水道魔導器奪還編
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シャイコス遺跡を後にしたリア達はそのままアスピオへ向かって歩き出した
アスラは遺跡を出るといつもの姿に戻り、リアの肩の上に乗った
「あのぉ、一つ聞いても良いです?」
「ん? なに?」
その質問はリアの肩に乗っているアスラに向けて、のものだった
「どうしてさっき人の姿をしていたんです?」
「普段はその動物みたいな姿なのに・・・」
それはエステルだけでなくカロルも疑問に思っていたのかそう言ってアスラを見ていた
「前にも言ったけど、アスラは特殊なのよ」
「特殊って、特殊過ぎるような気もするけど」
「残念だけど、これ以上は詳しくは話せないんだよ。ま、とりあえず、あの姿に戻る事は早々ないから」
「どうしてです?」
「こっちの方が色々と身動き取りやすいし、色々と便利だしね」
「確かに色々と便利だったけど・・・」
カロルはリア達と出会った時からついさっきまでいたシャイコス遺跡での出来事を思い出しながら言う
リア達やラピードでも見分けづらい仕掛けや、届きそうにないものを動かしたり取ったりという事をしていたからだった
「・・・・」
リタはその様子をじっと見ているとユーリがリタに声を掛けた
「気になんならお前も話しに雑ざってくりゃ良いだろ」
「別に・・・」
とは言うものの、リタはちらりとリアとアスラを見て何か考えるように顎に手を持っていき歩き出した
「・・・・」
「ユーリ、どうかしたの?」
リタの様子を見ているとリアが首を傾げてユーリを見ていた
「いや。あっちの話しはもう良いのか?」
「うん。アスラが綺麗に話し逸らしたから」
「そっか」
リアは苦笑しているとユーリも小さく笑って歩き出しリアも隣に並び、その後をアスラとラピードが続き、その後ろを慌ててエステルとカロルが追い駆けて来た
10.新しい同行者
アスピオに戻るとリタはあの魔導器泥棒の事を警備に通報しに行くと言ってユーリに通行許可証を渡した
そして去り際に
「いい? あたしの許可無く街出たら酷い目に遭わすわよ」
と言って警備に通報に行った
そして私達は難なくアスピオに正面から戻る事が出来た
門番達はどうやって私達が通行許可証を手に入れて来たのか不思議そうだったが、ユーリの『モルディオから貰った』の一言であっさり通してくれ、私達はリタに言われた通り、リタの小屋でリタの帰りを待つ事にした
けど、何分他人の家なので自由に振舞う事も出来ず仕方なく床に座ったり寝転んだりして退屈を持て余していたが、アスピオに着いて直ぐリタに会い、そのまま遺跡まで直行して戻って来たのだから、皆口には出さずとも疲れが表情に出ていた
ただ、エステルだけは落ち着きなく部屋の中を歩き回っている
「フレンが気になるなら黙って出て行くか?」
「あ、いえ、リタにもちゃんと挨拶をしないと・・・」
「なら、落ち着けって」
そうは言うものの、エステルはフレンを探す為にわざわざ帝都から此処まで来たのだ
フレンの手掛かりが手に入ったって、時間が経てばその手掛かりを失いかねない
焦るのは当然の事だ
「ユーリとリアはこの後、どうするの?」
エステルの様子を見た後カロルは隣で寝転んでいるユーリとその隣に座っているリアに疑問を振った
「魔刻ドロボウの黒幕のとこに行ってみっかな。デデッキって奴も同じとこ行ったみたいだし」
「私も魔刻の事が気になるからユーリに着いて行く」
「だったら、ノール港まで一直線だね!」
「・・・トリム港って言ってなかったか?」
「ノールとトリムは二つの大陸に跨った一つの街なんだよ」
「このイリキア大陸にあるのが港の街カプワ・ノール。通称ノール港。隣のトルビキア大陸には港の街カプワ・トリム。通称トリム港。だから、まずはノール港なの」
