サイト10周年記念小説
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「ファイアーボール!」
リタの魔術が発動し、空中を飛んでいた魔物に見事に当たり、
「蒼破刃!」
体勢を崩した所でユーリが蒼破刃を放つと魔物は力尽き地面に落ちた
「・・・良し、これでまた一つ素材回収だね!」
「ワン」
「うむ、こっちのも使えそうなのじゃ」
「んじゃ、さっさと回収して次行くか」
「え~まだ行くのぉ~」
今ユーリ達は自分達の合成の素材集めとギルドの依頼で同じく合成の素材集めの為にテムザ山に来ていた
「この辺りの魔物の素材って結構貴重だから欲しがる人は多いからね」
「好き好んで砂漠を越えて此処まで来ないからね」
アスラの言葉にリアは苦笑した
自分達はバウルがいるから此処まで苦なく来る事が出来るが普通は砂漠を越えて来るか、近くの岸辺に船を泊めて来るしかないのでこの辺りの素材は貴重なのだ
「後どのくらい必要かしら?」
「後5つくらいは必要ですね・・・」
「ええ、まだそんなにあるのぉ!」
「レイヴンさん、頑張りましょう」
そう声を掛けユーリ達は歩き出し、レイヴンも項垂れながらその後に続いた
それから少し登り、元クリティア族の街があった場所に辿り着いた
「この辺りで少し休憩にしようか」
「さんせ~い!」
「おっさんもう疲れたのか?」
「年寄りは体力がないんだって」
フレンの言葉を聞くと皆それぞれ休憩出来そうな場所へと移動した
リアも荷物を降ろしその中に入れてあった水筒を取り出し水を一口飲んで仕舞った後、仲間達の様子を見た
「リタ、はいお水です」
「あ、ありがと・・う///」
「お前等もちゃんと水分補給しておけよ」
「サンキュ、セイ」
「ワン」
「ありがとう、ラピード」
「えーっとこの先は確かこの魔物がいて・・・これが手に入るから・・・」
「次は此処に行くのが良いでしょうね」
「そうだね。じゃあ・・・」
ユーリ達を見るとみんなちゃんと水分補給をしていて、カロルとジュディスは地図を見ながらこの先の魔物の位置や手に入る素材の場所の確認をしていた
それぞれ休憩しているのを見終わるとリアは立ち上がってある場所へと向かった
そこは先程の場所から少し離れた所にある街の先が更に見渡せる場所だった
「あまり先に行くと落ちてしまうわよ」
そう声が聞こえ振り返るといつの間にかジュディスがいた
「大丈夫。此処、何度か来た事があるし」
「そうだったわね」
リアの言葉に思い出したようにジュディスは笑いリアの隣に並んだ
「カロルと話し終わったの?」
「ええ。そうしたらリアが散歩に出掛けるのが見えたから私も散歩に出て来たのよ」
「そうだったんだ。でも私と一緒だからふらふらしてたって言われないね」
「私はそんなつもりはないのだけれど・・・」
ユーリ達からジュディスは良くふらふらと何処かへ行くと言われているが、今はリアと一緒にいるからあの場にいないとなってもそう言われずに済むだろう
その反応にリアは思わず笑ってしまい、つられてジュディスも笑った
「「・・・・・」」
そして自然と視線を前に移すと二人で街を見下ろす形になり、そのまま風が吹く音を聞きながら無言で街を見ていた
「・・・こうしてるとジュディスと初めて会った時の事思い出すね」
「ええ」
リアの言葉にジュディスも同意し、クスリと笑って目を閉じた
リアとジュディスが出逢ったのは4年前、ジュディスがバウルと共にミョルゾを出て世界中を旅していた時の事だった
ジュディスはヘルメス式魔導器の情報を得てはその場へ行き、危険性があればバウルと共に壊し、また違う場所へと向かって飛び去っていくと言う日々を過ごしていた
誰にも頼らず自分の使命を友であるバウルと共に貫いていく
それが、自分の使命だから
ずっとそう思っていた
