星喰み編
夢主名変更
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フィエルティア号に戻って来た私達は次の目的地エレアルーミンへ向かって行った
エレアルーミンはトルビキア大陸の北東の海に浮かぶ水晶化した島だった
そしてその中心に洞窟があり、私達はその入り口に立っていた
「此処が結晶化の中心みたいだな」
「綺麗・・・」
「夢の中に居るみたいです」
「低密度で結晶化したエアルか。・・・むしろマナ? サンプルを採取しておかなきゃ」
「うーむ、森全体がお宝なのじゃ。でも船には運べないのじゃ・・・」
洞窟に足を踏み入れた瞬間、私とエステルは洞窟内の至る所にあるクリスタルのような結晶を見て歓声の声を出していると、リタも声を出し、サンプルを採取しだした
「なんでああも反応に差があるかねえ」
「まるで天と地、だな・・・」
「バリバリ砕けるよ、あはは面白い」
「こっちはこっちではしゃいでるし・・・」
私達の反応を見てレイヴンと兄さんは苦笑していると、カロルが足下にある結晶を踏み声をあげるとアスラも苦笑していた
「呑気なもんね。これ自然に出来たんじゃないわよ?」
「え、どういう事?」
「結晶化によって新たに生まれた地の中心・・・此処にそれを行った何者かがいる」
「それとエアルクレーネもね」
「ワン! ワン!」
「どうしたラピード、なんか見つけたか」
ラピードが声を発した方を見ると、踏み荒らした跡が幾つもあった
「どうやら先客がいるらしいな」
「ああ。みんな、用心しろよ」
私達は一斉に頷き、警戒を強めて先に進み出した
106.菫色に光り輝く大地
「それにしても、本当に綺麗な所よね」
「幻想的で良い所ですよね」
「おやおや、嬢ちゃんとリアちゃんは気に入っちゃったの?」
「ええ」「はい」
リアとエステルはニコリとして言うと兄さんとユーリはぼそりと呟いた
「オレは目ぇ痛いんだが・・・」
「同じく」
「女の子はこういう綺麗な物が好きだからね」
「でもジュディスは冷静だよね」
「そう? 私も結構気に入ってるのだけれど」
「リタとパティは・・・って、聞くまでもないか」
リタは辺りにある結晶を見てはメモを取りぶつぶつと言っていて、パティも辺りにある結晶を見て歓声を上げていた
「・・・なんつーか、此処だけ見るとある意味平和だよな」
「そうだね・・・」
そんな女性陣を見て男性陣はセイのぽつりと言った言葉に同意していた
確かにこんな風に綺麗な所ではしゃいでいる姿を見れば、世界の危機、と言うのも忘れてしまう程平和と言えるだろう
「! みんな伏せて!」
そんな様子を見ながら暫く進んでいるとアスラがそう叫び、リア達は伏せると頭の上を何かが通り過ぎ、それは近くの結晶に突き刺さる
「この武器・・・!」
ジュディスの声が聞こえ顔を上げると、巨大な円形の刃が結晶に突き刺さっていた
「ナン!」
カロルは目の前にいる人物を見見てそう叫び、リア達も前を見ると荒い息を吐いているナンがいた
「・・・警告する。此処は魔狩りの剣が活動中だ。直ぐに立ち去り・・・」
「ナン!」
ナンはそのまま倒れ直ぐにカロルとエステルが駆け寄りエステルが治癒術を掛け始めた
「ひどいケガ・・・」
「しっかり! ナン!」
「カロル・・・」
「一人でどうしたんだよ! 首領やティソン達は?」
「・・・師匠達は奥に・・・」
「え? ナンを置いて!? 首領はともかく、ティソンがナンを連れてかないなんて・・・一体何が遭ったのさ!」
「不意に標的と此処で戦いになって、あたし、いつもみたいに出来なくて・・・師匠が迷いがあるからだって」
「迷い?」
ナンは身体を起こして少し寂しそうな悔しそうな顔をしてカロルにそう話し、さっきよりも表情を強めて話しを続けた
「魔物は憎い。許せない。その気持ちは変わらない」
その目は本当に憎いものを恨んでいるような目だったが、直ぐに悲しい目に戻る
「でも今はこんなとこに来て魔物を狩る事よりもしなきゃいけない事があるんじゃないかって・・・それを話したら・・・」
「置いて行かれたってか」
「愚かね。この期に及んで生き方を見つめ直せないなんて」
「ひどいよ! ナンは間違ってないのに!」
