星喰み編
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フィエルティア号に戻った私達はバウルに始祖の隷長の居場所を聞いた
けど、やっぱり仲間を危険な目に遭わせたくないのか教えるのを躊躇った
それでも私達の言葉を聞いてバウルは居場所を教えてくれ、エレアルーミンはトルビキア大陸の北東部、レレウィーゼはウェケア大陸にあるという事が解った
ただ、エステルの話しによればウェケア大陸は、時の皇帝カルクス三世が開拓の為に四度にわたって調査隊を派遣したがいずれも更新が途絶え、戻るものもなかった、テルカ・リュミレースに残された最後の秘境、と言われている場所らしい
だからレレウィーゼは最後に回す事になった
そして私達はまず、此処から一番近いフェローがいる岩場に向かう事にした
「・・・いつまでも先送りにしとく訳にもいかんの」
が、ユーリ達の姿を見てパティは背を向けてぽつりとそう呟いた
その呟きはユーリ達に聞こえる事なく虚空へと消えた
105.イフリート
フェローの所に着くまでまだ時間はある
その間、私達はそれぞれ好きな事をやっていて私は甲板に出て空を眺めていた
ザウデが無くなり、星喰みを抑えていた結界もなくなり、私の力が反応する事は無くなった
けど、星喰みがいる限り、今は抑えられている力がいつ発動するか解らないとも言っていた
「リアちゃん」
空に漂っている星喰みを見つめながらそう思っていると後ろからレイヴンの声が聞こえ振り向くと、私の方に歩いて来ていた
「レイヴン、どうしたの?」
「いや、リアちゃんに謝っておきたいと思ってね」
「謝る?」
何の事だろう? と思って首を傾げているとレイヴンは苦笑して私を見た
「ほら、ミョルゾでリアちゃんが倒れた後アレクセイに渡しちゃったじゃない」
「あ、うん・・・」
「で、前に謝ろうとしたらまだ言わないでって言ってたじゃない」
「え?」
その言葉を聞き何時その話が出たのだろうと思い少し首を傾げると直ぐにシエラさんが答えた
(城でリア様と満月の子を助けた後に彼が謝ろうとして着たんです。でもその時は貴女じゃなかったから私が彼にそう言ったんです)
シエラさんの言葉を聞き納得しレイヴンを見ると本当に申し訳ない顔をしていた
「だから、今謝っておこうと思ってね」
「でも・・・あの時、レイヴンのツラそうな声、聞こえたよ」
「!」
そう言うとレイヴンは驚いた顔をしていた
確かにあの時の私は完全に気を失っていた
けどあの時シエラさんの声と一緒にレイヴンのツラそうな声も聞こえていた
「レイヴンがアレクセイの命令に従ってた理由は、みんなから聞いてる。それでもあの時のレイヴンの言葉にはウソはなかった」
「・・・・」
私の言葉を聞くとレイヴンは何か思っている顔をして押し黙ってしまう
多分それは過去の事を思い出し、レイヴンとして生きると決めたからこそあの時のケジメを付けておきたいと思っているからなのだろう
「それでも、リアちゃんにはツライ思いさせちゃったし・・・」
「・・・・」
その先の言葉は言わずとも解ってしまう
「なら、尚の事お相子だと思うけど」
「え?」
「レイヴンも私も一度は似た経験をした。きっと・・私よりレイヴンの方がツライ思いをしたと思う・・・」
人魔戦争の生き残りであるレイヴンにとっては多くの仲間を失いシュヴァーンとレイヴンと言う二つの人生を歩んでいた
どうしてそうなったのかはレイヴン自身が話そうとしないから私も追求はしない
けど此処に居る誰よりも深い傷を負っているのは他の誰でもないレイヴン自身だった
だからこそ今此処で過去とのケジメを付けておきたいのだろう
「仲間として、ギルドの一員としてケジメを付けたい、レイヴンはそう思ってるんだよね。でも、ユーリ達と一緒に助けてくれたから、私は気にしてないよ」
「リアちゃん・・・」
言い淀むレイヴンの言葉を遮ってニコリと笑って言うと、レイヴンは少しだけ黙ってしまう
