星喰み編
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ダングレストとノードポリカに行って戻って来た私達は唖然とした
何もなかった野原に街が出来ていたのだ
流石、天下の幸福の市場・・・
みんな徹夜で頑張ったのか、騎士団も大工ギルドの人達も地面に横になったまま寝ていた
フレンに話を聞くとヨーデル様も来て貰える事になり今は船で向かっているそうだ
だけど、今は一刻を争う時なのでジュディスがバウルで迎えに行く事にした
そして今此処に帝国からフレンとヨーデル様、ユニオンからはハリーとカウフマンさん、戦士の殿堂からはナッツさんと言う世界の首脳陣が集まり、私達は今この世界で何が起こっているのか、そして魔導器を精霊に変える事や今までの事を話した
勿論、私達言霊使いと式神の事も・・・
113.親友
「精霊・・・星喰み・・・デューク・・・」
「言霊使いに式神・・・」
「世界中の魔刻を精霊の変える・・・」
「・・・途方もない話ですね・・・」
私達の話を聞いたヨーデル様達はやっぱり信じられない、と言った顔をしていた
「信じがたいだろうがな。これが今オレ達のぶつかってる現実だ」
「魔導器がこの世から無くなる・・・結界も無くなる。大混乱になるな」
「でなきゃデュークか星喰みにやられて一巻の終わり」
「選択の余地はないが・・・果たして受け入れられるか?」
レイヴンの言葉にハリーも頷いて答え、エステルも必死に語り掛ける
「誰も破滅の未来を望んでいないと思います。辛くても生きていれば前に進めます」
「うん。だからボク達はやるんだ」
「・・・人々の混乱を防ぎ、明日へ導くのは帝国の務め。今こそ人々の為の知性を敷く時なのですね」
「我々も忙しくなりますね」
「人々の生活基盤を整えて魔導器に変わる産業を確立・・・燃えるわね」
「結界無しで魔物を退ける為の方法も考えなければ」
「傭兵ギルドや魔狩りの剣だけじゃ賄えねえしな」
「騎士団の再編をギルドと合同で行うというのはどうでしょう?」
「面白い試みだけど、すんなりいくかしら?」
思っていた以上に話しが進み、前を向いている彼等を見て私達は安堵した顔をした
彼等に任せれば大丈夫だ
そう思って皆ユーリを見ると、ユーリは私達の視線に気付くと頷き歩き出し私達もその後に続いた
「最後まで立ち会わないのか?」
騎士団本部から離れようとしているとフレンが私達を呼び止めた
「ああいうのはオレ等の仕事じゃねぇだろ」
「そうそう。お偉いさんが纏めれば良いんじゃない?」
「彼等が思うよりも人々は今の生活から離れられないと思うけれど、彼等はそれを整えるのが仕事。私達の仕事は・・・」
「星喰みをぶっ潰してデュークのヤツを止める事」
「そして、リアの力も解放するさ」
「うむ、うちらにはうちらの出番が待っておるのじゃ」
「・・・そうか」
「すまねぇな。面倒な事は全部お前等に回しちまって」
「こっちの台詞だ。いつも一番辛い所を君達に任せてしまってすまない」
「ううん、お互い様だもん」
「そうだな」
フレンは首を横に振り私達はお互いの顔を見て小さく笑った
「さぁ、ボク等も頑張らなくっちゃ!」
「でも世界中の魔刻にアクセスする方法が・・・」
「それなんですけど・・・」
リタがそう言うとフレンの後ろにいたウィチル君が口を開いて数歩前に出た
「アレクセイやバルボスの残した研究成果の中に、魔導器間のネットワークを構築するみたいな記述が・・・」
「本当!? それ今どこにあるの!?」
「えっと、僕の私物と一緒に運んで来ました・・・。あ、ちょっと、ねえ、人の荷物勝手に見る気ですか!?」
「あ! わたしも行って来ます」
リタはその言葉を聞き、直ぐさま走って行き、慌ててウィチル君もエステルも走って行った
「・・・行っちゃった」
「相変わらず、凛々の明星は賑やか・・・うんにゃ、五月蠅いのじゃ」
「それがボク等の流儀なんだよ」
「少し、望みが繋がったようね」
「ええ。あの子がああなったらきっと答えを見つけてくれるわ」
「だな。期待して待ってようぜ」
「じゃあ俺等は今のうちに休んどくか」
