星喰み編
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翌朝、みんな昨日の事があり泣き疲れて眠っているパティを起こさないように静かにしていた
リタとエステルとカロルはリタが作った即席の宙の戒典をじっと見ているとむくりとパティが起き上がったのが見え私達はパティの方を向いた
「・・・・」
「起きたわよ、泣き虫が」
「どうだ。ひとしきり泣いたら楽になったか」
「・・・・全然、大丈夫なのじゃ」
「よし・・・。で、これからパティはどうするんだ」
「そうね、記憶も戻ったようだし会いたい相手にも会えた訳だしね」
「勿論、ユーリ達と一緒に行くのじゃ」
「良いんです、それで?」
「んじゃ。流石に星喰みを放っておく訳にはいかんのじゃ。それに、此処まで来たのじゃ。最後まで付いていかせろ」
「んじゃ、改めてパティ、よろしくな」
「うむ。よろしくするのじゃ」
そう言ったパティはいつも通りのパティだった
「えっと・・・ちょっと色々聞きづらくて、聞けなかった事があるんだけど・・・」
「ま、気になる事はあるだろうけど、おいおい話聞いてこうぜ」
「のじゃ。気が向いたら、話をするのじゃ」
「で、でもさ・・・」
「はいはい。お喋りは此処まで」
「今色々と聞かれてもパティだって困っちゃうでしょ?」
「本人が気が向いたらって言ってんだから、それまで待ってやれよ」
「う、うん・・・」
アスラと私と兄さんの言葉を聞き、カロルもエステルも渋々納得した
「じゃあ、パティ、ちょっと付き合ってくれる?」
「おう?」
「え? あ、リア!」
パティにそう言いニコリと笑ってパティと一緒に部屋を出た
「リア、何処に行くんでしょう?」
「ちょっとな。悪いけどもう少しだけ時間くれ」
「解った」
セイの言葉を聞き、ユーリはリアがパティを連れて何処に行ったか解ったのかそう言った
110.復活する古代都市
「・・・此処に来るのは、ちょっとツラいかもしれないけど」
「・・・うんにゃ。平気なのじゃ」
パティと一緒やって来た場所は昨日いたあの船着き場だった
「本当なら昨日終わらせておかなきゃなんだけど、やっぱりパティがいた方がお互いに気持ちも晴れるだろうと思って」
言うとそのまま目を瞑って息を吸って歌い出した
―――終止符 と 告げる冷たい雨
遠い日々へ馳せる思い
歌い出すと同時にパティも目を閉じた
天上 を仰ぐ度 紡げない未来に
君が幸せであれと最期まで願う
地の果ての影に留まりながら
鉛の空を想うのだろう
夜を算 え 夢を観て 黎明の聖刻 を迎え
限りある生命 よ 魂よ
永遠 に眠れ ―――
私が歌っている間、パティは静かに聞いていた
「リア、ありがとうなのじゃ」
パティは私を見てそう言い私は静かに微笑んだ
「・・のう、リア」
「ん、何?」
「一つ聞いても良いかの」
少しだけ声音が変わり、その言葉に静かに頷いた
「リアも、うちが記憶が戻ってる事に気付いておったのか?」
「ええ」
「やっぱり、あの時、か?」
あの時、それはミョルゾへ通じる鐘を探しに行った時に見つけたあのお墓の事だ
「ええ。あの時、兄さんとアスラと一緒に残ったでしょ。その時に、あのお墓にいる人達の記憶が見えたの」
「それは言霊使いの力、か」
「そう。そしてあのお墓で、一部の記憶が見えたの。けどそれはサイファーの記憶だった」
「サイファーの?」
「ええ。あのお墓の上に置いてあった帽子ってサイファーのものでしょ」
「そうじゃ。うちはサイファーの帽子と剣を見て思い出したんじゃ」
