星喰み編
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あの後街に戻ると、リタとウィチル君が解決策を見つけたようだった
魔刻のネットワークの方はウィチル君がアスピオの人達と何とかする事になり、私達はデュークと星喰みの方を優先する事が出来るようになった
けど肝心の明星一号が直っていないようだったが、ヨーデル様の提案で明星一号を新たに作る事になりカウフマンさん達の協力も得て、新しく作る事になった
帝国とギルドが協力して作る、この街を作った時と同じように、世界を救う為の武器を・・・
こう言う風に協力出来る人達が世界の首脳陣だと思うと私達も安心して任せられる
そして今日は明日の決戦に向けて、早く休む事になった
114.告げられる想い
夜、みんな明日の事を考えているのか眠れず各々好きな場所に行っていた
私もまだ気持ちが高まっていて眠れないのもあるけど、何より星喰みを抑えている力の事で話す事があると言われ、兄さんの部屋に来ていた
「いよいよ明日、だな」
「うん。星喰みを抑えてる力はリアとセイの言霊使いの力、そしてボク達式神の力を合わせれば対抗出来るよ」
「デューク相手に力抑えてる状態で何処まで持つか。それが問題ではあるけどな」
「うん・・。デュークも本気で来るだろうしね・・・」
デュークの過去の出来事をシルフから聞いて彼がどれだけ友が愛したこの世界を救いたいかと言う事は伝わった
『・・・彼を、救って ――』
ふと、シエラさんのあの言葉を思い出した
(シエラさんが言ってた彼って誰の事なんだろう・・・)
そしてレレウィーゼでデュークと会った時、シルフからデュークの過去を聞いた時のシエラさんの様子がふと浮かんだ
(あの時のデュークとシエラさん、何処か寂しそうだった・・。それに、なんとなくだけど雰囲気も似てた・・・)
「・・・・」
「・・・ア、・・リア!」
「え? あ、ご、ごめん。何?」
アスラに呼ばれ顔を上げると少しだけ心配そうな顔をしている兄さんとアスラとフキがいた
「大丈夫か?」
「うん。ちょっと考え事してただけだから」
「ま、相手が相手なだけに考えるもの無理ないか」
兄さんの言葉に私は微笑した
「少し気分転換に外行って来たらどうだ」
「少しは気持ちも落ち着くと思うぜ」
「うん。じゃあそうする。お休みなさい」
「ああ」「「お休み」」
考え込んでいる私を見て一旦話しを切り上げた方が良いと思い、気を遣ってそう言ってくれ言葉に甘えて、そのまま外へ向かった
外に出ると気持ちの良い風が吹いていて空には綺麗な夜空が広がっていた
なんだか寝るにはまだ勿体ない気がして、街の外れにある小さな丘へと向かった
空には星喰みが漂っているにも関わらず、此処だけは綺麗に星が見えた
「・・・・・」
私はその綺麗な星空を見ながら、今までの事を思い返した
下町に帰って来た途端水道魔導器の魔刻が盗まれその犯人を追いユーリ達と旅立ち、新しい仲間、久しぶりに会う人達と出会い共に戦った
その事件が片付いたと思った矢先、また新たな事に巻き込まれ、ユーリとフレンが対立し、更に私もエステルも自分達の宿命を知る事となった
私達の宿命は過去から続いているもので、それはとても重くてツラいものだった
けど、その最終問題に明日私達は挑もうとしていた
「・・・・」
そこで一旦目を閉じて、ふとある人物の事を思った
「・・・デューク」
彼は今まで私達の事を何度か助けてくれ、私に何度も警告をしてくれた人で、始祖の隷長の長エルシフルの友だった人、
そして、シエラさんと知り合いかもしれない人
「・・・人の命と引き替えに、世界を救う・・か」
遠くに見える巨大な塔、タルカロン、此処にデュークはいる
デュークの事を考えれば、確かに人を信用出来なくなるし、友が好きな世界を、守りぬいた世界を守ろうとするのも解る
