星喰み編
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グシオスを無事に精霊化させ、地の精霊ノームとして転生させた(ノーム可愛かったな♪)が、意識が飲まれかけていた為眠っていた
そして私達は最後の始祖の隷長がいるレレウィーゼへと向かった
「此処がレレウィーゼか?」
「ええ。バウルはそう言ってるわ」
レレウィーゼは峻険な絶壁の上にある渓谷だった
まだ入り口にしか足を踏み入れてないけど、確かにこれは前人未踏の場所かもしれない
「でも、エアルクレーネも始祖の隷長も見当たらないわ」
「此処から、降りて行けそうだけども・・・」
レイヴンとラピードは渓谷の下を見て言い、私達も少しだけ近付いて下を覗いた
「深そうね」
「ですね」
「うーむ、良い眺めなのじゃ」
「パティ、落ちないようにして下さいね」
「あう。落ちるのは間抜けなカロルだけなのじゃ」
パティは崖の方へ行き、双眼鏡を覗いてそう言いエステルが心配そうに声を掛けると振り向いてカロルを見て言った
「落ちないってば」
「降りて行ってみよう」
「そうね。それしかなさそう」
「ねえ、バウルで下まで降りた方が良くない?」
「ちょっと危険ね。狭いし、気流の乱れも強すぎるわ」
「確かに風が強いのじゃ。此処は、きっと風の生まれ故郷なのじゃ」
「じゃあ、この谷は風のお母さんなんですね」
「風のお母さんかぁ。凄いよ、ずっと下の方に河が見える!」
ぽつりと呟くとカロルは渓流の下を覗いた
「河が長い時間を掛けて少しずつ地面を削って行ってこのような地形になるんですね」
「まさに大自然の力。一体どれ程の時間を掛けて作られて行ったのかね」
「うわ~、下を覗くとくらくらする~」
「馬鹿っぽい・・・」
「ハハ、はしゃいで足滑らすなよ」
「落ちたら洒落になんねえしな」
「風も強いし、気をつけて行かないとね」
「だね。じゃあ行こうか」
アスラの言葉に頷いて私達は慎重に渓谷を下りだした
107.最後の始祖の隷長
「ほれ、頑張るのじゃ、進むのじゃ」
「ひいこら、こりゃ年寄りには堪えるわ」
あれからだいぶ下って来て、今は中腹の広い所にいた
「しっかりしろよ、おっさん」
「そうよ。帰りはこれを登らなきゃならないんだから」
その言葉を聞くとレイヴンはバタリと倒れた
「「あ、死んだ」」
「おーい、生きてるかー」
「グウウウ」
兄さんが倒れたレイヴンに声を掛けていると突然ラピードが唸り出した
「ラピード、どうし・・・!」
「誰か来ます!」
「こんな所に、人・・・?」
歩いて来る人物を見ると銀髪の長髪の男がこちらに向かって歩いて来ているのが見えた
「お前達・・・!」
「デューク! あんたか。相変わらず神出鬼没だな」
「ユーリを助けてくれてありがとうなのじゃ」
「なんで、あんたがお礼言うのよ・・・」
デュークは私達の姿を見ると、少しだけ驚いて目を見開いて私達を見た
「・・・此処で何をしている?」
「此処に始祖の隷長がいるらしいんでな、精霊になってくれるよう頼みに来たのさ」
「精霊とは?」
「始祖の隷長を、聖核を経て転生させた存在よ」
「その精霊の力でエアルの問題を根本的に解決出来るかもしれないんです」
「エアルをマナに変換してね」
「・・・そうか、だから・・・」
「デューク・・・?」
そう言ったデュークはいつも以上に寂しそうな悲しそうな目をしていた
「・・・転生・・・エアルを変換・・・お前達、世界を作り変えようとでも言うのか。元はといえば人間が引き起こした問題の為に。何と言う傲慢さだ」
「だが、エアルの問題を解決しなけりゃ星喰みが世界を滅ぼしちまうだろ」