だが、自分達の使命を誰にも知られる事なく賢明にその役目を果たしている兄妹に、ジュディスは出逢ったのだった ――
メモリーズ
その日、ジュディスはバウルと共にデズエール大陸の上空を飛んでいた
資金はまだ暫く大丈夫そうだが、食料が少し減ってきていた
「マンタイクかノードポリカに寄って少し買い足した方が良いかしら・・・」
「?」
食料をチェックしながらぽつりと呟いているとふとバウルが何かに気が付いた
「どうしたの、バウル?」
バウルの言っている言葉に耳を傾けると、何処からか唄が聞こえる、と言っていた
「唄・・・?」
そう言われ地上に意識を向けると確かに風に乗って何処からか唄のようなものが聞こえてきた
それは楽器の演奏に合わせて、と言うものではなく、紛れもなく人の歌声だった
他の地域なら人が歌っていても気にもならないのだが、このデズエール大陸は殆どが砂漠で人が住んでいる場所も限られる
人が住んでいるマンタイクからも離れている場所で今は砂漠に近い場所を飛んでいる
だが、その歌声には何処か惹かれるものがあり、ジュディスもバウルも自然とその歌声の聞こえる場所を探していた
そうして歌声が聞こえた場所をバウルが見つけた
「・・・あそこは」
ふとその場所を見てジュディスは複雑な表情を浮かべたが、どうしてもその歌声が気になりバウルと共にその場所へと降りた
ジュディスとバウルが降り立った場所、そこはテムザ山だった
この場所は6年前に人と魔物が戦った人魔戦争の戦場だった所だ
そしてクリティア族の街もあった場所でジュディスが生まれ育った場所であり、バウルとも出逢った場所だった
少し複雑な思いを浮かべながらも、どうしても歌声の事が気になり歩みを進めて行くと、
「!」
元クリティア族の街があった場所に一人の少女と青年と白い生き物が居た
どうやらずっと聞こえていた歌声はあの少女と青年のものだったようだ
二人は更に感情を込めて歌っていく
それはとても悲しい唄にも聞こえ、何処か心の痛みや悲しさを浮かび上がらせるが、次第に気持ちが楽になるような心が温かくなるような感覚を覚えていた
パチパチパチパチ
「!」
二人が歌い終わるとジュディスは自然と拍手をしていてその音に驚いて二人と白い生き物は振り返った
「・・・クリティア族?」
青年はぽつりとそう呟き少女は少しだけその青年の後ろに隠れた
「ごめんなさい驚かせてしまって」
「いや、こっちもまさかクリティア族がこんな所にいるなんて思ってなかったからな」
「もしかして、この街の生き残り?」
「あら、喋るのね・・・」
「やっぱり驚いちゃいますよね」
ジュディスは白い生き物が喋った事に驚きそう言うと少女は小さく笑って白い生き物を抱き抱えた
「で、さっきの質問だが」
「ええ。この街の生き残りよ。貴方達こそ此処で何をしていたのかしら?」
「亡くなった人達の魂を鎮める為に歌っていたんです」
「え・・?」
少女から意外な言葉を聞きジュディスは目を瞠った
「此処、人魔戦争があった場所なのは知ってますよね」
「ええ・・・」
「その戦争で沢山の人間や魔物・・・主に人間だけど、此処で亡くなったでしょ」
「だから俺達はこうしてたまにその魂を鎮める為に歌いに来てたんだよ」
「魂を、鎮める為・・・?」
「・・・こう言うとクリティア族の人は気付くと思うけど」
少女と青年、そして白い生き物からそう言われジュディスはクリティア族の隠された街ミョルゾで長老から聞いた話を思い出した
「・・・貴方達、もしかして、言霊使い?」
ジュディスの言葉に目の前の少女と青年は頷いた
言霊使い、それは人間の中でも皇帝家の血筋である満月の子とはまた違った特別な力を持っている人間の事でクリティア族と同じく古い一族と言う事をジュディスも聞いた事があったし古い本で読んだ事があった
