戦国無双(トリップ夢)
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賑やかな城下町、その一角を私と清正さんは歩いていた
「此処だ」
「・・此処、ですか?」
清正さんに連れて着て貰った店、この店には見覚えがあった
昨日ガラシャと一緒に町を見て回っている時にこの店の前を通り気になってはいたけど、なんだか入りづらいね、とお互いに苦笑して通り過ぎて行った店だった
「この時間だから少し込んでるかもしれないな。俺はその間に買い出しに行ってくるから、終わったらあの茶屋で落ち合う形で良いか?」
「はい、解りました」
そう言うと清正さんは人並みの中に入っていきそれを見送って私もお店に入ろうとした
「?」
が、ふと何処からか視線のような物を感じ不自然に思われないように少しだけ辺りを窺ったが誰かがこっちを見ているという感じはなかった
「・・・気のせい、かな?」
そう思って気持ちを切り替えてお店の中に入った
07.同業者現る?
「いらっしゃいませえー!」
お店の中に入ると店の人の声が聞こえ、辺りを見ると沢山の人で賑わっていた
「うわあ・・・」
その光景に思わずそう声が出ていた
他の店と比べると少しだけ中が広く、着物や簪、小物の種類も沢山あり、お客さんも他の店と比べると多くて賑わっていた
(なんだか現代のショップに来てるみたい・・・)
その賑やかさを見て現代のアパレルや雑貨店、ショッピングモールに来ているような感じに思えてしまった
そして周りの人を見ると、少し派手目な着物を着ている人達ばかりで、此処に来る前に清正さんが言っていた意味が解り苦笑してしまった
「何かお探しですか?」
そう声が聞こえ隣を見るとお店の人と思われる女性がニコリと微笑んでいた
「あ、私、おねね様のお使いで来たんですが」
「まあおねね様の! どうぞこちらに」
外ではおねね様と呼んだ方が良いだろうと思い女性にそう告げるとお店の奥に案内された
「お待たせ致しました、こちらが品物になります」
中に案内され、少しすると店主らしき人が包みを抱えて奥から出てきた
「有り難う御座います」
「いえいえ。こちらもいつもご贔屓にして頂いております」
御代は先に払っているから貰ってくるだけで大丈夫だよ、と言われていたのでそのまま包みを貰うと
「あの、」
後ろから声を掛けられ振り返るとこのお店の女性二人が私に話し掛けてきた
「あの、貴女、昨日この裏の通りの広場で歌ってた方、ですか?」
「え?」
「あ、人違いだったらすみません。その、声が似てたものですから」
私の反応と格好を見てそう言う彼女達だったが、確かに昨日とは全然違う格好をしているから人違いだと思ってしまったのかもしれない
「いえ、人違いじゃないですよ。もしかして、昨日聞いてたんですか?」
「はい、丁度休憩時間でお茶に出たら、ね」
「ええ。私達、すっごく感動しちゃって!」
人違いじゃないと解ると彼女達は嬉しそうな顔をしてそう話してくれた
「貴女の事、歌姫だ、って噂になってるんですよ」
「う、歌姫、ですか!?///」
「ええ。この町じゃ見ない人だから旅の人なのかも、って色々と噂になってて」
「・・・///」
まさか一日でそんな噂が流れてるなんて・・・
お城の中にいたし、そう言った事は誰も言ってなかったから知らなかった・・・
けど、また“姫”って呼ばれる通り名的なものが付いてしまうなんて・・・
その言葉が恥ずかしくて少し顔が赤くなって思わず視線を落としていた
「こらこら、お前達。大事なお得意様を困らせるんじゃないよ」
「「あ、すみません」」
店主の奥さんらしい人にそう言われ彼女達は仕事に戻っていき私もお礼を言ってお店を後にした
「ありがとう御座いました~!」
「・・・はあ、吃驚したぁ」
お店を出た後思わずそう呟いて胸を撫で下ろしていた
「・・・歌姫、ね・・」
あの時もさっきも名前は名乗らずにいたからその呼び名だけがこれから一人歩きするのかもしれないけど、あの時聞いていた人、そして顔を見ている人と会うとそう呼ばれるのかもしれないな・・・と思い少しだけ溜息が出ていた
「清正さん、もう来てるかな?」