実際に起こってしまったのは事実だけど、それでもあの時のレイヴンは仲間としてユーリ達と一緒に私を助けに来てくれたし、再会した時も安心した顔をしていた
「それでもレイヴンが私とケジメを付けたいって言うなら、」
そこで言葉を切りニコリとしてレイヴンを見た
「みんなであの星喰みをどうにかしよう」
「!」
それを見てレイヴンは本当に参ったと言う顔をして
「・・・ホント、リアちゃんには敵わないねぇ・・」
そう呟いた
「リアちゃんがそう言うなら、俺様もそれで良いよ」
「うん。じゃあ改めて、これからもよろしくね」
「あいよ」
「ま、リアらしいケジメの付け方だよな」
「ああ」「だね」
「ユーリ、兄さん、アスラ」
ニコリと笑って答えていると急に声が聞こえ振り返るとユーリと兄さんとアスラが私達の方へ歩いて着ていた
「もしかして全部聞いてた?」
「いや、最後の方だけな」
「ま、これ以上殴られなくて良かったんじゃない?」
「殴るって・・?」
「おっさんとケジメ付けるのにみんな一発、ってな」
「・・・みんなして連続だからヒドかったわよね」
「エステルは頭をぽかり、だったらしいけどね」
「・・そう、だったんだι」
何となくだけどその時のみんなの様子が浮び苦笑してしまった
「?」
「どうしたの、アスラ・・?」
するとアスラ何かに気が付き疑問符を出していると、何かが羽ばたいてる音が聞こえた
「・・・・」
「! フェロー!」
そのままアスラと同じように空の向こうを見ていると徐々に鳥が羽ばたいているような音が聞こえだし、こちらに向かって近付いて来るものを良く見るとそれはフェローだった
だが、彼はかなりの傷を負っていた
「かなり傷ついてるな・・・」
「人間に聖核を渡さない為に飛び回ってたんだね・・・」
「あんな状態で馬鹿なヤツに襲われたら一溜まりもねぇだろうからな」
「だろうね・・・」
「フェロー・・・」
(・・・・)
フェローの様子を見ていると、フェローはそのまま岩場へと降りて行った
「なんだか・・・呼んでるみたい」
「ああ。・・・行こうぜ」
その後、私達は中にいるエステル達と一緒にフェローが居る岩場に向かった
「フェロー、フェロー、しっかりして」
岩場に着いた私達は急いでフェローの元に向かったが、岩場に着くとフェローはぐったりと横たわっていた
ジュディスはフェローの側に駆け寄り声を掛け、その隣にエステルも並んだ
「ごめんなさい、私達の為に・・・」
「・・・(どういう事?)」
(フェローはユーリさん達がザウデに潜入する時にオトリになってくれたんです)
(! そう、だったの・・・)
その事に疑問を持っているとシエラさんが変わりに答えてくれた
ザウデに潜入する時、あの時はシエラさんが私の身体にいたからその時の記憶が無かった
だけど、シエラさんの声は何処かツラそうな感じだった
「世界の運命は決し、我等はその務めを果たせず終わる。無念だ・・・」
「長年、頑張ってきた割に諦めが早いんだな。悪いけど、まだ終わっちゃいないぜ」
「ザウデが失われ、星喰みは帰還した。人間も我等も昔日の力はない。これ以上、何が出来よう」
「まだ望みはあります! まだ新しい力があるんです!」
「あんたに精霊に・・・エアルをもっと制御出来る存在に転生して欲しいの」
「その為には・・・あんたの聖核が必要なんだ」
「・・・我が命を寄越せと言うか」
「そう言う意味じゃ・・・」
私の言葉は兄さんが私の前に出した手によって遮られた
「フェロー、世界を救いたいって思ってるのはみんな同じなんだよ。だからボク等に協力して」
「・・・・」
アスラの言葉にフェローは少しだけ黙って考え口を開く
「・・・心で世界は救えぬが世界を救いたいと言う心を持たねば、また救う事は叶わぬ、か・・・。どのみち遠からず果てる身・・・そなた等の心のままにするが良い」
そう言い、フェローから眩い光が放たれ、光が消えると聖核になって私の手元に下りてきた
「・・・フェロー・・・」
私は聖核をぎゅっと抱きしめ声を聞いた