今まで会った事もなければ実在してるのかも解らないし、本には禁忌な存在としても書かれていたので言霊使いに会うのはこれが初めてだった
「・・・本当に実在していたのね」
「あはは、良く、言われます・・・ι」
ジュディスの言葉に少女は苦笑し、ジュディスは改めて目の前の少女と青年を見た
こうやって話していると普通の人とまったく変わりは無い
だが、どことなくだが、自分と同じように何かを背負っているような雰囲気も自然と感じ取れた
「あんた此処に住んでるのか?」
「いいえ。昔は住んでいたけれど、今は友達と一緒に旅をしているわ」
「それってさっき上空を飛んでた始祖の隷長の事?」
「! ・・気付いていたのね」
「始祖の隷長にはね。クリティア族が一緒とは思ってなかったけど」
「じゃあ貴女も世界中を旅してるって事?」
「も、って事は貴方達も?」
「ああ。一応帝都の下町に家はあるけどな」
帝都と聞き、随分と遠くから来たのね・・・と思っていると、
「あの、もし良かったらもう少しお話しませんか?」
「え?」
少女の言葉にジュディスは驚いて少女を見た
「クリティア族の人が旅をしてるのって珍しいし、そのお友達との旅の話しも聞いてみたいし、貴女の事も知りたいなって思って」
「・・・・」
「あ、無理だったら良いんですけど・・・・」
少しだけしょぼんとしてしまった少女を見てジュディスは表情がコロコロと変わり、可愛くて面白い子と思い小さく笑った
「いいえ。私も貴方達に興味があるから聞いてみたいわ」
ジュディスの返事を聞くと目の前の少女は嬉しそうな顔をして、
「ありがとう。私はリア・ルーティア」
名前を名乗った後ニコリと微笑み、その綺麗な笑顔を見てジュディスは驚いてしまったが、
「私はジュディスよ」
自分も此処でやっと名前を名乗り、よろしく、と言ってお互いに握手をした
――
「あの後、ジュディスと色々と喋ったよね」
「ええ。私もミョルゾの外に出てからバウル以外とあんなに話をしたのは久し振りだったわ」
当時の事を思い出しながら二人は小さく笑った
あの後セイとアスラも名乗り、ジュディスの友達であるバウルの所まで行きバウルの紹介もしてもらった後、お茶を飲みながらお互いの事を話し、この時にお互いに自分達の使命を抱えている事も知ったのだった
「ジュディスから話を聞いた時は驚いたけど、その覚悟は凄いなって思ったんだ」
「あら、私からしたら貴方達の方が十分重い物を背負ってるって思ったわ」
お互いに確かに重い使命を背負っていると言えるだろう
「でもそれが、今は同じ事に向かって一緒に歩いているから不思議よね」
「うん。私達が背負ってる事がお互いに世界の事に繋がってたなんて、あの時は思いもしなかったよね」
ジュディスが使命としていたヘルメス式魔導器は世界に影響を与えると言う事はあの時から知ってはいたが、まさかリア達言霊使いの事も、この世界に関係していると言う事はあの当時はリアもジュディスも知らない事だった
それがこの旅で色々な事が繋がり、今こうして仲間達と共にその問題やお互いに抱えている事に向かって行っていた
「でも私、ジュディスや兄さん、それにユーリ達と一緒に世界の問題に向かって行ってる事が凄く誇らしいなって思うんだ」
「そうね。みんなと出逢って色々な事を知る事が出来たし、ヘルメス式魔導器の事も壊さなくてもどうにか出来る方法が解ったし」
リアの言葉に同意しジュディスも微笑んでそう言った
「みんなと出逢えて本当に良かったよね」
「ええ。きっかけはユーリでしょうけれど、私にとっては最初に出逢えたのが貴方達兄妹で良かったって改めて思うわ」
そう言って微笑んだジュディスの笑顔はこの旅の中で見てきた笑顔のどれよりも心から笑って言っている笑顔だった
「うん、私もみんなより早くジュディスと出逢えて良かったよ」
リアもいつもの笑顔をジュディスに向けてそう言った