町の中を見ると少しだけ人が減っているのと空気が少し冷たくなったのを感じだいぶ時間が経ったと思い、気持ちを切り替えて少し先に見える茶屋を見て歩き出そうとした時だった
「そこのお嬢さん、ちょっといいかい?」
「?」
振り返ると旅人と思われる男性三人がいた
「俺達この町に来たばかりで宿を探しているんだが、何処にあるか教えて貰えないかな?」
「あ、すみません。私も少し前にこの町に来たばかりでまだ全然知らなくて・・・」
「そうなんだ。なら、」
「え?」
そう答えていると男性達は私を囲み、驚いて顔を上げると先程までとは違った表情を浮かべていた
「良い身なりしてるな、あんた」
「どっかの武家の生まれってとこか?」
「遠くから見ても思ったが近くで見るとやっぱいい女だな」
「っ・・・!」
その言葉と笑みに身体に悪寒が走った
「なあ、やっぱ宿探してやるより此処でやった方が良くないか?」
「そうだな、こんな上玉見つけちまったら我慢なんか出来ないよなぁ」
「ならそっちに連れ込んでさっさとやるか?」
(・・・この人達、最初から私を襲う気満々じゃない・・・)
男達の会話を聞き内心でそう思いながら荷物をギュッと握り直すと男達は楽しそうな顔をして私を見た
「おや、恐くなって声も出ないか?」
「大丈夫、直ぐに気持ちよくしてやるから」
「っ! や、放し・・・」
男の一人が私の手を掴もうとして反射的にそう声が上がろうとしたが、その言葉は私の腕を掴もうとした男の手を誰かが掴んだのが見えそこで途切れた
「はい、そこまで」
「え?」
聞き慣れない声が聞こえ顔を上げると少し赤みがかった髪と目をした男性が男の腕を掴んでいた
「な、なんだ、お前!」
「人通りが少なくなったからって、嫌がってる子に乱暴は良くないぜ。この子嫌がってんだろ。それに、お前等じゃこの子と釣り合わねえ」
「んだとっ!」
「っ、いでででっ!」
男性が私をちらりと見た後、男達の顔を見て言うと男の一人が食って掛かろうとしたが腕を掴んでいた男の腕を軽く曲げると男は悲鳴を上げた
「あー悪ぃ、関節曲げちまった。ま、二三日したら治るからそれまではお大事に、な」
言うと男性は男の腕を放し男達も少しだけ距離を取った
「大丈夫か?」
「あ、は、はい・・・」
「怪我もないみたいだな。さて、」
私に怪我が無いと解ると男性はフッと安心した表情を見せそのまま向きを変えて男達を見る
「これ以上痛い目に遭いたくなかったらさっさと立ち去りな」
「「「っ!」」」
背中越しだったから男性がどんな表情をしていたかは解らないけど、男性の言葉と少しだけ出ている殺気のようなものを感じたのか男達はビクリと身体を震わせた後逃げるようにその場を去って行った
「あの、助けて頂いて本当に有り難う御座いました」
「ああ、良いって。そんなに畏まらなくて」
男達が立ち去った後、私は男性にお礼を言うと男性はそう言って笑ってくれた
「それよりどっか行く途中じゃなかったの?」
「あ、そこの茶屋で買い出しに行ってくれている人と待つ約束をしてて」
「ふーん。なら、俺も一緒に行って良い?」
「え?」
「俺も丁度茶屋に行く所だったんだよね」
どうやらその途中で私が囲まれている所を見つけて助けてくれたみたいだった
「だったら、助けてくれたお礼をさせて下さい」
そう言われ今度は男性が驚いたけど、それで気が済むならと言うのとそこまでの護衛っと言って一緒に来て貰った
「そう言えば自己紹介がまだだったな。俺は平 直秀」
「直秀さんですね。私は楓月璃唖と言います」
私達は茶屋に入りお茶のお団子を頼んでお互いに自己紹介をしていた
「さっきは本当に有り難う御座いました」
「良いって。にしても、珍しい名前だな、あんた」
「そ、そうですか?」
確かにこの時代の人にしては珍しい名前だと思う
・・・実際、この時代・・もとい、世界の住人じゃないから名前も珍しがられるのだけど
「ま、この世界の奴じゃないから珍しい分類になるんだろうな」
「・・・え?」
が、思いも寄らぬ言葉が直秀さんから振ってきて驚いた顔をすると直秀さんはまたふっと笑った
途端、店の、否、私達がいる場所だけ空気が変わった
(! 空間が!? これって、隔離空間!?)