そう言って兄さん達が歩き出し私も続こうとしたがフレンがユーリを呼び止めた
「ユーリ、ちょっと良いかい?」
「ん、ああどうした?」
そして何か話を終えると二人は街の外へ歩き出した
「・・・?」
アスラとラピードと一緒に二人の後を追うと二人は街から少し離れた所で止まった
「改まってどうしたんだ?」
「君はこのまま行くのか?」
「あん?」
「此処に世界の指揮を執る人達が集まってる。今こそ君の功績を称えられる時だ」
「またその話か」
「僕の功績の半分、いやそれ以上が本当は君の・・・」
「良いじゃねぇか。誰がやったかなんてどうでも」
「良くないさ。何故自分だけ損な選択をする? どうして辛い部分を全部背負い込もうとする? 僕には背負えないからか?」
フレンはそう言って少しだけ悲しそうな顔をした
確かにユーリは損な役回りをずっと引き受けている
それは身近にいる私や兄さん、アスラ、ラピード、そしてフレンが一番解っている事であり、ユーリもそれを実感している
「・・・お前はオレが背負えないもの、背負ってくれてんじゃねえか。オレが好き勝手やれてんのが誰のお陰かって事くらい、分かってるつもりだぜ」
「だけど・・・!!」
フレンは一度言葉を切り首を横に振った
「・・・駄目だ、どうも余計な言葉ばかり出て来てしまう」
「フッ、なら・・・」
ユーリはそう言って剣を抜いた
「こいつで来いよ」
「ユーリ・・・!」
「お前が口でオレに勝てる訳ねぇだろ。お前がオレに勝てるのは・・・こいつだろ?」
「そうか・・・そうだったな。君はいつもそうだ」
そしてフレンも剣を抜き、ユーリの剣に自分の剣を重ね、お互いに重ねた剣をじっと見る
「思いは全てこの剣に乗せる!」
「・・・良いぜ、きな!」
ユーリの言葉を合図に剣を弾き後ろに下がり、そして体制を整えて走り出した
「・・・始まったね」
「うん。二人共互角だから、どっちが勝ってもおかしくない」
「けど、ボク等が知っている以上に本気で戦うと思うよ」
「うん・・・」
私とアスラはそこで言葉を切り、少し先で剣を交じり合わせているユーリとフレンに目を戻した
互いに向かって行き剣を交じり合わせ、距離を取り仕掛けて行く
数分、剣を交じり合わせているとユーリがフレンを見て口を開いた
「更に腕を上げたな」
「腕を上げたのは君も同じだろ」
「お互い無駄に年月重ねて来た訳じゃないか」
「でもこうして剣を合わせるのはもう何年振りだろう」
「闘技場でも戦っただろう、忘れちまったか?」
「違うよ。此処まで色々遭ったからね。それに」
「それに?」
「あの時と今は何か違うんだ」
「奇遇だな。オレもなんかあの時と何か違う気がする」
「何だろうこの感じ」
「何だって良いだろ、オレは全力でお前にぶつかって行く!」
「それじゃあ僕も全力で君を倒す!」
「倒せるものなら倒してみろ!」
言ってお互いに向かって行き、剣を交じり合わせる
だけどその顔は闘技場で見た顔よりも、魔物の群れの中に入った時に見た顔よりも、もっと輝いていて活き活きしていた
(本気で楽しんでる)
ユーリとアスラの言う通り、ユーリもフレンもお互いに腕を上げ今まで以上に本気でぶつかり合っている
「爆砕陣!!」
「爪竜連牙斬!!」
「円閃牙!!」
「光翔翼!!」
「っと、もう一つ!!」
「甘いよ!!」
(・・・凄い、二人共・・・本当に腕を上げてる・・・)
互角の戦い、だけど、今目の前で繰り広げられている二人の戦いを見て、今までよりも本当に互いの力を全力で出してぶつかり合っていて、一瞬私の知ってるユーリとフレンじゃないようにも思えた
「そこっ!!」
「まだまだぁ!!」
だが、一瞬の気の緩みが、この勝負の勝敗を決める事になる
「虎牙破斬!!」
「断空牙!!」
「・・・・・、っ」
二人の迫力に押されてか私自身も気を緩めないようにし、両手を胸の前に持ってきてギュッと握っていた
二人の戦いを私もアスラも、そしてラピードも目を離さずじっと見ていた
「そろそろいかせてもらうよ!」
「飛ばしていきますか!」
同時に力を解放すると、距離を置いて大技を繰り出す体制に入った
(これで勝負は決まる・・・!)