「サイファーがあの姿になって起こった事が見えたの。見た時、身体が震えたのを今でも覚えてるわ。あの力はアーセルム号で会ったあの骸骨と一緒だったから」
「・・・それは多分、満月の子の力じゃ」
「え?」
思わぬ言葉に驚いて目を瞠っているとパティはその時の事を思い出しながら話してくれた
「アレクセイの依頼でうちはあの船の護衛に付いていたのじゃ。その時にアレクセイが船に何かしらの術を施していたからサイファーも皆もあの姿になってしまったのじゃ」
「じゃあアレクセイは人工的に満月の子を作り出そうとしてたって事?」
「多分そうなんじゃろうな」
それを考えれば色々と合点がいった
「成る程ね・・・。それでパティは子供の姿になって記憶を無くした状態でサイファーに港まで送って貰ってたのね」
「どうしてその事を知ってるのじゃ?」
「昨日此処に来る前に部屋で休んでる時に記憶の欠片が見えたの。その時に色々と見えてね」
「そうじゃったのか」
その記憶はパティのものだったのかサイファーのものだったのかは解らないけど
「いつか、みんなにも話してあげないとね」
「じゃの」
お互いに笑い合っていると、急に地響きが鳴った
「! な、何!?」
「なんじゃあれは!?」
パティの言う方、アスピオの辺りから物凄い力を感じだし、次第に地響きは強くなっていき、アスピオの周りの山は崩れ、そして大きな街のような建物の様な物が姿を現し、徐々に浮上していった
私達はそれを見て言葉を無くした
「あれじゃ、アスピオは・・・それに、あれは・・・」
「山・・・うんにゃ・・・建物みたいなのじゃ・・・」
「タルカロン、だよ・・・」
そう声が聞こえ足下を見るとアスラが姿を現した
「タルカロンって・・?」
「あれはタルカロンの塔、ずっと昔に埋められた都市の塔だよ」
「そんなものがあったのか・・・」
「ユーリ達は?」
「みんな宿の前に居るよ」
アスラの言葉を聞き、私とパティは頷き一斉に走ってユーリ達の所に向かった
おそらくあれを復活させたのはデュークだろう
あれで星喰みをどうにかしようとしているのかもしれない
「ユーリ!」
「リア、パティ、無事みたいだな」
「うむ。話しはアスラから聞いたのじゃ」
「どいた、どいてくれ!」
ユーリ達と話しをしていると少し先の人混みの中から男性の声が聞こえ、その声の主は私達の前で止まった
「黒くて長い髪のあんたと水色の髪のあんた、ちょっと良いか!?」
「なんだよ」「はい?」
「あんた等みたいな風貌の人を見かけたら教えて欲しいって騎士団の人に言われててな。なんでも新しい騎士団長フレン殿について話したい事があるとか」
「なんだと?」
「人違いじゃなさそうか?」
「はい」
「なぁ、オレ達を探してたヤツって猫みたいなつり目の姉さんとリンゴみたいな頭したガキか?」
「あ? ああ。そうだが」
「・・・・・」
「・・・ユーリ」
ユーリは少しだけ視線を逸らして浮かない顔をした
それは多分あの時の事を考えていたからだろう
ユーリは私の視線に気付くと直ぐに知らせに来てくれた男性に向き合った
「宿で待ってりゃ良いか?」
「ああ。それで良い。呼んでくる」
男性はそのまま踵を返して来た道を戻りだし、ユーリはそれを見届けるとゆっくりと宿へと向かい出した
「あ、ユー・・・」
カロルがユーリの名前を呼ぼうとしたけど、ユーリが纏っている空気を感じ言葉を止めた
その空気は少しだけ張り詰めたものだったからだ
「・・・・」
そして少し遅れて私も歩き出しエステル達も宿へと向かい、部屋に戻るとユーリはドアの近くの壁に寄り掛り腕を組んだ
だが、その空気はいつも以上に張り詰めていて、近寄りがたい空気だった