「ベリウスも解ってくれたんです。ウンディーネとなってわたし達に力を貸してくれています」
「フェローもそうよ。彼はイフリートとして生まれ変わったわ」
「グシオスはノームとして生まれ変わった」
「テルカ・リュミレースのあるべき形。それは始祖の隷長を含む全ての生物が自然な形で生命を営めるもの。それはお前達も解っていよう」
「けど、エアルを調整しようと頑張ってくれたグオシスも限界を超えちゃって危なかったんだよ!」
「ああ。ノームに転生してなかったらどうなってた事か・・・」
「のじゃ。だから人も始祖の隷長も、色んな生物の壁を越えてちゃんと分かり合えるのじゃ」
「・・・たとえそうであっても私は認める訳にはいかぬ。私はこの世界を守る」
「前にもそう言ってたな。じゃあ、あんたはどうやって世界を守ろうとしてるんだ?」
ユーリの問いにデュークは後ろは向いて答えた
「・・・お前達の邪魔はすまい。が、私の邪魔もするな。・・・この先はこの世界で最も古くから存在する泉の一つ。相応の敬意を払うが良い」
「肝心の話は答えてくれないのね」
デュークは少し黙りちらりと私を見た
「・・・・?」
デュークの目は優しかったがやっぱり何処か寂しそうな目をして私を見ていた
(・・・・ク)
「・・・さらばだ。もう会う事もあるまい」
(・・・・・)
(・・? シエラさん?)
シエラさんの気配を感じ、更にぽつりと何か聞こえたと思い疑問符を出したがシエラさんは何でもないと言ってまた気配を消した
「・・・・」
けど、どことなくだけど、さっきのシエラさんは何処か寂しそうな感じがした
今は姿が見えないからはっきりとは解らないけど・・・
「リア?」
「え、あ、何?」
「何ぼーっとしてんだ。行くぞ」
アスラに声を掛けられ顔を上げ、ユーリの声が聞こえ前を見るとエステル達は先に歩き出していて少し遅れて私もユーリと兄さんとアスラと一緒にその後に続いた
*
レレウィーゼを更に降りて行くと一番奥に小さな洞窟が見えた
そしてその洞窟の中に入って行くと外の光景とはまったく違うものが目に入った
辺り一面には白い花が咲き誇り、蝶が飛んでいて、目の前には大きな泉が広がっていた
「ほわ~・・・」
「これがもっとも古くから存在する泉・・・」
「とても静か・・・空気も澄んでて、なんだか神聖な雰囲気です」
「うん・・・神秘的」
「あの岩山の下にこんな所があるなんてな」
「落ち着くのじゃあ・・・」
「落ち着いてる場合じゃないと思うんだけど、でも・・・確かに・・・」
確かに岩山の下にこんなに神聖で神秘的な場所があるとは誰も想像していなかったのか、それぞれ言葉を無くし、辺りを見ていた
けど、何故だろう
此処に来るのは初めてなのに・・・何処か懐かしさを感じる・・・
「来ましたね」
皆、それぞれ思いに耽っていると突然女性の優しい声が聞こえた
「え? この人・・・!?」
カロルは声の主を見て驚き、エステル達も同じように驚いていた
「・・・クローム」
「ご無事でなによりです。言霊使いの姫」
その言葉に驚いて一瞬だけ目を瞠ったが、ある事を思いそのまま黙って肩に乗っているアスラをちらりと見るとアスラは小さく頷いた
「・・・アレクセイの仇討ち、って訳じゃなさそうだな」
「・・・デュークは貴方達の話を受け入れなかったでしょう? あの人はあの人のやり方で世界を守ろうとしていますから」
ユーリとクロームはお互いを見据えて口を開く
「え! デュークが何やろうとしてるか知ってるの?!」
「あの人は世界の為に、すべての人間の命を引き換えにしようとしています」
「なんですって!?」
「どうしてデュークはそんな事を!?」
クロームの言葉にみんな驚いて食いるようにクロームに聞いた
「あの人は人間を信じていないのです」