だけど、人の命と引き替えに、というのはあまりにもヒドすぎる
アレクセイとはやり方が違うにしろ、黙って事を運んでいるのには変わりない
「・・・・」
そのまま少し離れた空を見ると、星喰みが空を覆っていた
「・・・星喰みは、始祖の隷長の成れの果て・・・か」
デュークはこの星喰みを消す為に、人の命を代用してこの世界を救おうとしている
けど星喰みは、始祖の隷長が世界を守ろうとしてエアルを体内に取り込み過ぎて、制御が効かなくなったモノだった
「なら、尚更彼等も救ってあげなきゃ・・・」
「リア?」
そう思っていると聞き慣れた声が聞こえ地上に目を戻すとフレンが私の方に歩いて来た
「どうしたんだい、こんな時間に」
「なんだか寝付けなくて、気分転換に外に出て来たの」
「明日の事を考えるとなかなか寝付けないか」
「うん・・。フレンは何してたの?」
「僕は見回りだよ。この街には結界が無いからね」
団長代行になっても自分から進んでやる所はやっぱりフレンらしいなと思って小さく笑った
「ね、見回り一緒に行ってもいい?」
「え?」
「散歩してたら少しは気が晴れると思うし」
「そうだね。じゃあ行こうか」
寝付けない時の夜の散歩と言うのは昔からやっていたし、フレンもその事を知ってるからなのか直ぐに微笑んで了承してくれ、私達は並んで歩き出した
「いよいよ明日、あの星喰みに挑むんだね」
「うん。デュークも星喰みも一筋縄でいく相手じゃないと思う。けど、みんなの協力があるから絶対に負けられない」
「そうだね。僕達も殿下も、そしてギルドのみんなもリア達に負けないように頑張らないとな」
そこで言葉を切ってお互いに笑い合った後、ふと思い出しフレンを見た
「そういえば、ユーリと剣を混じり合わせてる時、ユーリもフレンもいつも以上に活き活きしてたね」
「え?」
「あんなに楽しそうにしてるの久しぶりに見たな」
「魔物の群れに入った時よりも楽しそうにしてたかい?」
「うん。あの時よりも・・。多分、ユーリもフレンも本気で真剣勝負したからだと思うよ」
二人の真剣勝負、あの戦いはいつも以上に、そして今まで以上に本気で戦っていた
「結局負けてしまったけどね」
「でも互角だったし、悔しいって顔してなかったよ?」
「そうだね」
私の言葉を聞きフレンは苦笑した
それは多分お互いに成長し本気で戦えた事に納得しているからだった
「兄さんも言ってたけど、私もユーリとフレンの成長した戦いが見られて良かったな」
「リア・・・」
自分の事のように嬉しい顔をして私はそう言うとフレンも微笑んでくれた
「でも、傷を治して貰ってる時にリアが言った言葉には正直驚いたけどね」
「え?」
何か変な事言ったっけ? と思っているとフレンは小さく笑って言葉を続けた
「カッコ良かった、って言った事だよ」
「え、・・あ、」
そう言えばあの時素直な感想を述べたんだったと思っていると、フレンはくすくすと笑った
「な、なんで笑うの?」
「いや、リアからあんな言葉が聞けるなんて思ってなかったからね」
「変、だった?」
「いや、変じゃないよ。だた」
「ただ・・?」
その言葉が気になって歩みを止め首を傾げるとフレンは小さく微笑んで続きを言わなかった
「・・・?」
それを見てまた疑問符を出しているとフレンは表情を変え、
「けど、負けられないものはもう一つあるんだ」
言うと私の頬に触れじっと私を見た
「? フレン?」
「・・・こんな時に言うのは不謹慎だけど、」
「!?」
途端、彼との距離が縮まり唇に暖かいモノが重なる
「っ!?///」
それに驚いていると今度はそのまま引き寄せられ抱き締められた
「リアの事が好きなんだ」
「!?」
唇が離れたと思っていると更に強く抱き締められ耳元でそう囁かれた
「ずっと、好きだった」