(言霊使いの姫・・・我が命、預ける)
(ええ・・・)
(・・・エルシフルの・・を・・・し・・・めよ)
「え・・・?」
そこでフェローとの会話は途絶えた
「リア、どうかしたのか?」
現実に引き戻されると、ユーリが心配そうな顔をして私を見ていた
「ううん、何でもない」
「何でもないって顔してないぞ」
「え? あ、あれ・・・?」
ユーリにそう言われた途端、私の頬に一粒の涙が流れた
何故なのか分からないが急に涙が流れた
私よりツライのはジュディスのはずなのに・・・
だけど、フェローが最後に言った言葉、『エルシフル』と言う言葉が胸に突き刺さり、頭から離れなかった
私は涙を拭い、ジュディスを見るとやはり膝を尽き俯いたままだった
「・・・・」
みんな声を掛けるべきか悩んでいると、レイヴンが小さく息を吐いてジュディスの所まで歩いて行った
「・・・精霊になっても協力してくれなかったりしてね・・・」
その言葉を聞いてジュディスは立ち上がり、レイヴンを見た
「フェローは世界を愛しているもの。きっと大丈夫よ」
そう言ってジュディスはエステルの横に歩いて行き、アイコンタクトを送るとエステルは頷き、そして私が持っている聖核を見てやりましょうと言った
「でも此処エアルクレーネが涸れてるんでしょ?」
「エアルの流れの跡を辿れば、深みから引き寄せる事が出来ると思います」
「そんな事、出来るのか」
「ウンディーネが・・・教えてくれるんです」
「その流れならアスラも辿れるんじゃないか?」
「うん、ウンディーネとエステルを通せばなんとかなると思うよ」
「ユーリ、やろう」
「ああ」
私は聖核を抱きしめながら言うとユーリは頷き、ウンディーネを誕生させた時と同じように配置につき、精霊化を始めた
聖核の周りに上手くエアルが集まると、聖核が光り、辺りに炎が集まり精霊が現れた
「やった!」
「うわうわ、火だ、火が」
「火の・・・精霊・・・」
「おお・・・無尽蔵の活力を感じる」
精霊となったフェローはそう言って両手を挙げ、纏っていた炎の力を感じ出すと、その前にウンディーネが姿を現した
「お久しゅう、盟主殿。転生、お祝い申し上げます」
「その気配は・・・ベリウス? そうか、そなたも・・・」
「水を統べるようになった今はウンディーネと呼ばれております」
「在りようを変えし今、我もまた新たな名を求めねばな。我を転生せしめたそなた、我を名付けよ」
「めらめら火の玉キン・・・ゲシッ
その途端、カロルが口を開くが直ぐにリタがカロルの元に走って行き思いっきりチョップをし、カロルは頭を抑えた
その様子を苦笑しながら見ていると、エステルが口を開いた
「力強く猛々しい炎・・・灼熱の君イフリート」
「イフリート・・・」
「世界と深く結びついた今、全てが新しく視える。この死に絶えた荒野でさえ力に満ち溢れている。はははは、愉快だ」
イフリートは豪快に笑った後、空に向かって飛んで行ってしまった
「ちょ、飛んでちゃった!」
「おーい、何処へ行くのじゃあ」
「案ずるな。我等はそなたと結びついておる。何処であろうと共に在るのじゃ。始祖の隷長と満月の子とが精霊を生み出す・・・まこと自然の摂理は深遠なものじゃな」
ウンディーネはニコリと笑って私達を安心させるように言うと、姿を消した
「なんつーか、精霊になる前と後で随分とノリ違うもんねえ」
「だな・・・」
「きっと価値観がまるきり変わるのよ。魚が鳥に変わるどころじゃなくね」
「あの方が健全で良いじゃねぇか。世を憂う賢人然としてるより、さ」
「はは、確かに」
長年生きてきた彼を知っているアスラがこういうのだから、そうなのかもと思いながら私達はフィエルティア号に戻って行った
続く
あとがき
前回リアちゃんが此処からだと・・・と言っていたのはフェローの所が近い、って事だったんです
それと前回の後書きでも言ってた通りシエラちゃんも何気に登場w
彼女はこれからちょくちょく出て来ますよww
あと冒頭でパティがちょっと気になる事言ってたが・・・?