「此処でお終いにするよ! ・・はぁぁっ! 光竜滅牙槍!!」
「貫け! 鮮烈なる刃!! 無辺の闇を鋭く斬り裂き、仇名す者を微塵に砕く!!」
ユーリはフレンの隙を見て、そのまま飛び込む
「漸毅狼影陣ッ!!」
「ぐあっ!」
ユーリの大技が見事にヒットし、フレンは地面に倒れそれを見るとユーリもゆっくりと地面に倒れ、二人は大の字になって荒い息を吐き呼吸を整えていた
「剣でも・・・負けてしまったな」
「はっはっは。ざまぁ見ろ」
「・・・腕を上げたな、ユーリ」
「・・・お前もな。昔のままのお前だったら楽勝だったはずなんだがな」
「・・・昔、剣に誓ったっけ。人々の笑顔の為に戦うのだと」
フレンは剣を見つめながら言う
「ああ、例え歩む道が違っても」
「背負うものが違っても」
「賛辞を受けても、罵られても・・・」
「騎士もギルドもそれは変わらない。そうだね?」
ユーリも剣を掲げ見つめる
「オレ達は互いに手の届かない所がある」
「だから僕達は一人ではない」
「「・・・・・」」
そしてお互い無言で剣を重ねた
「フッ」「ハッ」
「「はははははは」」
そしてお互いに小さく笑い、声を出して笑い出し、そんな二人の嬉しそうな顔を見て私も自然と微笑んでいた
「やっぱりあの二人はああでなくちゃね」
「うん。ユーリとフレン、やっぱり親友、よね」
「ワン」
そしてゆっくりと二人の元へ向か出す
「二人共お疲れ様」
「リア。アスラにラピード」
「お前等いつから・・・」
「じっとしてて、今治すから」
身体を起こそうとしていた二人にそう声を掛けるとユーリとフレンは小さく笑ってまた横になった
「・・・もしかして見てたのかい?」
「うん、ずっとね」
「ずっと、って事は最初からか?」
「うん」
「・・・参ったなぁ」
「お陰でイイもん見れたけどな」
「「セイ!」」「兄さん!」
フレンが照れくさそうに言っていると突然兄さんの声が聞こえ振り向くと、いつの間にか私達の後ろに兄さんが立っていた
「兄さん、いつの間に・・・」
「つか、見れたって事はセイも見てたのか?」
「ああ。お前等、ホント腕上げたな」
兄さんはいつも以上に優しい声で言うとユーリとフレンは嬉しそうに笑っていた
子供の頃からずっと私達の面倒を見ていた兄さんにしてみれば、ユーリとフレンの成長振りは本当に嬉しかったのだろう
それはアスラも同じだったのか、アスラも笑っていた
「・・・ユーリ、フレン」
「「?」」
ふと聞こえた言葉にユーリとフレンはそのまま私の方へ視線を向け、
「二人共、凄くカッコ良かったよ」
「「!」」
そのまま優しく微笑んでそう告げると、ユーリとフレンは驚いて目を瞠った
「・・・急にどうしたんだよ」
「さっきの戦いを見て思った事を素直に言っただけだよ?」
二人の戦いを見て色々と感じた事があった
けど、今口にした言葉は、本当に楽しそうに、そしてお互いの気持ちや力を素直にぶつけ合っている二人を見て感じた事だった
「・・・、サンキュ」「・・・、ありがとう、リア」
「うん」
ニコリとしたままでいるとユーリとフレンはお互いに顔を見合わせ、小さく微笑んでそう言い、私もまた微笑み返し、そんな私達の様子を見ていた兄さんもアスラもラピードも笑っていた
「はい、これで大丈夫。・・・ぁ・・・、」
「どうした?」
二人の傷もなくなった所で私は手を止めるとユーリもフレンも起き上がり、服や鎧に付いていた土埃を叩いていると私が何かに気付いた声が聞こえ兄さんが私を見たが直ぐに私が見ている先を見てつられてユーリもフレンもそこを見た
「綺麗・・・」
二人が戦い、その後治療をしている間にいつの間にか綺麗な夕空になっていた
「「「「・・・・・」」」」
その夕日を私達は暫く黙ったまま見ていた