「ま、落ち着け、カロル。なぁ、魔狩りの剣の狙いは始祖の隷長だろ」
その言葉にナンは答えようとしないが黙っている事はそれを認めていると言う事だ
「急いだ方が良さそうね」
「ああ」
「さあ、ナン、歩ける?」
「え? う、うん。けど・・・」
「こんな所に一人でいる方がもっと危険よ」
「一緒に行こう、ナン」
「カロル・・・。うん」
リアはナンの前まで移動して目線を合わせ優しく微笑みながら言うと、カロルがナンの手を引いて立たせてやり、最深部へと向かった
*
最深部に到着すると、大量のエアルが放出していた
そしてその中心にこのエレアルーミンを作り出した始祖の隷長がいた
「グシオス!」
「グシオスってあいつ!? 確かカルボクラムで・・・」
グシオスの姿を見た途端、表情を変えた
「成る程、魔狩りの剣にとっちゃ因縁の相手ってとこか」
ユーリ達は以前グシオスを見た事があった
それはカルボクラムに向かった時に、最深部で魔狩りの剣によって逆結界に閉じ込められていた魔物、それが今此処に居るグシオスだった
魔狩りの剣はあの時グシオスを狩るつもりだったのだろうが、ジュディスとバウルが逆結界を壊しグシオスは此処までやって来てこの地を作ったようだった
けど、此処にグシオスがいる事を知ったのか魔狩りの剣はまだグシオスを狙っていた
「で、うちらの茶飲み相手はどっちかの」
「パティ・・ι」
「どっち、ってあのねえι」
「待って、ジュディス。様子が可笑しいです!」
ジュディスが一歩踏み出そうとしていると、エステルがジュディスを呼び止め、グシオスに目を向けるとグシオスの前に魔狩りの剣のクリントとティソンがいた
「おおりゃあああ!!」
「師匠!」
ティソンはグシオスに向かって行くが簡単に弾き飛ばされてしまう
「く・・・何故だ、何故攻撃が効かない・・・!?」
クリントは片膝を付いて荒い息を吐きながらグシオスを見ると、グシオスは辺りのエアルを食べ始めた
「エアルを食べてる。でもこれって・・・?」
「ナン、危ない!!」
ナンはそのままティソンの所に向かうと、その後ろをカロルが追い駆けユーリは苦笑して私達もその後を追った
「ナン・・・何故来た!」
「迷いを持ったままじゃ足手まといだと言ったろうが!」
「逃げろ! お前ではどうにもならん」
「イヤです、あたしにとってギルドは家族。見捨てるなんて出来ない!」
「くそが!」
「ナン!!」
「貴様等・・・」
カロルと私達の姿を見たクリントとティソンは少し驚いた顔をしていた
「落ち着いて、グシオス! どうしたというの!」
「きゃぁ」
途端、グシオスが雄叫びのような声を出し、地面に足をつき、その震動で私達も魔狩りの剣も尻餅をついてしまう
「・・・・」
アスラはグシオスを見て対話をした後、顔を歪めた
「アスラ・・・?」
「おい、あいつ、一体どうしちまったんだ?」
「何か話出来る状態じゃないみたいよ!?」
「・・・グシオスはエアルを体内に取り込み過ぎたんだよ」
「始祖の隷長といえども、無制限にエアルを取り込める訳ではない」
「その能力を超えたエアルを、体内に取り込んだものは耐え切れず変異を起こす」
アスラの言葉に続いてウンディーネとイフリートが現れ言葉を続ける
「な、なんだ・・・こいつ等は・・・」
「式神と精霊よ」
「式神・・・精霊・・・」
ナン達は突然姿を現したアスラとウンディーネとイフリートを見て驚いていた
アスラ達はそれを気にした様子もなく言葉を続ける
「そしてエアルを取り込み過ぎた始祖の隷長は・・・」
「まさか!」
「・・・星喰みとなる」
「なんだと!? それじゃ、こいつは世界を守ろうとして、あんなんなっちまってたのか」
「グシオス・・・」
「・・・救ってやってくれ。この者がまだ、グシオスと言う存在でいる間に・・・」
「・・・ああ」「・・・ええ」「・・・はい」
私達はグシオスを見据えて頷くと武器を構えた
けど、エアルを取り込み過ぎている所為で更に力が増していて体力を削っている感覚が殆ど無い
「ちょっと厳しい戦いになるかな」
そう思い剣を構えようとしていると、
(・・・め)
「!」
何かの声が聞こえ、足を止めると今度はその声がはっきりと聞こえた
(・・・言霊使いの姫・・・)
(・・・グシオス・・・?)