「・・・・」
何か言葉を言おうとするけど、旨く言葉が出ない上に口がパクパクとなっていた
そんな私を見かねてかフレンは微笑して私を放し、優しく微笑んだ
「急にごめん。でも、どうしてもリアに聞いて欲しかったんだ」
「・・・フレン」
「返事は直ぐに出さなくて良いよ。ゆっくり考えてくれれば良いから」
言うとフレンはそのまま見回りに戻って行き、私は暫く呆然とその場に立ち竦んでいた
*
あれから暫くして私は街の外に出て来た
と言ってもそんなに遠くに行く訳にはいかないので、街の入り口の城壁に背を預け膝を抱え顔を埋め、水の流れる音を聞いていた
『リアの事が好きなんだ』
「っ・・・///」
だけど、先程のフレンの言葉と行動が頭を過ぎり顔が赤くなったのを感じ更に膝を抱えた
(胸が苦しい・・・。さっきの事を考えると・・凄く・・・)
返事はゆっくり考えて良い、と言われた
この後の大仕事を考えれば当然と言えば当然の事だし、私自身の気持ちの整理も含めそう言ってくれたのだろう
「リア? 何してんだ、こんなとこで」
誰かが街との入り口を繋いでいる橋を渡る音が聞こえたと思ったら次にまた聞き慣れた声が聞こえゆっくりと顔を上げると
「・・・ユーリ」
そこにはユーリがいた
ユーリは私の姿を見るなり驚いた顔をしたが直ぐにいつもの顔をして私の隣に座った
「どうした、寝付けないのか?」
「うん。ユーリも?」
「ああ」
やっぱり明日の事を考えるとみんな寝付けないでいるのは当然なのだろう
ユーリが隣に座ったのを確認すると夜空を見ながら言った
「色々遭ったけど、明日で決着が付くんだね」
「ああ。ま、正直世界まで絡んでくるとは思ってなかったけどな・・・」
「最初は水道魔導器の魔刻を取り戻す事だったのに、それから色々と遭って・・・」
そう、そこから色々な事が遭った
それは楽しい事だったり、ツラい事だったり、本当に色々
「けど、オレは旅に出られて良かったと思うぜ。色んなもん見れて、色んな奴と出会えたしな」
「みんなとも出会えたしね」
「ああ」
ユーリやみんな、勿論私や兄さん達も一緒に旅して来て色々と変化したり成長した
みんなの成長が自分の事のように嬉しく思うのは信頼してるからなんだろうな
そう思って小さく笑うとユーリも同じように笑ってくれた
「ユーリも、・・・本当に強くなったよね」
「ん?」
急にそう言われユーリは私の方に視線を向ける
「夕方の事だよ。ユーリとずっと旅してたけど、あそこまで強くなってたのには吃驚だったな」
ユーリはこの旅の中で本当に強くなった
剣の腕だけじゃなく、ユーリは自分の信じる意志も強くなった
ラゴウやキュモールを手に懸けた時の事、それを私やフレンやみんなに知られた時でも自分の信じた事を貫いた強さ、ドンの最期の介錯を引き受け、その意志と強さを知り自分の強さに変え、そして、私やエステル、みんなを支えたり救ってくれた事・・・
「・・・本当にユーリも成長したよ」
「そうか? オレはそんなに変わった気はしねえけどな」
「ううん・・・。ユーリがいたから、私もみんなも此処まで来られたんだよ」
「ま、そういう事にしとくか」
自分の事のように微笑む私を見てユーリもそれ以上は何も言うまいと言うようにそこで話しを切り上げた
けど、その表情はどことなく嬉しそうにしていた事に私はちゃんと気付いていた
「・・・で、リアは何悩んでたんだ」
「え?」
唐突にそう言われユーリを見るといつも通りの表情を浮かべていたけど、でも心配してくれているのが解った
「星喰み解放する力の事か?」
「ううん、そっちは大丈夫」
「なら、何悩んでんだ」
「・・・・」
そう言われ思わず視線を落としてしまう
「・・・あの、ね」
暫く考えてやっと出た声は情けない程か細い声だった