「途中エフミドの丘があるけど、西に向かえば直ぐだから」
リアとアスラの説明を受けるとカロルは嬉しそうにしていた
「リアとアスラは結構知ってるみたいだね。もしかして旅してたの?」
「ええ。仕事で色んな所に行ってるからね」
「そういえばリアのお仕事って何なんです?」
これは会った当初から思っていた疑問だった
前に一度聞いた事があったが、結局は聞けずじまいになってしまっていたし、聞こうにもタイミングが掴めず今に至るのだ
「そうね・・・一応情報屋かな?」
「何で疑問系なの?」
カロルのツッコミにリアは苦笑いした
実際に情報屋と言うのも間違いではないがこれはあくまで表向きの仕事だからだ
うーんと唸っていると、この中で唯一リアの事を知っているユーリが助け船を出した
「何でも屋の方が近いんじゃねえか」
「あーそうだね」
「でもギルドじゃないんでしょ?」
「そう。ウチは珍しくフリーなの」
「へぇー。あ、アスラはリアの相棒なんだよね」
「そうだよ」
「じゃあどうやってリアの相棒になったの?」
これにはエステルも興味があったらしくリアとアスラをカロルと一緒にじっと見た
まあアスピオに戻って来る時の事も含めれば興味を持つのは当然かもしれないが、とリア思い苦笑して、そして良い笑顔で答えた
「企業秘密よ」
「えぇ!!」
カロルは一人ブーイングだったが、ユーリとエステルは先程のリアの笑顔に落ち顔が赤かった
「・・・二人共、大丈夫ι」
「あ、ああ・・・///」
「は、はい・・・///」
「あれ? 二人共、どうかした?」
二人の様子を見てリアとカロルは疑問符を浮かべた
「あーいや、何でも・・・。あ、エステルはやっぱりハルルに戻るの?」
「はい、フレンを追わないと」
「・・・じゃ、オレも一旦ハルルの街へ戻るかな」
「え? 何で? そんな悠長な事言ってたら、ドロボウが逃げちゃうよ!」
「慌てる必要ないよ。あの男の口振りからして、港は黒幕の拠点っぽいし」
「それに、西行くならハルルは街の通り道だ」
「え~、でもぉ・・・」
「エステル一人で行かせるのは危ないし」
「ボク等みたいに結界の外に慣れてるなら解るけど・・・」
渋るカロルに私達はそれとなく説得する
女の子一人でこの荒野を旅するのは危険な事に変わりはないし、自称魔狩りの剣のエースであるカロルならきっと分かってくれる・・・はずだ
「カロル先生には急ぐ用事でもあんのか? 好きな子が不治の病で早く戻らないと危ないとか?」
しかしカロルはユーリの言葉を聴いた途端、はぁと小さく溜め息を洩らし遠い目をした
「そんな儚い子なら、どんなに・・・」
「儚い子って、一体誰の事です?」
「えっ!?」
すかさずエステルにツッコまれてカロルはびくっと反応した
「カロルがノール港に行きたいのはその子に会う為なんですよね?」
「な、何で知ってるの!?」
「やっぱり!」
それを聞いたエステルはさっきまでの深刻な雰囲気は何処へ、と思わせる程嬉しそうに話しに食いつき、年相応の反応を見せた二人につい微笑んでしまった
「あ、違う、違うよ! 大体、ノール港じゃなくて・・・」
「ノール港じゃないんです?」
「知らない・・・ボクは何も知らない」
「カロル、早く白状した方が良いぜ」
「エステルの顔に諦めないって書いてあるよ」
「女の子はこういう事は絶対に聞かないと駄目なタイプが多いから」
ユーリとアスラの言葉にリアも笑いながら答えた
(実際に私の時もエステルは諦めずに聞いて来たしね・・・ι あの時はユーリのお陰で助かったけどι)
そう思いながらカロルを見ると、カロルは泣きそうな声で必死に叫んだ
「もぉ~~、そんなんじゃないんだってば!」
ガチャ