「隔離空間でそんなに驚く? 同業者なら使えて当然だろ?」
「!」
ふと顔を上げると机に肩肘を付いて私を見て楽しそうに笑っている直秀さんがいた
「・・・同業者って、・・貴方、まさか・・・」
「そう、あんたと同じ陰陽師。っつってもあんたは言霊使いでもあるんだったな」
「!?」
「なんでそんな事知ってるのかって顔だな。知っての通り、代々密かに受け継がれてきてるだろ、この家業。あんたもその血を引くもの。そして、俺も、な」
「・・・じゃあこの世界の、陰陽師・・・?」
「そう。そして、あんたをこの世界に呼んだ張本人さ」
「!?」
次々と思わぬ事実を述べられ驚きの展開だったが、その言葉に目を瞠り思わず立ち上がり、その衝撃で椅子が後ろに倒れた
「なっ、貴方が私をこの世界に呼んだの? どうして!」
「どうして? そんなの一つに決まってるだろ」
「っ!」
言うと直秀さんは立ち上がって私の顎をついっと持ち上げた
「あんたには、このつまらない世界を変えて欲しいんだ」
「・・え・・?」
いきなりの言葉に言葉が詰まってしまう
「璃唖は一族の中でも力が強い方で何でもそつなく熟す姫、そう言われてるんだろ?」
「!」
「だからあんたをこの世界に呼んだ。さっきも言ったがつまらない世界を変えて欲しくてな」
直秀さんは多くは語らなかったが、今の説明で彼の言いたい事は大体把握出来た
「・・けど、世界を変えるって、そんな事をしたらこの世界の未来が・・」
「・・・この世界の先は、まだ決まってないんだよ」
「え?」
「璃唖の世界ではこの時代は過去に当たるものだと思うが、この世界は璃唖が居た時代とは別の世界だ。接点は一切ない。定まった未来が形作られてないんだ」
直秀さんの言葉に此処に来てから読んでいた書物や三成さん達の事を思い出す
私が知っている歴史には無かった出来事や彼等が参加した戦、それぞれを考えると違う世界と言うのははっきりと認識したけど、それでもあまり深く関わりすぎるのも良くないと思っていた
直秀さんの話しを聞くまでは
「この先、璃唖が知っている出来事も起こる可能性もある。けど、その通りに進んだってなんら面白い事なんかない。 ・・・どう足掻いても此処は戦国だ。大事にしてるもんはあっという間に消えちまう・・そんな世だ」
「・・・直秀さん・・・」
ふとその言葉に少しだけ寂しさが混ざっているのを感じ、更に私もある人達の事を思い出す
「だから、私の力でこの世界を変えて欲しいって事、ですか・・?」
「ああ」
力が強い人間なら他に出来ない事が出来ると言うのは昔から言われていたけど、世界を変えると言う大きな括りになって驚いていた