「兄さん達と話し終わった後、気分転換に外に出て来たの。そうしたら丁度フレンと会って、散歩も予て一緒に見回りに行ったの。明日の事とか色々と話してて・・・」
そこまで言うとまた胸がちくりと痛みを感じ少しだけ口を紡ぎ、小さく息を吸ってその続きを話した
「その後にも色々と話してたんだけど、ユーリに負けられない事がもう一つあるって言った後、・・フレンに・・・キス・・されて、好きだって言われた・・・///」
「!」
その言葉を聞いた途端ユーリの目が大きく見開かれたが、私はそれに気付く事なく言うとまた顔が赤くなって俯いてしまった
「っ! ユー、リ・・?」
急に肩を掴まれ後ろの壁に軽く押し付けられ目の前にいるユーリを見るといつも以上に表情を堅くしていた
「フレン、オレに負けられない事がもう一つあるって言ったんだよな」
「う、うん・・・」
「それでリアに言ったんだよな」
険しい表情をしているユーリを見て言葉が喉元で詰まりそのまま頷いた
「・・・・」
「・・ユーリ?」
「・・・その言葉、しっかりあいつに返してやるよ」
「え? っ・・、んっ!?///」
ユーリはそう言うと私の両肩を壁に押し付けその痛みに少しだけ顔を歪めているとふと視界が真っ黒になり、唇に暖かいモノが重なっていた
「っ、・・ふっ!///」
更に深く口付けされ息苦しくなってユーリの服を掴むとそのまま抱き締められる
「っ、・・・はぁ・・はぁ・・・///」
暫くするとゆっくりと唇が離れ、私は荒くなった息を整え出す
けど、ユーリは私を抱き締めたままだった
「ユー、リ・・・、・・んで?」
少しだけ涙目になってユーリを見て言うと、ユーリは小さく息を吐いた
「・・・いい加減気付けよ」
「え?」
「此処までして気付かないか?」
「・・・え、・・!?///」
その言葉を聞きある答えに辿り着き、ユーリは私の反応を見て静かに告げた
「オレはお前の事が好きだ」
「ユーリ・・・。・・もしかして、ユーリも?」
「ああ、ずっとリアの事が好きだった」
「!? ・・・・」
その言葉を聞き瞳が大きく揺らぎ胸がちくりとした
(じゃあ、あの時のキスも・・・? 私の事が好きだった、から・・・)
今までの事を思い出して困惑しているとユーリの手が私の頭に乗り、優しく撫でてくれた
「・・・悪い。混乱させる気はなかったんだけどな。けど、あいつが言っちまったんならオレも退く訳にはいかねえからな」
「ユーリ・・・」
「返事はリアの気持ちの整理が着いてからで良いぜ。まだ大仕事も残ってるんだしな」
「・・うん・・・」
「・・・そろそろ宿に戻るか」
言うとユーリは私を立たせてくれ、優しく微笑んで歩幅を合わせて歩いてくれた
*
宿屋に戻りユーリと別れるとそのまま部屋に戻った
「・・・・・」
パタンと扉の閉まる音が聞こえなくなると更に部屋は静まり返った
『『好きだ ――』』
「っ・・///」
二人に言われた言葉が蘇りそのままベッドに向かい、枕に顔を埋めた
「・・・っ・・///」
二人の気持ちは凄く嬉しかった
だけど、今までの関係が崩れてしまいそうで、そして明日からちゃんと今まで通りに接する事が出来るか解らなかった
「・・・私、どうしたら良いんだろう・・・っ」
考えても答えが出てこない事、そして色々と考えて出て来たその言葉は凄く震えていて更に胸が痛んだ
続く
あとがき
だあああああ、やっと出来たああああ!!
ホントにお疲れって言って欲しいだけです!!(それ某ロンリーなファイターだからι)
此処はかなり悩んで書きました
や、だってそろそろユーリとフレンの気持ちをリアちゃんに伝えなきゃって思ってたからね~
ご存じの通り甘いの書くのニガテなのでまるっと一日半掛けて書いた気がしますι
ま、此処はかなり大事な所だしこれからの事を考えると絶対に外せない所だからね
やっとVSっぽくなって来たので次回からも頑張るぞ~!