私はユーリの直ぐ近くにいたが、エステル達は少し距離を置いていた
それは兄さんの計らいもあるのだろうけど、この空気の中に入れない、と言うのが一番正しいかもしれない
そして暫くすると扉の向こうから走って来る音が聞こえたと思ったら扉が勢い良く開き、小柄な男の子が入って来た
「ようやく捕まえましたよ! 何処ほっつき歩いてたんですか」
「ユーリ・・・ローウェル・・・」
そしてその後ろからゆっくりとソディアさんが入って来た
が、彼女はユーリと私を見るとバツが悪そうに少し視線を逸らす
「・・・」
「・・・ソディア?」
ウィチル君はソディアさんの様子に疑問を持ったがユーリは気にした様子もなく話を振る
「んで、フレンがどうしたってんだよ」
「あ・・・はい、あの怪物が空を覆ってから、大勢この大陸から避難してるんです。でもギルドの船団で帝国の護衛を拒否するのがいて、隊長はそれを放っておけなくて。魔物に襲われた船団はヒピオニアに漂着、僕達は戦ったけど段々、追い詰められて・・・」
「私達だけが救援を求める為、脱出させられた・・・でも騎士団は各地に散っていて・・・」
「もう皆さんにお願いするしか方法はないんです」
「しかし・・・時が経ち過ぎた・・・隊長はもう・・・」
「相変わらずつまんねぇ事しか言えないヤツだな」
「な、なに!」
ソディアさんは顔を俯けて言うと、ユーリは呆れながらソディアさんとウィチル君の前まで移動した
「諦めちまったのか? お前、何の為に今までやってきたんだよ?」
「私は! 私はあの方・・・フレン隊長の為に! あの時だって・・・」
「・・・・」
ソディアさんは最後の言葉は私とユーリにしか聞こえない程小さな声で言った
「ふん。めそめそしててめえの覚悟忘れて諦めちまうやつにフレンの為とか言わせねぇ」
ユーリのその言葉には少しだけ怒りが混じっていた
「覚悟・・・」
ソディアさんはまた顔を俯けてしまい、ユーリはウィチル君に向き合う
「リンゴ頭! ヒピオニアだったな」
「え、ええ」
「そう言う訳だ。ちょっと行ってくるわ。みんなはタルカロンに行く準備を・・・」
「ユーリ、一人で行くつもり?」
「わたし達も行きますよ?」
「そうだよ、悪いクセだよ、ユーリ」
「そう言うけどな、割とヤバそうな感じだぜ?」
「なら、尚更一緒に行かないとだろ」
「それにバウルが言う事聞かないと思うけど?」
「一人はギルドの為に、ギルドは一人の為に、なんでしょ」
「時間ないならちゃっちゃと行って片付けようじゃないの」
「だね」
「うちは噛み付いたウツボ以上の勢いで、死ぬまでユーリに着いて回るぞ」
「ったく付き合い良いな。そんじゃ行くか!」
「おー! 凛々の明星出撃ぃ!」
「ワン!」
私達の言葉を聞きユーリは小さく笑って歩き出し、私達もその後に続いた
「ユーリ・ローウェル!」
街から出ようとしていると後ろからソディアさんがユーリを呼ぶ声が聞こえ私は振り返った
「何故だ! どうしてあの時の事を咎めない? 私はお前を・・・」
「水に流したつもりはねぇ。けどな、オレは諦めちまったヤツに構ってる程暇じゃねぇんだよ」
「諦めてなど・・・」
「なら何で一人ででもフレンを助けに行かない? オレを消してでも守りたかったあいつの存在をどうして守りにいかねぇ!」
ユーリの鋭い言葉にソディアさんは少し肩を窄めてしまう
「私では・・・あの人を守れない・・・頼む・・・彼を・・・助けて・・・お願い・・・」
「言われるまでもねぇ」
「お願い・・・」
ソディアさんはそう言って悔しそうに両手を握り締めて顔を俯けた
「・・・・」
