救出編
夢主名変更
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静かな神殿を思わす建物の中で、水の流れ落ちる音だけが響き渡る
あれ以降お互いに口を開かずにいた
結局、あの後何がどうなったか、そしてどうして私がこのザウデ不落宮の最深部にいるのかという事は解らず仕舞いだった
その答えを目の前にいる人物に聞いても答えてくれそうにないのも目に見えている
そしてさっきのアレクセイの言葉が気になっていた
私の力があればどう、というのも気になっているし、ずっと警鐘が鳴り響いている
だけど気になるのは、ユーリとフレンの事を騎士、と呼んだ事だった
その意味すらはぐらかされてしまったけど・・・
それでもユーリやフレン、兄さんやみんなが私を助けに此処までやって来ているのは確かだった
そう思っている時だった
この部屋にある唯一の扉が開き、見覚えのある人達がゆっくりとこちらに向かって歩いて来た
98.理想崩壊
「・・・ユーリ、フレン、兄さん、みんな・・・」
ユーリを先頭に兄さん、フレン、アスラ、フキ、と並び、その後ろにエステル達がいた
アレクセイはモニターを消し、ユーリ達に向き合った
「揃い踏みだな。遙々こんな海の底へようこそ」
「そこまでです、アレクセイ。これ以上、罪を重ねないで」
「これはエステリーゼ姫、ご機嫌麗しゅう」
アレクセイはエステルを見て紳士のように会釈をする
「その分ではイエガーは役に立たなかったようだな」
「・・・死んだよ」
「!」
ユーリの言葉に私は驚いて目を見開いた
(イエガーが死んだ!? アレクセイ、イエガーまで利用したって言うの!?)
「最後くらいはと思ったが、とんだ見込み違いだったか」
「そうやって他人の運命を弄んで楽しいかしら?」
その事実に驚いていたが、アレクセイは何事も無かったかのように平然と告げ、ジュディスの言葉にアスラとフキも目を細めていた
「アレクセイ! かつての貴方の理想は・・・何が貴方を変えたんです!」
「お前、まだそんな事」
ユーリの隣でフレンが必死にアレクセイに訴えかけると、ユーリが驚いてフレンを見ていた
「何も変わってなどいない。やり方を変えただけだ。腐敗し閉塞しきった帝国をいや世界を再生させるには、絶対的な力が必要なのだ」
「その為にどれだけ犠牲を出すつもりです」
「今の帝国では手段を選んでいる限り、決して真の革命がその実現を見る事はない。お前なら分かるはずだ」
「・・・・」
アレクセイの言葉にフレンは悔しそうに顔を歪め押し黙ってしまう
「ちょっとちょっと、奴の言葉に呑まれてどうすんのよ」
「世迷言・・・全部、世迷言なのじゃ! こいつの言う事は何もかも嘘っぱちじゃ!!」
「・・・どうしてこんな笑顔を奪うようなやり方しか出来なかったんです? 貴方ほどの人ならもっと他に方法が・・・」
「理想の為には敢えて罪人の烙印を背負わねばならぬ時もある。ならば私は喜んでそれを受けよう。私は世界の解放を約束する! 始祖の隷長から、エアルから、ちっぽけな箱庭の帝国から! 世界は生まれ変わるのだ!」
「世の為だろうが何だろうがそれで誰かを泣かせてりゃ世話ねえぜ。てめえを倒す理由はこれで十分だ!」
ユーリはそう言って剣を鞘から抜き、兄さんも鞘に手を掛け、アスラ達も身構えた時だった
「待ってくれ、ユーリ!」
「フレン?」
フレンがユーリにそう声を掛け、少しだけみんなの前に出てアレクセイに問うた
「アレクセイ、最後にもう一度だけ答えて下さい。入団したての僕に貴方は、誰もが豊かに暮らせる世界を作ると言った。誰かを犠牲にしてではなく、誰もが、と言った。あれも嘘だったんですか?」