リアちゃん、色々頑張ってくれ
けど、こちらも前回と同じくちょ~っと書き直したのは言うまでもにゃいw←
2011.07.19(2012.01.06)
魔刻のネットワークの方はウィチル君がアスピオの人達と何とかする事になり、私達はデュークと星喰みの方を優先する事が出来るようになった
けど肝心の明星一号が直っていないようだったが、ヨーデル様の提案で明星一号を新たに作る事になりカウフマンさん達の協力も得て、新しく作る事になった
帝国とギルドが協力して作る、この街を作った時と同じように、世界を救う為の武器を・・・
こう言う風に協力出来る人達が世界の首脳陣だと思うと私達も安心して任せられる
そして今日は明日の決戦に向けて、早く休む事になった
114.告げられる想い
夜、みんな明日の事を考えているのか眠れず各々好きな場所に行っていた
私もまだ気持ちが高まっていて眠れないのもあるけど、何より星喰みを抑えている力の事で話す事があると言われ、兄さんの部屋に来ていた
「いよいよ明日、だな」
「うん。星喰みを抑えてる力はリアとセイの言霊使いの力、そしてボク達式神の力を合わせれば対抗出来るよ」
「デューク相手に力抑えてる状態で何処まで持つか。それが問題ではあるけどな」
「うん・・。デュークも本気で来るだろうしね・・・」
デュークの過去の出来事をシルフから聞いて彼がどれだけ友が愛したこの世界を救いたいかと言う事は伝わった
『・・・彼を、救って ――』
ふと、シエラさんのあの言葉を思い出した
(シエラさんが言ってた彼って誰の事なんだろう・・・)
そしてレレウィーゼでデュークと会った時、シルフからデュークの過去を聞いた時のシエラさんの様子がふと浮かんだ
(あの時のデュークとシエラさん、何処か寂しそうだった・・。それに、なんとなくだけど雰囲気も似てた・・・)
「・・・・」
「・・・ア、・・リア!」
「え? あ、ご、ごめん。何?」
アスラに呼ばれ顔を上げると少しだけ心配そうな顔をしている兄さんとアスラとフキがいた
「大丈夫か?」
「うん。ちょっと考え事してただけだから」
「ま、相手が相手なだけに考えるもの無理ないか」
兄さんの言葉に私は微笑した
「少し気分転換に外行って来たらどうだ」
「少しは気持ちも落ち着くと思うぜ」
「うん。じゃあそうする。お休みなさい」
「ああ」「「お休み」」
考え込んでいる私を見て一旦話しを切り上げた方が良いと思い、気を遣ってそう言ってくれ言葉に甘えて、そのまま外へ向かった
外に出ると気持ちの良い風が吹いていて空には綺麗な夜空が広がっていた
なんだか寝るにはまだ勿体ない気がして、街の外れにある小さな丘へと向かった
空には星喰みが漂っているにも関わらず、此処だけは綺麗に星が見えた
「・・・・・」
私はその綺麗な星空を見ながら、今までの事を思い返した
下町に帰って来た途端水道魔導器の魔刻が盗まれその犯人を追いユーリ達と旅立ち、新しい仲間、久しぶりに会う人達と出会い共に戦った
その事件が片付いたと思った矢先、また新たな事に巻き込まれ、ユーリとフレンが対立し、更に私もエステルも自分達の宿命を知る事となった
私達の宿命は過去から続いているもので、それはとても重くてツラいものだった
けど、その最終問題に明日私達は挑もうとしていた
「・・・・」
そこで一旦目を閉じて、ふとある人物の事を思った
「・・・デューク」
彼は今まで私達の事を何度か助けてくれ、私に何度も警告をしてくれた人で、始祖の隷長の長エルシフルの友だった人、
そして、シエラさんと知り合いかもしれない人
「・・・人の命と引き替えに、世界を救う・・か」
遠くに見える巨大な塔、タルカロン、此処にデュークはいる
デュークの事を考えれば、確かに人を信用出来なくなるし、友が好きな世界を、守りぬいた世界を守ろうとするのも解る