そしてレイヴンとのケジメも箱版とだいぶ変わりました
あっちと違う終わらせ方になったのもあるし、何より虚空の仮面読んだ&聞いた後だったから、リアちゃんとケジメを付ける所がああなったんですよ
でもホントこれ以上ボコられなくて良かったねww
さ、じゃあ次は・・・ノームか(先に言っちゃったよww)
2011.06.27
けど、やっぱり仲間を危険な目に遭わせたくないのか教えるのを躊躇った
それでも私達の言葉を聞いてバウルは居場所を教えてくれ、エレアルーミンはトルビキア大陸の北東部、レレウィーゼはウェケア大陸にあるという事が解った
ただ、エステルの話しによればウェケア大陸は、時の皇帝カルクス三世が開拓の為に四度にわたって調査隊を派遣したがいずれも更新が途絶え、戻るものもなかった、テルカ・リュミレースに残された最後の秘境、と言われている場所らしい
だからレレウィーゼは最後に回す事になった
そして私達はまず、此処から一番近いフェローがいる岩場に向かう事にした
「・・・いつまでも先送りにしとく訳にもいかんの」
が、ユーリ達の姿を見てパティは背を向けてぽつりとそう呟いた
その呟きはユーリ達に聞こえる事なく虚空へと消えた
105.イフリート
フェローの所に着くまでまだ時間はある
その間、私達はそれぞれ好きな事をやっていて私は甲板に出て空を眺めていた
ザウデが無くなり、星喰みを抑えていた結界もなくなり、私の力が反応する事は無くなった
けど、星喰みがいる限り、今は抑えられている力がいつ発動するか解らないとも言っていた
「リアちゃん」
空に漂っている星喰みを見つめながらそう思っていると後ろからレイヴンの声が聞こえ振り向くと、私の方に歩いて来ていた
「レイヴン、どうしたの?」
「いや、リアちゃんに謝っておきたいと思ってね」
「謝る?」
何の事だろう? と思って首を傾げているとレイヴンは苦笑して私を見た
「ほら、ミョルゾでリアちゃんが倒れた後アレクセイに渡しちゃったじゃない」
「あ、うん・・・」
「で、前に謝ろうとしたらまだ言わないでって言ってたじゃない」
「え?」
その言葉を聞き何時その話が出たのだろうと思い少し首を傾げると直ぐにシエラさんが答えた
(城でリア様と満月の子を助けた後に彼が謝ろうとして着たんです。でもその時は貴女じゃなかったから私が彼にそう言ったんです)
シエラさんの言葉を聞き納得しレイヴンを見ると本当に申し訳ない顔をしていた
「だから、今謝っておこうと思ってね」
「でも・・・あの時、レイヴンのツラそうな声、聞こえたよ」
「!」
そう言うとレイヴンは驚いた顔をしていた
確かにあの時の私は完全に気を失っていた
けどあの時シエラさんの声と一緒にレイヴンのツラそうな声も聞こえていた
「レイヴンがアレクセイの命令に従ってた理由は、みんなから聞いてる。それでもあの時のレイヴンの言葉にはウソはなかった」
「・・・・」
私の言葉を聞くとレイヴンは何か思っている顔をして押し黙ってしまう
多分それは過去の事を思い出し、レイヴンとして生きると決めたからこそあの時のケジメを付けておきたいと思っているからなのだろう
「それでも、リアちゃんにはツライ思いさせちゃったし・・・」
「・・・・」
その先の言葉は言わずとも解ってしまう
「なら、尚の事お相子だと思うけど」
「え?」
「レイヴンも私も一度は似た経験をした。きっと・・私よりレイヴンの方がツライ思いをしたと思う・・・」
人魔戦争の生き残りであるレイヴンにとっては多くの仲間を失いシュヴァーンとレイヴンと言う二つの人生を歩んでいた
どうしてそうなったのかはレイヴン自身が話そうとしないから私も追求はしない
けど此処に居る誰よりも深い傷を負っているのは他の誰でもないレイヴン自身だった
だからこそ今此処で過去とのケジメを付けておきたいのだろう
「仲間として、ギルドの一員としてケジメを付けたい、レイヴンはそう思ってるんだよね。でも、ユーリ達と一緒に助けてくれたから、私は気にしてないよ」
「リアちゃん・・・」
言い淀むレイヴンの言葉を遮ってニコリと笑って言うと、レイヴンは少しだけ黙ってしまう