「二人ともやっぱり此処に居たのか」
「あ、兄さん、ユーリ、フレン」
ふと後ろから声が聞こえ振り返るとユーリとフレンとセイがいた
「ごめんなさい、貴方達のお姫様を独り占めしてたわ」
「え、ジュ、ジュディス!///」
その言葉にリアは焦りフレンも少しだけ頬が赤くなったような気がした
「あら、違ったかしら?」
「・・・あのなぁ」
何処か物言いたげにしているユーリとフレンを横目にジュディスは小さく笑っていた
「そろそろ出発する頃かしら?」
「ああ。お前等の事だろうから此処に居ると思って呼びに来たんだよ」
「そうだったんだ。ありがとう、兄さん」
この場所に居た事が直ぐに解ったセイにリアもジュディスも同じ事を思っていたようだった
「でもどうしてこの場所だと解ったんだ?」
フレンの疑問にはユーリも同じ事を思っている顔をしていた
「此処は思い出のある場所だからよ」
「思い出って、ジュディのか?」
「ええ。私と、ある人達の、ね」
「「?」」
ジュディスの言葉にユーリとフレンは更に疑問符を出したが、そのある人達、と言う言葉にリアとセイは気付きリアはニコリと嬉しそうに微笑みセイも目を閉じて小さく笑っていた
「ほら、そろそろ行かねえとカロル達が呼びに来るぞ」
「あ、うん、そうだね。じゃあユーリ、フレン、ジュディス、行こう」
「ええ」「「ああ」」
セイはそう言って歩き出し、リアも三人に声を掛け皆歩き出した
そしてジュディスはリアの横に並ぶとリアはジュディスに気が付き、お互いにニコリと微笑んでいた
その笑顔はまるでこの場所で初めて出逢ってお互いに名乗った後に握手をした時の笑顔と同じくらい・・・否、それ以上に良い笑顔をしていたのだった
end.
あとがき
と事でサイト10周年記念小説、ジュディス編何だったでしょうか?
ジュディスとの出逢いの話はいつか書いてみたいなーって漠然と思ってちょっと考えた事はあったんですけど、なかなか思い付かず・・・ι
でもジュディスの小説(竜使いの沈黙)を読み終わった後に、改めて出逢った頃の話を書いてみるのも良いかもなって思ってました
で、今回の企画で考えていたものを改めて書こうとしてたけど・・・此方もリタ編と同じく、ジュディスと二人だけでガッツリ話すって所がなかったから思い付くまでが時間は掛かったけれどもジュディス編も書き出したらすらすらと書けましたww
ジュディスとリアちゃん達の出逢いは絶対に人魔戦争後のテムザ山でリアちゃん達が歌っていてその唄をジュディスが聞いて出逢うって言う形をずっと考えていたのでその形で出逢わせました
・・・小説読んでからかなーーーり年月が経っているのと小説が本を片付けている棚のかなり下の方に埋まってて取り出せなかったので確かこのくらいの時にミョルゾの外に出てたよね・・?って思いながら書いたので、時間枠が違ってたらごめんなさいι
でも出逢った頃の話やジュディスと二人だけで話すシーンとかも書いていて新鮮でした!
あ、ジュディスが見せた笑顔ってのは小説の下巻の表紙のあの笑顔だと思って下さい
後、書いてて楽しかったのは最後の幼馴染み組とのやり取りですねw
「貴方達のお姫様を独り占めしてたわ」は直ぐに思い付いたw
その後のユーリとフレンの反応も楽しかったしその場を見たかったですww←
ジュディス編は最後までタイトルが決まらなくて思い出とか出逢いって使ってる言葉を何個か候補を絞ったんですけど、やっぱり出逢った頃の思い出を語っていたのでこのタイトルで落ち着きました
えー、さて、ジュディス編は以上となりますが、まだまだ残りのパーティメンバーとの話が残っています
まだ読んでないキャラ達がいたら其方も是非とも読んで頂けたらと思います!
改めて、サイト10周年、本当に有り難う御座います!!
これからも地道にやっていきますので、今後とも宜しくお願いします!