「でもそんな事、簡単には」
「出来ないと思うだろうが、現に俺は無理だと云われていた他の世界の同業者を、璃唖をこの世界に呼ぶ事が出来た。この時点で何かが変わり始めてる、そう思わないか?」
「・・・・」
そう言われ改めて直秀さんを見た
確かにこれだけ長時間隔離空間を作り出し、無理だと云われていた事を成し遂げたり、さっきの男達に放った言葉にも重みを感じていた
これだけの事を考えると彼はこの世界の同業者の中でも私と同じように力が強い人だと見て取れた
「状況は解りました。でも、直ぐに返答を返せないと思います。私自身どうしたらいいのかもまだちゃんと解ってないですから」
「直ぐに、なんて俺も思ってないよ。ただ璃唖に直接会って事態を伝えたかったって云うのもあるからな。呼んだ張本人を覚えて欲しいってのもあったしね」
そこまで言うと隔離空間がなくなり店内の賑やかさが聞こえだし、改めて椅子に座り直した
「そう言う事なんで、同業者同士、改めてよろしくな。ああそれと俺の事は呼び捨ていい。敬語もいらねえ。同業者なんだから気軽に話せよ」
「・・・解った。じゃあ私の事もリアで良いよ」
「リア、ね。へえ、可愛いじゃん」
「っ!///」
笑顔でそう言われ思わず顔が赤くなった
「ふっ、じゃあな。茶と団子、ご馳走さん」
私の反応を見ると直秀は楽しそうに笑ってそう言って片手を軽く振って店を出て行った
続く
あとがき
ほう、なんとか無事に直秀登場の回まで書き終わったあああ!!
直秀との会話は結構早くから浮かんでたんですが登場をどうしようかと思ってたけど意外とあっさりと書けたね!
とりあえず今回は挨拶って事で登場したけど今後はちょくちょく出てきますよぉ
さて次回は久々にあの人達と絡ませてまた色んな人達と出会わせようかなぁ~ww
2012.02.15
「此処だ」
「・・此処、ですか?」
清正さんに連れて着て貰った店、この店には見覚えがあった
昨日ガラシャと一緒に町を見て回っている時にこの店の前を通り気になってはいたけど、なんだか入りづらいね、とお互いに苦笑して通り過ぎて行った店だった
「この時間だから少し込んでるかもしれないな。俺はその間に買い出しに行ってくるから、終わったらあの茶屋で落ち合う形で良いか?」
「はい、解りました」
そう言うと清正さんは人並みの中に入っていきそれを見送って私もお店に入ろうとした
「?」
が、ふと何処からか視線のような物を感じ不自然に思われないように少しだけ辺りを窺ったが誰かがこっちを見ているという感じはなかった
「・・・気のせい、かな?」
そう思って気持ちを切り替えてお店の中に入った
07.同業者現る?