だけど、人の命と引き替えに、というのはあまりにもヒドすぎる
アレクセイとはやり方が違うにしろ、黙って事を運んでいるのには変わりない
「・・・・」
そのまま少し離れた空を見ると、星喰みが空を覆っていた
「・・・星喰みは、始祖の隷長の成れの果て・・・か」
デュークはこの星喰みを消す為に、人の命を代用してこの世界を救おうとしている
けど星喰みは、始祖の隷長が世界を守ろうとしてエアルを体内に取り込み過ぎて、制御が効かなくなったモノだった
「なら、尚更彼等も救ってあげなきゃ・・・」
「リア?」
そう思っていると聞き慣れた声が聞こえ地上に目を戻すとフレンが私の方に歩いて来た
「どうしたんだい、こんな時間に」
「なんだか寝付けなくて、気分転換に外に出て来たの」
「明日の事を考えるとなかなか寝付けないか」
「うん・・。フレンは何してたの?」
「僕は見回りだよ。この街には結界が無いからね」
団長代行になっても自分から進んでやる所はやっぱりフレンらしいなと思って小さく笑った
「ね、見回り一緒に行ってもいい?」
「え?」
「散歩してたら少しは気が晴れると思うし」
「そうだね。じゃあ行こうか」
寝付けない時の夜の散歩と言うのは昔からやっていたし、フレンもその事を知ってるからなのか直ぐに微笑んで了承してくれ、私達は並んで歩き出した
「いよいよ明日、あの星喰みに挑むんだね」
「うん。デュークも星喰みも一筋縄でいく相手じゃないと思う。けど、みんなの協力があるから絶対に負けられない」
「そうだね。僕達も殿下も、そしてギルドのみんなもリア達に負けないように頑張らないとな」
そこで言葉を切ってお互いに笑い合った後、ふと思い出しフレンを見た
「そういえば、ユーリと剣を混じり合わせてる時、ユーリもフレンもいつも以上に活き活きしてたね」
「え?」
「あんなに楽しそうにしてるの久しぶりに見たな」
「魔物の群れに入った時よりも楽しそうにしてたかい?」
「うん。あの時よりも・・。多分、ユーリもフレンも本気で真剣勝負したからだと思うよ」
二人の真剣勝負、あの戦いはいつも以上に、そして今まで以上に本気で戦っていた
「結局負けてしまったけどね」
「でも互角だったし、悔しいって顔してなかったよ?」
「そうだね」
私の言葉を聞きフレンは苦笑した
それは多分お互いに成長し本気で戦えた事に納得しているからだった
「兄さんも言ってたけど、私もユーリとフレンの成長した戦いが見られて良かったな」
「リア・・・」
自分の事のように嬉しい顔をして私はそう言うとフレンも微笑んでくれた
「でも、傷を治して貰ってる時にリアが言った言葉には正直驚いたけどね」
「え?」
何か変な事言ったっけ? と思っているとフレンは小さく笑って言葉を続けた
「カッコ良かった、って言った事だよ」
「え、・・あ、」
そう言えばあの時素直な感想を述べたんだったと思っていると、フレンはくすくすと笑った
「な、なんで笑うの?」
「いや、リアからあんな言葉が聞けるなんて思ってなかったからね」
「変、だった?」
「いや、変じゃないよ。だた」
「ただ・・?」
その言葉が気になって歩みを止め首を傾げるとフレンは小さく微笑んで続きを言わなかった
「・・・?」
それを見てまた疑問符を出しているとフレンは表情を変え、
「けど、負けられないものはもう一つあるんだ」
言うと私の頬に触れじっと私を見た
「? フレン?」
「・・・こんな時に言うのは不謹慎だけど、」
「!?」
途端、彼との距離が縮まり唇に暖かいモノが重なる
「っ!?///」
それに驚いていると今度はそのまま引き寄せられ抱き締められた
「リアの事が好きなんだ」
「!?」
唇が離れたと思っていると更に強く抱き締められ耳元でそう囁かれた
「ずっと、好きだった」
「・・・・」
何か言葉を言おうとするけど、旨く言葉が出ない上に口がパクパクとなっていた