それからよければ・サイト10周年記念小説アンケートのアンケートにもご協力をお願いします。
GRANRODEO 23thシングル 「メモリーズ」&GRANRODEO 曲名でお題 102.メモリーズ より
10周年:2019.07.18
完成:2019.05.05
リタの魔術が発動し、空中を飛んでいた魔物に見事に当たり、
「蒼破刃!」
体勢を崩した所でユーリが蒼破刃を放つと魔物は力尽き地面に落ちた
「・・・良し、これでまた一つ素材回収だね!」
「ワン」
「うむ、こっちのも使えそうなのじゃ」
「んじゃ、さっさと回収して次行くか」
「え~まだ行くのぉ~」
今ユーリ達は自分達の合成の素材集めとギルドの依頼で同じく合成の素材集めの為にテムザ山に来ていた
「この辺りの魔物の素材って結構貴重だから欲しがる人は多いからね」
「好き好んで砂漠を越えて此処まで来ないからね」
アスラの言葉にリアは苦笑した
自分達はバウルがいるから此処まで苦なく来る事が出来るが普通は砂漠を越えて来るか、近くの岸辺に船を泊めて来るしかないのでこの辺りの素材は貴重なのだ
「後どのくらい必要かしら?」
「後5つくらいは必要ですね・・・」
「ええ、まだそんなにあるのぉ!」
「レイヴンさん、頑張りましょう」
そう声を掛けユーリ達は歩き出し、レイヴンも項垂れながらその後に続いた
それから少し登り、元クリティア族の街があった場所に辿り着いた
「この辺りで少し休憩にしようか」
「さんせ~い!」
「おっさんもう疲れたのか?」
「年寄りは体力がないんだって」
フレンの言葉を聞くと皆それぞれ休憩出来そうな場所へと移動した
リアも荷物を降ろしその中に入れてあった水筒を取り出し水を一口飲んで仕舞った後、仲間達の様子を見た
「リタ、はいお水です」
「あ、ありがと・・う///」
「お前等もちゃんと水分補給しておけよ」
「サンキュ、セイ」
「ワン」
「ありがとう、ラピード」
「えーっとこの先は確かこの魔物がいて・・・これが手に入るから・・・」
「次は此処に行くのが良いでしょうね」
「そうだね。じゃあ・・・」
ユーリ達を見るとみんなちゃんと水分補給をしていて、カロルとジュディスは地図を見ながらこの先の魔物の位置や手に入る素材の場所の確認をしていた
それぞれ休憩しているのを見終わるとリアは立ち上がってある場所へと向かった
そこは先程の場所から少し離れた所にある街の先が更に見渡せる場所だった
「あまり先に行くと落ちてしまうわよ」
そう声が聞こえ振り返るといつの間にかジュディスがいた
「大丈夫。此処、何度か来た事があるし」
「そうだったわね」
リアの言葉に思い出したようにジュディスは笑いリアの隣に並んだ
「カロルと話し終わったの?」
「ええ。そうしたらリアが散歩に出掛けるのが見えたから私も散歩に出て来たのよ」
「そうだったんだ。でも私と一緒だからふらふらしてたって言われないね」
「私はそんなつもりはないのだけれど・・・」
ユーリ達からジュディスは良くふらふらと何処かへ行くと言われているが、今はリアと一緒にいるからあの場にいないとなってもそう言われずに済むだろう
その反応にリアは思わず笑ってしまい、つられてジュディスも笑った
「「・・・・・」」
そして自然と視線を前に移すと二人で街を見下ろす形になり、そのまま風が吹く音を聞きながら無言で街を見ていた
「・・・こうしてるとジュディスと初めて会った時の事思い出すね」
「ええ」
リアの言葉にジュディスも同意し、クスリと笑って目を閉じた
リアとジュディスが出逢ったのは4年前、ジュディスがバウルと共にミョルゾを出て世界中を旅していた時の事だった
ジュディスはヘルメス式魔導器の情報を得てはその場へ行き、危険性があればバウルと共に壊し、また違う場所へと向かって飛び去っていくと言う日々を過ごしていた
誰にも頼らず自分の使命を友であるバウルと共に貫いていく
それが、自分の使命だから
ずっとそう思っていた