カロルが叫ぶと小屋唯一の扉が音を立て、リタがいつも通りの仏頂面で入って来た
リタは部屋で寝転がっているユーリを見て、むっと顔を顰めた
「待ってろとは言ったけど・・・どんだけ寛いでんのよ」
「あ、おかえりなさい。ドロボウの方はどうなりました?」
「さあ、今頃、牢屋の中でひ~ひ~泣いてんじゃない?」
「あり得るねぇ」
リタは更に皮肉を込めて言うとアスラがその様子を思い浮かべたのか苦笑して同意していた
ユーリは気にする事なくゆっくり身体を起し、リタに近付くと謝罪した
「疑って悪かった」
「軽い謝罪ね。ま、良いけどね。こっちも収穫あったから」
リタは特に謝罪なんて気にしていないらしく、そのまま部屋の奥で本棚に寄りかかり、ちらっとリアとアスラとエステルの様子を伺う
「リタ?」
エステルはリタの視線を疑問に思い首を傾げたが、リアとアスラはリタがリア達を見た理由は既に分かっていた
それは此処でリタと会った時の事、そしてシャイコス遺跡やその帰りでの出来事を含めた事で、リアとアスラを見ていたのだろう
そしてリタのエステルを見ての収穫という意味も、多分リア達が思っている事と同じだろう
そんな事を思っているとユーリが床に置いていた荷物を取り、リタに挨拶をした
「んじゃ、世話かけたな」
「何? もう行くの?」
「長居しても何だし、急ぎの用もあるんだよ」
「リタ、会えて良かったです。急ぎますのでこれで失礼します。お礼はまた後日」
「・・・解ったわ」
リタは別れの言葉を言うでもなく、ましてや別れを惜しむなんて事もなく素っ気無くそう言った
「見送りなら此処で良いぜ」
外に出て階段を上り終えるとリタが来たのが見え、見送りかと思いユーリが笑いながら言うとリタは首を横に振った
「そうじゃないわ。あたしも一緒に行く」
それを聞いて一番驚いていたのは何故かカロルだった
「え、な、何言ってんの?」
「まさか勝手に帰るなってこういう事か?」
「うん」
なんの飾り立てもしない言葉でリタは頷いた
了承だとか、許可だとか、そんなものは必要ない、勝手に着いて行かせろとばかりに
「うんって、そんな簡単に!」
「良いのかよ? お前、此処の魔導士なんだろ?」
「ん~・・・ハルルの結界魔導器が本当に直ったのか見たいのよ」
リタは少し悩み答えたが勿論、それは建前にしか聞こえなかった
「それなら、ボク達で直したよ」
「はあ? 直したってあんた等が? 素人がどうやって?」
「蘇らせたんだよ。バ~ンっと、エステ「素人も侮れないもんだぜ」
ユーリが中途半端にカロルの言葉を遮るとリタは訝しげな顔をした
「ふ~ん、ますます心配。本当に直ってるか確かめに行かないと」
「じゃ、勝手にしてくれ」
ユーリが素っ気無く関心もなさそうに言うと、エステルは嬉しそうにリタに駆け寄った
エステルの様子にリタはびくっと一歩退いたが、エステルはそんなのお構いなしだった
「な、何!?」
「わたし同年代のお友達初めてなんです!」
「あ、あんた、友達って・・・」
「よろしくお願いします」
「え、ええ・・・」
そんなエステルとリタを微笑ましく見ているとエステルが私を手招きした
「何、エステル?」
「リアも!」
「え? えっと・・・」
エステルの様子を見る限りこれはよろしくと挨拶しろって事よね? と思っているとリタが私を見た
「よろしくね、リタ」
私は微笑みながら手を出すとリアはまた驚いた
「・・・ま、まあ、良いわ」
リタは素っ気無い事を言いながらも手を出し握手をしたので私もまた微笑んだ
そんなリアを見てエステルとリタの頬に朱が差したが等の本人は気付いていなかった
続く
あとがき
前回アスラの事について触れてなかったので今回は冒頭で入れてみました
後は追加されたセリフを足してちょっと話し足した程度で終わりましたけど(笑)