「けど、デュークはボク達を助けてくれたよ!?」
「大事な剣も貸してくれたのじゃ」
クロームは一度目を閉じてちらりと私を見た
「・・・・?」
クロームの目はデュークが私を見る時と同じく、何処か悲しそうな目をして見ていた
そしてユーリ達に気付かれる前に視線を戻し、ゆっくりと語り出した
「多分、貴方達の中に、自分と同じものを見たからでしょう。あるいは貴方方がいれば自分が手を下さずに済むと思ったか」
「それは一体・・・」
「オレ達にデュークの事話してどうしようってんだ?」
「そろそろ本題に入った方が良いんじゃない?」
「こいつ等そんなに気が長い方じゃないしな」
「え? どういう事?」
カロルはユーリ、兄さん、アスラの言葉の意味が解らず疑問符を出したままユーリ達を見た
「彼女が、始祖の隷長よ」
「え!」
私の言葉を聞くとクロームは宙を仰ぎ、そして眩い光が辺りを包み、光が消えるとクロームは元の姿に戻っていた
「その姿は・・・!」
クロームの姿は、カドスの喉笛やコゴール砂漠の出口で見たあの巨大な鳥の姿だった
「あんたの目的はなんだ? 遠回しに協力するつもりがねぇって言いたいのか?」
「私も人間は信用出来ません。・・・それでもあの人が同族に仇なす姿は見たくない。世界を救えるというなら協力を拒むつもりはありません。ですが、あの人と違う方法を選ぶと言う事は対決する事になるでしょう」
「そうかも・・・しれないな」
「もし貴方達があの人に力及ばなければあの人を止めるものが居なくなる。貴方達の力、試させてもらいます!」
クロームと戦い出して数分、数的にはこちらが上、だけど、クロームの力は想像以上のものでかなり手こずっている
「流石、クローム。簡単にはいかないね・・・」
アスラがぼそりとそう呟いた
始祖の隷長同様長く生きていて彼女の事を知っているアスラが言うのだから、相当なものなのだろう
(姫・・・)
そう思っているとクロームが私に語り掛けて来た
(姫、貴女は彼等のやる事を信じるのですか?)
(無謀で不可能な事だと思われるかもしれない。けど、ユーリなら、みんなと一緒ならそれを叶えられる。私はそう信じてるわ)
(自分達の身を削ってまでも、ですか?)
(・・・・・)
確かに精霊化をさせる時に、みんなの生命力を代用としている
(・・・それでも世界を救いたいって気持ちは私達も、始祖の隷長も、デュークも、みんな同じ。だから私達はそれを実現させる。だから・・・)
私は地に降り立って、クロームを見据えニコリと笑って答えた
「クローム、貴女にも協力して欲しいの」
その言葉でみんな動きを止めて、じっと私とクロームを見ていた
「・・・流石、・・・彼女が・・・・めですね」
「・・・え?」
クロームは静かにそう告げたがその言葉は途切れ途切れでちゃんと聞き取れなかった
けど、トクンと静かに心臓が脈打った
その脈打ったのが私なのか、それとも・・・
「・・・貴方達なら・・・救えるかも・・・しれない・・・」
「クローム・・・」
「貴方達の・・・望むように・・・」
クロームは私の反応を見てゆっくりと口を開き眩い光を放ち出した
(・・・青年、姫の事をよろしくお願いします・・・)
(!)
クロームはユーリを見て何か告げたのか、ユーリは少し驚いて目を見開いていた
「・・・ユーリ?」
私は手元に降りて来た聖核を抱きしめたままユーリの顔を除き込むと少しだけ難しい顔をしていた
「・・・いや、何でもねえ。さ、精霊化しちまおうぜ」
「? うん、そうだね」
ユーリの言葉に頷いて、私達は精霊化を始めた
続く
あとがき
ようやく四精霊揃いましたね!
まあ色々と気になる事がいっっぱいですが、次回ちょっと解るのかな?