何も出来ない自分が悔しい、フレンの力になりたくても自分じゃどうにも出来ない、今のソディアさんはそれを露わにしていた
「ああ、あんたの言う事で一つだけ同意出来る事があるぜ」
「「?」」
ユーリはソディアさんを横目で見て、さっきと違う声でそう言うとその言葉に私もソディアさんも疑問符を出してユーリを見ると、ユーリは空を眺めながら言った
「オレは罪人。いつ斬られても可笑しくない。そしてフレンは騎士の鑑。今後の帝国騎士を導いていく男。その隣に罪人は相応しくない」
「・・・・・」
「・・・ユーリ」
そう言ったユーリの顔は何処か清々しくもあった
「オレはさしずめ、あいつに相応しいヤツが現れるまでの、ま、代役ってヤツさ」
「ユーリ・・・」
そしてユーリは歩き出しポンと私の肩を叩き歩いて行った
「リア・ルーティア・・・」
ソディアさんは私に気付くと、私の名前を小さい声で言った
「私や兄さんが言いたい事はユーリが全部言ってくれました。何も出来なくて悔しい気持ち、凄く解る・・・」
「・・・・」
私の言葉にソディアさんはまた黙ってしまう
どう答えれば良いのか迷っている、そんな目をしていた
「安心して下さい。私の大事な幼馴染みであり、貴女の上司であるフレンは必ず私達が助けますから」
そう言って私は踵を返しユーリの後を追った
「・・・代役か・・・。でも、フレンの隣はやっぱりユーリが一番似合ってるけどね」
ソディアさんからだいぶ離れた所に来ると、さっきのユーリの言葉を思い出しそう小さく呟き、笑って少し先を歩いているユーリの所に向かった
続く
あとがき
前回の後書きで言っていた通り、パティとの会話を入れてみました
此処はPS3版書く時に絶対に話したいなと思ってた所だったので書けて良かった
本編でも言ってた通り、みんなに話すのはいつかだけどね
そしてタルカロンの塔も復活し、フレンがピンチ!?って所までやってきました!
次回はまた幼馴染み組に頑張って貰いますかね♪
2011.06.27
リタとエステルとカロルはリタが作った即席の宙の戒典をじっと見ているとむくりとパティが起き上がったのが見え私達はパティの方を向いた
「・・・・」
「起きたわよ、泣き虫が」
「どうだ。ひとしきり泣いたら楽になったか」
「・・・・全然、大丈夫なのじゃ」
「よし・・・。で、これからパティはどうするんだ」
「そうね、記憶も戻ったようだし会いたい相手にも会えた訳だしね」
「勿論、ユーリ達と一緒に行くのじゃ」
「良いんです、それで?」
「んじゃ。流石に星喰みを放っておく訳にはいかんのじゃ。それに、此処まで来たのじゃ。最後まで付いていかせろ」
「んじゃ、改めてパティ、よろしくな」
「うむ。よろしくするのじゃ」
そう言ったパティはいつも通りのパティだった
「えっと・・・ちょっと色々聞きづらくて、聞けなかった事があるんだけど・・・」
「ま、気になる事はあるだろうけど、おいおい話聞いてこうぜ」
「のじゃ。気が向いたら、話をするのじゃ」
「で、でもさ・・・」
「はいはい。お喋りは此処まで」
「今色々と聞かれてもパティだって困っちゃうでしょ?」
「本人が気が向いたらって言ってんだから、それまで待ってやれよ」
「う、うん・・・」
アスラと私と兄さんの言葉を聞き、カロルもエステルも渋々納得した
「じゃあ、パティ、ちょっと付き合ってくれる?」
「おう?」
「え? あ、リア!」
パティにそう言いニコリと笑ってパティと一緒に部屋を出た
「リア、何処に行くんでしょう?」
「ちょっとな。悪いけどもう少しだけ時間くれ」
「解った」