「いらっしゃいませえー!」
お店の中に入ると店の人の声が聞こえ、辺りを見ると沢山の人で賑わっていた
「うわあ・・・」
その光景に思わずそう声が出ていた
他の店と比べると少しだけ中が広く、着物や簪、小物の種類も沢山あり、お客さんも他の店と比べると多くて賑わっていた
(なんだか現代のショップに来てるみたい・・・)
その賑やかさを見て現代のアパレルや雑貨店、ショッピングモールに来ているような感じに思えてしまった
そして周りの人を見ると、少し派手目な着物を着ている人達ばかりで、此処に来る前に清正さんが言っていた意味が解り苦笑してしまった
「何かお探しですか?」
そう声が聞こえ隣を見るとお店の人と思われる女性がニコリと微笑んでいた
「あ、私、おねね様のお使いで来たんですが」
「まあおねね様の! どうぞこちらに」
外ではおねね様と呼んだ方が良いだろうと思い女性にそう告げるとお店の奥に案内された
「お待たせ致しました、こちらが品物になります」
中に案内され、少しすると店主らしき人が包みを抱えて奥から出てきた
「有り難う御座います」
「いえいえ。こちらもいつもご贔屓にして頂いております」
御代は先に払っているから貰ってくるだけで大丈夫だよ、と言われていたのでそのまま包みを貰うと
「あの、」
後ろから声を掛けられ振り返るとこのお店の女性二人が私に話し掛けてきた
「あの、貴女、昨日この裏の通りの広場で歌ってた方、ですか?」
「え?」
「あ、人違いだったらすみません。その、声が似てたものですから」
私の反応と格好を見てそう言う彼女達だったが、確かに昨日とは全然違う格好をしているから人違いだと思ってしまったのかもしれない
「いえ、人違いじゃないですよ。もしかして、昨日聞いてたんですか?」
「はい、丁度休憩時間でお茶に出たら、ね」
「ええ。私達、すっごく感動しちゃって!」
人違いじゃないと解ると彼女達は嬉しそうな顔をしてそう話してくれた
「貴女の事、歌姫だ、って噂になってるんですよ」
「う、歌姫、ですか!?///」
「ええ。この町じゃ見ない人だから旅の人なのかも、って色々と噂になってて」
「・・・///」
まさか一日でそんな噂が流れてるなんて・・・
お城の中にいたし、そう言った事は誰も言ってなかったから知らなかった・・・
けど、また“姫”って呼ばれる通り名的なものが付いてしまうなんて・・・
その言葉が恥ずかしくて少し顔が赤くなって思わず視線を落としていた
「こらこら、お前達。大事なお得意様を困らせるんじゃないよ」
「「あ、すみません」」
店主の奥さんらしい人にそう言われ彼女達は仕事に戻っていき私もお礼を言ってお店を後にした
「ありがとう御座いました~!」
「・・・はあ、吃驚したぁ」
お店を出た後思わずそう呟いて胸を撫で下ろしていた
「・・・歌姫、ね・・」
あの時もさっきも名前は名乗らずにいたからその呼び名だけがこれから一人歩きするのかもしれないけど、あの時聞いていた人、そして顔を見ている人と会うとそう呼ばれるのかもしれないな・・・と思い少しだけ溜息が出ていた
「清正さん、もう来てるかな?」
町の中を見ると少しだけ人が減っているのと空気が少し冷たくなったのを感じだいぶ時間が経ったと思い、気持ちを切り替えて少し先に見える茶屋を見て歩き出そうとした時だった
「そこのお嬢さん、ちょっといいかい?」
「?」
振り返ると旅人と思われる男性三人がいた
「俺達この町に来たばかりで宿を探しているんだが、何処にあるか教えて貰えないかな?」
「あ、すみません。私も少し前にこの町に来たばかりでまだ全然知らなくて・・・」
「そうなんだ。なら、」
「え?」