その声は目の前にいるグシオスの声だった
(・・・姫、どうか・・・鎮めて下さい・・・)
途切れ途切れだったが、グシオスが言いたい事は伝わった
私はグシオスを見据えて、前にいたユーリに声を掛けた
「ユーリ」
「どうした?」
静かにユーリの名前を呼ぶとユーリが少し不安そうな顔をして私を見た
「・・・少しだけ時間稼いで貰っても良い?」
「あ、ああ」
また静かにそう告げるとユーリは疑問を持ちながらグシオスに向かって行った
私はみんなから少し離れた所に行くと深呼吸して目を瞑って意識を集中させると、足下に円陣が描かれた
そしてゆっくりと顔を上げて口を開いて歌い出した
―――終止符 と 告げる冷たい雨
遠い日々へ馳せる思い
「リア?」
突然聞こえた歌に皆、一斉に私を見た
天上 を仰ぐ度 紡げない未来に
君が幸せであれと最期まで願う
地の果ての影に留まりながら
鉛の空を想うのだろう
いつもと違う感情で唄いあげていき、それを言霊に乗せてグシオスの心に響かせる
夜を算 え 夢を観て 黎明の聖刻 を迎え
限りある生命 よ 魂よ
永遠 に眠れ ―――
歌い終わると同時にグシオスが雄叫びのようなものを上げ、動きが止まった
「・・・止まった?」
それを確認すると私はゆっくりとグシオスの元に歩いて行く
「リア、あぶなっ!」
それを止めようとしていたエステルを兄さんが止めると、ユーリ達も動きを止めグシオスの元に向かって行っている私をじっと見ていた
「・・・グシオス、もう、大丈夫よ」
私はグシオスの元まで歩いてグシオスに振れ優しくそう告げた
その途端、グシオスは眩い光を放ち、聖核となって私の手元に降りて来て聖核をギュッと抱きしめた
(・・・ありがとう、姫・・・)
グシオスの言葉を聞き、微笑んで頷いていると後ろにいたユーリ達が疑問を抱いていた
「どうなってんだ?」
「さっきのリアの歌でグシオスの体内に取り込んでいたエアルを抑えたんだよ」
「そんな事が出来るの?」
「少なくとも普通は無理だろうな」
「じゃあどうして?」
「グシオスの声が聞こえたから」
私の言葉に一斉に顔を向ける
「グシオスの心の声が聞こえたから、その強い思いが届いたから鎮める事が出来たの」
「姫であるリアにしか出来ない事だな」
「うん」
ユーリ達は私達の言葉を聞いて少し唖然としていて、私はそれを見て小さく苦笑した
とにかくグシオスの願いを叶える事が出来たし、無事に収まったから良かったとホッと胸を撫で下ろしていると、クリントが私が持っている聖核を睨み付けていた
「ったく、まだこいつに恨みがあんのか?」
その視線に気付いたのかユーリがそう呟くとクリントがゆっくりと重たい口を開いた
「・・・そいつはあの化け物の魂だ。砕かずにはすまさん」
「化け物じゃないです! 彼等は世界を守ってくれてたんですよ?」
「さっきの話から想像力働かせてみればナマコでも分りそうなものなのじゃ」
「始祖の隷長の役目なぞ知った事ではない!!」
「!」
まさか始祖の隷長という言葉が彼の口から出てくるとは誰も思っていなかったから、私達は驚いて目を見開いていた
「・・・てめえ知ってるな? 始祖の隷長がどんな存在か」
「知っててまだ狙ってたの? 世界がこんなになってるのに!」
「俺の家族は十年前に始祖の隷長どもに殺された。俺だけではない。魔狩りの剣のメンバーの大半が魔物に大事なものを奪われた者達・・・。この、奴等を憎む気持ちは世界がどうなろうと変わるものではない!」
「・・・それでも間違ってるよ」
そう静かに告げたのはカロルだった
「何?」
「そんな事続けたって、何も帰ってこないのに」
「あの戦争で身内失ったのは、あんた等だけじゃないでしょ」