セイの言葉を聞き、ユーリはリアがパティを連れて何処に行ったか解ったのかそう言った
110.復活する古代都市
「・・・此処に来るのは、ちょっとツラいかもしれないけど」
「・・・うんにゃ。平気なのじゃ」
パティと一緒やって来た場所は昨日いたあの船着き場だった
「本当なら昨日終わらせておかなきゃなんだけど、やっぱりパティがいた方がお互いに気持ちも晴れるだろうと思って」
言うとそのまま目を瞑って息を吸って歌い出した
―――
遠い日々へ馳せる思い
歌い出すと同時にパティも目を閉じた
君が幸せであれと最期まで願う
地の果ての影に留まりながら
鉛の空を想うのだろう
夜を
限りある
私が歌っている間、パティは静かに聞いていた
「リア、ありがとうなのじゃ」
パティは私を見てそう言い私は静かに微笑んだ
「・・のう、リア」
「ん、何?」
「一つ聞いても良いかの」
少しだけ声音が変わり、その言葉に静かに頷いた
「リアも、うちが記憶が戻ってる事に気付いておったのか?」
「ええ」
「やっぱり、あの時、か?」
あの時、それはミョルゾへ通じる鐘を探しに行った時に見つけたあのお墓の事だ
「ええ。あの時、兄さんとアスラと一緒に残ったでしょ。その時に、あのお墓にいる人達の記憶が見えたの」
「それは言霊使いの力、か」
「そう。そしてあのお墓で、一部の記憶が見えたの。けどそれはサイファーの記憶だった」
「サイファーの?」
「ええ。あのお墓の上に置いてあった帽子ってサイファーのものでしょ」
「そうじゃ。うちはサイファーの帽子と剣を見て思い出したんじゃ」
「サイファーがあの姿になって起こった事が見えたの。見た時、身体が震えたのを今でも覚えてるわ。あの力はアーセルム号で会ったあの骸骨と一緒だったから」
「・・・それは多分、満月の子の力じゃ」
「え?」
思わぬ言葉に驚いて目を瞠っているとパティはその時の事を思い出しながら話してくれた
「アレクセイの依頼でうちはあの船の護衛に付いていたのじゃ。その時にアレクセイが船に何かしらの術を施していたからサイファーも皆もあの姿になってしまったのじゃ」
「じゃあアレクセイは人工的に満月の子を作り出そうとしてたって事?」
「多分そうなんじゃろうな」
それを考えれば色々と合点がいった
「成る程ね・・・。それでパティは子供の姿になって記憶を無くした状態でサイファーに港まで送って貰ってたのね」
「どうしてその事を知ってるのじゃ?」
「昨日此処に来る前に部屋で休んでる時に記憶の欠片が見えたの。その時に色々と見えてね」
「そうじゃったのか」
その記憶はパティのものだったのかサイファーのものだったのかは解らないけど
「いつか、みんなにも話してあげないとね」
「じゃの」
お互いに笑い合っていると、急に地響きが鳴った
「! な、何!?」
「なんじゃあれは!?」
パティの言う方、アスピオの辺りから物凄い力を感じだし、次第に地響きは強くなっていき、アスピオの周りの山は崩れ、そして大きな街のような建物の様な物が姿を現し、徐々に浮上していった
私達はそれを見て言葉を無くした
「あれじゃ、アスピオは・・・それに、あれは・・・」
「山・・・うんにゃ・・・建物みたいなのじゃ・・・」
「タルカロン、だよ・・・」
そう声が聞こえ足下を見るとアスラが姿を現した
「タルカロンって・・?」
「あれはタルカロンの塔、ずっと昔に埋められた都市の塔だよ」
「そんなものがあったのか・・・」
「ユーリ達は?」
「みんな宿の前に居るよ」
アスラの言葉を聞き、私とパティは頷き一斉に走ってユーリ達の所に向かった
おそらくあれを復活させたのはデュークだろう