そう答えていると男性達は私を囲み、驚いて顔を上げると先程までとは違った表情を浮かべていた
「良い身なりしてるな、あんた」
「どっかの武家の生まれってとこか?」
「遠くから見ても思ったが近くで見るとやっぱいい女だな」
「っ・・・!」
その言葉と笑みに身体に悪寒が走った
「なあ、やっぱ宿探してやるより此処でやった方が良くないか?」
「そうだな、こんな上玉見つけちまったら我慢なんか出来ないよなぁ」
「ならそっちに連れ込んでさっさとやるか?」
(・・・この人達、最初から私を襲う気満々じゃない・・・)
男達の会話を聞き内心でそう思いながら荷物をギュッと握り直すと男達は楽しそうな顔をして私を見た
「おや、恐くなって声も出ないか?」
「大丈夫、直ぐに気持ちよくしてやるから」
「っ! や、放し・・・」
男の一人が私の手を掴もうとして反射的にそう声が上がろうとしたが、その言葉は私の腕を掴もうとした男の手を誰かが掴んだのが見えそこで途切れた
「はい、そこまで」
「え?」
聞き慣れない声が聞こえ顔を上げると少し赤みがかった髪と目をした男性が男の腕を掴んでいた
「な、なんだ、お前!」
「人通りが少なくなったからって、嫌がってる子に乱暴は良くないぜ。この子嫌がってんだろ。それに、お前等じゃこの子と釣り合わねえ」
「んだとっ!」
「っ、いでででっ!」
男性が私をちらりと見た後、男達の顔を見て言うと男の一人が食って掛かろうとしたが腕を掴んでいた男の腕を軽く曲げると男は悲鳴を上げた
「あー悪ぃ、関節曲げちまった。ま、二三日したら治るからそれまではお大事に、な」
言うと男性は男の腕を放し男達も少しだけ距離を取った
「大丈夫か?」
「あ、は、はい・・・」
「怪我もないみたいだな。さて、」
私に怪我が無いと解ると男性はフッと安心した表情を見せそのまま向きを変えて男達を見る
「これ以上痛い目に遭いたくなかったらさっさと立ち去りな」
「「「っ!」」」
背中越しだったから男性がどんな表情をしていたかは解らないけど、男性の言葉と少しだけ出ている殺気のようなものを感じたのか男達はビクリと身体を震わせた後逃げるようにその場を去って行った
「あの、助けて頂いて本当に有り難う御座いました」
「ああ、良いって。そんなに畏まらなくて」
男達が立ち去った後、私は男性にお礼を言うと男性はそう言って笑ってくれた
「それよりどっか行く途中じゃなかったの?」
「あ、そこの茶屋で買い出しに行ってくれている人と待つ約束をしてて」
「ふーん。なら、俺も一緒に行って良い?」
「え?」
「俺も丁度茶屋に行く所だったんだよね」
どうやらその途中で私が囲まれている所を見つけて助けてくれたみたいだった
「だったら、助けてくれたお礼をさせて下さい」
そう言われ今度は男性が驚いたけど、それで気が済むならと言うのとそこまでの護衛っと言って一緒に来て貰った
「そう言えば自己紹介がまだだったな。俺は平 直秀」
「直秀さんですね。私は楓月璃唖と言います」
私達は茶屋に入りお茶のお団子を頼んでお互いに自己紹介をしていた
「さっきは本当に有り難う御座いました」
「良いって。にしても、珍しい名前だな、あんた」
「そ、そうですか?」
確かにこの時代の人にしては珍しい名前だと思う
・・・実際、この時代・・もとい、世界の住人じゃないから名前も珍しがられるのだけど
「ま、この世界の奴じゃないから珍しい分類になるんだろうな」
「・・・え?」
が、思いも寄らぬ言葉が直秀さんから振ってきて驚いた顔をすると直秀さんはまたふっと笑った
途端、店の、否、私達がいる場所だけ空気が変わった
(! 空間が!? これって、隔離空間!?)