フレンは“誰もが”と言う所を強く強調した
それは下町で育っている私達なら尚更に身近に感じたもの、そしてエステルの事や今現在アレクセイに捕まっている私を含め、と言う意味だった
だがアレクセイは嘲笑うようにしてフレンやユーリ達を見た
「言ったろう、手段を選んでいられないのだと。手緩いやり方は所詮、山犬どもの餌にしかならん。子供じみた青臭い幻想を捨てて、初めて私は力を得た。そうだ、今度こそ成し遂げてみせよう。私と、彼女の力によって。見届ける気があるなら、席を用意してやるぞ?」
「・・・断る。僕は貴方を止める為、そしてリアを助ける為に此処に来た」
「つくづく頑固な男よ。ならば私は私の為すべき事を為すまでだ」
「もう・・・引き返す気はないのですね」
「くどいな。悪いがこれで失礼する。何分忙しいものでね」
「!」
言うとアレクセイはモニターを操作すると、足下の床が浮上しだし術式結界に捕らえれている私も同じように上空へと向かいだし、ユーリ達も直ぐにその足場へと飛び乗り、アレクセイはちらりと見て私の前へやって来てモニターを操作し始める
ユーリ達は距離を取り、アレクセイを見て口を開いた
「なあ大将、どうあってもやめる気はねえの?」
最初に口を開いたのはレイヴンだった
「お前までがそんな事を言うのか。何故だ? お前達の誰一人として今の帝国を良いとは思っていないだろうに」
「目的は手段を正当化しねえよ、大将。おらぁこいつ等見てて良く分かった」
「・・・痛みに満ちた貴方のやり方は正しいとは思えません。やり方を変えられないと言うのなら・・・」
「ギルドも帝国も良いとこだってある。それを全部壊してからやり直すなんて、酷すぎるよ」
「強行な手段は必ずそれを許さないものを生む。解るわよね?」
「あんたが作る世界が今よりマシだって保証なんて何処にもないわ!」
「僕が貴方を信じたのは人々に何かを押し付ける為じゃない。与える為にまず奪うと言うのなら僕は貴方を・・・倒す!」
「お前の勝手な夢なんかに付き合うのはまっぴらなのじゃ」
「それも人の妹使ってやろうってんだからな!」
「やるんだったらてめえの力でやりやがれ!」
「俺等に取って大事な主である姫は返して貰うぜ!」
「てめえの言い分を認める奴はいねえよ」
エステル、カロル、ジュディス、リタ、フレン、パティ、兄さん、フキ、アスラ、そしてユーリ、みんなそれぞれ思っている事を口にする
みんなの言葉を聞き、アレクセイは目を閉じ小さく息を吐いた
「どうあっても理解しないのか。変革を恐れる小人ども。だが既に全世界のエアルと鍵は我が掌中にある。勝ち目はないぞ」
「鍵・・・? みんな!! きゃぁっ!!」
アレクセイの鍵と言う言葉に疑問を持っているとアレクセイは剣を抜き、聖核をユーリ達に向ける
その衝撃でみんな倒れてしまい、更にそのエアルは私にも伝わり痛みで叫んでしまう
「「リアっ・・・」」
私の悲鳴が聞こえたのかユーリとフレンが私の方を見ていた
「やはり君の騎士は優秀だね。だが、」
「! きゃあっ!?」
アレクセイがそう言った途端、術式結界が消えそのまま床に落ちアレクセイは私を立たせ自分の方に引き寄せた
「君を守っていた忌々しい力はやっと消えた。これで君の力を引き出す事が出来る」
「・・・な、にを・・言って・・・!?」
アレクセイの言葉に疑問を持っていると、段々と景色が変わっていき頂上らしき場所に着いた
(この風景って・・・)
そしてそこから見えた風景を見て私は目を瞠った
この風景は、何度か見えたあの神秘的な雰囲気がある建物で、海が見えたあの景色そのものだったからだ
「っ、ああっ!!」
ピリッとした痛みが走ったと思ったら頂上にある巨大な聖核から光が発せられその閃光がまた私の身体に走る