「そうね、それでも前向きに生きようとする人もいる」
そう、あの人魔戦争でレイヴンもジュディスも身内や仲間、とても大切な人達を失った一人だ
人魔戦争後、二人は誰よりもツライ道を歩んできた
けど、私達と旅をして更に自分の進むべき道を見つけ、彼等とは違う生き方を選び、今この場にいた
「憎しみだけでぶつかっていっても、誰も・・・自分も救われないのじゃ。それより残った者を大切にした方が良いのじゃ」
そしてパティの今の言葉にも、何処か重みを感じるものがあった
「街を守って魔物と戦う、立派な事だと思います。けど・・・」
私はそのままみんなへと視線を戻し話を聞いていた
「世界がどうにかなりそうってな時だ。意地になってんじゃねぇよ」
「今更・・・生き方を変えられん」
「ふん。どうしても邪魔するってんなら・・・此処で白黒衝けなきゃなんねえな」
ユーリが前に出るとクリントも前に出る、クリントとティソンの後ろにいたナンが小さく「首領・・・」と呟いた
「・・・・」
クリントとティソンはナンと見てカロルを見て何かを感じ取った後、私と私が持っている聖核を見た
「・・・・」
私は聖核を更にギュっと抱きしめていると、クリントが口を開いた
「・・・一つだけ聞きたい。お前達は何者だ?」
クリントの視線は私と兄さん、そしてアスラに向けられていた
「・・・言霊使いの正統後継者、と、その相棒の式神だ」
「・・・言霊使いに式神・・・ふ、成る程な」
クリントは私と兄さんとアスラを見た後、何かを理解し、小さく笑って踵を返して歩き出した
「待って下さい、傷の治療だけでも・・・」
「起きろ貴様等! 撤収するぞ!!」
クリントの声で周りに倒れていた魔狩りの剣が起き上がり、ナンはカロルの隣まで来ると小さな声で「・・・ありがとう」と言って走り去って行った
「分かってくれたのかな・・・」
「・・・さぁな」
「少なくともカロルの気持ちは伝わったと思うよ」
私はニコリと笑って言うとカロルは小さく頷いた
きっと、彼等にも私達の気持ちが伝わったと思う
今はまだ魔狩りの剣の全員にその気持ちを変え前に進むようにしてと言っても無駄かもしれないけど、さっきの私達の言葉、そしてカロルの強い意志とナンの気持ちが通じてあの人達も前に進める日が来るだろう
「さ、精霊化をすませちまおうぜ」
「うん」
そして私達はグシオスの聖核を精霊にする為に準備を始めた
続く
あとがき
此処もある意味カロル先生の見せ場ですよね~
いやぁホント良い男になるよ、カロルはww
そして何とかグシオスを精霊に転生させる所まで行きましたね
次は最後の始祖の隷長がいる所ですね
まあ若干変えたけど・・・箱版と同じ流れになっちゃってますねが、次はちょっとでも変えられると思いますι
レイヴン&ジュディス編の小説読み終わったので若干変更してみました
2011.06.27(2012.01.12若干変更w)
エレアルーミンはトルビキア大陸の北東の海に浮かぶ水晶化した島だった
そしてその中心に洞窟があり、私達はその入り口に立っていた
「此処が結晶化の中心みたいだな」
「綺麗・・・」
「夢の中に居るみたいです」
「低密度で結晶化したエアルか。・・・むしろマナ? サンプルを採取しておかなきゃ」
「うーむ、森全体がお宝なのじゃ。でも船には運べないのじゃ・・・」
洞窟に足を踏み入れた瞬間、私とエステルは洞窟内の至る所にあるクリスタルのような結晶を見て歓声の声を出していると、リタも声を出し、サンプルを採取しだした
「なんでああも反応に差があるかねえ」
「まるで天と地、だな・・・」
「バリバリ砕けるよ、あはは面白い」
「こっちはこっちではしゃいでるし・・・」