次回はハルルに戻ります
まあこっちも箱版同様あんま変わんないでしょうけどね
2009.10.10
アスラは遺跡を出るといつもの姿に戻り、リアの肩の上に乗った
「あのぉ、一つ聞いても良いです?」
「ん? なに?」
その質問はリアの肩に乗っているアスラに向けて、のものだった
「どうしてさっき人の姿をしていたんです?」
「普段はその動物みたいな姿なのに・・・」
それはエステルだけでなくカロルも疑問に思っていたのかそう言ってアスラを見ていた
「前にも言ったけど、アスラは特殊なのよ」
「特殊って、特殊過ぎるような気もするけど」
「残念だけど、これ以上は詳しくは話せないんだよ。ま、とりあえず、あの姿に戻る事は早々ないから」
「どうしてです?」
「こっちの方が色々と身動き取りやすいし、色々と便利だしね」
「確かに色々と便利だったけど・・・」
カロルはリア達と出会った時からついさっきまでいたシャイコス遺跡での出来事を思い出しながら言う
リア達やラピードでも見分けづらい仕掛けや、届きそうにないものを動かしたり取ったりという事をしていたからだった
「・・・・」
リタはその様子をじっと見ているとユーリがリタに声を掛けた
「気になんならお前も話しに雑ざってくりゃ良いだろ」
「別に・・・」
とは言うものの、リタはちらりとリアとアスラを見て何か考えるように顎に手を持っていき歩き出した
「・・・・」
「ユーリ、どうかしたの?」
リタの様子を見ているとリアが首を傾げてユーリを見ていた
「いや。あっちの話しはもう良いのか?」
「うん。アスラが綺麗に話し逸らしたから」
「そっか」
リアは苦笑しているとユーリも小さく笑って歩き出しリアも隣に並び、その後をアスラとラピードが続き、その後ろを慌ててエステルとカロルが追い駆けて来た
10.新しい同行者
アスピオに戻るとリタはあの魔導器泥棒の事を警備に通報しに行くと言ってユーリに通行許可証を渡した
そして去り際に
「いい? あたしの許可無く街出たら酷い目に遭わすわよ」
と言って警備に通報に行った
そして私達は難なくアスピオに正面から戻る事が出来た
門番達はどうやって私達が通行許可証を手に入れて来たのか不思議そうだったが、ユーリの『モルディオから貰った』の一言であっさり通してくれ、私達はリタに言われた通り、リタの小屋でリタの帰りを待つ事にした
けど、何分他人の家なので自由に振舞う事も出来ず仕方なく床に座ったり寝転んだりして退屈を持て余していたが、アスピオに着いて直ぐリタに会い、そのまま遺跡まで直行して戻って来たのだから、皆口には出さずとも疲れが表情に出ていた
ただ、エステルだけは落ち着きなく部屋の中を歩き回っている
「フレンが気になるなら黙って出て行くか?」
「あ、いえ、リタにもちゃんと挨拶をしないと・・・」
「なら、落ち着けって」
そうは言うものの、エステルはフレンを探す為にわざわざ帝都から此処まで来たのだ
フレンの手掛かりが手に入ったって、時間が経てばその手掛かりを失いかねない
焦るのは当然の事だ
「ユーリとリアはこの後、どうするの?」
エステルの様子を見た後カロルは隣で寝転んでいるユーリとその隣に座っているリアに疑問を振った
「魔刻ドロボウの黒幕のとこに行ってみっかな。デデッキって奴も同じとこ行ったみたいだし」
「私も魔刻の事が気になるからユーリに着いて行く」
「だったら、ノール港まで一直線だね!」
「・・・トリム港って言ってなかったか?」
「ノールとトリムは二つの大陸に跨った一つの街なんだよ」
「このイリキア大陸にあるのが港の街カプワ・ノール。通称ノール港。隣のトルビキア大陸には港の街カプワ・トリム。通称トリム港。だから、まずはノール港なの」
「途中エフミドの丘があるけど、西に向かえば直ぐだから」