「「やめろ、アレクセイ!!」」
その様子が目に入りユーリとフレンは一斉に私の方に駆け出して着た
「馬鹿め」
その隙を見てアレクセイはユーリとフレンに向けて剣を向け、剣の先から光を放とうとした
「危ない、ユーリ!!」
それに気付いたフレンがユーリを前に飛び出しその光が直撃した
「うわあっぁぁ!」
「「フレンっ!!」」
「隊長!!」
ユーリはフレンを見ていると急いでソディアさんがフレンの元に駆け付け、フレンはソディアさんに支えられながら少しだけ顔を歪めて起き上がった
何とか急所を外したようで命に別状はないようだ
ほっと安心していると先程よりも強い痛みが身体を走り出した
「きゃああああああああ」
「「「リアっ!!」」」
遠くから兄さんやアスラ、エステル達が私を呼んでいる声が聞こえる
だけど、エステル達もこのザウデの魔刻の力で抑えられているのか身動きが取る事が出来ないようだった
「あああああっっ!!」
魔刻と私の力が共鳴し始めどんどん身体から力が抜けていき、そのままアレクセイに支えられた
荒い息を吐きながらアレクセイを見ると不敵に笑っていた
「・・君には感謝するよ、言霊使いの姫君」
「・・・えっ・・・っ!!?」
「「「!」」」
途端、腹部に何かが突き刺さったような痛みを感じた
「っ・・・ぁ、・・・」
「「リアーーーっ!!」」
その光景に誰もが目を瞠りリアの名を叫んだ
「・・・っ・・・」
アレクセイは一気に剣を引き抜くとリアは支えを失いそのまま力なく倒れてしまった
「リアっ!!」
「!? 何っ!?」
リアが倒れ誰もが動揺を隠しきれないでいると急に床に大きな円陣が描かれた
それは刺されて倒れたリアの血がザウデとザウデの魔刻が反応し大きな円陣が描かれ眩い光を放ち始めた
「新世界の幕開けだ!!」
アレクセイが高らかとそう言うとそれに答えるかのように眩い光が空へと昇っていき、頂上にある巨大な魔刻に集まり、凛々の明星のある位置に向かって魔核から一筋の光が勢い良く伸びていった
そして凛々の明星を中心に不思議な術式が浮かび上がり空に蜂の巣の様な穴が開き始める
「!?」
予想をしていた光景とは違う状況になりアレクセイは天を見つめたまま、呆然とする
だが事態が収束してくれる訳などない
穴の開いた空をまるで上から力を懸けるように、ドス黒く、気持ちの悪い“何か”が、地面に向かって伸びていく
「な、な、な・・・」
「・・・・」
「な、何よ、あれ!?」
「何処かで・・・見た事あるのじゃ」
カロルとリタ、そしてフレンとパティがが呆然と空に現れた異物を見つめ
「あれは・・・あれは壁画の・・・」
「・・・世界の災厄」
「・・・星喰み」
「あれが、星喰み・・・」
アスラとフキの言葉に誰もが唖然とした
ドス黒いソレは以前ミョルゾで見た、壁画と同じものだった
ただ、この状況が何故起こってしまったのか、その事の理解が誰一人出来ていなかった
「あれがザウデの力だと!? ・・・そんなはずは・・・まさか・・・」
自分が望んだ結果とは違う災厄の登場に、アレクセイはどうする事も出来ず、頭を抱え込む
「どうなってんだ!? 星喰みって、今のでそんなにエアルを使ったのかよ!?」
「・・・違うよ。災厄はずっと居たんだよ」
静かに言葉を発したアスラに一斉に視線が集まる
「ど、どう言う事?」
「星喰みは打ち砕かれてたんじゃねえ。・・・封じられて遠ざけられてただけなんだ」
思いも寄らぬフキの言葉にその場にいた誰もが驚き目を見開いた
「でも、じゃあリアは・・・?」
「言霊使いの姫の力、それはこのザウデの力と共鳴して『鍵』として星喰みを遠ざけていた」
「『鍵』、だと?」