私達の反応を見てレイヴンと兄さんは苦笑していると、カロルが足下にある結晶を踏み声をあげるとアスラも苦笑していた
「呑気なもんね。これ自然に出来たんじゃないわよ?」
「え、どういう事?」
「結晶化によって新たに生まれた地の中心・・・此処にそれを行った何者かがいる」
「それとエアルクレーネもね」
「ワン! ワン!」
「どうしたラピード、なんか見つけたか」
ラピードが声を発した方を見ると、踏み荒らした跡が幾つもあった
「どうやら先客がいるらしいな」
「ああ。みんな、用心しろよ」
私達は一斉に頷き、警戒を強めて先に進み出した
106.菫色に光り輝く大地
「それにしても、本当に綺麗な所よね」
「幻想的で良い所ですよね」
「おやおや、嬢ちゃんとリアちゃんは気に入っちゃったの?」
「ええ」「はい」
リアとエステルはニコリとして言うと兄さんとユーリはぼそりと呟いた
「オレは目ぇ痛いんだが・・・」
「同じく」
「女の子はこういう綺麗な物が好きだからね」
「でもジュディスは冷静だよね」
「そう? 私も結構気に入ってるのだけれど」
「リタとパティは・・・って、聞くまでもないか」
リタは辺りにある結晶を見てはメモを取りぶつぶつと言っていて、パティも辺りにある結晶を見て歓声を上げていた
「・・・なんつーか、此処だけ見るとある意味平和だよな」
「そうだね・・・」
そんな女性陣を見て男性陣はセイのぽつりと言った言葉に同意していた
確かにこんな風に綺麗な所ではしゃいでいる姿を見れば、世界の危機、と言うのも忘れてしまう程平和と言えるだろう
「! みんな伏せて!」
そんな様子を見ながら暫く進んでいるとアスラがそう叫び、リア達は伏せると頭の上を何かが通り過ぎ、それは近くの結晶に突き刺さる
「この武器・・・!」
ジュディスの声が聞こえ顔を上げると、巨大な円形の刃が結晶に突き刺さっていた
「ナン!」
カロルは目の前にいる人物を見見てそう叫び、リア達も前を見ると荒い息を吐いているナンがいた
「・・・警告する。此処は魔狩りの剣が活動中だ。直ぐに立ち去り・・・」
「ナン!」
ナンはそのまま倒れ直ぐにカロルとエステルが駆け寄りエステルが治癒術を掛け始めた
「ひどいケガ・・・」
「しっかり! ナン!」
「カロル・・・」
「一人でどうしたんだよ! 首領やティソン達は?」
「・・・師匠達は奥に・・・」
「え? ナンを置いて!? 首領はともかく、ティソンがナンを連れてかないなんて・・・一体何が遭ったのさ!」
「不意に標的と此処で戦いになって、あたし、いつもみたいに出来なくて・・・師匠が迷いがあるからだって」
「迷い?」
ナンは身体を起こして少し寂しそうな悔しそうな顔をしてカロルにそう話し、さっきよりも表情を強めて話しを続けた
「魔物は憎い。許せない。その気持ちは変わらない」
その目は本当に憎いものを恨んでいるような目だったが、直ぐに悲しい目に戻る
「でも今はこんなとこに来て魔物を狩る事よりもしなきゃいけない事があるんじゃないかって・・・それを話したら・・・」
「置いて行かれたってか」
「愚かね。この期に及んで生き方を見つめ直せないなんて」
「ひどいよ! ナンは間違ってないのに!」
「ま、落ち着け、カロル。なぁ、魔狩りの剣の狙いは始祖の隷長だろ」
その言葉にナンは答えようとしないが黙っている事はそれを認めていると言う事だ
「急いだ方が良さそうね」
「ああ」
「さあ、ナン、歩ける?」
「え? う、うん。けど・・・」
「こんな所に一人でいる方がもっと危険よ」
「一緒に行こう、ナン」
「カロル・・・。うん」
リアはナンの前まで移動して目線を合わせ優しく微笑みながら言うと、カロルがナンの手を引いて立たせてやり、最深部へと向かった
*