リアとアスラの説明を受けるとカロルは嬉しそうにしていた
「リアとアスラは結構知ってるみたいだね。もしかして旅してたの?」
「ええ。仕事で色んな所に行ってるからね」
「そういえばリアのお仕事って何なんです?」
これは会った当初から思っていた疑問だった
前に一度聞いた事があったが、結局は聞けずじまいになってしまっていたし、聞こうにもタイミングが掴めず今に至るのだ
「そうね・・・一応情報屋かな?」
「何で疑問系なの?」
カロルのツッコミにリアは苦笑いした
実際に情報屋と言うのも間違いではないがこれはあくまで表向きの仕事だからだ
うーんと唸っていると、この中で唯一リアの事を知っているユーリが助け船を出した
「何でも屋の方が近いんじゃねえか」
「あーそうだね」
「でもギルドじゃないんでしょ?」
「そう。ウチは珍しくフリーなの」
「へぇー。あ、アスラはリアの相棒なんだよね」
「そうだよ」
「じゃあどうやってリアの相棒になったの?」
これにはエステルも興味があったらしくリアとアスラをカロルと一緒にじっと見た
まあアスピオに戻って来る時の事も含めれば興味を持つのは当然かもしれないが、とリア思い苦笑して、そして良い笑顔で答えた
「企業秘密よ」
「えぇ!!」
カロルは一人ブーイングだったが、ユーリとエステルは先程のリアの笑顔に落ち顔が赤かった
「・・・二人共、大丈夫ι」
「あ、ああ・・・///」
「は、はい・・・///」
「あれ? 二人共、どうかした?」
二人の様子を見てリアとカロルは疑問符を浮かべた
「あーいや、何でも・・・。あ、エステルはやっぱりハルルに戻るの?」
「はい、フレンを追わないと」
「・・・じゃ、オレも一旦ハルルの街へ戻るかな」
「え? 何で? そんな悠長な事言ってたら、ドロボウが逃げちゃうよ!」
「慌てる必要ないよ。あの男の口振りからして、港は黒幕の拠点っぽいし」
「それに、西行くならハルルは街の通り道だ」
「え~、でもぉ・・・」
「エステル一人で行かせるのは危ないし」
「ボク等みたいに結界の外に慣れてるなら解るけど・・・」
渋るカロルに私達はそれとなく説得する
女の子一人でこの荒野を旅するのは危険な事に変わりはないし、自称魔狩りの剣のエースであるカロルならきっと分かってくれる・・・はずだ
「カロル先生には急ぐ用事でもあんのか? 好きな子が不治の病で早く戻らないと危ないとか?」
しかしカロルはユーリの言葉を聴いた途端、はぁと小さく溜め息を洩らし遠い目をした
「そんな儚い子なら、どんなに・・・」
「儚い子って、一体誰の事です?」
「えっ!?」
すかさずエステルにツッコまれてカロルはびくっと反応した
「カロルがノール港に行きたいのはその子に会う為なんですよね?」
「な、何で知ってるの!?」
「やっぱり!」
それを聞いたエステルはさっきまでの深刻な雰囲気は何処へ、と思わせる程嬉しそうに話しに食いつき、年相応の反応を見せた二人につい微笑んでしまった
「あ、違う、違うよ! 大体、ノール港じゃなくて・・・」
「ノール港じゃないんです?」
「知らない・・・ボクは何も知らない」
「カロル、早く白状した方が良いぜ」
「エステルの顔に諦めないって書いてあるよ」
「女の子はこういう事は絶対に聞かないと駄目なタイプが多いから」
ユーリとアスラの言葉にリアも笑いながら答えた
(実際に私の時もエステルは諦めずに聞いて来たしね・・・ι あの時はユーリのお陰で助かったけどι)
そう思いながらカロルを見ると、カロルは泣きそうな声で必死に叫んだ
「もぉ~~、そんなんじゃないんだってば!」
ガチャ
カロルが叫ぶと小屋唯一の扉が音を立て、リタがいつも通りの仏頂面で入って来た
リタは部屋で寝転がっているユーリを見て、むっと顔を顰めた