だが、自分達の使命を誰にも知られる事なく賢明にその役目を果たしている兄妹に、ジュディスは出逢ったのだった ――
メモリーズ
その日、ジュディスはバウルと共にデズエール大陸の上空を飛んでいた
資金はまだ暫く大丈夫そうだが、食料が少し減ってきていた
「マンタイクかノードポリカに寄って少し買い足した方が良いかしら・・・」
「?」
食料をチェックしながらぽつりと呟いているとふとバウルが何かに気が付いた
「どうしたの、バウル?」
バウルの言っている言葉に耳を傾けると、何処からか唄が聞こえる、と言っていた
「唄・・・?」
そう言われ地上に意識を向けると確かに風に乗って何処からか唄のようなものが聞こえてきた
それは楽器の演奏に合わせて、と言うものではなく、紛れもなく人の歌声だった
他の地域なら人が歌っていても気にもならないのだが、このデズエール大陸は殆どが砂漠で人が住んでいる場所も限られる
人が住んでいるマンタイクからも離れている場所で今は砂漠に近い場所を飛んでいる
だが、その歌声には何処か惹かれるものがあり、ジュディスもバウルも自然とその歌声の聞こえる場所を探していた
そうして歌声が聞こえた場所をバウルが見つけた
「・・・あそこは」
ふとその場所を見てジュディスは複雑な表情を浮かべたが、どうしてもその歌声が気になりバウルと共にその場所へと降りた
ジュディスとバウルが降り立った場所、そこはテムザ山だった
この場所は6年前に人と魔物が戦った人魔戦争の戦場だった所だ
そしてクリティア族の街もあった場所でジュディスが生まれ育った場所であり、バウルとも出逢った場所だった
少し複雑な思いを浮かべながらも、どうしても歌声の事が気になり歩みを進めて行くと、
「!」
元クリティア族の街があった場所に一人の少女と青年と白い生き物が居た
どうやらずっと聞こえていた歌声はあの少女と青年のものだったようだ
二人は更に感情を込めて歌っていく
それはとても悲しい唄にも聞こえ、何処か心の痛みや悲しさを浮かび上がらせるが、次第に気持ちが楽になるような心が温かくなるような感覚を覚えていた
パチパチパチパチ
「!」
二人が歌い終わるとジュディスは自然と拍手をしていてその音に驚いて二人と白い生き物は振り返った
「・・・クリティア族?」
青年はぽつりとそう呟き少女は少しだけその青年の後ろに隠れた
「ごめんなさい驚かせてしまって」
「いや、こっちもまさかクリティア族がこんな所にいるなんて思ってなかったからな」
「もしかして、この街の生き残り?」
「あら、喋るのね・・・」
「やっぱり驚いちゃいますよね」
ジュディスは白い生き物が喋った事に驚きそう言うと少女は小さく笑って白い生き物を抱き抱えた
「で、さっきの質問だが」
「ええ。この街の生き残りよ。貴方達こそ此処で何をしていたのかしら?」
「亡くなった人達の魂を鎮める為に歌っていたんです」
「え・・?」
少女から意外な言葉を聞きジュディスは目を瞠った
「此処、人魔戦争があった場所なのは知ってますよね」
「ええ・・・」
「その戦争で沢山の人間や魔物・・・主に人間だけど、此処で亡くなったでしょ」
「だから俺達はこうしてたまにその魂を鎮める為に歌いに来てたんだよ」
「魂を、鎮める為・・・?」
「・・・こう言うとクリティア族の人は気付くと思うけど」
少女と青年、そして白い生き物からそう言われジュディスはクリティア族の隠された街ミョルゾで長老から聞いた話を思い出した
「・・・貴方達、もしかして、言霊使い?」
ジュディスの言葉に目の前の少女と青年は頷いた
言霊使い、それは人間の中でも皇帝家の血筋である満月の子とはまた違った特別な力を持っている人間の事でクリティア族と同じく古い一族と言う事をジュディスも聞いた事があったし古い本で読んだ事があった
今まで会った事もなければ実在してるのかも解らないし、本には禁忌な存在としても書かれていたので言霊使いに会うのはこれが初めてだった