「正確には言霊使いの姫の力と、血が『鍵』だったって事だ」
「「!?」」
血、と聞きユーリ達は思わず目を瞠り、リアへと目を向けた
「だからアレクセイはリアを・・・」
「くっ・・・!」
セイやアスラの言葉を聞き、フレンは悔しさとツラさで握り拳を作りユーリも表情を硬くした
「・・・そうだ、それが今、還って来た。古代にもたらすはずだった破滅をひっさげて! よりにもよって、この私の手でか! コレは傑作だ、ハハハハハ!」
魔核がエネルギーの放出に耐え切れなくなり、バチバチと電気を帯びながら煙を上げ始める
それに気付いたエステルが、「危ない!」とその真下にいるユーリを見つめ叫んだ
「我等は災厄の前で踊る虫けらに過ぎなかった。絶対的な死が来る!! 誰も逃れられん!」
自分の信じた先の未来が、こんな結末になるだなんて
アレクセイは最早笑う事しか出来ず、ただ声を高らかに上げ、笑い続けている
ユーリはそんなアレクセイを、険しい表情で睨み付けた
「いい加減、黙っときな」
そうと呟くと風を切るように掻け、アレクセイの胴を上から斜めに大きく斬り付け、よろけるアレクセイに追い討ちを懸けるように、もう一太刀浴びせる
その拍子に巨大な魔刻と聖核の力が弱まり出し、リアを囲んでいた術式結界の力も弱まりだした
アレクセイは切り口からは真っ赤な血が溢れ出し、その勢いでよろよろと数歩後退った
「・・・もっとも愚かな・・・道化・・・それが私とは、な・・・」
何かを悟ったのか、口から血を流しながら彼は穏やかに笑い、その瞳を閉じると、一筋の涙が彼の頬を伝う
そして、自重に耐え切れなくなった魔核が激しい音を立てながら、アレクセイ目掛けて落ちてきた
続く
あとがき
ぎゃーーーああぁぁっぁ、リアちゃんがぁぁぁぁ!!(落ち着けι)
なんか色々と気になったり、どうなるの!?と思いながら続きます!
因みに、アレクセイと戦う前のフレンの台詞、これ意外と知られてない事なので言っておきます
あの台詞はゲーム本編でフレン操作の時に聞ける台詞です
PS3版でしかない台詞だから使ってみました(周期プレイする時は是非聞いてみて下さい!(何宣伝してんだよww))
そして次回で遂に救出編が終わります
次回もお楽しみに!!
2011.05.26
あれ以降お互いに口を開かずにいた
結局、あの後何がどうなったか、そしてどうして私がこのザウデ不落宮の最深部にいるのかという事は解らず仕舞いだった
その答えを目の前にいる人物に聞いても答えてくれそうにないのも目に見えている
そしてさっきのアレクセイの言葉が気になっていた
私の力があればどう、というのも気になっているし、ずっと警鐘が鳴り響いている
だけど気になるのは、ユーリとフレンの事を騎士、と呼んだ事だった
その意味すらはぐらかされてしまったけど・・・
それでもユーリやフレン、兄さんやみんなが私を助けに此処までやって来ているのは確かだった
そう思っている時だった
この部屋にある唯一の扉が開き、見覚えのある人達がゆっくりとこちらに向かって歩いて来た
98.理想崩壊
「・・・ユーリ、フレン、兄さん、みんな・・・」
ユーリを先頭に兄さん、フレン、アスラ、フキ、と並び、その後ろにエステル達がいた
アレクセイはモニターを消し、ユーリ達に向き合った
「揃い踏みだな。遙々こんな海の底へようこそ」
「そこまでです、アレクセイ。これ以上、罪を重ねないで」
「これはエステリーゼ姫、ご機嫌麗しゅう」
アレクセイはエステルを見て紳士のように会釈をする
「その分ではイエガーは役に立たなかったようだな」
「・・・死んだよ」
「!」
ユーリの言葉に私は驚いて目を見開いた
(イエガーが死んだ!? アレクセイ、イエガーまで利用したって言うの!?)