そしてふと子供の頃の事を思い出した
「なんかガキん時みたいだな」
「ああ。いつもこの位の時間まで遊んでたっけ」
「あの頃、凄く一生懸命遊んでたね」
「そうだな」
ユーリもフレンも兄さんも、同じ事を思ったのかそれを口にして私達は微笑んでいた
あの頃はこんな風に四人一緒にいる事が当たり前で、毎日夕空になるまで夢中で遊んでいた
大人になって会う機会も減り、会ってもなかなかゆっくり出来なかったし、最近は色々と遭って大変だったけど、
それでも、
今だけでもこんな風に私達だけで同じ事を共有しあえてる事が素直に嬉しかった
そう思いながら私は小さく微笑んで、空に広がる綺麗な夕空を眺めだした
「・・・良い親友、だね」
「ワン・・・」
夕空を眺めているリア達を見て、アスラはラピードだけに聞こえる声でそう言い、その言葉にラピードも同意してリア達を見ていた
続く
あとがき
ふうう~~、なんとか書き上がったーーー!!!
けど、本当は一回仕上がってたんですけど、読み返した時にやっぱり何か納得いかなくて戦闘シーンやら最後の方やら色々と書き直しました
タイトル通り、此処はやっぱりユーリとフレン、そして下町幼馴染み組にとって大事な所だからねw
ま、珍しくリアちゃんがカッコ良かったとか言っちゃってますがねww
最後はやっぱり幼馴染み組のほのぼので箱版とちょっと変わった感じでしめました!
さて、次からは思いっきり変わる予定です!!
次回は遂に・・・! です!(いや、それじゃ分かんないしι)
では、次回をお楽しみに!!
2011.07.18(2012.01.05)
何もなかった野原に街が出来ていたのだ
流石、天下の幸福の市場・・・
みんな徹夜で頑張ったのか、騎士団も大工ギルドの人達も地面に横になったまま寝ていた
フレンに話を聞くとヨーデル様も来て貰える事になり今は船で向かっているそうだ
だけど、今は一刻を争う時なのでジュディスがバウルで迎えに行く事にした
そして今此処に帝国からフレンとヨーデル様、ユニオンからはハリーとカウフマンさん、戦士の殿堂からはナッツさんと言う世界の首脳陣が集まり、私達は今この世界で何が起こっているのか、そして魔導器を精霊に変える事や今までの事を話した
勿論、私達言霊使いと式神の事も・・・
113.親友
「精霊・・・星喰み・・・デューク・・・」
「言霊使いに式神・・・」
「世界中の魔刻を精霊の変える・・・」
「・・・途方もない話ですね・・・」
私達の話を聞いたヨーデル様達はやっぱり信じられない、と言った顔をしていた
「信じがたいだろうがな。これが今オレ達のぶつかってる現実だ」
「魔導器がこの世から無くなる・・・結界も無くなる。大混乱になるな」
「でなきゃデュークか星喰みにやられて一巻の終わり」
「選択の余地はないが・・・果たして受け入れられるか?」
レイヴンの言葉にハリーも頷いて答え、エステルも必死に語り掛ける
「誰も破滅の未来を望んでいないと思います。辛くても生きていれば前に進めます」
「うん。だからボク達はやるんだ」
「・・・人々の混乱を防ぎ、明日へ導くのは帝国の務め。今こそ人々の為の知性を敷く時なのですね」
「我々も忙しくなりますね」
「人々の生活基盤を整えて魔導器に変わる産業を確立・・・燃えるわね」
「結界無しで魔物を退ける為の方法も考えなければ」
「傭兵ギルドや魔狩りの剣だけじゃ賄えねえしな」
「騎士団の再編をギルドと合同で行うというのはどうでしょう?」
「面白い試みだけど、すんなりいくかしら?」
思っていた以上に話しが進み、前を向いている彼等を見て私達は安堵した顔をした
彼等に任せれば大丈夫だ
そう思って皆ユーリを見ると、ユーリは私達の視線に気付くと頷き歩き出し私達もその後に続いた
「最後まで立ち会わないのか?」