実際に起こってしまったのは事実だけど、それでもあの時のレイヴンは仲間としてユーリ達と一緒に私を助けに来てくれたし、再会した時も安心した顔をしていた
「それでもレイヴンが私とケジメを付けたいって言うなら、」
そこで言葉を切りニコリとしてレイヴンを見た
「みんなであの星喰みをどうにかしよう」
「!」
それを見てレイヴンは本当に参ったと言う顔をして
「・・・ホント、リアちゃんには敵わないねぇ・・」
そう呟いた
「リアちゃんがそう言うなら、俺様もそれで良いよ」
「うん。じゃあ改めて、これからもよろしくね」
「あいよ」
「ま、リアらしいケジメの付け方だよな」
「ああ」「だね」
「ユーリ、兄さん、アスラ」
ニコリと笑って答えていると急に声が聞こえ振り返るとユーリと兄さんとアスラが私達の方へ歩いて着ていた
「もしかして全部聞いてた?」
「いや、最後の方だけな」
「ま、これ以上殴られなくて良かったんじゃない?」
「殴るって・・?」
「おっさんとケジメ付けるのにみんな一発、ってな」
「・・・みんなして連続だからヒドかったわよね」
「エステルは頭をぽかり、だったらしいけどね」
「・・そう、だったんだι」
何となくだけどその時のみんなの様子が浮び苦笑してしまった
「?」
「どうしたの、アスラ・・?」
するとアスラ何かに気が付き疑問符を出していると、何かが羽ばたいてる音が聞こえた
「・・・・」
「! フェロー!」
そのままアスラと同じように空の向こうを見ていると徐々に鳥が羽ばたいているような音が聞こえだし、こちらに向かって近付いて来るものを良く見るとそれはフェローだった
だが、彼はかなりの傷を負っていた
「かなり傷ついてるな・・・」
「人間に聖核を渡さない為に飛び回ってたんだね・・・」
「あんな状態で馬鹿なヤツに襲われたら一溜まりもねぇだろうからな」
「だろうね・・・」
「フェロー・・・」
(・・・・)
フェローの様子を見ていると、フェローはそのまま岩場へと降りて行った
「なんだか・・・呼んでるみたい」
「ああ。・・・行こうぜ」
その後、私達は中にいるエステル達と一緒にフェローが居る岩場に向かった
「フェロー、フェロー、しっかりして」
岩場に着いた私達は急いでフェローの元に向かったが、岩場に着くとフェローはぐったりと横たわっていた
ジュディスはフェローの側に駆け寄り声を掛け、その隣にエステルも並んだ
「ごめんなさい、私達の為に・・・」
「・・・(どういう事?)」
(フェローはユーリさん達がザウデに潜入する時にオトリになってくれたんです)
(! そう、だったの・・・)
その事に疑問を持っているとシエラさんが変わりに答えてくれた
ザウデに潜入する時、あの時はシエラさんが私の身体にいたからその時の記憶が無かった
だけど、シエラさんの声は何処かツラそうな感じだった
「世界の運命は決し、我等はその務めを果たせず終わる。無念だ・・・」
「長年、頑張ってきた割に諦めが早いんだな。悪いけど、まだ終わっちゃいないぜ」
「ザウデが失われ、星喰みは帰還した。人間も我等も昔日の力はない。これ以上、何が出来よう」
「まだ望みはあります! まだ新しい力があるんです!」
「あんたに精霊に・・・エアルをもっと制御出来る存在に転生して欲しいの」
「その為には・・・あんたの聖核が必要なんだ」
「・・・我が命を寄越せと言うか」
「そう言う意味じゃ・・・」
私の言葉は兄さんが私の前に出した手によって遮られた
「フェロー、世界を救いたいって思ってるのはみんな同じなんだよ。だからボク等に協力して」
「・・・・」
アスラの言葉にフェローは少しだけ黙って考え口を開く
「・・・心で世界は救えぬが世界を救いたいと言う心を持たねば、また救う事は叶わぬ、か・・・。どのみち遠からず果てる身・・・そなた等の心のままにするが良い」
そう言い、フェローから眩い光が放たれ、光が消えると聖核になって私の手元に下りてきた
「・・・フェロー・・・」
私は聖核をぎゅっと抱きしめ声を聞いた
(言霊使いの姫・・・我が命、預ける)
(ええ・・・)
(・・・エルシフルの・・を・・・し・・・めよ)
「え・・・?」
そこでフェローとの会話は途絶えた
「リア、どうかしたのか?」