「最後くらいはと思ったが、とんだ見込み違いだったか」
「そうやって他人の運命を弄んで楽しいかしら?」
その事実に驚いていたが、アレクセイは何事も無かったかのように平然と告げ、ジュディスの言葉にアスラとフキも目を細めていた
「アレクセイ! かつての貴方の理想は・・・何が貴方を変えたんです!」
「お前、まだそんな事」
ユーリの隣でフレンが必死にアレクセイに訴えかけると、ユーリが驚いてフレンを見ていた
「何も変わってなどいない。やり方を変えただけだ。腐敗し閉塞しきった帝国をいや世界を再生させるには、絶対的な力が必要なのだ」
「その為にどれだけ犠牲を出すつもりです」
「今の帝国では手段を選んでいる限り、決して真の革命がその実現を見る事はない。お前なら分かるはずだ」
「・・・・」
アレクセイの言葉にフレンは悔しそうに顔を歪め押し黙ってしまう
「ちょっとちょっと、奴の言葉に呑まれてどうすんのよ」
「世迷言・・・全部、世迷言なのじゃ! こいつの言う事は何もかも嘘っぱちじゃ!!」
「・・・どうしてこんな笑顔を奪うようなやり方しか出来なかったんです? 貴方ほどの人ならもっと他に方法が・・・」
「理想の為には敢えて罪人の烙印を背負わねばならぬ時もある。ならば私は喜んでそれを受けよう。私は世界の解放を約束する! 始祖の隷長から、エアルから、ちっぽけな箱庭の帝国から! 世界は生まれ変わるのだ!」
「世の為だろうが何だろうがそれで誰かを泣かせてりゃ世話ねえぜ。てめえを倒す理由はこれで十分だ!」
ユーリはそう言って剣を鞘から抜き、兄さんも鞘に手を掛け、アスラ達も身構えた時だった
「待ってくれ、ユーリ!」
「フレン?」
フレンがユーリにそう声を掛け、少しだけみんなの前に出てアレクセイに問うた
「アレクセイ、最後にもう一度だけ答えて下さい。入団したての僕に貴方は、誰もが豊かに暮らせる世界を作ると言った。誰かを犠牲にしてではなく、誰もが、と言った。あれも嘘だったんですか?」
フレンは“誰もが”と言う所を強く強調した
それは下町で育っている私達なら尚更に身近に感じたもの、そしてエステルの事や今現在アレクセイに捕まっている私を含め、と言う意味だった
だがアレクセイは嘲笑うようにしてフレンやユーリ達を見た
「言ったろう、手段を選んでいられないのだと。手緩いやり方は所詮、山犬どもの餌にしかならん。子供じみた青臭い幻想を捨てて、初めて私は力を得た。そうだ、今度こそ成し遂げてみせよう。私と、彼女の力によって。見届ける気があるなら、席を用意してやるぞ?」
「・・・断る。僕は貴方を止める為、そしてリアを助ける為に此処に来た」
「つくづく頑固な男よ。ならば私は私の為すべき事を為すまでだ」
「もう・・・引き返す気はないのですね」
「くどいな。悪いがこれで失礼する。何分忙しいものでね」
「!」
言うとアレクセイはモニターを操作すると、足下の床が浮上しだし術式結界に捕らえれている私も同じように上空へと向かいだし、ユーリ達も直ぐにその足場へと飛び乗り、アレクセイはちらりと見て私の前へやって来てモニターを操作し始める
ユーリ達は距離を取り、アレクセイを見て口を開いた
「なあ大将、どうあってもやめる気はねえの?」
最初に口を開いたのはレイヴンだった
「お前までがそんな事を言うのか。何故だ? お前達の誰一人として今の帝国を良いとは思っていないだろうに」
「目的は手段を正当化しねえよ、大将。おらぁこいつ等見てて良く分かった」
「・・・痛みに満ちた貴方のやり方は正しいとは思えません。やり方を変えられないと言うのなら・・・」
「ギルドも帝国も良いとこだってある。それを全部壊してからやり直すなんて、酷すぎるよ」
「強行な手段は必ずそれを許さないものを生む。解るわよね?」
「あんたが作る世界が今よりマシだって保証なんて何処にもないわ!」