「待ってろとは言ったけど・・・どんだけ寛いでんのよ」
「あ、おかえりなさい。ドロボウの方はどうなりました?」
「さあ、今頃、牢屋の中でひ~ひ~泣いてんじゃない?」
「あり得るねぇ」
リタは更に皮肉を込めて言うとアスラがその様子を思い浮かべたのか苦笑して同意していた
ユーリは気にする事なくゆっくり身体を起し、リタに近付くと謝罪した
「疑って悪かった」
「軽い謝罪ね。ま、良いけどね。こっちも収穫あったから」
リタは特に謝罪なんて気にしていないらしく、そのまま部屋の奥で本棚に寄りかかり、ちらっとリアとアスラとエステルの様子を伺う
「リタ?」
エステルはリタの視線を疑問に思い首を傾げたが、リアとアスラはリタがリア達を見た理由は既に分かっていた
それは此処でリタと会った時の事、そしてシャイコス遺跡やその帰りでの出来事を含めた事で、リアとアスラを見ていたのだろう
そしてリタのエステルを見ての収穫という意味も、多分リア達が思っている事と同じだろう
そんな事を思っているとユーリが床に置いていた荷物を取り、リタに挨拶をした
「んじゃ、世話かけたな」
「何? もう行くの?」
「長居しても何だし、急ぎの用もあるんだよ」
「リタ、会えて良かったです。急ぎますのでこれで失礼します。お礼はまた後日」
「・・・解ったわ」
リタは別れの言葉を言うでもなく、ましてや別れを惜しむなんて事もなく素っ気無くそう言った
「見送りなら此処で良いぜ」
外に出て階段を上り終えるとリタが来たのが見え、見送りかと思いユーリが笑いながら言うとリタは首を横に振った
「そうじゃないわ。あたしも一緒に行く」
それを聞いて一番驚いていたのは何故かカロルだった
「え、な、何言ってんの?」
「まさか勝手に帰るなってこういう事か?」
「うん」
なんの飾り立てもしない言葉でリタは頷いた
了承だとか、許可だとか、そんなものは必要ない、勝手に着いて行かせろとばかりに
「うんって、そんな簡単に!」
「良いのかよ? お前、此処の魔導士なんだろ?」
「ん~・・・ハルルの結界魔導器が本当に直ったのか見たいのよ」
リタは少し悩み答えたが勿論、それは建前にしか聞こえなかった
「それなら、ボク達で直したよ」
「はあ? 直したってあんた等が? 素人がどうやって?」
「蘇らせたんだよ。バ~ンっと、エステ「素人も侮れないもんだぜ」
ユーリが中途半端にカロルの言葉を遮るとリタは訝しげな顔をした
「ふ~ん、ますます心配。本当に直ってるか確かめに行かないと」
「じゃ、勝手にしてくれ」
ユーリが素っ気無く関心もなさそうに言うと、エステルは嬉しそうにリタに駆け寄った
エステルの様子にリタはびくっと一歩退いたが、エステルはそんなのお構いなしだった
「な、何!?」
「わたし同年代のお友達初めてなんです!」
「あ、あんた、友達って・・・」
「よろしくお願いします」
「え、ええ・・・」
そんなエステルとリタを微笑ましく見ているとエステルが私を手招きした
「何、エステル?」
「リアも!」
「え? えっと・・・」
エステルの様子を見る限りこれはよろしくと挨拶しろって事よね? と思っているとリタが私を見た
「よろしくね、リタ」
私は微笑みながら手を出すとリアはまた驚いた
「・・・ま、まあ、良いわ」
リタは素っ気無い事を言いながらも手を出し握手をしたので私もまた微笑んだ
そんなリアを見てエステルとリタの頬に朱が差したが等の本人は気付いていなかった
続く
あとがき
前回アスラの事について触れてなかったので今回は冒頭で入れてみました
後は追加されたセリフを足してちょっと話し足した程度で終わりましたけど(笑)
次回はハルルに戻ります
まあこっちも箱版同様あんま変わんないでしょうけどね
2009.10.10