そんな私を見かねてかフレンは微笑して私を放し、優しく微笑んだ
「急にごめん。でも、どうしてもリアに聞いて欲しかったんだ」
「・・・フレン」
「返事は直ぐに出さなくて良いよ。ゆっくり考えてくれれば良いから」
言うとフレンはそのまま見回りに戻って行き、私は暫く呆然とその場に立ち竦んでいた
*
あれから暫くして私は街の外に出て来た
と言ってもそんなに遠くに行く訳にはいかないので、街の入り口の城壁に背を預け膝を抱え顔を埋め、水の流れる音を聞いていた
『リアの事が好きなんだ』
「っ・・・///」
だけど、先程のフレンの言葉と行動が頭を過ぎり顔が赤くなったのを感じ更に膝を抱えた
(胸が苦しい・・・。さっきの事を考えると・・凄く・・・)
返事はゆっくり考えて良い、と言われた
この後の大仕事を考えれば当然と言えば当然の事だし、私自身の気持ちの整理も含めそう言ってくれたのだろう
「リア? 何してんだ、こんなとこで」
誰かが街との入り口を繋いでいる橋を渡る音が聞こえたと思ったら次にまた聞き慣れた声が聞こえゆっくりと顔を上げると
「・・・ユーリ」
そこにはユーリがいた
ユーリは私の姿を見るなり驚いた顔をしたが直ぐにいつもの顔をして私の隣に座った
「どうした、寝付けないのか?」
「うん。ユーリも?」
「ああ」
やっぱり明日の事を考えるとみんな寝付けないでいるのは当然なのだろう
ユーリが隣に座ったのを確認すると夜空を見ながら言った
「色々遭ったけど、明日で決着が付くんだね」
「ああ。ま、正直世界まで絡んでくるとは思ってなかったけどな・・・」
「最初は水道魔導器の魔刻を取り戻す事だったのに、それから色々と遭って・・・」
そう、そこから色々な事が遭った
それは楽しい事だったり、ツラい事だったり、本当に色々
「けど、オレは旅に出られて良かったと思うぜ。色んなもん見れて、色んな奴と出会えたしな」
「みんなとも出会えたしね」
「ああ」
ユーリやみんな、勿論私や兄さん達も一緒に旅して来て色々と変化したり成長した
みんなの成長が自分の事のように嬉しく思うのは信頼してるからなんだろうな
そう思って小さく笑うとユーリも同じように笑ってくれた
「ユーリも、・・・本当に強くなったよね」
「ん?」
急にそう言われユーリは私の方に視線を向ける
「夕方の事だよ。ユーリとずっと旅してたけど、あそこまで強くなってたのには吃驚だったな」
ユーリはこの旅の中で本当に強くなった
剣の腕だけじゃなく、ユーリは自分の信じる意志も強くなった
ラゴウやキュモールを手に懸けた時の事、それを私やフレンやみんなに知られた時でも自分の信じた事を貫いた強さ、ドンの最期の介錯を引き受け、その意志と強さを知り自分の強さに変え、そして、私やエステル、みんなを支えたり救ってくれた事・・・
「・・・本当にユーリも成長したよ」
「そうか? オレはそんなに変わった気はしねえけどな」
「ううん・・・。ユーリがいたから、私もみんなも此処まで来られたんだよ」
「ま、そういう事にしとくか」
自分の事のように微笑む私を見てユーリもそれ以上は何も言うまいと言うようにそこで話しを切り上げた
けど、その表情はどことなく嬉しそうにしていた事に私はちゃんと気付いていた
「・・・で、リアは何悩んでたんだ」
「え?」
唐突にそう言われユーリを見るといつも通りの表情を浮かべていたけど、でも心配してくれているのが解った
「星喰み解放する力の事か?」
「ううん、そっちは大丈夫」
「なら、何悩んでんだ」
「・・・・」
そう言われ思わず視線を落としてしまう
「・・・あの、ね」
暫く考えてやっと出た声は情けない程か細い声だった
「兄さん達と話し終わった後、気分転換に外に出て来たの。そうしたら丁度フレンと会って、散歩も予て一緒に見回りに行ったの。明日の事とか色々と話してて・・・」