「僕が貴方を信じたのは人々に何かを押し付ける為じゃない。与える為にまず奪うと言うのなら僕は貴方を・・・倒す!」
「お前の勝手な夢なんかに付き合うのはまっぴらなのじゃ」
「それも人の妹使ってやろうってんだからな!」
「やるんだったらてめえの力でやりやがれ!」
「俺等に取って大事な主である姫は返して貰うぜ!」
「てめえの言い分を認める奴はいねえよ」
エステル、カロル、ジュディス、リタ、フレン、パティ、兄さん、フキ、アスラ、そしてユーリ、みんなそれぞれ思っている事を口にする
みんなの言葉を聞き、アレクセイは目を閉じ小さく息を吐いた
「どうあっても理解しないのか。変革を恐れる小人ども。だが既に全世界のエアルと鍵は我が掌中にある。勝ち目はないぞ」
「鍵・・・? みんな!! きゃぁっ!!」
アレクセイの鍵と言う言葉に疑問を持っているとアレクセイは剣を抜き、聖核をユーリ達に向ける
その衝撃でみんな倒れてしまい、更にそのエアルは私にも伝わり痛みで叫んでしまう
「「リアっ・・・」」
私の悲鳴が聞こえたのかユーリとフレンが私の方を見ていた
「やはり君の騎士は優秀だね。だが、」
「! きゃあっ!?」
アレクセイがそう言った途端、術式結界が消えそのまま床に落ちアレクセイは私を立たせ自分の方に引き寄せた
「君を守っていた忌々しい力はやっと消えた。これで君の力を引き出す事が出来る」
「・・・な、にを・・言って・・・!?」
アレクセイの言葉に疑問を持っていると、段々と景色が変わっていき頂上らしき場所に着いた
(この風景って・・・)
そしてそこから見えた風景を見て私は目を瞠った
この風景は、何度か見えたあの神秘的な雰囲気がある建物で、海が見えたあの景色そのものだったからだ
「っ、ああっ!!」
ピリッとした痛みが走ったと思ったら頂上にある巨大な聖核から光が発せられその閃光がまた私の身体に走る
「「やめろ、アレクセイ!!」」
その様子が目に入りユーリとフレンは一斉に私の方に駆け出して着た
「馬鹿め」
その隙を見てアレクセイはユーリとフレンに向けて剣を向け、剣の先から光を放とうとした
「危ない、ユーリ!!」
それに気付いたフレンがユーリを前に飛び出しその光が直撃した
「うわあっぁぁ!」
「「フレンっ!!」」
「隊長!!」
ユーリはフレンを見ていると急いでソディアさんがフレンの元に駆け付け、フレンはソディアさんに支えられながら少しだけ顔を歪めて起き上がった
何とか急所を外したようで命に別状はないようだ
ほっと安心していると先程よりも強い痛みが身体を走り出した
「きゃああああああああ」
「「「リアっ!!」」」
遠くから兄さんやアスラ、エステル達が私を呼んでいる声が聞こえる
だけど、エステル達もこのザウデの魔刻の力で抑えられているのか身動きが取る事が出来ないようだった
「あああああっっ!!」
魔刻と私の力が共鳴し始めどんどん身体から力が抜けていき、そのままアレクセイに支えられた
荒い息を吐きながらアレクセイを見ると不敵に笑っていた
「・・君には感謝するよ、言霊使いの姫君」
「・・・えっ・・・っ!!?」
「「「!」」」
途端、腹部に何かが突き刺さったような痛みを感じた
「っ・・・ぁ、・・・」
「「リアーーーっ!!」」
その光景に誰もが目を瞠りリアの名を叫んだ
「・・・っ・・・」
アレクセイは一気に剣を引き抜くとリアは支えを失いそのまま力なく倒れてしまった
「リアっ!!」
「!? 何っ!?」
リアが倒れ誰もが動揺を隠しきれないでいると急に床に大きな円陣が描かれた
それは刺されて倒れたリアの血がザウデとザウデの魔刻が反応し大きな円陣が描かれ眩い光を放ち始めた
「新世界の幕開けだ!!」
アレクセイが高らかとそう言うとそれに答えるかのように眩い光が空へと昇っていき、頂上にある巨大な魔刻に集まり、凛々の明星のある位置に向かって魔核から一筋の光が勢い良く伸びていった