最深部に到着すると、大量のエアルが放出していた
そしてその中心にこのエレアルーミンを作り出した始祖の隷長がいた
「グシオス!」
「グシオスってあいつ!? 確かカルボクラムで・・・」
グシオスの姿を見た途端、表情を変えた
「成る程、魔狩りの剣にとっちゃ因縁の相手ってとこか」
ユーリ達は以前グシオスを見た事があった
それはカルボクラムに向かった時に、最深部で魔狩りの剣によって逆結界に閉じ込められていた魔物、それが今此処に居るグシオスだった
魔狩りの剣はあの時グシオスを狩るつもりだったのだろうが、ジュディスとバウルが逆結界を壊しグシオスは此処までやって来てこの地を作ったようだった
けど、此処にグシオスがいる事を知ったのか魔狩りの剣はまだグシオスを狙っていた
「で、うちらの茶飲み相手はどっちかの」
「パティ・・ι」
「どっち、ってあのねえι」
「待って、ジュディス。様子が可笑しいです!」
ジュディスが一歩踏み出そうとしていると、エステルがジュディスを呼び止め、グシオスに目を向けるとグシオスの前に魔狩りの剣のクリントとティソンがいた
「おおりゃあああ!!」
「師匠!」
ティソンはグシオスに向かって行くが簡単に弾き飛ばされてしまう
「く・・・何故だ、何故攻撃が効かない・・・!?」
クリントは片膝を付いて荒い息を吐きながらグシオスを見ると、グシオスは辺りのエアルを食べ始めた
「エアルを食べてる。でもこれって・・・?」
「ナン、危ない!!」
ナンはそのままティソンの所に向かうと、その後ろをカロルが追い駆けユーリは苦笑して私達もその後を追った
「ナン・・・何故来た!」
「迷いを持ったままじゃ足手まといだと言ったろうが!」
「逃げろ! お前ではどうにもならん」
「イヤです、あたしにとってギルドは家族。見捨てるなんて出来ない!」
「くそが!」
「ナン!!」
「貴様等・・・」
カロルと私達の姿を見たクリントとティソンは少し驚いた顔をしていた
「落ち着いて、グシオス! どうしたというの!」
「きゃぁ」
途端、グシオスが雄叫びのような声を出し、地面に足をつき、その震動で私達も魔狩りの剣も尻餅をついてしまう
「・・・・」
アスラはグシオスを見て対話をした後、顔を歪めた
「アスラ・・・?」
「おい、あいつ、一体どうしちまったんだ?」
「何か話出来る状態じゃないみたいよ!?」
「・・・グシオスはエアルを体内に取り込み過ぎたんだよ」
「始祖の隷長といえども、無制限にエアルを取り込める訳ではない」
「その能力を超えたエアルを、体内に取り込んだものは耐え切れず変異を起こす」
アスラの言葉に続いてウンディーネとイフリートが現れ言葉を続ける
「な、なんだ・・・こいつ等は・・・」
「式神と精霊よ」
「式神・・・精霊・・・」
ナン達は突然姿を現したアスラとウンディーネとイフリートを見て驚いていた
アスラ達はそれを気にした様子もなく言葉を続ける
「そしてエアルを取り込み過ぎた始祖の隷長は・・・」
「まさか!」
「・・・星喰みとなる」
「なんだと!? それじゃ、こいつは世界を守ろうとして、あんなんなっちまってたのか」
「グシオス・・・」
「・・・救ってやってくれ。この者がまだ、グシオスと言う存在でいる間に・・・」
「・・・ああ」「・・・ええ」「・・・はい」
私達はグシオスを見据えて頷くと武器を構えた
けど、エアルを取り込み過ぎている所為で更に力が増していて体力を削っている感覚が殆ど無い
「ちょっと厳しい戦いになるかな」
そう思い剣を構えようとしていると、
(・・・め)
「!」
何かの声が聞こえ、足を止めると今度はその声がはっきりと聞こえた
(・・・言霊使いの姫・・・)
(・・・グシオス・・・?)