騎士団本部から離れようとしているとフレンが私達を呼び止めた
「ああいうのはオレ等の仕事じゃねぇだろ」
「そうそう。お偉いさんが纏めれば良いんじゃない?」
「彼等が思うよりも人々は今の生活から離れられないと思うけれど、彼等はそれを整えるのが仕事。私達の仕事は・・・」
「星喰みをぶっ潰してデュークのヤツを止める事」
「そして、リアの力も解放するさ」
「うむ、うちらにはうちらの出番が待っておるのじゃ」
「・・・そうか」
「すまねぇな。面倒な事は全部お前等に回しちまって」
「こっちの台詞だ。いつも一番辛い所を君達に任せてしまってすまない」
「ううん、お互い様だもん」
「そうだな」
フレンは首を横に振り私達はお互いの顔を見て小さく笑った
「さぁ、ボク等も頑張らなくっちゃ!」
「でも世界中の魔刻にアクセスする方法が・・・」
「それなんですけど・・・」
リタがそう言うとフレンの後ろにいたウィチル君が口を開いて数歩前に出た
「アレクセイやバルボスの残した研究成果の中に、魔導器間のネットワークを構築するみたいな記述が・・・」
「本当!? それ今どこにあるの!?」
「えっと、僕の私物と一緒に運んで来ました・・・。あ、ちょっと、ねえ、人の荷物勝手に見る気ですか!?」
「あ! わたしも行って来ます」
リタはその言葉を聞き、直ぐさま走って行き、慌ててウィチル君もエステルも走って行った
「・・・行っちゃった」
「相変わらず、凛々の明星は賑やか・・・うんにゃ、五月蠅いのじゃ」
「それがボク等の流儀なんだよ」
「少し、望みが繋がったようね」
「ええ。あの子がああなったらきっと答えを見つけてくれるわ」
「だな。期待して待ってようぜ」
「じゃあ俺等は今のうちに休んどくか」
そう言って兄さん達が歩き出し私も続こうとしたがフレンがユーリを呼び止めた
「ユーリ、ちょっと良いかい?」
「ん、ああどうした?」
そして何か話を終えると二人は街の外へ歩き出した
「・・・?」
アスラとラピードと一緒に二人の後を追うと二人は街から少し離れた所で止まった
「改まってどうしたんだ?」
「君はこのまま行くのか?」
「あん?」
「此処に世界の指揮を執る人達が集まってる。今こそ君の功績を称えられる時だ」
「またその話か」
「僕の功績の半分、いやそれ以上が本当は君の・・・」
「良いじゃねぇか。誰がやったかなんてどうでも」
「良くないさ。何故自分だけ損な選択をする? どうして辛い部分を全部背負い込もうとする? 僕には背負えないからか?」
フレンはそう言って少しだけ悲しそうな顔をした
確かにユーリは損な役回りをずっと引き受けている
それは身近にいる私や兄さん、アスラ、ラピード、そしてフレンが一番解っている事であり、ユーリもそれを実感している
「・・・お前はオレが背負えないもの、背負ってくれてんじゃねえか。オレが好き勝手やれてんのが誰のお陰かって事くらい、分かってるつもりだぜ」
「だけど・・・!!」
フレンは一度言葉を切り首を横に振った
「・・・駄目だ、どうも余計な言葉ばかり出て来てしまう」
「フッ、なら・・・」
ユーリはそう言って剣を抜いた
「こいつで来いよ」
「ユーリ・・・!」
「お前が口でオレに勝てる訳ねぇだろ。お前がオレに勝てるのは・・・こいつだろ?」
「そうか・・・そうだったな。君はいつもそうだ」
そしてフレンも剣を抜き、ユーリの剣に自分の剣を重ね、お互いに重ねた剣をじっと見る
「思いは全てこの剣に乗せる!」
「・・・良いぜ、きな!」
ユーリの言葉を合図に剣を弾き後ろに下がり、そして体制を整えて走り出した
「・・・始まったね」
「うん。二人共互角だから、どっちが勝ってもおかしくない」
「けど、ボク等が知っている以上に本気で戦うと思うよ」
