりも優しくて強い人だから」
(だから、姫に私の望みを託したんだから)
リアが別れ際に言った言葉と約束を思い出しシエラは小さく笑った
「デューク、私はまだ望みを失ってない。私も、姫様達と一緒に貴方を救ってみせるわ」
シエラは真っ直ぐと前を見つめそう言って光に包まれその場を後にした
続く
あとがき
やっと仕上がった~!
かなり箱版と設定を変えました!
特に遠縁って辺りとかww
そしてかなり謎になってた所や、更にリアちゃんが悩んでたいた辺りも色々と・・・
友達のようなお姉さんのような感じになったな、シエラちゃん
だけど気になるのは最後にリアちゃんがシエラちゃんに言った言葉
あれは一体・・・?
とりあえず次回はこの魔刻から出た後、みんなと合流していよいよデュークの元へ!!
ホントに架橋になってきたなww
I have not given up hope yet.:私はまだ望みを失っていない
2011.08.01