その声は目の前にいるグシオスの声だった
(・・・姫、どうか・・・鎮めて下さい・・・)
途切れ途切れだったが、グシオスが言いたい事は伝わった
私はグシオスを見据えて、前にいたユーリに声を掛けた
「ユーリ」
「どうした?」
静かにユーリの名前を呼ぶとユーリが少し不安そうな顔をして私を見た
「・・・少しだけ時間稼いで貰っても良い?」
「あ、ああ」
また静かにそう告げるとユーリは疑問を持ちながらグシオスに向かって行った
私はみんなから少し離れた所に行くと深呼吸して目を瞑って意識を集中させると、足下に円陣が描かれた
そしてゆっくりと顔を上げて口を開いて歌い出した
―――
遠い日々へ馳せる思い
「リア?」
突然聞こえた歌に皆、一斉に私を見た
君が幸せであれと最期まで願う
地の果ての影に留まりながら
鉛の空を想うのだろう
いつもと違う感情で唄いあげていき、それを言霊に乗せてグシオスの心に響かせる
夜を
限りある
歌い終わると同時にグシオスが雄叫びのようなものを上げ、動きが止まった
「・・・止まった?」
それを確認すると私はゆっくりとグシオスの元に歩いて行く
「リア、あぶなっ!」
それを止めようとしていたエステルを兄さんが止めると、ユーリ達も動きを止めグシオスの元に向かって行っている私をじっと見ていた
「・・・グシオス、もう、大丈夫よ」
私はグシオスの元まで歩いてグシオスに振れ優しくそう告げた
その途端、グシオスは眩い光を放ち、聖核となって私の手元に降りて来て聖核をギュッと抱きしめた
(・・・ありがとう、姫・・・)
グシオスの言葉を聞き、微笑んで頷いていると後ろにいたユーリ達が疑問を抱いていた
「どうなってんだ?」
「さっきのリアの歌でグシオスの体内に取り込んでいたエアルを抑えたんだよ」
「そんな事が出来るの?」
「少なくとも普通は無理だろうな」
「じゃあどうして?」
「グシオスの声が聞こえたから」
私の言葉に一斉に顔を向ける
「グシオスの心の声が聞こえたから、その強い思いが届いたから鎮める事が出来たの」
「姫であるリアにしか出来ない事だな」
「うん」
ユーリ達は私達の言葉を聞いて少し唖然としていて、私はそれを見て小さく苦笑した
とにかくグシオスの願いを叶える事が出来たし、無事に収まったから良かったとホッと胸を撫で下ろしていると、クリントが私が持っている聖核を睨み付けていた
「ったく、まだこいつに恨みがあんのか?」
その視線に気付いたのかユーリがそう呟くとクリントがゆっくりと重たい口を開いた
「・・・そいつはあの化け物の魂だ。砕かずにはすまさん」
「化け物じゃないです! 彼等は世界を守ってくれてたんですよ?」
「さっきの話から想像力働かせてみればナマコでも分りそうなものなのじゃ」
「始祖の隷長の役目なぞ知った事ではない!!」
「!」
まさか始祖の隷長という言葉が彼の口から出てくるとは誰も思っていなかったから、私達は驚いて目を見開いていた
「・・・てめえ知ってるな? 始祖の隷長がどんな存在か」
「知っててまだ狙ってたの? 世界がこんなになってるのに!」
「俺の家族は十年前に始祖の隷長どもに殺された。俺だけではない。魔狩りの剣のメンバーの大半が魔物に大事なものを奪われた者達・・・。この、奴等を憎む気持ちは世界がどうなろうと変わるものではない!」