じゃあ次書いてきます
2011.06.27
そして私達は最後の始祖の隷長がいるレレウィーゼへと向かった
「此処がレレウィーゼか?」
「ええ。バウルはそう言ってるわ」
レレウィーゼは峻険な絶壁の上にある渓谷だった
まだ入り口にしか足を踏み入れてないけど、確かにこれは前人未踏の場所かもしれない
「でも、エアルクレーネも始祖の隷長も見当たらないわ」
「此処から、降りて行けそうだけども・・・」
レイヴンとラピードは渓谷の下を見て言い、私達も少しだけ近付いて下を覗いた
「深そうね」
「ですね」
「うーむ、良い眺めなのじゃ」
「パティ、落ちないようにして下さいね」
「あう。落ちるのは間抜けなカロルだけなのじゃ」
パティは崖の方へ行き、双眼鏡を覗いてそう言いエステルが心配そうに声を掛けると振り向いてカロルを見て言った
「落ちないってば」
「降りて行ってみよう」
「そうね。それしかなさそう」
「ねえ、バウルで下まで降りた方が良くない?」
「ちょっと危険ね。狭いし、気流の乱れも強すぎるわ」
「確かに風が強いのじゃ。此処は、きっと風の生まれ故郷なのじゃ」
「じゃあ、この谷は風のお母さんなんですね」
「風のお母さんかぁ。凄いよ、ずっと下の方に河が見える!」
ぽつりと呟くとカロルは渓流の下を覗いた
「河が長い時間を掛けて少しずつ地面を削って行ってこのような地形になるんですね」
「まさに大自然の力。一体どれ程の時間を掛けて作られて行ったのかね」
「うわ~、下を覗くとくらくらする~」
「馬鹿っぽい・・・」
「ハハ、はしゃいで足滑らすなよ」
「落ちたら洒落になんねえしな」
「風も強いし、気をつけて行かないとね」
「だね。じゃあ行こうか」
アスラの言葉に頷いて私達は慎重に渓谷を下りだした
107.最後の始祖の隷長
「ほれ、頑張るのじゃ、進むのじゃ」
「ひいこら、こりゃ年寄りには堪えるわ」
あれからだいぶ下って来て、今は中腹の広い所にいた
「しっかりしろよ、おっさん」
「そうよ。帰りはこれを登らなきゃならないんだから」
その言葉を聞くとレイヴンはバタリと倒れた
「「あ、死んだ」」
「おーい、生きてるかー」
「グウウウ」
兄さんが倒れたレイヴンに声を掛けていると突然ラピードが唸り出した
「ラピード、どうし・・・!」
「誰か来ます!」
「こんな所に、人・・・?」
歩いて来る人物を見ると銀髪の長髪の男がこちらに向かって歩いて来ているのが見えた
「お前達・・・!」
「デューク! あんたか。相変わらず神出鬼没だな」
「ユーリを助けてくれてありがとうなのじゃ」
「なんで、あんたがお礼言うのよ・・・」
デュークは私達の姿を見ると、少しだけ驚いて目を見開いて私達を見た
「・・・此処で何をしている?」
「此処に始祖の隷長がいるらしいんでな、精霊になってくれるよう頼みに来たのさ」
「精霊とは?」
「始祖の隷長を、聖核を経て転生させた存在よ」
「その精霊の力でエアルの問題を根本的に解決出来るかもしれないんです」
「エアルをマナに変換してね」
「・・・そうか、だから・・・」
「デューク・・・?」
そう言ったデュークはいつも以上に寂しそうな悲しそうな目をしていた
「・・・転生・・・エアルを変換・・・お前達、世界を作り変えようとでも言うのか。元はといえば人間が引き起こした問題の為に。何と言う傲慢さだ」
「だが、エアルの問題を解決しなけりゃ星喰みが世界を滅ぼしちまうだろ」
「ベリウスも解ってくれたんです。ウンディーネとなってわたし達に力を貸してくれています」
「フェローもそうよ。彼はイフリートとして生まれ変わったわ」
「グシオスはノームとして生まれ変わった」