「・・・本当に実在していたのね」
「あはは、良く、言われます・・・ι」
ジュディスの言葉に少女は苦笑し、ジュディスは改めて目の前の少女と青年を見た
こうやって話していると普通の人とまったく変わりは無い
だが、どことなくだが、自分と同じように何かを背負っているような雰囲気も自然と感じ取れた
「あんた此処に住んでるのか?」
「いいえ。昔は住んでいたけれど、今は友達と一緒に旅をしているわ」
「それってさっき上空を飛んでた始祖の隷長の事?」
「! ・・気付いていたのね」
「始祖の隷長にはね。クリティア族が一緒とは思ってなかったけど」
「じゃあ貴女も世界中を旅してるって事?」
「も、って事は貴方達も?」
「ああ。一応帝都の下町に家はあるけどな」
帝都と聞き、随分と遠くから来たのね・・・と思っていると、
「あの、もし良かったらもう少しお話しませんか?」
「え?」
少女の言葉にジュディスは驚いて少女を見た
「クリティア族の人が旅をしてるのって珍しいし、そのお友達との旅の話しも聞いてみたいし、貴女の事も知りたいなって思って」
「・・・・」
「あ、無理だったら良いんですけど・・・・」
少しだけしょぼんとしてしまった少女を見てジュディスは表情がコロコロと変わり、可愛くて面白い子と思い小さく笑った
「いいえ。私も貴方達に興味があるから聞いてみたいわ」
ジュディスの返事を聞くと目の前の少女は嬉しそうな顔をして、
「ありがとう。私はリア・ルーティア」
名前を名乗った後ニコリと微笑み、その綺麗な笑顔を見てジュディスは驚いてしまったが、
「私はジュディスよ」
自分も此処でやっと名前を名乗り、よろしく、と言ってお互いに握手をした
――
「あの後、ジュディスと色々と喋ったよね」
「ええ。私もミョルゾの外に出てからバウル以外とあんなに話をしたのは久し振りだったわ」
当時の事を思い出しながら二人は小さく笑った
あの後セイとアスラも名乗り、ジュディスの友達であるバウルの所まで行きバウルの紹介もしてもらった後、お茶を飲みながらお互いの事を話し、この時にお互いに自分達の使命を抱えている事も知ったのだった
「ジュディスから話を聞いた時は驚いたけど、その覚悟は凄いなって思ったんだ」
「あら、私からしたら貴方達の方が十分重い物を背負ってるって思ったわ」
お互いに確かに重い使命を背負っていると言えるだろう
「でもそれが、今は同じ事に向かって一緒に歩いているから不思議よね」
「うん。私達が背負ってる事がお互いに世界の事に繋がってたなんて、あの時は思いもしなかったよね」
ジュディスが使命としていたヘルメス式魔導器は世界に影響を与えると言う事はあの時から知ってはいたが、まさかリア達言霊使いの事も、この世界に関係していると言う事はあの当時はリアもジュディスも知らない事だった
それがこの旅で色々な事が繋がり、今こうして仲間達と共にその問題やお互いに抱えている事に向かって行っていた
「でも私、ジュディスや兄さん、それにユーリ達と一緒に世界の問題に向かって行ってる事が凄く誇らしいなって思うんだ」
「そうね。みんなと出逢って色々な事を知る事が出来たし、ヘルメス式魔導器の事も壊さなくてもどうにか出来る方法が解ったし」
リアの言葉に同意しジュディスも微笑んでそう言った
「みんなと出逢えて本当に良かったよね」
「ええ。きっかけはユーリでしょうけれど、私にとっては最初に出逢えたのが貴方達兄妹で良かったって改めて思うわ」
そう言って微笑んだジュディスの笑顔はこの旅の中で見てきた笑顔のどれよりも心から笑って言っている笑顔だった
「うん、私もみんなより早くジュディスと出逢えて良かったよ」
リアもいつもの笑顔をジュディスに向けてそう言った
「二人ともやっぱり此処に居たのか」
「あ、兄さん、ユーリ、フレン」
ふと後ろから声が聞こえ振り返るとユーリとフレンとセイがいた
「ごめんなさい、貴方達のお姫様を独り占めしてたわ」