そこまで言うとまた胸がちくりと痛みを感じ少しだけ口を紡ぎ、小さく息を吸ってその続きを話した
「その後にも色々と話してたんだけど、ユーリに負けられない事がもう一つあるって言った後、・・フレンに・・・キス・・されて、好きだって言われた・・・///」
「!」
その言葉を聞いた途端ユーリの目が大きく見開かれたが、私はそれに気付く事なく言うとまた顔が赤くなって俯いてしまった
「っ! ユー、リ・・?」
急に肩を掴まれ後ろの壁に軽く押し付けられ目の前にいるユーリを見るといつも以上に表情を堅くしていた
「フレン、オレに負けられない事がもう一つあるって言ったんだよな」
「う、うん・・・」
「それでリアに言ったんだよな」
険しい表情をしているユーリを見て言葉が喉元で詰まりそのまま頷いた
「・・・・」
「・・ユーリ?」
「・・・その言葉、しっかりあいつに返してやるよ」
「え? っ・・、んっ!?///」
ユーリはそう言うと私の両肩を壁に押し付けその痛みに少しだけ顔を歪めているとふと視界が真っ黒になり、唇に暖かいモノが重なっていた
「っ、・・ふっ!///」
更に深く口付けされ息苦しくなってユーリの服を掴むとそのまま抱き締められる
「っ、・・・はぁ・・はぁ・・・///」
暫くするとゆっくりと唇が離れ、私は荒くなった息を整え出す
けど、ユーリは私を抱き締めたままだった
「ユー、リ・・・、・・んで?」
少しだけ涙目になってユーリを見て言うと、ユーリは小さく息を吐いた
「・・・いい加減気付けよ」
「え?」
「此処までして気付かないか?」
「・・・え、・・!?///」
その言葉を聞きある答えに辿り着き、ユーリは私の反応を見て静かに告げた
「オレはお前の事が好きだ」
「ユーリ・・・。・・もしかして、ユーリも?」
「ああ、ずっとリアの事が好きだった」
「!? ・・・・」
その言葉を聞き瞳が大きく揺らぎ胸がちくりとした
(じゃあ、あの時のキスも・・・? 私の事が好きだった、から・・・)
今までの事を思い出して困惑しているとユーリの手が私の頭に乗り、優しく撫でてくれた
「・・・悪い。混乱させる気はなかったんだけどな。けど、あいつが言っちまったんならオレも退く訳にはいかねえからな」
「ユーリ・・・」
「返事はリアの気持ちの整理が着いてからで良いぜ。まだ大仕事も残ってるんだしな」
「・・うん・・・」
「・・・そろそろ宿に戻るか」
言うとユーリは私を立たせてくれ、優しく微笑んで歩幅を合わせて歩いてくれた
*
宿屋に戻りユーリと別れるとそのまま部屋に戻った
「・・・・・」
パタンと扉の閉まる音が聞こえなくなると更に部屋は静まり返った
『『好きだ ――』』
「っ・・///」
二人に言われた言葉が蘇りそのままベッドに向かい、枕に顔を埋めた
「・・・っ・・///」
二人の気持ちは凄く嬉しかった
だけど、今までの関係が崩れてしまいそうで、そして明日からちゃんと今まで通りに接する事が出来るか解らなかった
「・・・私、どうしたら良いんだろう・・・っ」
考えても答えが出てこない事、そして色々と考えて出て来たその言葉は凄く震えていて更に胸が痛んだ
続く
あとがき
だあああああ、やっと出来たああああ!!
ホントにお疲れって言って欲しいだけです!!(それ某ロンリーなファイターだからι)
此処はかなり悩んで書きました
や、だってそろそろユーリとフレンの気持ちをリアちゃんに伝えなきゃって思ってたからね~
ご存じの通り甘いの書くのニガテなのでまるっと一日半掛けて書いた気がしますι
ま、此処はかなり大事な所だしこれからの事を考えると絶対に外せない所だからね
やっとVSっぽくなって来たので次回からも頑張るぞ~!
リアちゃん、色々頑張ってくれ
けど、こちらも前回と同じくちょ~っと書き直したのは言うまでもにゃいw←
2011.07.19(2012.01.06)