「テルカ・リュミレースのあるべき形。それは始祖の隷長を含む全ての生物が自然な形で生命を営めるもの。それはお前達も解っていよう」
「けど、エアルを調整しようと頑張ってくれたグオシスも限界を超えちゃって危なかったんだよ!」
「ああ。ノームに転生してなかったらどうなってた事か・・・」
「のじゃ。だから人も始祖の隷長も、色んな生物の壁を越えてちゃんと分かり合えるのじゃ」
「・・・たとえそうであっても私は認める訳にはいかぬ。私はこの世界を守る」
「前にもそう言ってたな。じゃあ、あんたはどうやって世界を守ろうとしてるんだ?」
ユーリの問いにデュークは後ろは向いて答えた
「・・・お前達の邪魔はすまい。が、私の邪魔もするな。・・・この先はこの世界で最も古くから存在する泉の一つ。相応の敬意を払うが良い」
「肝心の話は答えてくれないのね」
デュークは少し黙りちらりと私を見た
「・・・・?」
デュークの目は優しかったがやっぱり何処か寂しそうな目をして私を見ていた
(・・・・ク)
「・・・さらばだ。もう会う事もあるまい」
(・・・・・)
(・・? シエラさん?)
シエラさんの気配を感じ、更にぽつりと何か聞こえたと思い疑問符を出したがシエラさんは何でもないと言ってまた気配を消した
「・・・・」
けど、どことなくだけど、さっきのシエラさんは何処か寂しそうな感じがした
今は姿が見えないからはっきりとは解らないけど・・・
「リア?」
「え、あ、何?」
「何ぼーっとしてんだ。行くぞ」
アスラに声を掛けられ顔を上げ、ユーリの声が聞こえ前を見るとエステル達は先に歩き出していて少し遅れて私もユーリと兄さんとアスラと一緒にその後に続いた
*
レレウィーゼを更に降りて行くと一番奥に小さな洞窟が見えた
そしてその洞窟の中に入って行くと外の光景とはまったく違うものが目に入った
辺り一面には白い花が咲き誇り、蝶が飛んでいて、目の前には大きな泉が広がっていた
「ほわ~・・・」
「これがもっとも古くから存在する泉・・・」
「とても静か・・・空気も澄んでて、なんだか神聖な雰囲気です」
「うん・・・神秘的」
「あの岩山の下にこんな所があるなんてな」
「落ち着くのじゃあ・・・」
「落ち着いてる場合じゃないと思うんだけど、でも・・・確かに・・・」
確かに岩山の下にこんなに神聖で神秘的な場所があるとは誰も想像していなかったのか、それぞれ言葉を無くし、辺りを見ていた
けど、何故だろう
此処に来るのは初めてなのに・・・何処か懐かしさを感じる・・・
「来ましたね」
皆、それぞれ思いに耽っていると突然女性の優しい声が聞こえた
「え? この人・・・!?」
カロルは声の主を見て驚き、エステル達も同じように驚いていた
「・・・クローム」
「ご無事でなによりです。言霊使いの姫」
その言葉に驚いて一瞬だけ目を瞠ったが、ある事を思いそのまま黙って肩に乗っているアスラをちらりと見るとアスラは小さく頷いた
「・・・アレクセイの仇討ち、って訳じゃなさそうだな」
「・・・デュークは貴方達の話を受け入れなかったでしょう? あの人はあの人のやり方で世界を守ろうとしていますから」
ユーリとクロームはお互いを見据えて口を開く
「え! デュークが何やろうとしてるか知ってるの?!」
「あの人は世界の為に、すべての人間の命を引き換えにしようとしています」
「なんですって!?」
「どうしてデュークはそんな事を!?」
クロームの言葉にみんな驚いて食いるようにクロームに聞いた
「あの人は人間を信じていないのです」
「けど、デュークはボク達を助けてくれたよ!?」
「大事な剣も貸してくれたのじゃ」