「え、ジュ、ジュディス!///」
その言葉にリアは焦りフレンも少しだけ頬が赤くなったような気がした
「あら、違ったかしら?」
「・・・あのなぁ」
何処か物言いたげにしているユーリとフレンを横目にジュディスは小さく笑っていた
「そろそろ出発する頃かしら?」
「ああ。お前等の事だろうから此処に居ると思って呼びに来たんだよ」
「そうだったんだ。ありがとう、兄さん」
この場所に居た事が直ぐに解ったセイにリアもジュディスも同じ事を思っていたようだった
「でもどうしてこの場所だと解ったんだ?」
フレンの疑問にはユーリも同じ事を思っている顔をしていた
「此処は思い出のある場所だからよ」
「思い出って、ジュディのか?」
「ええ。私と、ある人達の、ね」
「「?」」
ジュディスの言葉にユーリとフレンは更に疑問符を出したが、そのある人達、と言う言葉にリアとセイは気付きリアはニコリと嬉しそうに微笑みセイも目を閉じて小さく笑っていた
「ほら、そろそろ行かねえとカロル達が呼びに来るぞ」
「あ、うん、そうだね。じゃあユーリ、フレン、ジュディス、行こう」
「ええ」「「ああ」」
セイはそう言って歩き出し、リアも三人に声を掛け皆歩き出した
そしてジュディスはリアの横に並ぶとリアはジュディスに気が付き、お互いにニコリと微笑んでいた
その笑顔はまるでこの場所で初めて出逢ってお互いに名乗った後に握手をした時の笑顔と同じくらい・・・否、それ以上に良い笑顔をしていたのだった
end.
あとがき
と事でサイト10周年記念小説、ジュディス編何だったでしょうか?
ジュディスとの出逢いの話はいつか書いてみたいなーって漠然と思ってちょっと考えた事はあったんですけど、なかなか思い付かず・・・ι
でもジュディスの小説(竜使いの沈黙)を読み終わった後に、改めて出逢った頃の話を書いてみるのも良いかもなって思ってました
で、今回の企画で考えていたものを改めて書こうとしてたけど・・・此方もリタ編と同じく、ジュディスと二人だけでガッツリ話すって所がなかったから思い付くまでが時間は掛かったけれどもジュディス編も書き出したらすらすらと書けましたww
ジュディスとリアちゃん達の出逢いは絶対に人魔戦争後のテムザ山でリアちゃん達が歌っていてその唄をジュディスが聞いて出逢うって言う形をずっと考えていたのでその形で出逢わせました
・・・小説読んでからかなーーーり年月が経っているのと小説が本を片付けている棚のかなり下の方に埋まってて取り出せなかったので確かこのくらいの時にミョルゾの外に出てたよね・・?って思いながら書いたので、時間枠が違ってたらごめんなさいι
でも出逢った頃の話やジュディスと二人だけで話すシーンとかも書いていて新鮮でした!
あ、ジュディスが見せた笑顔ってのは小説の下巻の表紙のあの笑顔だと思って下さい
後、書いてて楽しかったのは最後の幼馴染み組とのやり取りですねw
「貴方達のお姫様を独り占めしてたわ」は直ぐに思い付いたw
その後のユーリとフレンの反応も楽しかったしその場を見たかったですww←
ジュディス編は最後までタイトルが決まらなくて思い出とか出逢いって使ってる言葉を何個か候補を絞ったんですけど、やっぱり出逢った頃の思い出を語っていたのでこのタイトルで落ち着きました
えー、さて、ジュディス編は以上となりますが、まだまだ残りのパーティメンバーとの話が残っています
まだ読んでないキャラ達がいたら其方も是非とも読んで頂けたらと思います!
改めて、サイト10周年、本当に有り難う御座います!!
これからも地道にやっていきますので、今後とも宜しくお願いします!
それからよければ・サイト10周年記念小説アンケートのアンケートにもご協力をお願いします。
GRANRODEO 23thシングル 「メモリーズ」&GRANRODEO 曲名でお題 102.メモリーズ より
10周年:2019.07.18
完成:2019.05.05