あれで星喰みをどうにかしようとしているのかもしれない
「ユーリ!」
「リア、パティ、無事みたいだな」
「うむ。話しはアスラから聞いたのじゃ」
「どいた、どいてくれ!」
ユーリ達と話しをしていると少し先の人混みの中から男性の声が聞こえ、その声の主は私達の前で止まった
「黒くて長い髪のあんたと水色の髪のあんた、ちょっと良いか!?」
「なんだよ」「はい?」
「あんた等みたいな風貌の人を見かけたら教えて欲しいって騎士団の人に言われててな。なんでも新しい騎士団長フレン殿について話したい事があるとか」
「なんだと?」
「人違いじゃなさそうか?」
「はい」
「なぁ、オレ達を探してたヤツって猫みたいなつり目の姉さんとリンゴみたいな頭したガキか?」
「あ? ああ。そうだが」
「・・・・・」
「・・・ユーリ」
ユーリは少しだけ視線を逸らして浮かない顔をした
それは多分あの時の事を考えていたからだろう
ユーリは私の視線に気付くと直ぐに知らせに来てくれた男性に向き合った
「宿で待ってりゃ良いか?」
「ああ。それで良い。呼んでくる」
男性はそのまま踵を返して来た道を戻りだし、ユーリはそれを見届けるとゆっくりと宿へと向かい出した
「あ、ユー・・・」
カロルがユーリの名前を呼ぼうとしたけど、ユーリが纏っている空気を感じ言葉を止めた
その空気は少しだけ張り詰めたものだったからだ
「・・・・」
そして少し遅れて私も歩き出しエステル達も宿へと向かい、部屋に戻るとユーリはドアの近くの壁に寄り掛り腕を組んだ
だが、その空気はいつも以上に張り詰めていて、近寄りがたい空気だった
私はユーリの直ぐ近くにいたが、エステル達は少し距離を置いていた
それは兄さんの計らいもあるのだろうけど、この空気の中に入れない、と言うのが一番正しいかもしれない
そして暫くすると扉の向こうから走って来る音が聞こえたと思ったら扉が勢い良く開き、小柄な男の子が入って来た
「ようやく捕まえましたよ! 何処ほっつき歩いてたんですか」
「ユーリ・・・ローウェル・・・」
そしてその後ろからゆっくりとソディアさんが入って来た
が、彼女はユーリと私を見るとバツが悪そうに少し視線を逸らす
「・・・」
「・・・ソディア?」
ウィチル君はソディアさんの様子に疑問を持ったがユーリは気にした様子もなく話を振る
「んで、フレンがどうしたってんだよ」
「あ・・・はい、あの怪物が空を覆ってから、大勢この大陸から避難してるんです。でもギルドの船団で帝国の護衛を拒否するのがいて、隊長はそれを放っておけなくて。魔物に襲われた船団はヒピオニアに漂着、僕達は戦ったけど段々、追い詰められて・・・」
「私達だけが救援を求める為、脱出させられた・・・でも騎士団は各地に散っていて・・・」
「もう皆さんにお願いするしか方法はないんです」
「しかし・・・時が経ち過ぎた・・・隊長はもう・・・」
「相変わらずつまんねぇ事しか言えないヤツだな」
「な、なに!」
ソディアさんは顔を俯けて言うと、ユーリは呆れながらソディアさんとウィチル君の前まで移動した
「諦めちまったのか? お前、何の為に今までやってきたんだよ?」
「私は! 私はあの方・・・フレン隊長の為に! あの時だって・・・」
「・・・・」
ソディアさんは最後の言葉は私とユーリにしか聞こえない程小さな声で言った
「ふん。めそめそしててめえの覚悟忘れて諦めちまうやつにフレンの為とか言わせねぇ」
ユーリのその言葉には少しだけ怒りが混じっていた
「覚悟・・・」
ソディアさんはまた顔を俯けてしまい、ユーリはウィチル君に向き合う
「リンゴ頭! ヒピオニアだったな」