「隔離空間でそんなに驚く? 同業者なら使えて当然だろ?」
「!」
ふと顔を上げると机に肩肘を付いて私を見て楽しそうに笑っている直秀さんがいた
「・・・同業者って、・・貴方、まさか・・・」
「そう、あんたと同じ陰陽師。っつってもあんたは言霊使いでもあるんだったな」
「!?」
「なんでそんな事知ってるのかって顔だな。知っての通り、代々密かに受け継がれてきてるだろ、この家業。あんたもその血を引くもの。そして、俺も、な」
「・・・じゃあこの世界の、陰陽師・・・?」
「そう。そして、あんたをこの世界に呼んだ張本人さ」
「!?」
次々と思わぬ事実を述べられ驚きの展開だったが、その言葉に目を瞠り思わず立ち上がり、その衝撃で椅子が後ろに倒れた
「なっ、貴方が私をこの世界に呼んだの? どうして!」
「どうして? そんなの一つに決まってるだろ」
「っ!」
言うと直秀さんは立ち上がって私の顎をついっと持ち上げた
「あんたには、このつまらない世界を変えて欲しいんだ」
「・・え・・?」
いきなりの言葉に言葉が詰まってしまう
「璃唖は一族の中でも力が強い方で何でもそつなく熟す姫、そう言われてるんだろ?」
「!」
「だからあんたをこの世界に呼んだ。さっきも言ったがつまらない世界を変えて欲しくてな」
直秀さんは多くは語らなかったが、今の説明で彼の言いたい事は大体把握出来た
「・・けど、世界を変えるって、そんな事をしたらこの世界の未来が・・」
「・・・この世界の先は、まだ決まってないんだよ」
「え?」
「璃唖の世界ではこの時代は過去に当たるものだと思うが、この世界は璃唖が居た時代とは別の世界だ。接点は一切ない。定まった未来が形作られてないんだ」
直秀さんの言葉に此処に来てから読んでいた書物や三成さん達の事を思い出す
私が知っている歴史には無かった出来事や彼等が参加した戦、それぞれを考えると違う世界と言うのははっきりと認識したけど、それでもあまり深く関わりすぎるのも良くないと思っていた
直秀さんの話しを聞くまでは
「この先、璃唖が知っている出来事も起こる可能性もある。けど、その通りに進んだってなんら面白い事なんかない。 ・・・どう足掻いても此処は戦国だ。大事にしてるもんはあっという間に消えちまう・・そんな世だ」
「・・・直秀さん・・・」
ふとその言葉に少しだけ寂しさが混ざっているのを感じ、更に私もある人達の事を思い出す
「だから、私の力でこの世界を変えて欲しいって事、ですか・・?」
「ああ」
力が強い人間なら他に出来ない事が出来ると言うのは昔から言われていたけど、世界を変えると言う大きな括りになって驚いていた
「でもそんな事、簡単には」
「出来ないと思うだろうが、現に俺は無理だと云われていた他の世界の同業者を、璃唖をこの世界に呼ぶ事が出来た。この時点で何かが変わり始めてる、そう思わないか?」
「・・・・」
そう言われ改めて直秀さんを見た
確かにこれだけ長時間隔離空間を作り出し、無理だと云われていた事を成し遂げたり、さっきの男達に放った言葉にも重みを感じていた
これだけの事を考えると彼はこの世界の同業者の中でも私と同じように力が強い人だと見て取れた
「状況は解りました。でも、直ぐに返答を返せないと思います。私自身どうしたらいいのかもまだちゃんと解ってないですから」
「直ぐに、なんて俺も思ってないよ。ただ璃唖に直接会って事態を伝えたかったって云うのもあるからな。呼んだ張本人を覚えて欲しいってのもあったしね」
そこまで言うと隔離空間がなくなり店内の賑やかさが聞こえだし、改めて椅子に座り直した
「そう言う事なんで、同業者同士、改めてよろしくな。ああそれと俺の事は呼び捨ていい。敬語もいらねえ。同業者なんだから気軽に話せよ」
「・・・解った。じゃあ私の事もリアで良いよ」
「リア、ね。へえ、可愛いじゃん」
「っ!///」
笑顔でそう言われ思わず顔が赤くなった
「ふっ、じゃあな。茶と団子、ご馳走さん」
私の反応を見ると直秀は楽しそうに笑ってそう言って片手を軽く振って店を出て行った
続く
あとがき
ほう、なんとか無事に直秀登場の回まで書き終わったあああ!!
直秀との会話は結構早くから浮かんでたんですが登場をどうしようかと思ってたけど意外とあっさりと書けたね!
とりあえず今回は挨拶って事で登場したけど今後はちょくちょく出てきますよぉ
さて次回は久々にあの人達と絡ませてまた色んな人達と出会わせようかなぁ~ww
2012.02.15