そして凛々の明星を中心に不思議な術式が浮かび上がり空に蜂の巣の様な穴が開き始める
「!?」
予想をしていた光景とは違う状況になりアレクセイは天を見つめたまま、呆然とする
だが事態が収束してくれる訳などない
穴の開いた空をまるで上から力を懸けるように、ドス黒く、気持ちの悪い“何か”が、地面に向かって伸びていく
「な、な、な・・・」
「・・・・」
「な、何よ、あれ!?」
「何処かで・・・見た事あるのじゃ」
カロルとリタ、そしてフレンとパティがが呆然と空に現れた異物を見つめ
「あれは・・・あれは壁画の・・・」
「・・・世界の災厄」
「・・・星喰み」
「あれが、星喰み・・・」
アスラとフキの言葉に誰もが唖然とした
ドス黒いソレは以前ミョルゾで見た、壁画と同じものだった
ただ、この状況が何故起こってしまったのか、その事の理解が誰一人出来ていなかった
「あれがザウデの力だと!? ・・・そんなはずは・・・まさか・・・」
自分が望んだ結果とは違う災厄の登場に、アレクセイはどうする事も出来ず、頭を抱え込む
「どうなってんだ!? 星喰みって、今のでそんなにエアルを使ったのかよ!?」
「・・・違うよ。災厄はずっと居たんだよ」
静かに言葉を発したアスラに一斉に視線が集まる
「ど、どう言う事?」
「星喰みは打ち砕かれてたんじゃねえ。・・・封じられて遠ざけられてただけなんだ」
思いも寄らぬフキの言葉にその場にいた誰もが驚き目を見開いた
「でも、じゃあリアは・・・?」
「言霊使いの姫の力、それはこのザウデの力と共鳴して『鍵』として星喰みを遠ざけていた」
「『鍵』、だと?」
「正確には言霊使いの姫の力と、血が『鍵』だったって事だ」
「「!?」」
血、と聞きユーリ達は思わず目を瞠り、リアへと目を向けた
「だからアレクセイはリアを・・・」
「くっ・・・!」
セイやアスラの言葉を聞き、フレンは悔しさとツラさで握り拳を作りユーリも表情を硬くした
「・・・そうだ、それが今、還って来た。古代にもたらすはずだった破滅をひっさげて! よりにもよって、この私の手でか! コレは傑作だ、ハハハハハ!」
魔核がエネルギーの放出に耐え切れなくなり、バチバチと電気を帯びながら煙を上げ始める
それに気付いたエステルが、「危ない!」とその真下にいるユーリを見つめ叫んだ
「我等は災厄の前で踊る虫けらに過ぎなかった。絶対的な死が来る!! 誰も逃れられん!」
自分の信じた先の未来が、こんな結末になるだなんて
アレクセイは最早笑う事しか出来ず、ただ声を高らかに上げ、笑い続けている
ユーリはそんなアレクセイを、険しい表情で睨み付けた
「いい加減、黙っときな」
そうと呟くと風を切るように掻け、アレクセイの胴を上から斜めに大きく斬り付け、よろけるアレクセイに追い討ちを懸けるように、もう一太刀浴びせる
その拍子に巨大な魔刻と聖核の力が弱まり出し、リアを囲んでいた術式結界の力も弱まりだした
アレクセイは切り口からは真っ赤な血が溢れ出し、その勢いでよろよろと数歩後退った
「・・・もっとも愚かな・・・道化・・・それが私とは、な・・・」
何かを悟ったのか、口から血を流しながら彼は穏やかに笑い、その瞳を閉じると、一筋の涙が彼の頬を伝う
そして、自重に耐え切れなくなった魔核が激しい音を立てながら、アレクセイ目掛けて落ちてきた
続く
あとがき
ぎゃーーーああぁぁっぁ、リアちゃんがぁぁぁぁ!!(落ち着けι)
なんか色々と気になったり、どうなるの!?と思いながら続きます!
因みに、アレクセイと戦う前のフレンの台詞、これ意外と知られてない事なので言っておきます
あの台詞はゲーム本編でフレン操作の時に聞ける台詞です
PS3版でしかない台詞だから使ってみました(周期プレイする時は是非聞いてみて下さい!(何宣伝してんだよww))
そして次回で遂に救出編が終わります
次回もお楽しみに!!
2011.05.26