クロームは一度目を閉じてちらりと私を見た
「・・・・?」
クロームの目はデュークが私を見る時と同じく、何処か悲しそうな目をして見ていた
そしてユーリ達に気付かれる前に視線を戻し、ゆっくりと語り出した
「多分、貴方達の中に、自分と同じものを見たからでしょう。あるいは貴方方がいれば自分が手を下さずに済むと思ったか」
「それは一体・・・」
「オレ達にデュークの事話してどうしようってんだ?」
「そろそろ本題に入った方が良いんじゃない?」
「こいつ等そんなに気が長い方じゃないしな」
「え? どういう事?」
カロルはユーリ、兄さん、アスラの言葉の意味が解らず疑問符を出したままユーリ達を見た
「彼女が、始祖の隷長よ」
「え!」
私の言葉を聞くとクロームは宙を仰ぎ、そして眩い光が辺りを包み、光が消えるとクロームは元の姿に戻っていた
「その姿は・・・!」
クロームの姿は、カドスの喉笛やコゴール砂漠の出口で見たあの巨大な鳥の姿だった
「あんたの目的はなんだ? 遠回しに協力するつもりがねぇって言いたいのか?」
「私も人間は信用出来ません。・・・それでもあの人が同族に仇なす姿は見たくない。世界を救えるというなら協力を拒むつもりはありません。ですが、あの人と違う方法を選ぶと言う事は対決する事になるでしょう」
「そうかも・・・しれないな」
「もし貴方達があの人に力及ばなければあの人を止めるものが居なくなる。貴方達の力、試させてもらいます!」
クロームと戦い出して数分、数的にはこちらが上、だけど、クロームの力は想像以上のものでかなり手こずっている
「流石、クローム。簡単にはいかないね・・・」
アスラがぼそりとそう呟いた
始祖の隷長同様長く生きていて彼女の事を知っているアスラが言うのだから、相当なものなのだろう
(姫・・・)
そう思っているとクロームが私に語り掛けて来た
(姫、貴女は彼等のやる事を信じるのですか?)
(無謀で不可能な事だと思われるかもしれない。けど、ユーリなら、みんなと一緒ならそれを叶えられる。私はそう信じてるわ)
(自分達の身を削ってまでも、ですか?)
(・・・・・)
確かに精霊化をさせる時に、みんなの生命力を代用としている
(・・・それでも世界を救いたいって気持ちは私達も、始祖の隷長も、デュークも、みんな同じ。だから私達はそれを実現させる。だから・・・)
私は地に降り立って、クロームを見据えニコリと笑って答えた
「クローム、貴女にも協力して欲しいの」
その言葉でみんな動きを止めて、じっと私とクロームを見ていた
「・・・流石、・・・彼女が・・・・めですね」
「・・・え?」
クロームは静かにそう告げたがその言葉は途切れ途切れでちゃんと聞き取れなかった
けど、トクンと静かに心臓が脈打った
その脈打ったのが私なのか、それとも・・・
「・・・貴方達なら・・・救えるかも・・・しれない・・・」
「クローム・・・」
「貴方達の・・・望むように・・・」
クロームは私の反応を見てゆっくりと口を開き眩い光を放ち出した
(・・・青年、姫の事をよろしくお願いします・・・)
(!)
クロームはユーリを見て何か告げたのか、ユーリは少し驚いて目を見開いていた
「・・・ユーリ?」
私は手元に降りて来た聖核を抱きしめたままユーリの顔を除き込むと少しだけ難しい顔をしていた
「・・・いや、何でもねえ。さ、精霊化しちまおうぜ」
「? うん、そうだね」
ユーリの言葉に頷いて、私達は精霊化を始めた
続く
あとがき
ようやく四精霊揃いましたね!
まあ色々と気になる事がいっっぱいですが、次回ちょっと解るのかな?
じゃあ次書いてきます
2011.06.27