「・・・それでも間違ってるよ」
そう静かに告げたのはカロルだった
「何?」
「そんな事続けたって、何も帰ってこないのに」
「あの戦争で身内失ったのは、あんた等だけじゃないでしょ」
「そうね、それでも前向きに生きようとする人もいる」
そう、あの人魔戦争でレイヴンもジュディスも身内や仲間、とても大切な人達を失った一人だ
人魔戦争後、二人は誰よりもツライ道を歩んできた
けど、私達と旅をして更に自分の進むべき道を見つけ、彼等とは違う生き方を選び、今この場にいた
「憎しみだけでぶつかっていっても、誰も・・・自分も救われないのじゃ。それより残った者を大切にした方が良いのじゃ」
そしてパティの今の言葉にも、何処か重みを感じるものがあった
「街を守って魔物と戦う、立派な事だと思います。けど・・・」
私はそのままみんなへと視線を戻し話を聞いていた
「世界がどうにかなりそうってな時だ。意地になってんじゃねぇよ」
「今更・・・生き方を変えられん」
「ふん。どうしても邪魔するってんなら・・・此処で白黒衝けなきゃなんねえな」
ユーリが前に出るとクリントも前に出る、クリントとティソンの後ろにいたナンが小さく「首領・・・」と呟いた
「・・・・」
クリントとティソンはナンと見てカロルを見て何かを感じ取った後、私と私が持っている聖核を見た
「・・・・」
私は聖核を更にギュっと抱きしめていると、クリントが口を開いた
「・・・一つだけ聞きたい。お前達は何者だ?」
クリントの視線は私と兄さん、そしてアスラに向けられていた
「・・・言霊使いの正統後継者、と、その相棒の式神だ」
「・・・言霊使いに式神・・・ふ、成る程な」
クリントは私と兄さんとアスラを見た後、何かを理解し、小さく笑って踵を返して歩き出した
「待って下さい、傷の治療だけでも・・・」
「起きろ貴様等! 撤収するぞ!!」
クリントの声で周りに倒れていた魔狩りの剣が起き上がり、ナンはカロルの隣まで来ると小さな声で「・・・ありがとう」と言って走り去って行った
「分かってくれたのかな・・・」
「・・・さぁな」
「少なくともカロルの気持ちは伝わったと思うよ」
私はニコリと笑って言うとカロルは小さく頷いた
きっと、彼等にも私達の気持ちが伝わったと思う
今はまだ魔狩りの剣の全員にその気持ちを変え前に進むようにしてと言っても無駄かもしれないけど、さっきの私達の言葉、そしてカロルの強い意志とナンの気持ちが通じてあの人達も前に進める日が来るだろう
「さ、精霊化をすませちまおうぜ」
「うん」
そして私達はグシオスの聖核を精霊にする為に準備を始めた
続く
あとがき
此処もある意味カロル先生の見せ場ですよね~
いやぁホント良い男になるよ、カロルはww
そして何とかグシオスを精霊に転生させる所まで行きましたね
次は最後の始祖の隷長がいる所ですね
まあ若干変えたけど・・・箱版と同じ流れになっちゃってますねが、次はちょっとでも変えられると思いますι
レイヴン&ジュディス編の小説読み終わったので若干変更してみました
2011.06.27(2012.01.12若干変更w)