「え、ええ」
「そう言う訳だ。ちょっと行ってくるわ。みんなはタルカロンに行く準備を・・・」
「ユーリ、一人で行くつもり?」
「わたし達も行きますよ?」
「そうだよ、悪いクセだよ、ユーリ」
「そう言うけどな、割とヤバそうな感じだぜ?」
「なら、尚更一緒に行かないとだろ」
「それにバウルが言う事聞かないと思うけど?」
「一人はギルドの為に、ギルドは一人の為に、なんでしょ」
「時間ないならちゃっちゃと行って片付けようじゃないの」
「だね」
「うちは噛み付いたウツボ以上の勢いで、死ぬまでユーリに着いて回るぞ」
「ったく付き合い良いな。そんじゃ行くか!」
「おー! 凛々の明星出撃ぃ!」
「ワン!」
私達の言葉を聞きユーリは小さく笑って歩き出し、私達もその後に続いた
「ユーリ・ローウェル!」
街から出ようとしていると後ろからソディアさんがユーリを呼ぶ声が聞こえ私は振り返った
「何故だ! どうしてあの時の事を咎めない? 私はお前を・・・」
「水に流したつもりはねぇ。けどな、オレは諦めちまったヤツに構ってる程暇じゃねぇんだよ」
「諦めてなど・・・」
「なら何で一人ででもフレンを助けに行かない? オレを消してでも守りたかったあいつの存在をどうして守りにいかねぇ!」
ユーリの鋭い言葉にソディアさんは少し肩を窄めてしまう
「私では・・・あの人を守れない・・・頼む・・・彼を・・・助けて・・・お願い・・・」
「言われるまでもねぇ」
「お願い・・・」
ソディアさんはそう言って悔しそうに両手を握り締めて顔を俯けた
「・・・・」
何も出来ない自分が悔しい、フレンの力になりたくても自分じゃどうにも出来ない、今のソディアさんはそれを露わにしていた
「ああ、あんたの言う事で一つだけ同意出来る事があるぜ」
「「?」」
ユーリはソディアさんを横目で見て、さっきと違う声でそう言うとその言葉に私もソディアさんも疑問符を出してユーリを見ると、ユーリは空を眺めながら言った
「オレは罪人。いつ斬られても可笑しくない。そしてフレンは騎士の鑑。今後の帝国騎士を導いていく男。その隣に罪人は相応しくない」
「・・・・・」
「・・・ユーリ」
そう言ったユーリの顔は何処か清々しくもあった
「オレはさしずめ、あいつに相応しいヤツが現れるまでの、ま、代役ってヤツさ」
「ユーリ・・・」
そしてユーリは歩き出しポンと私の肩を叩き歩いて行った
「リア・ルーティア・・・」
ソディアさんは私に気付くと、私の名前を小さい声で言った
「私や兄さんが言いたい事はユーリが全部言ってくれました。何も出来なくて悔しい気持ち、凄く解る・・・」
「・・・・」
私の言葉にソディアさんはまた黙ってしまう
どう答えれば良いのか迷っている、そんな目をしていた
「安心して下さい。私の大事な幼馴染みであり、貴女の上司であるフレンは必ず私達が助けますから」
そう言って私は踵を返しユーリの後を追った
「・・・代役か・・・。でも、フレンの隣はやっぱりユーリが一番似合ってるけどね」
ソディアさんからだいぶ離れた所に来ると、さっきのユーリの言葉を思い出しそう小さく呟き、笑って少し先を歩いているユーリの所に向かった
続く
あとがき
前回の後書きで言っていた通り、パティとの会話を入れてみました
此処はPS3版書く時に絶対に話したいなと思ってた所だったので書けて良かった
本編でも言ってた通り、みんなに話すのはいつかだけどね
そしてタルカロンの塔も復活し、フレンがピンチ!?って所までやってきました!
次回はまた幼馴染み組に頑張って貰いますかね♪
2011.06.27