現実に引き戻されると、ユーリが心配そうな顔をして私を見ていた
「ううん、何でもない」
「何でもないって顔してないぞ」
「え? あ、あれ・・・?」
ユーリにそう言われた途端、私の頬に一粒の涙が流れた
何故なのか分からないが急に涙が流れた
私よりツライのはジュディスのはずなのに・・・
だけど、フェローが最後に言った言葉、『エルシフル』と言う言葉が胸に突き刺さり、頭から離れなかった
私は涙を拭い、ジュディスを見るとやはり膝を尽き俯いたままだった
「・・・・」
みんな声を掛けるべきか悩んでいると、レイヴンが小さく息を吐いてジュディスの所まで歩いて行った
「・・・精霊になっても協力してくれなかったりしてね・・・」
その言葉を聞いてジュディスは立ち上がり、レイヴンを見た
「フェローは世界を愛しているもの。きっと大丈夫よ」
そう言ってジュディスはエステルの横に歩いて行き、アイコンタクトを送るとエステルは頷き、そして私が持っている聖核を見てやりましょうと言った
「でも此処エアルクレーネが涸れてるんでしょ?」
「エアルの流れの跡を辿れば、深みから引き寄せる事が出来ると思います」
「そんな事、出来るのか」
「ウンディーネが・・・教えてくれるんです」
「その流れならアスラも辿れるんじゃないか?」
「うん、ウンディーネとエステルを通せばなんとかなると思うよ」
「ユーリ、やろう」
「ああ」
私は聖核を抱きしめながら言うとユーリは頷き、ウンディーネを誕生させた時と同じように配置につき、精霊化を始めた
聖核の周りに上手くエアルが集まると、聖核が光り、辺りに炎が集まり精霊が現れた
「やった!」
「うわうわ、火だ、火が」
「火の・・・精霊・・・」
「おお・・・無尽蔵の活力を感じる」
精霊となったフェローはそう言って両手を挙げ、纏っていた炎の力を感じ出すと、その前にウンディーネが姿を現した
「お久しゅう、盟主殿。転生、お祝い申し上げます」
「その気配は・・・ベリウス? そうか、そなたも・・・」
「水を統べるようになった今はウンディーネと呼ばれております」
「在りようを変えし今、我もまた新たな名を求めねばな。我を転生せしめたそなた、我を名付けよ」
「めらめら火の玉キン・・・ゲシッ
その途端、カロルが口を開くが直ぐにリタがカロルの元に走って行き思いっきりチョップをし、カロルは頭を抑えた
その様子を苦笑しながら見ていると、エステルが口を開いた
「力強く猛々しい炎・・・灼熱の君イフリート」
「イフリート・・・」
「世界と深く結びついた今、全てが新しく視える。この死に絶えた荒野でさえ力に満ち溢れている。はははは、愉快だ」
イフリートは豪快に笑った後、空に向かって飛んで行ってしまった
「ちょ、飛んでちゃった!」
「おーい、何処へ行くのじゃあ」
「案ずるな。我等はそなたと結びついておる。何処であろうと共に在るのじゃ。始祖の隷長と満月の子とが精霊を生み出す・・・まこと自然の摂理は深遠なものじゃな」
ウンディーネはニコリと笑って私達を安心させるように言うと、姿を消した
「なんつーか、精霊になる前と後で随分とノリ違うもんねえ」
「だな・・・」
「きっと価値観がまるきり変わるのよ。魚が鳥に変わるどころじゃなくね」
「あの方が健全で良いじゃねぇか。世を憂う賢人然としてるより、さ」
「はは、確かに」
長年生きてきた彼を知っているアスラがこういうのだから、そうなのかもと思いながら私達はフィエルティア号に戻って行った
続く
あとがき
前回リアちゃんが此処からだと・・・と言っていたのはフェローの所が近い、って事だったんです
それと前回の後書きでも言ってた通りシエラちゃんも何気に登場w
彼女はこれからちょくちょく出て来ますよww
あと冒頭でパティがちょっと気になる事言ってたが・・・?
そしてレイヴンとのケジメも箱版とだいぶ変わりました
あっちと違う終わらせ方になったのもあるし、何より虚空の仮面読んだ&聞いた後だったから、リアちゃんとケジメを付ける所がああなったんですよ
でもホントこれ以上ボコられなくて良かったねww
さ、じゃあ次は・・・ノームか(先に言っちゃったよww)
2011.06.27