「うん・・・」
私とアスラはそこで言葉を切り、少し先で剣を交じり合わせているユーリとフレンに目を戻した
互いに向かって行き剣を交じり合わせ、距離を取り仕掛けて行く
数分、剣を交じり合わせているとユーリがフレンを見て口を開いた
「更に腕を上げたな」
「腕を上げたのは君も同じだろ」
「お互い無駄に年月重ねて来た訳じゃないか」
「でもこうして剣を合わせるのはもう何年振りだろう」
「闘技場でも戦っただろう、忘れちまったか?」
「違うよ。此処まで色々遭ったからね。それに」
「それに?」
「あの時と今は何か違うんだ」
「奇遇だな。オレもなんかあの時と何か違う気がする」
「何だろうこの感じ」
「何だって良いだろ、オレは全力でお前にぶつかって行く!」
「それじゃあ僕も全力で君を倒す!」
「倒せるものなら倒してみろ!」
言ってお互いに向かって行き、剣を交じり合わせる
だけどその顔は闘技場で見た顔よりも、魔物の群れの中に入った時に見た顔よりも、もっと輝いていて活き活きしていた
(本気で楽しんでる)
ユーリとアスラの言う通り、ユーリもフレンもお互いに腕を上げ今まで以上に本気でぶつかり合っている
「爆砕陣!!」
「爪竜連牙斬!!」
「円閃牙!!」
「光翔翼!!」
「っと、もう一つ!!」
「甘いよ!!」
(・・・凄い、二人共・・・本当に腕を上げてる・・・)
互角の戦い、だけど、今目の前で繰り広げられている二人の戦いを見て、今までよりも本当に互いの力を全力で出してぶつかり合っていて、一瞬私の知ってるユーリとフレンじゃないようにも思えた
「そこっ!!」
「まだまだぁ!!」
だが、一瞬の気の緩みが、この勝負の勝敗を決める事になる
「虎牙破斬!!」
「断空牙!!」
「・・・・・、っ」
二人の迫力に押されてか私自身も気を緩めないようにし、両手を胸の前に持ってきてギュッと握っていた
二人の戦いを私もアスラも、そしてラピードも目を離さずじっと見ていた
「そろそろいかせてもらうよ!」
「飛ばしていきますか!」
同時に力を解放すると、距離を置いて大技を繰り出す体制に入った
(これで勝負は決まる・・・!)
「此処でお終いにするよ! ・・はぁぁっ! 光竜滅牙槍!!」
「貫け! 鮮烈なる刃!! 無辺の闇を鋭く斬り裂き、仇名す者を微塵に砕く!!」
ユーリはフレンの隙を見て、そのまま飛び込む
「漸毅狼影陣ッ!!」
「ぐあっ!」
ユーリの大技が見事にヒットし、フレンは地面に倒れそれを見るとユーリもゆっくりと地面に倒れ、二人は大の字になって荒い息を吐き呼吸を整えていた
「剣でも・・・負けてしまったな」
「はっはっは。ざまぁ見ろ」
「・・・腕を上げたな、ユーリ」
「・・・お前もな。昔のままのお前だったら楽勝だったはずなんだがな」
「・・・昔、剣に誓ったっけ。人々の笑顔の為に戦うのだと」
フレンは剣を見つめながら言う
「ああ、例え歩む道が違っても」
「背負うものが違っても」
「賛辞を受けても、罵られても・・・」
「騎士もギルドもそれは変わらない。そうだね?」
ユーリも剣を掲げ見つめる
「オレ達は互いに手の届かない所がある」
「だから僕達は一人ではない」
「「・・・・・」」
そしてお互い無言で剣を重ねた
「フッ」「ハッ」
「「はははははは」」
そしてお互いに小さく笑い、声を出して笑い出し、そんな二人の嬉しそうな顔を見て私も自然と微笑んでいた
「やっぱりあの二人はああでなくちゃね」
「うん。ユーリとフレン、やっぱり親友、よね」
「ワン」
そしてゆっくりと二人の元へ向か出す
「二人共お疲れ様」
「リア。アスラにラピード」
「お前等いつから・・・」
「じっとしてて、今治すから」
身体を起こそうとしていた二人にそう声を掛けるとユーリとフレンは小さく笑ってまた横になった
「・・・もしかして見てたのかい?」
「うん、ずっとね」
「ずっと、って事は最初からか?」
「うん」
「・・・参ったなぁ」
「お陰でイイもん見れたけどな」
「「セイ!」」「兄さん!」
フレンが照れくさそうに言っていると突然兄さんの声が聞こえ振り向くと、いつの間にか私達の後ろに兄さんが立っていた
「兄さん、いつの間に・・・」
「つか、見れたって事はセイも見てたのか?」
「ああ。お前等、ホント腕上げたな」
兄さんはいつも以上に優しい声で言うとユーリとフレンは嬉しそうに笑っていた
子供の頃からずっと私達の面倒を見ていた兄さんにしてみれば、ユーリとフレンの成長振りは本当に嬉しかったのだろう
それはアスラも同じだったのか、アスラも笑っていた
「・・・ユーリ、フレン」
「「?」」
ふと聞こえた言葉にユーリとフレンはそのまま私の方へ視線を向け、
「二人共、凄くカッコ良かったよ」
「「!」」
そのまま優しく微笑んでそう告げると、ユーリとフレンは驚いて目を瞠った
「・・・急にどうしたんだよ」
「さっきの戦いを見て思った事を素直に言っただけだよ?」
二人の戦いを見て色々と感じた事があった
けど、今口にした言葉は、本当に楽しそうに、そしてお互いの気持ちや力を素直にぶつけ合っている二人を見て感じた事だった
「・・・、サンキュ」「・・・、ありがとう、リア」
「うん」
ニコリとしたままでいるとユーリとフレンはお互いに顔を見合わせ、小さく微笑んでそう言い、私もまた微笑み返し、そんな私達の様子を見ていた兄さんもアスラもラピードも笑っていた
「はい、これで大丈夫。・・・ぁ・・・、」
「どうした?」
二人の傷もなくなった所で私は手を止めるとユーリもフレンも起き上がり、服や鎧に付いていた土埃を叩いていると私が何かに気付いた声が聞こえ兄さんが私を見たが直ぐに私が見ている先を見てつられてユーリもフレンもそこを見た
「綺麗・・・」
二人が戦い、その後治療をしている間にいつの間にか綺麗な夕空になっていた
「「「「・・・・・」」」」
その夕日を私達は暫く黙ったまま見ていた
そしてふと子供の頃の事を思い出した
「なんかガキん時みたいだな」
「ああ。いつもこの位の時間まで遊んでたっけ」
「あの頃、凄く一生懸命遊んでたね」
「そうだな」
ユーリもフレンも兄さんも、同じ事を思ったのかそれを口にして私達は微笑んでいた
あの頃はこんな風に四人一緒にいる事が当たり前で、毎日夕空になるまで夢中で遊んでいた
大人になって会う機会も減り、会ってもなかなかゆっくり出来なかったし、最近は色々と遭って大変だったけど、
それでも、
今だけでもこんな風に私達だけで同じ事を共有しあえてる事が素直に嬉しかった
そう思いながら私は小さく微笑んで、空に広がる綺麗な夕空を眺めだした
「・・・良い親友、だね」
「ワン・・・」
夕空を眺めているリア達を見て、アスラはラピードだけに聞こえる声でそう言い、その言葉にラピードも同意してリア達を見ていた
続く
あとがき
ふうう~~、なんとか書き上がったーーー!!!
けど、本当は一回仕上がってたんですけど、読み返した時にやっぱり何か納得いかなくて戦闘シーンやら最後の方やら色々と書き直しました
タイトル通り、此処はやっぱりユーリとフレン、そして下町幼馴染み組にとって大事な所だからねw
ま、珍しくリアちゃんがカッコ良かったとか言っちゃってますがねww
最後はやっぱり幼馴染み組のほのぼので箱版とちょっと変わった感じでしめました!
さて、次からは思いっきり変わる予定です!!
次回は遂に・・・! です!(いや、それじゃ分かんないしι)
では、次回をお楽しみに!!
2011.07.18(2012.01.05)